ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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ベリアル偏の急展開です。

え? なんで自衛隊もゴロゴロいるのにあっさり緊急事態になってるんだって?

逆に考えるんだ。自衛隊がゴロゴロいるからこそ、敵だって本気を出すんだって考えるんだ。


第六章 84

 

 ……襲撃されたオーフィスは、駒王駐屯地で緊急治療が行われて、とりあえず一命はとりとめた。そのあとアーシアが治療したから、もう大丈夫だ。

 

 しかし、その駒王駐屯地もかなり大打撃を受けている。

 

 原因は単純。ヴィクターが大挙して襲撃を仕掛けてきたからだ。

 

 英雄派はもちろんイグドラフォースも全員投入。さらに邪龍ニーズヘッグまで参戦という豪華ラインナップ。とどめに陣頭指揮はリゼヴィムがとっていたらしい。

 

 駒王駐屯地でも死傷者は多数。幸い電撃作戦だったらしく、俺らが来た時はすでに撤退。即座にアーシアが回復フィールドを形成したから、即死しなかった連中は全員治療できた。

 

 だが、体力の消耗が激しく自衛隊員は愚かオーフィスすら意識を取り戻していない。

 

 そして何より、最悪なのが……。

 

「父さん、母さん……っ!!」

 

 イッセーが歯を食いしばっているのも当たり前だ。

 

 ヴィクター経済連合は、釣りに出かけていたイッセーのご両親を誘拐した。オーフィスを襲撃したニーズヘッグはご両親で人質作戦までしていたらしい。

 

 幸か不幸かそっちはたまたま来ていたクロウ・クルワッハに気づいたのかすぐ逃げたが、かなりまずい事態だ。

 

『……すまなかった。一応こっそり護衛をつけてたんだが、超越者と邪龍筆頭格が相手じゃさすがに対処できなかった』

 

 通信越しで総理が謝るが、俺たちもそれには文句をつけない。

 

 そもそも俺たちは護衛すらつけてなかったんだ。文句を言える立場じゃねぇ。

 

 ヴィクター経済連合は、表立って活動している公的組織である以上下衆すぎることはしねえ。そう高をくくっていた。

 

 そんな中、こっそり気を利かせて護衛をまわしていた総理には感謝しかねえ。

 

「気にすんな。その護衛は壊滅状態なんだろ? むしろ俺たちが謝るところだ」

 

 アザゼル先生がフォローするのも当然だ。

 

『ああ。だがここまでめちゃくちゃな真似してくるとは思ってなかった。駒王駐屯地は対異形関係でいやぁ腕利きぞろいなんだが、まだまだ本気の異形にゃ勝てねえってことか……』

 

 電撃作戦の強襲戦法とは言え、ヴィクターがここに送り込める戦力には限りがある。

 

 そして不意打ちを喰らったとは言え、駒王駐屯地は自衛隊の駐屯地の中でも最高レベルの戦力がそろっている。こと、異能に関していえば駐屯地レベルで並び立つ場所はないはずだ。

 

 それでも、ヴィクターの精鋭を集中投入すればあっさりボコボコにされるってわけか。

 

 ったく。ヴィクターの連中はどんだけシャレにならねえんだよ。

 

 しかも、あいつ等本気で舐めた真似してきやがった。

 

 俺たちの視線が、アザゼル先生の持っている一枚の紙に注がれる。

 

 それは兵藤邸の郵便受けに放り込まれていた。切手も張られていないそれは、直接放り込まれたことを証明している。

 

 そして、送り主はヴィクター経済連合だ。

 

―トライヘキサ最後の封印解除の生贄になってほしい。特別ゲストと共にこの基地にて待つ。リゼヴィム・リヴァン・ルシファー。

 

 ……んの野郎。本気で俺たちはぶちぎれたぜ。

 

「先生。罠なのはわかってますけど、行かないなんて命令は聞けませんぜ?」

 

 俺の言葉はオカ研の総意だ。

 

 俺たちはほとんどがイッセーの両親に世話になってる。

 

 いくら家を改築しまくったとはいえ、色んなとこから来てる連中を居候させてくれる。そんなの、並の人たちじゃ無理だろう。

 

 それだけあの二人は心が広い。イッセーが変態であることを除けば好人物なのも頷けるってもんだ。間違いなくあの二人の遺伝だって。

 

 そんないい人たちを、あいつらは誘拐しやがった。

 

 ……さすがにこれを見捨てるわにゃはいかねえだろ。

 

「わかってる。どっちにしても、トライヘキサの封印が解除されかけてるならこれ以上黙ってみてるわけにはいかねえ」

 

 そう言いながらアザゼル先生は映像を映し出す。

 

 人工衛星が一瞬だけだが捉えたその基地には、明らかにでかい生物の映像が映っていた。

 

 いや、これは生物は生物でも人工生物だろ。完璧キメラじゃねえか。

 

 荒い映像だが、首が七つぐらいあるぞ。尻尾も同じぐらいあるぞ。

 

 これが、黙示録の皇獣(アポカリティック・ビースト)、トライヘキサか。

 

 封印されてたってのにここまで姿の詳細がわかるってことは、本当に封印はあとちょっとで解けるってことだろうな。

 

 ああ、これはもう黙ってみてるわけにはいかねえだろ……っ

 

「今D×Dのメンバーを緊急招集中だ。それに付近の反ヴィクター国家の軍隊や異能者にも協力を呼び掛けている」

 

 なるほどな。即座に動いていたってわけか。

 

 流石は堕天使の元総督様だ。こういう時は動きが速いぜ。

 

 そしてアザゼル先生は、ちょっとそわそわしながら辺りを見渡す。

 

「ヴァーリの奴にも連絡をつけた。そろそろ来るはずだが―」

 

「―ああ、待たせたな」

 

 その言葉と一緒に、ヴァーリが部屋に入ってきた。

 

 見るからに戦意満々。これ以上ないほどマジモードだ。今まで見たことがないぐらいの雰囲気を纏ってやがる。

 

 そして、ヴァーリがイッセーに目を向けて、少し目を見開いた。

 

 ……ああ。マジギレってのはこういうことを言うんだろうな。

 

 こっちもこっちで今までにないぐらい切れてやがる。正直触れたくねえ。

 

「……ヴァーリ。俺はお前の気持ちが痛いほどよくわかるぜ」

 

「そうか。……できれば俺が殺したいが、その様子だと譲ってもいい気になってくるよ」

 

 なんか、二人の間でめちゃくちゃ通じ合ってやがる。

 

「既に黒歌たちは基地の周辺で待機させている。だが、あの糞のような男ののど元に迫るには、相応の相方が必要だと判断した」

 

「良いぜ。今なら今まで以上に連携で仕掛けることができそうだ」

 

 ……おーい。気持ちはわかるがちょっと置いていくなー。

 

「まあいい。とにかく向こうが招待状迄送り付けてきやがったんだ。……手土産は万全にして招かれてやるぞ」

 

 ああ、こりゃ本気で大暴れ確定だな、ホント。

 

「作戦開始は半日後だ。全員、それまでに準備を整えろ」

 

 アザゼル先生がそう告げ、そして俺たちを一度見渡す。

 

「リゼヴィムとリムヴァンは可能なら滅ぼして構わねえ、俺が責任を持つ」

 

 ……マジか。

 

 アザゼル先生の権限とは言え、こりゃまた大きく出てきたな。

 

「奴らは、手出ししちゃいけねえ領域にまで手を出した。……天龍の逆鱗に不用意に触れた愚かさを、その身に刻み込んでやれ!!」

 

『『『『『『『『『『はい!』』』』』』』』』』』

 

 ……どうやら、そろそろ決戦の時ってわけか。

 

 いいぜ。リゼヴィムの野郎にゃ俺もだいぶむかついてたんだ。

 

 いい加減、クリフォトとD×Dの決着をつけようじゃねえか、なぁ……っ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてそれまでの間の時間で、俺は静かに軽くウォーミングアップをしていた。

 

 姐さんは「流石に死ぬかもしれないから最後の晩餐をしてくる」とか言ってた。下半身に忠実すぎるぞ姐さん。

 

 ま、それはともかく。

 

 とりあえずのウォーミングアップは終了。体はしっかり温まり、ちょっと前に飯も食ったから栄養補給も万端。更にちょっと前に仮眠もしてるので疲労は問題なし。

 

 できる限りで最高のベストコンディションだ。これなら、本格的に仕掛けてもそこそこやり合えるだろう。

 

 あともうちょっとで作戦開始時刻だ。俺もそろそろシャワーでも浴びてスッキリするべきだな。

 

 そう思い、俺は風呂場に入るとシャワーを浴びる。

 

 ……火照った体に冷水が心地いい。とはいっても、あまり冷めさせすぎるのもあれだな。体が冷えすぎると調子が出なくなるだろ。

 

 そう思ったその時―

 

「―ヒロイ」

 

 ―そんなペトの言葉と一緒に、俺の背中に柔らかい感触が当たった。

 

 ……あっさりと裸で入ってきやがったな、オイ。

 

 いや、それは良い。今この兵藤邸に男は俺とイッセーだけだからな。

 

 親父さんがいない以上、この小規模版の風呂場に入ってくるのは俺ぐらいだ。

 

 っていうか、ペトはイッセーに裸見られた程度じゃ気にしねえだろうし。

 

 問題は。

 

「……どうした、ペト」

 

 ペトの体が、少し震えていたことだ。

 

 なんだ? この期に及んで怖気づいたってことはねえだろうな?

 

 さすがにそんなタマじゃねえと思うんだが。

 

「ヒロイ。死なないっすよね?」

 

 おいおい。不吉なこと言うなよ。

 

「どうしたんだよペト。いきなりそういうこと言うとホントに死にそうだからやめてくれねえか?」

 

 いや、マジでフラグが立ちそうなんだが。ホント勘弁してください。俺だって死にに行くつもりはねえよ、死戦になるだろうけどよ。

 

「……胸騒ぎが止まらないっス。自分は、こんなに嫌な予感を感じたことがないっす」

 

 ペトは、俺に顔を見せない。

 

 そして、プルプル震える体で俺を抱きしめる。

 

「お姉様も心配っす。でも、ヒロイのことも心配っす。……みんなのことも心配っすけど、それ以上にヒロイとお姉様のことが心配っす」

 

 ペト……。

 

 いつの間にか、ペトの中で俺は姐さんに匹敵するぐらいでかくなってたのか。

 

「ヒロイもお姉様も、イッセーたちと違って生き残ることより生き切ることを大事にしてるッス。そんな二人が決戦に参加したら、きっと……」

 

「まぁ、確かに死んでも決着をつけることを優先するわな」

 

 俺は、はっきりとペトの懸念を肯定した。

 

 ペトの肩がビクリと震える。

 

 ああ。そこについちゃぁ悪いがそうだ。

 

 俺は輝き、姐さんは自慢。そんな英雄でいようと心に決めて、そしてここまでやってきた。

 

 だからだろうな。俺たちは、命よりも誇りを取る。いざという時、自分の命と誇りを天秤にかければ、きっと英雄でいることを優先する。

 

 間違いなく姐さんもそうだろう。そこにだけは誠実なんだ、俺たちは。

 

 だから……。

 

「ペト。笑ってくれなんて言わねえが、せめてその時は送り出してくれ」

 

「……ヒロイがうらやましいっス」

 

 ペトの爪が、俺の肩に食い込む。

 

 それは怒ってんのか、羨ましいのか、ねたんでんのか、どれなんだろうな。

 

「お姉さまは英雄でいようと頑張って、だから英雄になりたいヒロイと分かり合える。ペトはお姉様のことが大好きッスけど、英雄になりたいわけじゃないッス」

 

 ああ、そうだな。

 

 きっとそうだ。だから、ペトが言おうとしてることも分かってる。

 

 そして、きっとそれをペト自身の口から言わせるのはひどいことだ。

 

 だから―

 

「だから―」

 

「―だから、姐さんは俺と一緒に死ぬことを、ペトと一緒に生きることより優先するだろうな」

 

 ―その言葉を、ペトより先に俺が言い切った。

 

 より爪が食い込んで、血がにじむ。

 

「……そうなんすよね。どこまで行ってもどうなっても、お姉様もヒロイも英雄でいたいから、きっとどれかしか選べないならそれを選んでしまうッス。そんなこと、もっと早く知っておけばよかったッス」

 

 そういいながら、ペトは俺から離れる。

 

「十分で切り替えるッス。………本当に、ゴメンなさいッス」

 

 いや、それは違う。

 

「謝るのは俺達の方だ。俺たちは、()()だけは絶対譲れねえからよ」

 

 そうなんだ。俺たちは、そこだけは絶対に譲れない。

 

 それほどまでに俺たちは英雄に焦がれている。そうなりたいと切に願い、そのためならば死んでもいい。命より大事だって心から言える。

 

 それでもできる限りは配慮できるし抑えられるけど、もしそれが二択になったとするなら―

 

「ペト。こんなロクデナシを大事に思ってくれてありがとよ」

 

 俺は、そう言うことしかできなかった。

 




これまで三人組だったヒロイたちですが、ペトと他二人には明確な違いがあります。

それは、英雄を目指しているかどうか。

英雄であろうとし、其のために文字どおり命を懸けているヒロイとリセスは、其のために絶対に必要なら命を捨てることもいとわないでしょう。いきなり死の危険が出てくればビビるかもしれませんが、最終的にそれが必要なら死ねます。

ですが、ペトは違います。そもそも彼女は英雄に救われ知っているだけです。英雄を目指したりしていません。

ゆえに、ふと考えるとヒロイとリセスが英雄でい続ける以上、何かしらの形でペトとは相いれないところが出てくることに気づきました。

そして、ヒロイもリセスもそれが決裂になるかもしれなくても、英雄を目指さないという選択肢だけはありません。人に合わせることはできますし、ある程度は修正もできるでしょう。ですが、辞めるという選択肢だけはない。それほどまでに、2人にとって英雄とは譲れない一線なのです。

これに気づいたおかげで、第二部の予定変更がスムーズにいきました。ペトには悪いですが、作者としては想定外の都合のよさです。
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