ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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最終章 5話

 

 そんなこんなでイレギュラー極まりない事態が発生して、イッセーは半日ほど面会禁止になった。

 

 まあ、泡吹いて痙攣してんだもんな。当然っちゃぁ当然だろう。

 

 そしてさらに、行方不明だったビィディゼ・アバドンがバアル家を襲撃したり、それに同調して王の駒使用者がさらに暴れだしたりといろいろあって、お嬢たちは急遽出撃することになった。

 

 まあ、おれと姐さんは暴れたら死ぬということで待機するわけだが。

 

 さて、どうしたもんか……。

 

 結界を抜ける手段はある、シシーリアが持ってきてくれた。

 

 だが、使いどころはしっかり見極めねえといけねえ。俺と姐さんがいなくなったと知られれば、すぐにそのきっかけとなった戦場に行って、お嬢たちが取り押さえようとしてくるだろうしな。

 

 それに抵抗するのは阿保のやることだ。この非常時、仲間同士で争って漁夫の利を取られるとか、阿保極まりねえ。それでトライヘキサに世界を蹂躙されたらそれこそ死んでも死にきれねえ。

 

 だから、やるとするならタイミングを見極めねえといけねえわけだ。

 

 それを考えながら、俺は姐さんの部屋に行く。

 

「よ、姐さん」

 

「あら、ヒロイ」

 

 俺と姐さんは軽い挨拶を交わすが、しかしすぐに視線を合わせると、心が通じ合った。

 

 ああ、姐さんもそうだよな。

 

 俺たちは英雄でい続けたい。そして何より、今は世界の危機だ。

 

 二重の意味で死を恐れている場合じゃない。機をうかがって、ここなら抜け出て動かないとな。

 

「シシーリアが結界から抜ける手段を持ってきてくれた、ご丁寧に二人分だ」

 

「……お礼を言っておきたかったけど、それも難しいわね」

 

 ああ、そうだな。

 

 出た直後にシシーリアに連絡を入れれば、それでアジュカ様に察さられてしまうかもしれねえ。そうなったら間違いなく捕まる。

 

 かといって、これだけの激戦だ。戦死する可能性はシャレにならないぐらい高い。そして、勝ち残ったとしても……。

 

 ああ、だから、本当に感謝してもしきれない。

 

 シシーリアは、俺と姐さんがどういう行動をしたいか察してくれた。

 

 だったら、何ができる?

 

 決まってる。シシーリアは、俺が輝き(英雄)でい続けることを願っていた。それを望んでいたからこそ、この抜け道を擁してくれた。

 

 だったら、英雄でいることしか報いる方法はねえだろうな。

 

「思えば、俺が駒王町に来てからいろいろあったよなぁ」

 

 俺は、なんか走馬灯のごとく思い出がよみがえってくる。

 

 姐さんも同意見なのか、クスリと笑った。

 

 ああ、本当に、いろいろあった。

 

「まさか、最初に助けた子だったなんて、コカビエルと戦っているときは思ってもみなかったわ」

 

 姐さんが、思い出を振り返りながらくすくす笑う。

 

「だって、守るべき存在だったもの、それがいつの間にか守り合う存在になるなんて、なんて数奇な運命なのかしら」

 

「当然だよ。俺は、そういう存在になりたかったところがあるからな」

 

 そうだ。俺は姐さんに憧れた。

 

 あの暗闇を照らした輝きのようになりたいと思い、そして一生懸命なる方法を考えて道を進んできた人生だった。

 

 そして、その果てにコカビエルを追撃して駒王町に行って、姐さんと図らずも共闘した。

 

 それが姐さんだと気づいたのは、そのあと少ししてからだ。

 

 そっからも激闘と特訓と、そして楽しい思い出の毎日だった。

 

 ペト、イッセー、お嬢。そしてみんな。

 

 誰もかれも大事な仲間たちだ。一緒に戦えたことが誇らしくてたまらない。それだけの心強く、自慢の仲間たちだ。

 

 時間は一年にも満たねえが、それでも大事な思い出だ。この一年足らずは、人生で二番目に大切な思い出だ。

 

 そう、二番目だ。

 

 一番は決まっている。変わることなどないと思うし、そうなったときは俺という存在は死んだようなもんだ。

 

「ああ、それも姐さんに救ってもらえたからだ」

 

 そうだ、それが原風景。

 

 あの時、あの暗闇を照らした輝き、俺の大事な大事な始まりの光。

 

 ああなりたくて駆け抜けた人生だ。もし、それをあきらめるときが来るのなら、それはきっと俺が俺でなくなる時だ。ヒロイ・カッシウスとしての自分を、投げ捨てる時だ。

 

 それは嫌だ、絶対に嫌だ。

 

 そして―

 

「ええ。私も、あの時ペトとあなたが励ましてくれたことが何より大切だわ」

 

 姐さんも、おれを見て、頷いた。

 

「迷走し続けてきた人生でも、得られるものはある、それをあなた達は教えてくれた。だからこそ、私にとってその思い出はなによりもかけがえのない大事な切っ掛けなの」

 

 そういうと、姐さんは立ち上がって俺を抱きしめる。

 

「……ペトには愛想をつかされちゃったけど、それでもあなたは残ってる。貴方の期待を裏切りたくないの。命よりも大事なのよ」

 

「俺もだ。あの輝きのように生きれないのなら、俺は死んでしまいたい」

 

 ああ、俺たちは大バカ者だ。

 

 仲間たちを悲しませることになっても、それでも英雄であることを捨てられない。最後の一線はそこにある。

 

 だけど、そんな大バカ者たちだからこそ、最後の最後で理解者でい続けられる。

 

 俺は姐さんを抱きしめ返しながら、まっすぐに見つめて言う。

 

「姐さん。大好きだ。あの時救われてからずっと、その輝きに目を焼かれてる」

 

「私もよ。最後の最後まで誇ってくれる貴方が、愛しくて愛しくてたまらない」

 

 その言葉と共に、俺たちは唇を合わせる。

 

 今までに何度もやってきた、しかし今までとは全く異なる口づけ。

 

 ああ、俺たちの最期の戦いは、並び立って迎えるんだ。

 

 そのまま、前向きに倒れよう。

 

 俺は、俺たちは、英雄だからな。

 

 そう、俺が決意をしたその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あー、テステスただいまマイクのテスト中ー』

 

 テレビから、リムヴァンの声が聞こえてきた。

 

 静かに視線を向けると、空をバックにリムヴァンがにこやかに手を振っていた。

 

『はーい! 電波ジャックで放・送・中! リムヴァンお兄さんが、ただいま太!平!洋から生!中!継!』

 

 なんか似非ラップでほざくリムヴァンは、そして指を鳴らす。

 

 そして、カメラが一気にズームアウトした。

 

 ……そこには、首が一本になったトライヘキサが三体も映っていた。

 

 病室の外が騒がしくなる。まあ、禍々しい外見のトライヘキサにビビったんだろう。テレビ越しでもやばい感じはしまくりだからな。

 

 そしてある程度パニックが収まるのを待っていたのか、お茶を飲んで待っていたリムヴァンはにやりと笑う。

 

「ただいま、僕たちヴィクター経済連合は太平洋から日本に向かって進軍中。ヴィクターの艦隊や部隊を率いて向かってるよ」

 

 日本だと!?

 

 んの野郎、一体何考えてやがる。

 

 っていうか、確かトライヘキサは七体に分裂して襲撃してたんだよな。それなのになんで三つだけなんだ?

 

 映ってないだけで七体全部か? なんかそれはキッツいんだけどよ。

 

『因みに、もちろん今回も同時多発攻撃だ。日本に向かっているトライヘキサ三体以外にも、敵として確定的な戦力で最強のシヴァ神がいるインド神話勢力、協力者の旧魔王派の勢力図を広げるために冥界悪魔側、つかまって封印された人たちを助ける目的もあってコキュートス、そしてグレートレッドの参戦を警戒して次元の狭間に、露払い用の部隊を含めて展開中さ』

 

 ああ、なるほど。そういうことか。

 

 って、日本多いな!!

 

 なんでそんなに日本に戦力集めてるんだよ。おかしいだろオイ。日本一応平和主義だから、自衛隊とかは仕掛けてきてねえだろ。

 

 俺たちのそんな疑問は想定済みなのか、リムヴァンは一つの映像を浮かべる。

 

 ……そこには、見覚えのある街が映っていた。

 

 いや、違う。見覚えがあるなんてもんなわけがねえ。ここ最近はずっとそこで住んでるから覚えてるにきまってる。

 

 あそこは、駒王町だ!!

 

 そして、その映像は急激に変化する。

 

 一応青空だったはずなのに、一気に雲と風が出てくる。

 

 そして、気づけばスーパーセルって感じの荒れた天候になり、そして駒王町は特に被害がない。

 

 台風の目ど真ん中といわんばかり。そんな、明らかにおかしい天候が発生していた。

 

『うちの精鋭である英雄派の協力の元、天候操作を行いました! 同時に駒王町に三大勢力が張っている結界に干渉をかけて、駒王町からの市民の脱出にはどれだけかかっても数日は必須の状態にしたぜ! 陸の孤島さ!!』

 

 な、なんだとぉ!?

 

 あの野郎。なんで駒王町をターゲットにしてそんな手の込んだことをしてやがる。

 

 確かに結界にまで干渉されたら、転移もそう簡単にはできねえ。しかも陸路や空路がスーパーセルで寸断されたら、車や電車もろくに仕えねえはずだ。

 

 だけど、それをどうしてこんなところで使いやがる?

 

 大半の連中がそんな疑問を浮かべているのに気づているのか、リムヴァンはうんうんとうなづいた。

 

『わかってるよ? 日本の地方都市相手に、こんな大盤振る舞いする理由はわからないだろう。でも、首脳陣はたぶん勘付くんじゃないかな?』

 

 なんだよ。一体どういうことだ。

 

 訳が分からなくてむかついてきたが、それをまるで見越しているかのようにリムヴァンはにやりと笑う。

 

『……堕天使コカビエルが、事実上の休戦状態だった三大勢力の戦争を再開させるため、教会が保管している聖剣エクスカリバーを強奪。魔王サーゼクス・ルシファーとセラフォルー・レヴィアタンの妹が悪魔業務上の管理をしている、駒王町をエクスカリバーを使った儀式で吹き飛ばそうとした。ちょうど日本の学生たちが夏服に変わるころにね』

 

 ………!

 

 それは知ってる、っていうか当事者だ。

 

 その時は、何とか俺たちが尽力してコカビエルをぶちのめして防いだが―

 

『結果として、それをきっかけにする形で三大勢力は会談を開始。どこもトップは戦争継続は人間たちを含めて誰の得にもならないと思ってて、即座に首脳陣は和平を結ぶことを決定。恐ろしいぐらいのスピードで三大勢力は和平を結んだわけだよ。僕たちヴィクターは、当時トップクラスの勢力だった旧魔王派の要求もあって妨害行為を行ったけど、凌がれたわけだ』

 

 ああ。その時だって俺たちもいた。

 

 そういや、その時から俺は曹操とやり合ってるが、これまで一度も一対一でぎゃふんと言わせたことはあっても勝ったことはない。

 

『そして、その数日後に僕たちは本格的な宣戦布告を行った。ついでに、日本にいろいろとちょっかいをかけたこともある。……日本は全部凌いだけどね』

 

 なんだ? なんか嫌な予感がしてきたぞ?

 

『ロキの襲撃を凌ぎ、同時多発クーデターでは唯一クーデターを失敗させる。そしてそれ以外でもヴィクターの部隊が関わる形でいろいろともめ事が起きたけど、日本はそのすべてを自陣営の勝利でしのいできた』

 

 そう言って、リムヴァンは静かにため息をついた。

 

『まあ、日本は対ヴィクターにおいて人間世界唯一の勝ち越し国家なわけだよ』

 

 おい、まさか―

 

 俺が最悪の想像に至ったとき、リムヴァンはそれを言い切った。

 

『いい機会だしこう考えた。……最初の失敗を帳消しにして、それをゲン担ぎにしようとね』

 

「それはつまり……っ」

 

 姐さんも分かっている。俺だってわかっている。

 

 つまり、奴はこう言っているんだ。

 

 奴のターゲットは厳密には日本じゃない。その最優先ターゲットは―

 

『駒王町を制圧して、僕たちの対アジア前線基地にする。そのために最大戦力を投入させてもらったよ』

 

 そう言い放ったリムヴァンは、テレビ越しに見ている連中全てに挑発的な表情を向けてくる。

 

『止めてみたまえ。これが、ヴィクター経済連合の宣戦布告以来の、最大級の決戦だと知るがいい』

 

 ……んの野郎!!

 

 最大級の挑戦状を、堂々と叩きつけてきやがった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 




決戦の時、迫る。

リムヴァン本気モード。ついでに今までの借りを返さんと、日本をメインターゲットにしました。

これが結構この世界での日本の在り方に影響が出ることになります。
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