ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
ファミリアはヴィクターの勢力の中では結構常識人度が高いです。
放たれる銃撃に魔法に斬撃に打撃。それらすべてが一流クラス。
しかも動きのタイミングが全部違う。そのせいでこっちは回避が厄介だ。
なんていうか、一人の人間っていうのは大抵の場合無限の手数を持てるわけじゃない。どうしても限界がある。
そんでもって、もし無限の手数を持っていたとしても、だからってここまでタイミングが違うなんてことはおかしいだろ。
なんつーか……筆跡? その使い手特有のくせってのがある。固有振動数とか声紋とか指紋とか、個人のくせってのがどうしても完全に消せてたりしない。隠そうとすればどうしても無理が出る。よしんばできたとしても、そうするとどうしても本領を発揮できない。
そのはずなのに、目の前のアンナとかいう女は、それをしてくる。
同じ銃撃や斬撃のはずなのに、どうしても何か別ものになっている。
そのせいで、俺も猊下もなかなか攻め切れない。っていうか、一人相手に苦戦してる。
そしてその間に、ファミリアの連中は浮足立った残った悪魔祓いを攻撃してくる。
悪魔祓いの連中も反撃してるが、それでもこっちのタイミングが悪かったな。
いろいろあってパニック状態になってる連中じゃぁ、どうしても勢いで負ける。
しかもあれだ。ファミリアの連中、ここで決着をつける気満々だ。決死の覚悟で死戦に挑んでやがる。
そのせいで、どうしても追い込まれてやがる。
「くそ、異端者の末裔が……っ!」
「ほざけ、狂信者!!」
「此処で終わらせる!!」
「舐めるな、異端の徒が!!」
お互いにマジギレして攻撃をかわし合いながら、遠慮なく殺し合いが勃発する。
そして、いろいろあって出し切った感がある悪魔祓いたちの方が追い込まれてるってのがあれだ。マジヤバイ。
「これが、あなた達の先達が行ってきた罪の清算……です!!」
飛び回蹴りで猊下を弾き飛ばしながら、アンナは素早く魔法の剣で俺に切りかかる。
ヤバイ。ちょっといろいろ全力だしすぎたせいで追い込まれてるぞ、俺!!
「なるほど。確かに信徒もまた数々の血を流してきた。それを恨むのは必定だ」
デュランダル・レプリカでその攻撃をいなしながら、猊下は唸る。
確かになぁ。聖書の教えはいろいろやらかしてるからなぁ。コンキスタドールとかいろいろ。
その被害者の恨みは当然受け止めてしかるべきってか。
つってもやらかしたのは数百年以上前の連中だろ。俺らの代で大もめ事ってのは勘弁してほしいんだけどよ。
「これ以上、憎しみを持ち込ませない。……信徒には罪の清算をしてもらう……です!!」
そう言いながら、アンナは猛攻を繰り広げる。
チッ。全力でぶつかりすぎたか。俺も猊下もいい加減スタミナが限界に近いな。これ以上の長期戦は、こっちがばてるぞ。
つっても、ここで猊下にやられてもらうのもあれだな。
ぶっちゃけ猊下に死なれると、それこそ信徒が暴走しかねねえ。そうなったら今度こそやばいことになるってんだ。下手すりゃ悪魔祓いに触発されて他の信徒迄暴れだすぞ。
そうなっちまったら泥沼の殺し合いだ。下手すりゃ核兵器迄出張ってくる大騒ぎになっちまう。
そうなったら、冗談抜きでどっかの拳みてえな世紀末世界が誕生しちまうぞ、ホント。
……それは、まずいな。
「やらせはしねえよ!!」
俺は生体電流を活発化させながら、反撃を叩き込む。
それを回避しながらアンナは素早く銃撃と魔法で反撃するが、その動きに違和感を覚えた。
なんだ? 動きが急にぎこちなくなってねえか?
「アンナもうやめろ!! これ以上はまずい!!」
「そうもいかない……ですっ」
仲間の声すら遮って、アンナは立ち上がると攻撃を再開する。
だがなんだ? この動き……明らかにおかしい。
俺が無理をしすぎたときのような違和感だ。いや、それ以上に何かある。
なんだ? いったい何が……?
「……それ以上はやめよ。続ければ死ぬぞ?」
その時、猊下が声をかけた。
その声は本気にいたわりが込められている。心から、痛ましげだった。
おいおい猊下、一体何に気づいたってんだ?
「猊下、どういうこった?」
「答えは簡単だ、この者は意図的に亡霊を宿しているのだ」
その言葉に、俺は寒気を覚えた。
亡霊を宿す? そんなこと、体に悪影響が及ぶに決まってるぞ。
「しかも亡霊の記憶と同調して、その技量や技術を再現している。明らかに邪法の類だろう」
幽霊や悪魔に取りつかれてうんぬんなんて、珍しくもない酷い話だ。それ位ならファミリアの連中だってわかるだろ。
そこまでして迄、数百年も前の恨みを晴らしたいってのか、こいつらは!!
「……どうかしてるぜ、あんたら」
「ええ。そう……です」
真正面から俺のボヤキに応えて、アンナは即座に切りかかる。
そして俺の反応速度をわずかに超えた攻撃を放ちながら、アンナは攻撃を再開する。
その目には、間違いなく決死の覚悟があった。
「それだけのことを、教会は私たちの先祖にしてきた……です!!」
その言葉に、悪魔祓いたちが動揺する。
そしてその隙を逃さず、ファミリアの連中は攻撃の手を強めた。
こいつら、本気で死ぬ覚悟で―
「なに呆けてやがる、てめえら!!」
その声と共に、雷撃がファミリアの攻撃をかき消した。
そして同時に銃撃がファミリアの連中を迎撃する。
この攻撃は、自衛隊か!
しかも嵐砕丸ってことは大尽総理か。いたのかよ大尽総理!!
畜生が! いいところで出てくれるじゃねえか、総理大臣!
そして龍のプロテクターに身を包んだ総理が、拳でファミリアの攻撃や邪龍を殴り飛ばしながら、吠えた!
「手前ら!! さっきから追い込まれ続けやがって、情けねえぞ!!」
自衛隊の先陣を切って暴れまわりながら、沢入は悪魔祓いたちに大声を飛ばす。
「散々不満をぶつける機会で暴れておきながら、自分たちがぶつけられて追い込まれたらへこみやがって。……そんな様で、信徒達を守れると本気で思ってんのか!?」
「信心のない極東の俗物に何が―」
イラっと来たのか悪魔祓いの一人が反論しようとして―
「―違うってなら立ちやがれ!!」
―それをさえぎって、沢入が一喝した。
その声に、ファミリアの連中も含めて人間は一瞬立ち止まる。
で、邪龍たちは一切気にしねえ。
量産型のグレンデルがそんな総理に向かって拳を振り下ろし―
「ちょっと黙ってろ!!」
見ずに裏拳で弾き飛ばす総理。
……この国、たしかシビリアンコントロールだよな。いや、たしか総理大臣が自衛隊のトップになることもあるらしいけど。いいのか平和主義国家、日本。
俺があきれるやら感心するやらしてる中、沢入は吹っ飛ばされる邪龍をガン無視して、そのまま悪魔祓いをにらみつける。
「手前ら一応、主義方針変わってんだろ。やらかした連中の子孫に詫び入れるにしても、こんなタイミングで殴られ続けて、信徒達に胸張れるのか、ああ!?」
その言葉に、何よりファミリアたちが動きを止めた。
それに気づいてるのかいねえのか、総理大臣はそのまま悪魔祓いたちを見渡した。
「お前らなんだ? 昔通りの信徒以外を迫害する野蛮人か? 信徒の敵を殺すだけの狩人か? それとも……」
そして、息を吸って声を張り上げる。
「信徒を守る守護者たちか、好きなものを自分で選びやがれ!!」
その言葉はこの空間中に響き渡り―
「……そんなもの、決まっている」
一人の悪魔祓いが、立ち上がった。
その目には、憎悪もなければ敵意もない。ただあるのは、強い決意だ。
そして、その目はまっすぐにファミリアにむけられた。
「我らは
「そうだ。こんなところで殺されていいわけがない」
「こんなところで死んだら、信徒達に申し訳が立たない……!」
自衛隊の援護を受けながら、悪魔祓いの連中は士気を上げなおしてファミリアを迎撃する。
そして、ファミリアはそれを見てどこか喜んでいた。
「そうだ! それでいい!!」
「自らが正義と思ったまま死ぬがいい!! その無念こそが我らの恨みを晴らすのだから!!」
楽し気に、爽快だと言いたげに。全力を出してファミリアの連中は攻撃を再開する。
そして、悪魔祓いたちも全力で迎撃する。
かつて、聖書の教えは確かに罪を犯した。
魔女狩りによって数多くの罪のない人々を殺した。異端者を迫害し続けてきた。
だけど、時代と共にそれは変わっていった。
信仰の自由を受け入れ、そして天界に引っ張られる形だけど和平を少しは受け入れようとした。不満も少しは耐えていた。
そして、その残っていた不満もこの演習で晴らした連中が残ってる。
幸か不幸か、不満を晴らさなかった連中は離反していった。ここに残っているのは、あのシャボン玉で毒気を抜かれた連中だけだ。
なら、俺たちがやるべきことは―
「闘え! 死ぬな! そして殺すな!!」
「そうだ! ここで先代たちの被害者を殺せば、我らは先代の過ちを繰り返すだけだ!!」
「いずれ謝罪するためにも、ここで殺すわけにはいかない!!」
グレモリー眷属やシトリー眷属がなそうとしたことを、悪魔祓いたちもまた倣って行う。
自分達の先達が失態を犯したことは事実だ。それを恨みに思う人たちがいるのも事実だ。
だが、その先達の失態を参考に、二の轍を踏まないことはできる。
……いいじゃねえか、こういうの。
そういうことなら、俺も少しは矜持を曲げてみようかねぇ。信徒たちのためになるなら、少しぐらいは良いだろうよ。
さあ、成長した信徒たちに力かせよ、聖書の神さんよ。
「槍よ、神を射貫く真なる聖槍よ!」
聖書の神さん。あんたにも責任の一つぐらいあるだろうよ。
魔女狩りの時代に存命だったか否かは知らねえが、そうだとするなら管理不行き届きだぜ。
つーかぽんぽこぽんぽこ他の神話体系を荒らしてるのは事実なんだ。その責任ぐらいはとってくれや。
「我がうちに眠る覇王の理想を吸い上げ、祝福と滅びの間を抉れ」
そして何より、あんたの尖兵の悪魔祓いたちが男見せたんだ。少しぐらいはいいとこ見せてくれや。
それ位の加護は出しな、神様だろ?
「汝よ、遺志を語りて、輝きとなせ―!!」
俺は祝詞を唱え切り、そしてそれにこたえて聖槍は強く輝く。
そして、その輝きは人型を取った。
悪魔祓いたちをかばうように、そしてファミリアの者たちと向き合って。
……どう出る? もしかして、必殺「神の裁き」とかでるのか?
思わず固唾をのんで見守っていると、その人型の光は一つの行動をとった。
簡単に言うと、頭を下げた。
そして消えていった。
終わり? これで終わり?
えっと、その、判断はいかに。
「……映像はとったか?」
「取ったぞ。これ、最初から最後まで取れてる」
ファミリアの連中がそう相談し始めている。
どうも、あちら側もどう対応したらいいか困っているようだ。
ふむふむ。さてどうしたもんか。
一応これ、聖書の神が直々に詫びを入れた形になるのか?
ファミリアの連中も困り顔だが、やがて意を決してアンナが一歩前に出る。
そして、ドヤ顔を向けた。これ以上ないどや顔だった。
「お詫びした……ですね。神が」
『『『『『『『『『『ぐぅ!?』』』』』』』』』』
悲鳴が大量に上がった。
こりゃキツイ。
「はっはっは。悪いことをしたのなら謝る。主は当然のことを率先してなされたのだ、思うところはあれど誇りに思うべきだろう」
猊下? いいのアンタそれで?
さて、これ以下に。
「撤退……です。優先順位は下がったの……です。それより映像編集とネット投稿が先なの……です」
「鬼かアンタ」
俺は思わずあんなにツッコミを入れちまったよ。
いやいや、そこはもうちょっと手心くわえろよ。マジで神の裁きが起きても知らねえぞ、俺は。
つってもいいのか? この戦い、一応ヴィクターの作戦の一環なんだろ?
俺がそんな疑問を浮かべる中、アンナは苦笑を浮かべる。
「元々無理を言って参加した……です。それに、本命をおざなりにするわけにもいかない……です」
本命……ねぇ?
聖書の神の遺志が腐敗したとか言ってたやつらのことか。
どうもヴィクターとつるんでる節があったが、本当に技術提供だけだってことか? ってことは新しい第三勢力の誕生ってことかよ。うっわぁ、勘弁してくれ。
乱戦とか最悪だなオイ。ただでさえ他の神話体系もいまだ鎖国同然の連中が多いってのに。いつまでもジジババの恨みつらみに巻き込まれたくはねえんだがよ。
だがまあ、これで俺としちゃ当分は大丈夫ってことかねぇ。
とにかく、他の連中のカバーに入るべき……か……!?
俺はそう思った瞬間、全身の力が抜けて膝をつく。
なんだ!? さっきの戦闘で大ダメージは入ってねえはずだぞ!?
くそ、今度は一体何なんだよ!?
ファミリア、聖書の神から直に謝罪されてちょっとすっきり。そして悪魔祓いは目の前で聖書の神が頭下げる光景を目にしていろいろとショック。
ファミリアに関しては、現在撤退作業中の第二部登場予定の敵と因縁をつけやすいので、そのまま続投ということになりました。あと、もう一つ続投する勢力があったりします。
そしてヒロイがダメージを受けましたが、これは次の話でどういうことは説明されます。
場面は変わってイッセーに戻ります。さあ、原作主人公を襲う驚異は何だ!!