ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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そう言うわけで、今回は大尽総理が一枚かんで動きます。


第六章 65

 

 ことの発端は総理大臣が仕事で枢機卿と会談した時のことだ。

 

 司祭枢機卿、すなわち現法王閣下のすぐ下に位置する教会の超お偉いさんと話したとき、沢入はすぐに気づいたという。

 

 ああ、この子我慢の限界だと。

 

「テオドロ・ログレンティってガキが出てきたときにゃぁちょっとたまげたが、なんでも奇跡の子らしいからな。そういうこともあるってとりあえずは納得した」

 

 奇跡の子。それは、俺たち教会の悪魔祓いなら当然知ってるようなこった。

 

 つまりは、天使と人間のハーフ。

 

 これが意外と難しい。

 

 ガキ作るのは簡単だ。天使と人間でエロいことして、妊娠すりゃそれで決まる。が、それをするのが大変だ。

 

 天使は劣情を感じたらすぐに堕天する。最近になってイリナ用に悪魔とエロいことするための技術が完成したが、それだってつい最近の話。今までは人間相手でも愛情オンリーノットエロスでいかねえと、すぐに堕天使になっちまうというハードモードだ。

 

 イッセーなら絶対無理だな。俺でも絶対無理だ。姐さんやペトとか、もはや奇跡のバーゲンセールでも起きなきゃ不可能だろ。

 

 で、そんな奇跡をなしとげた人間と天使なら歴史に名を残しかねえ。そんな奇跡だ。

 

 そして、そんな奇跡を起こしたテオドロ猊下のご両親は、悪魔に殺された。

 

 ……猊下は司教枢機卿なだけあり、総理から見ても聡明な子供だと思われたそうだ。

 

 だが、同時にまだ子供だとも思われた。

 

「いやだけど我慢してますってのが見え見えだったぜ。ありゃ、煽るのが得意な奴に突っつかれれば確実に爆発するって思ったね」

 

 総理の言葉に、俺たちはリゼヴィムを思い浮かべる。

 

 確かに、奴なら確実に煽って火事を起せる案件だろうな。

 

「今は、我慢しないといけないと思うんですけどねぇ」

 

「そりゃそれが一番だが、みんながみんなそんな立派なことはできねえよ」

 

 デュリオの漏らした言葉に、総理はピシャリと告げる。

 

「ご立派な連中にゃぁ逆に難しいんだろうが。我慢ってのは結構大変なんだぜ? みんながみんなできるなら、立派でもなんでもねえから褒められやしねえことだしよ」

 

 確かになぁ。総理の言う通りだ。

 

 褒められることってのは、それが当たり前じゃないからこそだよな。すごいことしてるから賞賛されるもんだよな。

 

 そりゃ、それができるのが当然って風潮はダメだな。誰かがフォロー入れてやらねえと。

 

「それもそうね。確かに必要なことだったわ」

 

 と、姐さんは納得したのかうんうんとうなづく。

 

「人間、誰かがサポートしてあげなきゃいけないときは結構あるもの。それがあるだけでもだいぶ変わるわ」

 

「そう言うこった。我慢するだけじゃなくてすこしは発散しねえと、普通の奴はつぶれたり暴走するもんだしよ」

 

 総理も満足げにそういう。

 

 お嬢たちは微妙に困り顔だったが、然し確かに必要だと納得したらしい。全員不満は見せていない。

 

 ま、これもヴィクターに立ち向かうための必要な労働ってこった。やりたいことがあるなら、それをするために必要なことはしねえとな。

 

「まあいいわ。クリフォトがつついてきそうな案件を前もって解消するのもD×Dの仕事でしょう」

 

 お嬢がそうまとめて、俺たちは参加が決定した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 で、俺たちはフィールドの下見を行っていた。

 

 今回は市街戦を考慮して、都市部の構造を模倣して作られたフィールドだ。

 

 しかし重要拠点というわけでもないから、かなり大暴れしても問題ないとか。

 

 そして今回の件、費用は裏の目的もあり三大勢力がふんだんに使用している。

 

「この戦線。大火力で薙ぎ払うことができる私たちの方が有利……ではないわね」

 

 と、お嬢はそう判断した。

 

 一見すると火力で優れているこっちが、辺り一帯を丸ごと吹っ飛ばして圧殺できるんだがそうもいかねえ。

 

「そうですね。今回の演習は悪魔祓いのガス抜きですし、悪魔祓いの方々が鬱憤を晴らせなければ意味がありませんわ」

 

「……正面戦闘必須ですね」

 

 朱乃さんと小猫ちゃんもそれは理解してるようだ。

 

 実際そうなんだよな。今回の演習は、たまりにたまった悪魔祓いたちのガスを抜いて爆発を阻止するのが目的なんだ。鬱憤がたまる形で終わらせたら意味がない。

 

 できる限り相手を暴れさせた上で、決着をつける必要がある。そういう観点からすると、イッセーやお嬢の大火力でフィールドごと吹っ飛ばすだなんて手は使えねえはずだ。

 

 となると、今回はむしろシトリー眷属の方がタクティクスがうまい分動けるかね。

 

 ま、悪魔祓いなら悪魔にこそ鬱憤がたまってるだろ。今回俺と姐さんはサポートが中心か?

 

 いや、俺と姐さんがコカビエルをボコったことも会談設立のポイントだからな。やっぱ俺たちも頑張らねえと、鬱憤がたまったままになるかねぇ。

 

「そう言えば、演習でやり合う相手で有名どころはどれぐらいいるのかねぇ」

 

 俺はふと思い至って、ぽつりとつぶやいた。

 

 教会の悪魔祓いの中でも優秀なのは、結構な数が転生天使の方に行ってるからな。そこら辺考えると、悪魔祓いそのものは質が低下してるか?

 

 いやいや。それでも結構な連中が残ってる可能性もあるし、さすがに楽観視はできねえだろうが……。

 

「そうだね。筆頭格が二人ほどいるよ」

 

 と、木場が資料をめくりながらため息をついた。

 

 なんだ? そんなに大物が?

 

「……司祭枢機卿であるヴァスコ・ストラーダと、司教枢機卿であるエヴァルド・クリスタリディ猊下だね」

 

 ……マジか。

 

 俺は心底驚いた。

 

 ストラーダ猊下はこういうの参加しねえと思ったんだがな。気に食わないところはあるが、人格そのものが枢機卿にふさわしいのはわかってたんだが。

 

 あの爺さんが、このガス抜き目的の演習に参加かよ。マジで驚いた。

 

「そんなにすごいのか、そのストラーダって人とクリスタリディって人は?」

 

 事情に詳しくないイッセーが首をかしげるが、お前はもうちょっとこっちの業界の知識を入れた方がいいと思う。

 

「すごいも何も、ストラーダ猊下は私の前のデュランダル使いだ。クリスタリディ猊下も合一前のエクスカリバーを三本も使っていた古強者だぞ」

 

 と、ゼノヴィアに言われてイッセーは目を見開いた。

 

 ああ。あの二人はマジでシャレにならねえからな。

 

 どっちも戦士育成機関じゃ生きる伝説だ。っていうか、冷静に考えてこの二人が転生天使になってねえことの方が驚きってもんだ。

 

「それだけの人物が、転生天使に選ばれてないってのも不思議ね」

 

「ああ、スカウトされたんだけどお断りになられたのよ。「人間のまま死にたい」っておっしゃられてたそうだわ」

 

 姐さんの疑問にイリナがそう答える。

 

 まじか。信徒的には最高クラスの名誉をあえて断るとか、ある意味生粋の信者だな、オイ。

 

 俺みたいな破戒信徒にはとても真似できねえ。断るのは同じだが、俺の場合は速攻で堕天使になるから不名誉極まりねえって理由だしな。

 

 しっかし、あのお二人さんが……ねぇ。

 

「歴代エクスカリバー使い及びデュランダル使いの中でも、最強クラスのあのお二人さんが参加かよ。……剣がないだけマシって感じかねぇ」

 

 俺は心底うっへぇって気分になった。

 

 相手の全力を出し切らせなけりゃならねえって縛りがあるとはいえ、負ける気はなかったぜ、マジで。

 

 だけど、あのお二人さんが参加するってなら話は別だ。

 

 一人一人が最上級悪魔すら滅したほどの化け物。冗談抜きで悪魔祓いがらみで言うなら最強戦力じゃねえか。

 

 やべえ、マジやべぇ。これ敗けるかもしれねえな、オイ。

 

 っていうかあれだ。……これ、死人出るんじゃねえか?

 




 俗物の親玉を自称するだけあり、大尽総理は平均的な人間の限界はリアスたちよりわかっています。

 現場で一生懸命頑張っていたのにいきなり掌返されたら、すぐになじむのも大変でしょう。本来ならもっとゆっくり動くべきなんでしょうが、上がリベラルすぎてすぐに意見が一致したうえ、原作でも禍の団に対抗することもあって早く動かざるを得ないところがありましたからね。ガス抜きを悪魔祓いに対しても行っていたらまだましだったんでしょうが……。
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