ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
それから少しして、俺たちは再び見舞いに来たお嬢たちと合流した。
そんでもって俺たちは、デイルームのテレビで今の状態を確認している。
そしてテレビでは、現ルシファーであるサーゼクス様と、現レヴィアタンであるセラフォルー様が会見を開こうとしている。
おそらくだが、アザゼル先生辺りはわきで見守っているんだろうな。
「お兄さま……」
お嬢がそれを固唾をのんで見守る。
まあ、当然だよな。
この状況下で会見だ。下手な会見だったら、逆に混乱が助長する。
ただでさえ後手に回ったクリフォト対策。しかも、組織そのものは壊滅させても本懐は遂げられたわけだ。割と責任問題を追及されるかもしれねえからな。会見内容次第じゃ、そっちを優先したがる阿呆が活気づいてもおかしくねえ。
俺たちもちょっとばかり不安になって見守る中、サーゼクス様が一礼する。
『冥界の皆さん。現在、冥界全土はもちろんのこと、人間世界も含めた全世界で、ヴィクター経済連合の本格的な攻撃が始まりました』
サーゼクス様はそう語りかけるように話していく。
クリフォト首魁であるリゼヴィムが精力的に動き、邪龍を操りトライヘキサという伝説の魔物を復活させようとしたこと。リゼヴィムそのものはおっぱいドラゴンであるイッセーが、ルシファーの末裔であるヴァーリとともに倒したが、惜しくもトライヘキサの封印が解除されてしまったこと。
そして、トライヘキサが分裂までしてあらゆる場所を連続で攻撃し続けてきたこと。
その説明と同時に、モニターに映像が流れていく。
天界、冥界、堕天使領。さらには各神話はもちろん人間界迄。あらゆる場所でトライヘキサが攻撃を行っている映像だ。
『ご覧になられている生物こそが、伝説の魔獣であるトライヘキサであり―』
その映像にデイルーム内の人たちが震えたり悲鳴を上げていく。
まあな。一般人にこの映像はショッキングすぎる。神クラスですら圧倒されている映像だからな。
しかし、同時にヴィクターの部隊と戦っている人たちも映し出される。
人間、悪魔、天使、堕天使、妖怪、吸血鬼、獣人、そして神。それらヴィクターに抵抗する人たちが、死力を尽くしてヴィクターを撃退する映像だ。
実際のところは押されているのが基本だが、勝っているところもあるのは事実だ。こういう時は嘘を入れちゃいけねえからな。
その中でも、悪魔が中心となってヴィクターを撃退した映像をバックにして、サーゼクス様は語り聞かせる。
『闘っているのは悪魔だけではありません、同盟関係にある堕天使、天使は当然のこと、ほかの神話勢力からもヴィクターに立ち向かう勇敢な者たちは現れております』
そしていったん切って、サーゼクス様は一回瞑目する。
そして、目を開くと、カメラを真正面にとらえた。
『敵は強大です。今は落ち着いていますが、すぐに姿を現して攻撃を再開するでしょう。その規模はかつてないほどに大きい』
すごく絶望したくなるような展開だ。
だけど、サーゼクス様の表情は厳しくも明るかった。
希望はまだ潰えていない。それを確信している者の表情だ。
『ですが、決して絶望しないでください。先ほども言いましたが、戦っている希望はいるのです』
その言葉共に、モニターの映像が切り替わる。
新たに映し出されるのは、俺たちD×Dのメンバーだ。
なんか、誇らしいな。
こういう時に、俺たちが戦意向上や恐怖削減のためとはいえ映し出される。それだけの価値が、俺たちにはあるってことだ。
『対クリフォト部隊『D×D』をはじめ、悪魔世界が誇る勇敢な戦士たちが冥界を、皆さんを、三大勢力を、そしてこの世界を救うために命がけで戦ってくれています』
そして、サーゼクスさまの前に顔を出したセラフォルー様が、ピースを浮かべて笑顔を向ける。
『私も前線に立っちゃうんだから、心配しないでね!』
「セラフォルー様ったら。こういう時でもいつも通りなんですから」
「……むしろ、こういう時だからこそかもしれません」
朱乃さんと小猫ちゃんが苦笑する中、再びサーゼクス様が前に出る。
そこには、確かな微笑があった。
『必ずこの冥界と皆さんを守ります。私たちの命にかけて』
そして、緊急会見は別の悪魔たちが引き継いだ。
俺たちはそれをしり目に、顔を突き合わせる。
「……で、おれと姐さんが待機する羽目になっているわけだが、その辺はどうなんだ?」
「まあ、僕たちも今は待機だね。トライヘキサが確認され次第、そこに急行することになっているよ」
俺の質問に真っ先に木場が答える。
なるほどな。ま、どこに出てくるかわからねえなら、そうするしかねえか。無駄足になるぐらいなら英気を養ってもらった方がましだ。
とにかくランダムに転移して攻撃してくるからな。こっちからヴィクターの領内に攻め込んでも、たぶんその隙に拠点を攻撃してくるはずだ。防戦に徹するしかねえ。
「しかし歯がゆいものだ。奴らのちまちました攻撃のせいで、私達は無駄足ばかり踏まされているからな」
「……同感です」
「このままだと、何もしてないのにばてちゃいます」
ゼノヴィアの苛立たし気な意見に、小猫ちゃんとギャスパーも同意を示す。
ああ、そして缶詰め状態の俺と姐さんはさらにストレスが溜まっているぜ。
「しかも冥界では、王の駒を私用した者たちがやけを起こして暴動を起こしているらしいわ」
「最悪なことに、第三位であるビィディゼ・アバドンの行方が知れません。どうも一部の魔王派の政治家が裏で動いているようでして―」
お嬢とロスヴァイセさんがため息をついた。
よりにもよって、王の駒を使用している中でもトップクラスの第三位が行方不明かよ。しかも、魔王派が協力している可能性があるって?
まあ、どこの派閥にも過激な奴はいるし、馬鹿もいるしな。
……なにか余計なことをしなけりゃいいんだけどな。
イリナたち転生天使は、天界の方で忙しい。初代孫悟空どのや幾瀬鳶雄も、それぞれ自陣営の方で動いているようだ。サイラオーグさんにいたっちゃ、バアル家は王の駒使用を積極的にしていたからややこしいことになっている。
D×Dを希望の星としてくれたサーゼクス様には悪いんだけどよ? これ、俺たち動きづらいんじゃねえか?
なんかいろいろと困った感じな俺たちだが、その時看護師さんの一人が俺たちを見かけて声をかけてきた。
「あ、リアス様! ようやく見つけました!!」
「……どうしたの?」
アザゼル先生から連絡でもあったのかと思った俺たちだが、今回はそうじゃなかった。
そして、俺たちはその知らせを聞いて歓喜の表情をみんなで浮かべる。
「……イッセー様が……意識を取り戻されましたのですね!」
ようやく復帰したレイヴェルの言葉通りだ。
いよっしゃ! ようやく主役のご登場かよ!!
そして足早にイッセーの病室まで来た俺たちは、起き上がったイッセーの姿を見てほっとした。
大泣きしている奴もいるレベルだ。ま、当然だがな。
母乳で回復するという空前絶後の真似をしでかしたとはいえ、一時期は本気で命が危なかったからな。それも、回復してからも数日間眠りっぱなしだし。ある意味寿命がマッハの俺や姐さんよりひどい。
それが、起きたとたんにベッドから起き上がって真剣な表情でテレビを見てるんだ。すごい回復速度だと思う。
ったく。天然物の英雄様はこれだから呆れるぜ。子供たちのヒーローは子供たちのピンチに黙ってられないってことかねぇ。
「流石に、これには負けるわね」
姐さんも苦笑してるが、その口調は明るい。
ああ、これでD×Dは本気モードだ。こっからが逆転タイムだろうな。
「リアス! それにみんなも!」
イッセーも俺たちに気が付いて、声をかけてくれる。
声にも元気が乗ってるな。これ、俺たちよりも調子がいいんじゃねえか?
「イッセー。もう大丈夫?」
「ああ、大丈夫だよリアス」
お嬢の気づかわし気な言葉に、イッセーはちょっと怪訝な表情をしながらそう答える。
なんだ? 眼でもかすんでるのか?
俺はちょっと首をかしげたが、イッセーはすぐに顔を曇らせた。
「なんかすいません、俺が寝てる間に大変なことになっちゃったみたいで」
「何言ってんだ、リゼヴィムぶちのめしたのはお前だろうが」
ったく。思わず張り倒したくなって苛立たしげな声になっちまったぜ。
俺たちが超絶バトルをしてる間に、お前は大将首を上げてるんだぞ? もう少し胸を張れってんだ。マジイラついたぞ。
「まったくもう。一番頑張った貴方がそんなことを言わないの」
そう言って、お嬢は苦笑を浮かべる。
そしてイッセーも苦笑を浮かべるが……。
うん。今度は目をこすってるな。しかも目頭をもんだりしてる。
なんだ? まさか激戦の後遺症で視覚にダメージでも入ったか?
「……どうしたの、イッセー」
姐さんがちょっと気になったのか近づきながら聞くと、イッセーは姐さんにも視線を向ける。
そして、首をかしげながら目を細めた。
なんだ? なんていうか、遠くを見るときみたいな感じだな。
「いや、そのですね。リアスやみんなの、リセスさんのお……あれ?」
イッセーが、なんか言いかけて首をひねる。
「あれ、む……あれ? ち……あれ? なんで、たった二文字の言葉も出てこないんだ?」
何か真剣に動揺してるな。
起き抜けで言葉が出てこないのか?
いやいや、それでも三連続ってのはおかしいだろ。それに、意識はかなりしっかりしてるしな。
それにイッセーが向けてくる視線からすると、それはもうこの三つの言葉を言おうとしたとしか思えねえ。
おっぱい、胸、乳。つまりバスト。
イッセーが忘れたら天変地異が起きるレベルの言葉トップスリーじゃねえか。何があっても忘れるとは思えねえ。
それを察したみんなが、一様に寒気を感じるレベルで戦慄する。
そして、レイヴェルが静かに一歩前に出ると、イッセーの肩をつかむ。
「イッセー様。もしかして、女性の乳房に関する言葉が口に出せないのですか?」
その言葉に、イッセーはうなづきながらもさらに困り顔になった。
「それどころじゃないんだ。……その部分が、全然認識できない。視界にもやがかかっているみたいなんだ」
……………………………………。
はい?
よし、ちょっと冷静に考え直そう。
イッセーが、乳を認識できない。その単語をしゃべることもできない。
うん。
「よし、お前偽物だな」
「ふざけんな! こちとら死活問題なんだぞ!? そう言う冗談はよせ!!」
いや、本気だったんだが。
いやいやいやいや。ちょっと、ちょっとちょっと。
イッセーが? お乳を? 認識できない? 口にもできない?
なんだその非常事態。ある意味トライヘキサの復活よりやばいぞ。
「だ、だがイッセー。おまえ、母さんは普通に見れてるみたいだったぞ?」
親父さんがそう言うが、イッセーはお袋さんを見て首を傾げた。
次いでに、小猫ちゃんにも視線が行った。
「……母さんと小猫ちゃんのは見れるんだよ。なんでだろ」
「おっぱいだと認識してないからじゃないっすか?」
ペト。残酷な言葉を口にするな。
実の母親に性的興奮しないのはいいことだが、逆プロポーズまでしている小猫ちゃんの場合はいろいろとキツイ。
ほら! 小猫ちゃんから殺意の波動が!! 俺の短い寿命が一気に削れそうなぐらい怖いから!! 姐さんの寿命まで削れそうだからやめろ!! 俺も姐さんも人間だぞ!!
「イッセー。しっかりしなさい。胸を見なさい」
と、姐さんが服をはだけて胸を魅せてくれる。
……羨ましい!!
俺が殺意すら目覚めたその時、それをかき消す非常事態が起こった。
イッセーが、急に頭を抱えてもだえ苦しんだのだ。
「ぐああああああ!!! あれを見た瞬間に、頭が張り裂けそうなぐらいいたい!!」
『『『『『『『『『『!?』』』』』』』』』』
俺たちは、声を上げることもできないぐらい驚愕した。
あ、あり得ねえ。
イッセーが、女の乳を見て、拒絶反応!?
こ、これは非常事態だ。非常事態以外の何物でもねえ!!
なにがあったんだ、これはぁああああああああ!!!
……当人的には大問題なんでしょうが、理屈が全く分からないおっぱいネタなのがD×Dですよねぇ(汗