ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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さて、感想で「リゼヴィムやリムヴァンが放っておくわけがない」と心配されているニエ。

そんなニエは―


第六章 59

 

 

 

 

イッセーSide

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 吹っ飛ばされたジェームズは、そのまま地面に倒れた。

 

「糞……ここまで、か……っ」

 

 激痛に悶えてるジェームズは、この調子だと戦えそうにない。

 

 よし! これなら何とかなるか!?

 

「無事だなイッセー。急ぐぞ!」

 

「ああ! 早くしないと―」

 

 ゼノヴィアの言う通りだ。

 

 直ぐにでも助けに行かないと。イリナやトウジさんもそうだけど、リセスさんが危なっかしい。

 

 そう思って振り向いたその時―

 

「じゃ、台無しタイム♪」

 

 ―邪悪な笑みを浮かべた、リゼヴィムがゼノヴィアの真後ろに立っていた。

 

「ゼノヴィアさ―」

 

 アーシアが気づいて声を上げるけど、間に合わない。

 

 やべえ。激戦後の不意を突かれて―

 

「……いえ、そこ迄です」

 

 その言葉と一緒に建物の残骸がゼノヴィアごとリゼヴィムに直撃した。

 

 …………

 

 え?

 

「ぜ、ゼノヴィアぁあああああ!?」

 

「ゼノヴィアさぁあああん!?」

 

 俺とアーシアが絶叫する中、一緒にいたファーブニルが口から何かを取り出した。

 

『今週のビックリドッキリメカ。重力操作ー』

 

 おお、瓦礫が浮かんだ!! ありがとうファーブニル!!

 

 あ、ゼノヴィアの奴完全に気絶してる!!

 

「他に助け方なかったのかよ!?」

 

 俺が瓦礫の投げつけられた方向に向きながら文句を言うと、そこにいた奴が肩をすくめた。

 

 ん? っていうかあり得ない奴がここにいるんだけど!?

 

「仕方ないじゃないか。こうでもしないと僕の攻撃はリゼヴィムさんには通用しないし」

 

 そう言いながら歩いてくるのは、ニエだった。

 

「おや~ん? その様子だと、リセスちゃんは殺せなかったのかにゃん?」

 

 と、リゼヴィムが上空で首を傾げていた。

 

 あの野郎、あっさり躱してるんじゃねえよ!

 

 っていうかゼノヴィアだけ喰らってんじゃねえか! 怒っていいよなこれ!!

 

 いや、怒ってる場合でもない。

 

 何でニエがここに? リセスさんはここにはいないぞ?

 

 っていうか、リゼヴィムは一応味方だろ? 何で攻撃してるんだよ。

 

「ど、どういうつもりだよ!?」

 

「……なんか、馬鹿らしくなってね」

 

 俺の質問に、ニエはそう言って肩をすくめた。

 

 なんでだろう。なんかスッキリした表情してるな。

 

「何ていうか馬鹿らしい。自分がこんなに馬鹿だったとは、思わなかったよ」

 

 そういうニエは、苦笑いの表情を浮かべているけど、本当にスッキリしているみたいだった。

 

 何だろうな。憑き物が落ちたってこんな感じか?

 

 リセスさんを殺してしまったのだろうか。もしそうだったら、俺はニエを許す気になれない。

 

 だけど、なんとなくそれは違うって事がよく分かった。

 

「……リゼヴィムさん。リムヴァンさんは、この可能性に気付いていたんですか?」

 

 ニエの視線はリゼヴィムに向けられる。

 

 なんだ? ニエは一応、ヴィクターの一員のはずだよな?

 

 なんだかんだで味方同士で争ってるのか? ニエは邪龍達と違って仲間意識はありそうだったけど……。

 

 俺が首を傾げていると、リゼヴィムは魔方陣を展開する。

 

「リムヴァン? どうも最悪のパターンになったっぽいぜ?」

 

『おやぁん? リセスちゃんやプリスちゃんは、自分から謝ったりしないタイプだと思ったんだけどね。謝って済む事をしなかった場合は特に』

 

 と、そこでワインを飲んでいるリムヴァンの姿が映る。

 

 それをまっすぐに見つめながら、ニエは一歩前に出た。

 

「リムヴァンさん。……あなたは、僕にリセスを殺させるつもりだった。そうですよね」

 

『もちろんSA! 僕は悪魔だ。契約はきちんと守るよ? 特に自分から持ち掛けた契約は、できる限り順守する。……それが、悪魔って生き物だからね』

 

 リムヴァンはさらりと言うが、しかしそこで表情を変える。

 

 俺は、それを見た時ゾッとした。アーシアが顔を真っ青にして、ファーブニルが慌てて庇う程だ。

 

 それ位には、リムヴァンのその笑みは邪悪だった。

 

 ああ。こんな邪悪な笑みを俺は今まで見たことがない。

 

 間違いなくきれいなのに、だけど明らかに邪悪だって分かる。そんな、醜悪な芸術品だった。

 

『だけど、その復讐を達成した時の快楽に君が壊れても、それは僕の契約の範疇外さ』

 

 ……なんだ、それ。

 

「どういう意味だ、リムヴァン!!」

 

「どうもこうもねえよ。文字通りの意味だぜ、赤龍帝きゅん?」

 

 問い質す俺に応えるのは、リムヴァンじゃなくてリゼヴィムだった。

 

「知的生命体ってのは、むかつく奴が吹っ飛ばされるとスカッとするからねぇ。死ぬほどの絶望を与えた存在を自分の手でぶち殺すってんは、そりゃもう脳内麻薬出まくりだよ。……普通の奴ならそのままぶっ壊れるぐらいにゃぁな」

 

 リゼヴィムは、長年生きてきた経験からか、すごく説得力のある言葉を言ってくる。

 

 そして、それは本気で邪悪の言葉だった。

 

 マジかよ。つまり、ニエが壊れて狂人になることまで想定内で、そんなことを……?

 

「それで殺人狂にでもなってくれれば、今後も楽しくお付き合いで来たんだけどねぇ。いや、残念無念~」

 

 そう軽い口調で。リゼヴィムははっきりと言い切った。

 

 なんだよ、それって……っ!!

 

 ふざけんな! こいつ、そんな事の為にニエを蘇らせたってのか!?

 

「酷い……っ」

 

 アーシアは口元を押さえて、目を潤ませる。

 

 当然だ。こんなこと聞いて、むかつかないほど俺達は邪悪じゃねえ。

 

 こいつら、よくもまあそんな事をニエの目の前で……っ。

 

『まあ、その様子だと謝られちゃった感じかな? こりゃ、大失敗だね。ガックリ』

 

 そう言って肩を落とすリムヴァンに、ニエは苦笑した。

 

「まあ、リセスを殺したかったのは事実ですから、そこには感謝してますよ」

 

 ニエは、特にそれに対して怒ってない。それどころか、本当に感謝の言葉を返した。

 

 それだけ憎かったのに、ニエはリセスさんを許したのか? プリスって人も、許したのか?

 

 俺達がよく分からないでいると、ニエはタンニーンのオッサンぐらいある魔獣を生み出しながら、静かに目を伏せる。

 

「でも、冷めてしまいました。そして、ヴィクターの所業は冷めた今の僕では許容できないんです」

 

 そして、まっすぐに敵意をリゼヴィムとリムヴァンに向けた。

 

「何の罪もないと認められた魂まで巻き込んでの戦いは、もう僕にはできません。……本当に勝手ですけど、今から僕は敵対させてもらいます」

 

『本当に勝手だねぇ』

 

 ニエの敵対宣言に、リムヴァンは怒りじゃなくて苦笑を浮かべる。

 

『散々暴れてきたってのに、冷めたからって掌返すだなんて。ちょっと僕らにとっても彼らにとっても、自分勝手に見えるんじゃないかい?』

 

「そうですね。散々リセスを倒す為に他の人を巻き込んでおいて、何を今更とは思いますよ」

 

 リムヴァンの皮肉に苦笑を浮かべながら、だけどニエは俺達を庇いながらまっすぐに立っていた。

 

 そして、大量の魔獣の戦意がリゼヴィムに向けられる。

 

「だけど、素面になった僕は、貴方がたの所業を受け入れられない。……どこまでも半端ものらしいと、嘲笑ってくれってかまいません」

 

『……いや、そこまでは言わないさ』

 

 自嘲するニエに、リムヴァンは静かに首を振った。

 

 その目には、どこか輝かしいものを見る感情が映っていた気がする。

 

『それは、君が正しい側に立ち直ったことを意味している。……幸運に助けられたとはいえ、踏みとどまったことは素直に称賛しよう』

 

「……重ね重ね、ありがとうございました」

 

 リムヴァンに、ニエは頭を下げる。

 

 そんなニエに悪意のない笑顔を浮かべて、リムヴァンは―

 

『ま、それとこれとは別問題。L、やっちゃってー』

 

 -一瞬で悪意を丸出しにしやがったよこの野郎!!

 

 んでもってリゼヴィムの準備体操してやがるし!! この野郎マジでむかつくな、オイ!!

 

「OK! 俺は素直にイラっと来るから、ちょっとノリノリでいっちゃうぜー!!」

 

 そして勢いよく、俺達に向かって突撃する。

 

 ……そして、天界最大級の戦いが勃発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Out

 




―むしろ自分から突っかかっていきました!

いや、現実問題ニエはヴィクターの下衆な所業をずっと見てきたわけです。常人は「イラつくけど対抗できないし怖いから立ち向かえない」的な感じになるわけです。

それを、「復讐したいから」という一念がセーフティになってきたニエです。その復讐心が沈下した今、ヴィクターの所業に対する嫌悪感が強くなっています。ついでに言うと数々の戦闘で割と心根が鍛えられてますし、なにより彼には対抗できる力がある。

……結果として、ここで反旗を翻しました。自分で言ってますが恩知らずで身勝手な行動ではあります。
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