ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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とりあえずバトルは終了。そして、いろいろあるけどファニーエンジェル編エピローグです。


第六章 62

 

 勢いよくアジ・ダハーカを吹っ飛ばした俺は、勢い余って吹っ飛んでいった。

 

 全身が悲鳴を上げる中、俺は気合と根性と脳の生体電流を操作する事による痛覚の意図的なマヒで、無理やり体を動かす。

 

 まだだ。うっかり忘れてたけど、まだ敵は全滅したわけじゃねえ。

 

 そう、まだ他にも強敵は残ってるはず―

 

 と、思ったらイッセーの姿が見えた。

 

 っていうかニエまでいる。

 

 マジか。てっきり姐さんとぶつかっているかと思ったけど、イッセーとかち合ってたのか。

 

「イッセー無事か!」

 

「ヒロイ! 無事……じゃねえな!?」

 

 悪かったな。俺も無茶はした自覚はあるんだよ。

 

 そうでもしねえと勝てなかったし、負けるわけにはいかねえ意地があったからな。

 

 とりあえず俺は着地して、ニエに視線を向ける。

 

 そこに、イッセーが割って入った。

 

「待ってくれ! 今のニエは敵じゃない! ……リセスさんも無事だから!」

 

「……え? どういうことだよ?」

 

「色々あってね。話は長くなるから後で」

 

 俺の混乱をよそに、イッセーとニエは振り返ると構えを取る。

 

 そして、悪魔の翼が強引に周囲の土煙を振り払った。

 

「ふはははははははは!!! 認めよう! 貴殿らは我が恩人の障害だと!!」

 

 な、なんかテンションがいつもと違うリゼヴィムが姿を現しやがった。

 

 これが奴の本気モードか? それとも舐めプの一環で演技してんのか?

 

 ま、どっちにしても敵なんだが。

 

「で、意外とボコってるんだが攻略法でも見つけたのか?」

 

 俺はとっさに悪魔祓いの装備である光の剣と銃を取り出して、戦闘準備を取る。

 

 今の状態だとこれの方がまだ戦えるからな。つっても、ボロボロだからこのままだとまずいんだけどよ。

 

 ……ちょっとキレすぎたな。後の事考えてなさすぎたかもしれねえ。

 

 いや、あの野郎はふざけすぎてたからな。あれぐらいしねえと割に合わねえ。人の矜持を徹底的に踏みにじったあげく、我儘と誇りの区別もついてねえ糞野郎だった。

 

 まだ、目の前のリゼヴィムの方が理解できそうだしよ。

 

「……まさか、二天龍の第三の力を再び見る事ができるとは思いませんでした。これも亡き主の導きでしょうか」

 

 その言葉とともに、ミカエル様まで現れやがった。

 

「お久しぶりですね、リリン。……この地での狼藉。命で償ってもらいましょうか」

 

 今までにないマジモードだ。本気のマジギレだこれは。

 

 その殺意満々の視線を嬉しそうに受け止めながら、リゼヴィムはだけど首を振った。

 

「いや、今日はもう退こう。目的は既に終えたのでね」

 

 そういいながら、リゼヴィムはリンゴみたいな果実を一つ取り出す。

 

 それを見て、ミカエル様は目を見開いた。

 

「それは……っ!」

 

「そうだ。今や枯れた所為で創られることのない、エデンの園の知恵の実だ。我が母より、煉獄に隠されている事を聞き及んでいてな」

 

 なるほどな、それがあいつらの本当の目的か。

 

「ふざけんな! 煉獄にあるなら天界まで来る必要はなかったじゃねえか!!」

 

「いや、天界を敵に回しているヴィクターとしては、天界に攻め込めたという事実は重要だよ。……将来的に仕掛けることができる実績があるってのは、士気が上がるからね」

 

 食って掛かるイッセーを押し止めながら、ニエはリゼヴィムに頭を下げる。

 

「裏切っておいて言う事ではありませんが。今まで本当にお世話になりましたと、リムヴァンさんに伝えておいてください」

 

「良かろう。こちらも堕落させようとした身だ。これ以上の愚弄はしないと約束しよう」

 

 ……そう言うと、リゼヴィムは翼を広げると飛び上がる。

 

「貴殿らとの決着は、トライヘキサの復活の日に執り行いたいものだ! では、その日にまた会おうではないか!!」

 

「逃がすと思うか!!」

 

 そのリゼヴィムを狙って、どこからか飛んできたヴァーリの砲撃が襲い掛かる。

 

 だけど、リゼヴィムはそれを片手でかき消した。

 

 くそ! あれが神器無効化能力か。っていうかイッセーとニエはどうやって対抗したんだよ、マジで。

 

 俺が呆れるやら関心するやらしている間に、既にリゼヴィムは後方に飛び退っていた。

 

「今の状態じゃ追撃は不可能ですかねぇ」

 

「忌々しいですがそうですね。こちらも少なくない被害を被っております。この状況で追撃戦をする余裕はありません」

 

 俺とミカエル様は、心底ストレスを溜めたけど逃がすしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで戦後処理をしようとした時、姐さんがふらつきながら現れる。

 

 そして、ニエを見ると足を止めた。

 

 沈黙が、響く。

 

 す、すげえキツイ。マジでキツイ。誰か何とかしてほしいってぐらいキツイ。

 

 そんな痛い沈黙が続き―

 

「イッセー!!」

 

「お姉さま!!」

 

 お嬢とペトが勢いよく、イッセーと姐さんに抱き着いた。

 

「ぐあぁああああ!? 全身が痛い!!」

 

「そこはやせ我慢しなさ……あ、やっぱ無理」

 

 そして限界を超えた二人はそのまま痙攣しながら倒れた。

 

 って言ってる場合じゃねえ!!

 

 姐さん、イッセー、大丈夫か!!

 

「あ、あぅ……。イッセーさん、リセスさん、ちょっと待っていてください……」

 

 アーシアがすぐに治そうとするけど、肝心のアーシアがボロボロなんだけど!?

 

 何があった。いったい何があった!!

 

「もうペト! いきなり走り出さないでよ!!」

 

 と、そこにイリナもまた駆けつける。

 

 その隣では、一応の拘束がされたプリスがついてきていた。

 

「ニエ君、リセスちゃん……ってリセスちゃん!?」

 

 と、目の前で痙攣している姐さんを見つけて、プリスが慌てて駆け寄った。

 

「ぷ、プリス……。ごめん、鎮痛剤持ってたら頂戴? ちょっと、限界超えちゃったみたい」

 

「持ってないよそんなの!? っていうかあれだけボロボロにされたのに、なんで態々一人でかっ飛んでいくの!?」

 

 苦笑する姐さんにプリスはあわあわするばかり。

 

 っていうか鎮痛剤なら姐さんは持ってそうなんだけど。……ああ、もう次元の倉を使う余裕もないのか。

 

 アーシア? できれば早く回復してくれないか? いや、広範囲フィールド広範囲フィールド。それで回復すりゃ全員まとめてできるだろ?

 

 っていうか俺も頼みたい。もう全身が、限界。

 

「……本当に、馬鹿らしくなってくる」

 

 それを見て、ニエは心底からため息をついた。

 

 だけどそこに怒りはなく、なんていうか呆れがあった。

 

「ニエ・シャガイヒ? あなた、これからどうするの?」

 

「投降するよ。もう、何ていうか本気で冷めたっていうかなんて言うか」

 

 お嬢に両手をだして魔力の拘束を受けながら、ニエは苦笑を浮かべる。

 

 そこには、今まであったような敵意がない。本心から、ニエは戦闘意欲を見せていなかった。

 

 そして、姐さんにあきれ半分の視線を向ける。

 

「……心底ビッチなのに気づかなかった僕にも問題があったよ。僕が見ていたリセスやプリスは、幻想だったと反省してる」

 

「待ってニエ君、リセスちゃんと一緒にされるのはちょっと……」

 

 さらりと姐さんと同類扱いを否定するプリスに、姐さんは衝撃を受けたみたいだ。

 

 完璧にショックを受けたやつ特有の表情だ。いや、マジでショックっぽい。

 

「プリス!? あなたも大概あんあん喘いでたでしょう!?」

 

 そこですか。姐さん、プリスを同類(ビッチ)と認識してたのか。

 

 その言葉に、プリスは顔を真っ赤にするとぶんぶんと首を振る。

 

 心底心外だったらしい。怒りの表情まで浮かんでる。

 

「違うもん! この七年間、エ〇チは指で数えるほどしかしてないもん!!」

 

「どうだか。ゼファードルはそういうの好きそうだけど?」

 

 確かに。

 

 シーグヴァイラさんに対して、処女を奪ってやるとかなんとか言ってやがったらしいな、あいつ。

 

 そんな奴が、こんなエロいスタイルの美少女(二十代)を見逃すとは思えねえんだが。俺がゼファードルなら真っ先に目をつける。

 

 あの性格なら、絶対眷属の女には手を付けるだろうに。

 

 その視線はかなり多かったのか、プリスは全力でブンブン頭を振りながら涙目になった。

 

「ホントだもん! ゼファードル様は「いや、オッサンのお手付きは微妙」的な理由であまり迫ってこなかったもん!!」

 

 それは自分のフォローになると思ってんのか

 

 むしろ悲しくなってくるからやめろ。ゼファードルの野郎、本当に屑だな。

 

 姐さんも同意だったのか、心底怒りの表情を浮かべると、ここにいないゼファードルに侮蔑の表情を浮かべる。

 

「何て愚かなの。こなれた技術で磨かれたその肉壺は、間違いなく至高の一品でしょうに……っ」

 

 あれ? 突っ込み方はそこでいいのか?

 

 俺たちが今度は姐さんに半目を向けていると、ニエは乾いた笑いを浮かべて、空を見上げた。

 

「なんか、本当に馬鹿らしくなってきた」

 

「……うん、ちょっと私も冷めた」

 

 プリスまで同意の表情だよ。微妙に冷めた視線で姐さんを見てきたよ。

 

 その視線に心底ショックを受けたのか、姐さんは激痛とは別の意味で崩れ落ちた。

 

「……ほんとにショックだわ。ひどい」

 

「お姉さましっかり! ペトは、そんなビッチなお姉さまを敬愛してるっす!!」

 

「いや、お前はビッチなんだからそりゃ気にならねえだろ」

 

 フォローになってねえフォローを入れるペトに、俺は思わずぼやいた。

 

 俺も大概経験豊富なんだけどな。2人に教えられてるようなもんだから大幅に負ける。いや、悔しくないどころか負けてていいけど。

 

 そんな俺に視線に気づいて、二人同時にジト目を向けてきやがる。それは俺の視線だ、お二人さん。

 

「……ははっ。なんか笑いたくなってきた」

 

「む」

 

 なんか笑いだすニエに、姐さんがムッとする。

 

 そして、少ししてからクスリと笑った。

 

「ニエのそんな顔、久しぶりに見ましたわよ」

 

「……ここでその口調に戻るのかい?」

 

 微妙に引いているニエに笑いながら、姐さんは首を振った。

 

「いいえ。もうあの頃の強さを求めて弱くなってた私とはさよならよ」

 

 そして、姐さんは、一方別の場所で会話しているイッセーたちを見る。

 

 なんかイリナが感涙してるんだが、何があった?

 

 そんな光景を大切なものにして、姐さんは微笑んだ。

 

 そう、まるで歌姫の笑顔だ。魅了されるぜ。

 

「此処にいるのは、私を大切を想ってくれてる人の自慢でい続ける、英雄よ」

 

「そうかい」

 

 そう言うと、ニエは歩いていく。

 

「どこに行くんだ?」

 

「蝙蝠を厚遇するのもあれだろう? この戦いが終わるまで、素直に捕虜になっておくよ」

 

 俺の質問にサラリと答えながら、ニエは振り向いた。

 

 そこには、憑き物が落ちた者特有の、晴れやかな表情が浮かんでいた。

 

「またね、リセス」

 

「……ええ、またね、ニエ」

 

 それに微笑を浮かべながら、姐さんは手を振った。

 

 そしてニエが天使達に連行されるのを見届けてから、姐さんはため息をついた。

 

「半分ぐらい、愛想つかされたわね」

 

「うん。完全にビッチだもん」

 

 そう言いながら、プリスもまた立ち上がる。

 

 こっちも憑き物が落ちた表情を浮かべてから、そして天使達に両手を出す。

 

 まあ、二人は完全にヴィクターの一員として大暴れしてたからな。拘束するしかねえか。

 

「じゃあね、リセスちゃん。……またね」

 

「ええ、またね」

 

 こっちも同じく挨拶を交わして、プリスもまた連行されていった。

 

 まあ、ヴィクターの一員だから確実に捕虜になるんだろうが、それはそれでいいだろう。

 

 だって、姐さん達はこう言ったんだ。

 

 またねって。

 

 ああ、また会えるだろ、きっと。

 

「お姉様、お姉様」

 

 と、俺がほっこりしてると、ペトが頬を膨らませながら姐さんにすり寄った。

 

「あら、どうしたのかしら? 妬いてるの?」

 

「もちろんっす! お姉様、まさか幼馴染三人で……」

 

「それは無理よ」

 

 俺もちょっと想像したその関係を、姐さんはあり得ないと否定した。

 

 そして、苦笑を浮かべるとペトを抱き寄せる。

 

「だって、私にはペトとヒロイがいるもの。三人で強者(アイドル)を目指していた頃より、2人の自慢(英雄)でいることが大事になったんだもの」

 

 そう言うと、姐さんは俺迄引き寄せた。

 

 そして俺達を胸元に抱き寄せると、ぎゅっと抱きしめる。

 

 ……そっか。

 

 姐さんは、もう過去を乗り越えたのか。

 

 ちょっとは苦痛に感じるだろう。時々思い出しては、悔やむだろう。

 

 だけど、それ以上に前を進んでくれる。時々振り返りながら、隣に並ぼうとする俺や付いてくるペトの前を行く。それだけはやめないでくれるだろう。

 

 それが、俺達の輝きにして自慢。ヒロイ・カッシウスとペト・レスィーヴの英雄。リセス・イドアルなんだからな。

 

「大好きよ、二人とも」

 

 そこに映る姐さんの笑みは、心の底から曇りなかった。

 

 ああ、俺達も大好きだぜ、姐さん。

 




この後、ヒロイはぶっ倒れて緊急搬送です。アジ・ダハーカを相手に無茶をしすぎました(笑)


で、次からはデュランダル編です。

本格的に続編の構想ができてきた関係で、原作の時より荒れた展開になります。ご了承ください。
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