ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
コールブランドを片手で持ちながら、アーサーは一歩一歩前に出る。
「ようやく相まみえることができました。かのローランを超えたとすら称される、ヴァチカンのイーヴィルキラー」
そう言いながら、アーサーは歩みを全く止めない。
そして肉薄するまで近づいたその時―
「では始めましょうか」
一瞬で姿が消えて、アーサーは猊下に斬りかかった。
「おお。これほどの戦士と相まみえることができるとは、戦士として素直に僥倖というほかない」
そしてその攻撃を猊下は片手でいなし……いなしたぁ!?
何て爺さんだよ!! 俺たち眼で追うのも苦労してるレベルなんだけど!?
っていうか、アーサーの奴腕を上げてないか!? 以前ヒルトと戦った時よりすげえ腕が上がってる気がするんだけど!?
俺たちが目を見開いていると、アーサーと猊下は飛び上がって斬撃を繰り返す。
そして目にもとまらぬ速度の斬撃を繰り広げながら、そのまま着地したかと思うと走り出しながら斬り結んだ。
アーサーは時おりあらぬ方向に剣を突き出す。そしてそのまま切っ先が消えて、猊下の真後ろから切っ先が付きだしてくる。
たしかコールブランドは次元を切り裂く力があったっけ。俺たちが何度か関わったときも、それを使って移動したりしてたな。それの応用か。
そういやヒルトと戦ってた時に使ってたとか言ってたような気もする。得意技か何かなのか?
そしてそんな攻撃すら、猊下はまるで見えているかのようにかわしてのける。
あの爺さん本当に何者だよ!! 人間なのか、マジで!!
俺たちが唖然とするような戦いだったけど、しかしアーサーはいったん距離を置くと残念そうにしながら剣を鞘にしまった。
「……ここまでにしておきましょう。失礼ですが、これ以上は悲しくて耐えられない」
……え? なにが?
俺はさっぱりわからなかったけど、猊下は何かわかったのか、すまなそうにしていた。
「すまないな。若き戦士よ」
「いえ。……できることなら、私は30年早く生まれたかったものです」
な、なんかわからないけど何かあるんだろう。剣士同士でしかわからない何かのこだわりってのがあるのかもしれないな。
で、俺たちどうしよう?
「さて。まだまだ戦いを譲ってやるわけにはゆかないのでね。次はだれが挑むかね?」
……どうしたもんか。
リアスの消滅の魔星でも倒せなかった相手だ。こっちも相応の手段が必要なんだけど―
そう思ったその時、俺たちは寒気を感じた。
いや、厳密には寒気じゃない。これは、聖なるオーラを肌で感じて悪魔の本能が恐怖を感じているだけだ。
このオーラ、まさか……っ
「ちょっと待ったぁああああああ!!!」
その声と共に、ヒロイが全力で飛んでくると、俺たちと猊下の間に飛び降りる。
そして、にやりと笑うと聖槍の切っ先を突き付けた。
「今度は俺が相手だ、猊下!! ……俺は、あんたと全力で戦いたかった!!」
ヒロイぃいいいい!?
演習が始まってからいきなり連れ去られたと思ったけど、いきなり何してんのお前!!
っていうか、連れさった人たちは倒したんだろうな、オイ!!
「あ、イッセー! 悪いんだけどちょっと後ろの相手してくれねえか? いい加減しつこいんで逃げてきちまった」
しかも逃げてきたのかよ!?
っていうか、あれ? 悪魔祓いたちの大半は、あのシャボン玉で戦意喪失したんじゃないのか? なんでまだ戦えてんだよ。
俺が疑問に思っていると、ヒロイが来た方向から勢いよく炎の翼を広げた女の子が、女性を抱えて飛んできた。
「逃げるな!! っていうか猊下以外全滅!?」
「鈴蘭ちゃん、死んでないからねー?」
なんか微妙に漫才っぽいことをしながら追いかけてきたお姉さん二人組は、すぐさま飛び降りると戦闘態勢をとる。
「猊下、加勢します!!」
「っていうか取り逃がしは責任取りますから―」
「あら、そうはいかないわね」
と、そこでリセスさんが立ちふさがった。
そういえばリセスさん。今までずっと悪魔祓いの人たちを相手してきたっけ。
てっきり猊下に挑むかと思ったけど、ここはヒロイのケツ持ちか何かかな? 仲いいし。
「ヒロイ。……思う存分暴れなさい」
「姐さん、ありがとうな」
そしてヒロイは、聖槍の切っ先を猊下に突き付ける。
「さあ、勝負の時です猊下。……もう一回言おう。俺はあんたと勝負がしたかった!!」
そう言い放つなり、ヒロイは突貫した。
Side Out
ようやく。ようやくだ。ようやくだ。
ようやく、俺は戦いたくてたまらない相手と戦うことができる。
ガキっぽいって自分でもわかってる。
それでも、それでも、それでもな。
「俺は、あんたを一度でいいからぶっとばしたかった!!」
ああ、人々が英雄というから英雄であろうとするあんたにはわかるまい。
あの光に焦がれた者の気持ちが。そうなるためにどうすればいいか常に考える者の気持ちが。そうでないならいっそ死にたくなるものの気持ちが。
なによりも―
「
ああ、それに関してだけははっきり言える。
がむしゃらにただひた走っていたら、俺はここまでたどり着けなかった。
がむしゃらにぶつかっていくような奴にはぜったに使いこなせない。それがあるからこそ、俺はシシーリアを照らせて
この事実だけは認めさせる。俺は、紫に輝く双腕の電磁王を使ってこの爺さんに一撃叩き込む。
反動覚悟で俺は感覚速度を一割上昇。槍を短く持ってできる限り近距離での戦闘を叩き込む。
デュランダルは大型の聖剣だ。ぱっと見バスターソードであり、刃渡りは剣の中では長い。
故に威力ももちろんでかいが、取り回しは悪い方なはず。
なら、俺は短いリーチで懐に強引に潜り込むだけだ。
聖槍は短く持ち、全身に魔剣の刃を纏う。
一気にクロスレンジに強引に突入して、俺は超接近戦を仕掛けた。
「勝たせてもらうぜ、猊下!!」
「なるほど。しかし甘い」
それを猊下は体裁きで見事にかわし続ける。
さらにデュランダルを片手持ちにして防御に回し、空いた手で殴り掛かった。
そういや聖拳があったな。確かにそっちも喰らうとまずい。
だが―
「……悪いな、こっちも一割上昇にはもう慣れた!!」
俺はペースを上げる。
上昇した感覚に慣れている以上、動きをよりスムーズにできるのは当然。
さらにホンダブレードを大量に展開して余波によるダメージを吸収する。
この程度で倒れるわけがねえし、この程度で倒れてやるわけにもいかねえな。
ああ、そうだ。俺はこの時を待っていた。
英雄であろうとして居続ける英雄に、英雄になろうとしてなった英雄が挑む。その構図がほしかった。
誰が何と言おうと、俺はこの戦いで一矢報いる。できれば勝つ。
そうでなければ、俺はあの時の不快感を張らせないだろう。
なんていうかな? 俺はあの時、マジでイラってきたんだよ。
なにががむしゃらに生きろだ。理想を叶えるためには叶え方を考えるべきだろうが。
ああ、天然物はこれだから困る。物事には叶え方ってものがあって、その手順を知らなきゃならない。乗り越え方がわからなけりゃ、壁を乗り越えるのに時間がかかるのが当たり前で、普通に乗り越えられないことだっていくつもある。
それを知りたいのになんだその答えは。まるで「なれる奴にはなれるがなれない奴には一生なれない」とか言われたようなもんじゃねえか。
いや、確かにそうなんだろう。英雄ってのはなろうと思ってなれるほど簡単なものじゃない。いや、英雄に限らずそういうものだ。
だからってがむしゃら? ふざけんな。
そんな生き方でしかなれないとか、夢を目指すものに諦めを促すにしてもいい加減にもほどがある。
「アンタはあの時誠実に対応したつもりなのかもしれねえが……っ」
ああ、ガキ臭いのはわかってる。
それでも。
それでもだ。
俺は、あの時の怒りを覚えている。
だから、この半ば悪魔祓いたちの都合だけでやらされた演習で、俺も個人的な都合をかなえさせてもらう。
「俺にとってはいい加減な対応にもほどがあるんだよ!!」
ここで、俺は、あんたに一撃叩き込む!!
次の話で演習は終了。そして、少しずつ第二部への伏線というか導入準備も始まります。
それと第六章はデュランダル編までで、ベリアル偏とルシファー編を最終章にするつもりでしたが、ちょっと変えます。
リゼヴィムの悪意がフルスロットルで動くので、ベリアル偏も六章にして、最終章はルシファー編だけにします。
ですが話数の心配はいりません。
第一部最終章は派手に行きます。英雄派とイグドラフォースの最期の見せ場でもありますし、リムヴァンも第一部で終わらせるつもりなので大激戦です。バトルにバトルにバトルが連続で起きますので、手に汗握る展開にしてみたいですね。
最終章の名前はまだ考えてませんが、それなりに派手な戦いになりますので、相応の題名を考えたいと思います。