ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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はい、原作における不正説明回にようやく突入します。


此処と次の話は長めになりました。


第六章 82 不正だらけの『王』

 

 転移の光に包まれた俺たちは、そのままとある空間に来ていた。

 

 どうやら魔王城らしい。その一室というか、警戒厳重な場所に出てきちまったな。

 

 っていうか、なんか物々しいな。

 

「何かしら、これ?」

 

「やけに厳重大勢だね。戦争でもするのかという感じだ」

 

「うぅ……緊張が酷くなってきました」

 

 イリナや木場が怪訝な表情を浮かべ、ギャスパーもまた久しぶりにビビってくる。

 

 ああ、なんだ、この状況。

 

「なんだ? 今更アジュカ様がヴィクターにつくとは思えないが」

 

「ということは、ヴィクターが動くような何かがあるということでしょうか?」

 

 ゼノヴィアと朱乃さんも警戒の色を見せる中、俺たちに一歩前に出る人がいた。

 

 汚れながらも清楚さを宿すその少女を見て、俺は緊張感が結構解けた。

 

「シシーリア!」

 

「お久しぶりです。駄馬ではありますが、案内させていただきます」

 

 そして、そのシシーリアの緊張具合に一瞬で再緊張する。

 

 シシーリアも結構緊張状態だ。ちょっと前は俺の顔を見るとすぐに緊張が解けたんだが、今は警戒態勢を残していたままだ。

 

 それをよく知っている姐さんとペトも、さらに警戒の色を濃くする。

 

「どうしたんすか?」

 

「……ヴィクターに喧嘩でも売られたの?」

 

 その言葉に、シシーリアは首を振った。

 

「……詳しいことは、アジュカ様が直接話します。正直ここでも話せません」

 

 おいおい。こんな中枢部でも話せないとかマジかよ。

 

 いったい何があった? まさかヴィクターに襲撃された後とか言うんじゃねえだろうな。

 

 何か不安になりながらシシーリアについていくと、そのまま警戒厳重な一室に連れていかれる。

 

 そして、そこには複数人の転生悪魔を引き連れたアジュカ様がいた。っていうかその転生悪魔、以前リムヴァンとやり合ってたアジュカ様の眷属だよ。

 

「面倒な手順で済まなかった。上役たちを警戒するとどうしてもせざるを得なくてね」

 

 そういうアジュカ様の表情も、かなり鋭い。

 

 そして、そのアジュカ様の後ろには、ベッドが一つあり―

 

「「―レイヴェル!!」」

 

 イッセーと小猫が目を見開く。

 

 ああ、そこに眠っていたのは行方不明になっていたレイヴェルだった。

 

 お、おお!! ホントにいた!!

 

「彼女については問題ない。ディハウザーの無価値で不死を一時無力化されていたが、既に元に戻っている。命に別状はないことは俺が保証しよう」

 

 そのアジュカ様の言葉に、俺たちはほっとする。

 

 ふぃ~。とりあえずこれで一安心―

 

「アジュカ様。その、ライザーの方は?」

 

 あ、お嬢の言う通りだ。

 

 俺はよく知らねえが、そもそもレイヴェルがこんなことになったのは兄貴の眷属枠を埋めるためだったはずだ。で、兄貴も行方不明だったんだった。

 

 ここにいるのはレイヴェルだけだ。兄貴の方はどこ行ったんだ?

 

 俺たちの視線が集まる中、アジュカ様はしかし静かに答える。

 

「彼はすでにフェニックス家に送っている。そちらにも信頼できる護衛をつけておいたから安心していい」

 

「……なぜ別々にしたのか、理由をお聞きしてもよろしいですか?」

 

 ソーナ会長があえて踏み込む気持ちもわかる。

 

 わざわざそんなことをする理由がわからねえ。っていうか、この物々しい厳重警戒態勢にする理由だって、レイヴェルがD×Dのメンバーだということを考えても不自然だ。

 

 っていうか、皇帝に不死を無効化された、だと?

 

 そこ迄分かってるなら、皇帝の場所にも心当たりがあるんじゃねえか? その皇帝もどこに行ったんだよ。

 

 色んな意味で疑問だらけだ。その辺についての説明、してくれるのか?

 

「その件について説明するにあたって、ライザー・フェニックスには詳しく説明するわけにはいかなかった。今回の一件は、つつきどころを間違えれば冥界で二度目の大規模の内乱が発生しかねない危険なものだからな」

 

 ……穏やかじゃねえな、オイ。

 

 何だよいったい。皇帝の行方だけはまだ何も言ってねえのと関係があるのか? しかも当事者のライザーに説明が行かないようなレベルってことだろ?

 

 内乱が勃発するって……ほんとにどういうことだよ、オイ。

 

「……それで、具体的にどういうこと?」

 

 姐さんが先を促し、アジュカ様はポケットから一つのものを取り出した。

 

 赤い、チェスの駒のような物体。

 

 ……悪魔の駒、か?

 

「あれ? こんな悪魔の駒、あったッスか?」

 

「ああ。これは上層部のごく一部だけが知っている駒だ。下級悪魔で知っていたのは、シシーリアぐらいでね」

 

 ペトの質問に答えるアジュカ様の言葉に、シシーリアが頷いてハルバードを手に持った。

 

「ヒロイさん、皆さん。それはここにも取り付けられています。……ここの宝玉の中をよく見てください」

 

 ん? ハルバードの装飾の宝玉の中?

 

 俺がまじまじとのぞき込むと、宝玉と色が同じなんでわかりづらいけど、確かにアジュカ様が持っているのと同じ駒が埋め込まれてるな。

 

 ん? でもシシーリアはすでに騎士の駒で転生してるはず。新たに駒を用意していいのか?

 

 っていうか埋め込んでねえな。いや、ハルバードの埋め込んでるけどシシーリアに埋め込んでねえな。それなんか意味あんのか?

 

 俺たちが首をかしげてるなか、アザゼル先生はふんふんとうなづいた。

 

「なるほどな。そういうことか」

 

「そう言うことです、アザゼル監督」

 

 あの、技術者同士で理解し合ってないでこれについて説明してくれねえ?

 

「これは、『王』の駒だよ」

 

『『『『『『『『『『!?』』』』』』』』』』

 

 アジュカ様の言葉に、俺たちは驚いた。

 

 王の駒? それが、この悪魔の駒の名前なのか?

 

 いや、悪魔の駒に『王』なんてあったのか? 転生悪魔制度は知ってるけど、そんな話聞いたことねえぞ?

 

 第一、そっちについては詳しいだろうお嬢やソーナ先輩だって驚いてるじゃねえか。普通に考えて、お嬢や先輩たち『王』が使用するのが当然だろ?

 

「いや、まさかマジモンを見れるとは思ってなかったぜ」

 

「知ってたんですか、先生!?」

 

 訳知り顔で頷いた先生に、イッセーが驚いて声を上げる。

 

 それに対して、アザゼル先生は静かに首を振った。

 

「噂だけだがな。ま、協定を結んでからあるだろうとは思ってたけどよ」

 

 う、噂はあったのか。

 

 っていうか先生がうすうす気づいていたってことは、たぶん他のお偉いさんでも勘のいいやつは気づいているってことか。それとも、上役がにおわせている?

 

 俺がそんなこと考えているが、お嬢は二度見しながら驚きを隠していなかった。

 

「ま、まってください。『王』の駒は作成技術が確立できず、登録を石碑に済ませることでシステムを動かすことになっていたはずです」

 

 あ、やっぱりお嬢たちはこの駒を使用してねえのか。

 

 ま、知ってたならここ迄驚くわけねえわな。そういう腹芸が得意な御仁じゃねえし、する意味もねえ。

 

 そしてそんなお嬢の言葉に、アジュカ様な頷いた。

 

「ああ、『王』とは本来登録制だ。いや、あえてそうしたんだ。この『王』の駒を表に出さないためにね」

 

 へ?

 

 別にこの駒の存在が知られたからって、問題ねえだろ。

 

 チェスの駒に合わせて作られてるのが悪魔の駒なんだろ? だったら王の駒があろうがなかろうが問題なくね?

 

 それよりシシーリアが王の駒を持っている方が問題ある気がするんだけどよ……。

 

「……転生悪魔が昇格した際、既に内にある駒とこの駒の重複および融合を懸念していてね。シシーリアの持っている魔王の祝福(キングズ・オーダー)は、転生悪魔での安全運用技術の確立及び、緊急時の封印措置などをより確実に行うために開発されたものだ」

 

「私は本来、そのテスターとしてアジュカ様につかえている形なんです。駄馬のくせして黙っていてすみません」

 

 アジュカ様の言葉を引き継ぎながら、シシーリアは勢いよく頭を下げた。

 

 いや、お嬢ですら知らねえ情報を悪魔でもねえ俺たちに言うわけにはいかねえのは当然だから、そこは気にしなくていいぜ?

 

 それに、問題はそこじゃねえ。

 

 なんで、そんなことまでしなくちゃいけねえんだよ。

 

 俺がそんなこと思ってる間に、アジュカ様は王の駒を手の中で遊ばせる。

 

 そして、それに反して口調はかなり真剣だった。

 

「この駒の特性は単純な強化だ。ただし、その強化率は『女王』の駒の比ではない。使用者の素質次第ではあるが、十倍から百倍以上の強化が可能になる」

 

 ま、マジか!

 

 十倍から百倍って、オーフィスの蛇並みじゃねえか! いや、それより上かもしれねえレベルだぞ、オイ!!

 

 い、いやいやいやいや。そんなの作れてるなら、なんで他種族から紛い物の悪魔なんて用意するんだよ。必要ねえだろ、マジで。

 

 王の駒だけ作って、本来の悪魔全員を超人にした方が簡単だろ。そっちの方が上役的にもうはうはじゃねえの? 純血主義なんだし。

 

「あの、そんなのがあるなら他種族を悪魔にする必要ないと思うのだけれど」

 

「確かにそうかもしれないが、王の駒は強くなりすぎる。力を得ることで暴走する者は必ず出る。強大な力とは、それだけで目を曇らせるからね。だから王の駒は、原則使用を禁止にしている」

 

 姐さんにそう答えるアジュカ様の言葉は、実感がこもっていた。

 

 ああ、そういやオーフィスの蛇であれな連中がゴロゴロ出てたもんな。ディオドラとか神器移植もあって調子ぶっこきすぎてたしよ。

 

 しかも本当に強くなってるからやばかったぜ。俺が土壇場で禁手に目覚めてなかったら、ここにいる面子が三割ぐらいいなくなってたかもしれねえしな。

 

 いきなりポンと心構えもなく力だけ手に入れたら暴走する連中は多いからな。禁手に至る方法が漏らされたことで、どれだけの連中が暴走したことやら。ヴィクター絶対許さねえ!

 

 それに、はぐれ悪魔祓いになるような連中とかでわかるけど、心構えとかの精神鍛錬とかをきちんとしても、強い力に飲まれる連中はいる。あまりに安易に力が手に入ったら、暴走するやつらはゴロゴロ出てくるだろうな。

 

 しっかし、そんなことを危惧されている中でシシーリアに王の駒が与えられるたぁな。

 

 外部からの制御とかができるようになってんだろうが、それでもシシーリアは信用に値すると思われたってわけか。

 

「シシーリア。お前は俺が照らすに値する聖女だって今再確認できたぜ」

 

「え? いえ、駄馬ゆえに調子に乗っても対処可能ってこともありますから! そんな褒めないでください照れますからヒロイさん!!」

 

 シシーリアが照れまくってる中、アジュカ様は手元に小型の魔方陣を展開させる。

 

 すると、俺たちでもわかるように数十名の人物データが表示された。

 

 なんか、どっかで見たことがあるような……。

 

 何だろうか。お嬢やソーナ先輩など、悪魔側のメンツで顔色が変わってる人が何人も出てるぞ?

 

 なにこれ。たぶん王の駒を使っている可能性がある連中なんだろうが……。

 

「此処に映し出されてるものは、元72柱―純血の上級悪魔から選ばれた『王』の駒の使用者たちだ。そしてレーティングゲームのトップランカーでもある」

 

 ………はい?

 

 いやいやいやいや。ちょっと待って、タンマ。

 

 王の駒って使用禁止なんだろ? なんで何十人も使ってんだよ。

 

 っていうか、それでレーティングゲームのトップランカーって!?

 

「彼らは冥界の上役たちの思惑で駒を使用している。もちろん、公表なんてされていない。結果として彼らの多くは最上級悪魔クラス、一部に至っては魔王クラスに届くものまで出てきている」

 

 ま、まじか。

 

 いや、カテレアもオーフィスの蛇を使った時は堕天使元総督のアザゼル先生を追い込んだ。王の駒もそれに匹敵する強化率だ。

 

 使用者の適性次第じゃ、それ位の力を得てしまったっておかしくねえ。

 

 っていうか、使用禁止になってるのに使用したって、それ……不正じゃん!?

 

「……では、ここに映し出されている現トップランカーの実力は……」

 

「当然、不正といっていい」

 

 生唾を飲み込んだうえでのソーナ先輩に、アジュカ様が頷いた。

 

「というより、ゲーム運営の執行委員会は大半が真っ黒でね。『王』の駒の使用はもちろん、賄賂、八百長は当たり前に行われている。老獪な上役たちも、自分たち好みの冥界の秩序を作るために、人間界のプロレスのようにランキング変動から一つ一つの試合に至るまでプロットを作っているほどだ」

 

「ああ、確かにやるわね。権力持った老害なら」

 

 アジュカ様の語る衝撃的な発言に、姐さんはさらりと受け止めた。

 

「芸能界でもあるもの。一部の糞みたいな権力者が自分に有利な大局的な流れを前もって作ってるっていうの。私もそれでプロになりかけたから、笑えないわね」

 

 あ~。そういえば姐さんそうだったな。そういう経験あったもんな。

 

 というより、姐さんはそれにしても平然じゃね? これ、かなり衝撃の事実じゃね。

 

「り、リセス! これは冥界の大きな不正よ!? もうちょっと衝撃を受けて―」

 

「あら、私に言わせれば今更よ」

 

 と、姐さんはさらりとお嬢に反論する。

 

「そもそも堂々と接待試合が行われてるんでしょ? イッセーから聞いたけど、そのライザーっていうのも十回足らずの戦績で二回も接待試合をしたそうじゃない。それと何か違うのかしら?」

 

「う、うぐ……」

 

 姐さんに言い返されて、お嬢は反論できなかった。

 

 え、まじで? 接待試合とかやってんの? それもお嬢知ってんの?

 

「私達も、上役たちの腐敗に心を毒されていたということですか……」

 

 ソーナ先輩が、歯を食いしばって苛立ちをもらす。

 

 まあ、お嬢もソーナ会長もクリーンな試合を好んでるだろうしな。そもそもそういうの絶対嫌いだろうし。

 

 それが接待試合を堂々と行ってるのを受け入れてるってのも、なんていうか冥界上層部の世俗に毒されてる感じはするな、うん。

 

「無論、純粋な実力でトップランカーに上り詰めた者はいる。元龍王タンニーンやリュディガー・ローゼンクロイツなどといった転生悪魔が主流だが、純血悪魔にも少なからずいるのは知ってほしい」

 

 ま、タンニーンさんは当然だよな。

 

 ドラゴンは勝手気ままな我儘な連中が多いが、その分我が強いだろうしな。あの人はさらに例外的に誇り高い人格者だ。ドーピングなんてまねはしねえだろ。

 

「ま、俺は最悪の場合使うがな」

 

『『『『『『『『『『え!?』』』』』』』』』』

 

 ……なんかすごい驚かれた。

 

 いやいや。なんで驚くんだよ。

 

 冷静に考えろよ、この情勢をよ。

 

「ヴィクターに負けるぐらいなら使うっての。力は所詮力だろ? どう手に入れたかじゃなくてどう使うかが重要じゃねえか?」

 

「ああ、それはそうね」

 

 俺の言い分に姐さんも頷いた。

 

「そうしなければ勝てないなら考えるまでもないわね。それに、私もヒロイも神器移植者だし、今更よね」

 

 お、姐さん話が分かるぜ!!

 

「まあ、自分たちはレーティングゲームに参加してないっすから。ペトもオーフィスから特別製の蛇もらってるっすしね!」

 

 と、ペトが〆る。

 

 ……冷静に考えると、俺たち三人ってD×Dじゃ色物っつーか異端だよな、コレ。

 

 ん?

 

「っていうかイッセー。お前悪魔の駒のリミッター解除してもらったから信頼の譲渡とか真女王とか使ってんじゃねえか。お前は王の駒のこと悪く言えないんじゃねえか?」

 

 いや、素朴な疑問なんだが、それはそれでチートじゃね? ずるくね?

 

「いや、あれはサイラオーグが許容したからこその特別措置だ。そうでなければ通常のレーティングゲームでは使えないだろう。それ位には反則ではある」

 

「ですよね!!」

 

 アジュカ様からの冷静な指摘に、イッセーはちょっと視線をそらした。

 




レーティングゲームに参加してない側からすれば、公式で接待試合するのもプロットで不正するのもそこまで大差ないてきな感じでした。

それにヒロイとリセスは現実的な殺し合いで英雄を目指す者。そうする必要性が大きければそうします。神器を移植しまくりだから似たようなもんだしね!!
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