ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

27 / 324
第一章 14

 

 

 炎が噴き出るのはアザゼルにやられた傷口から。

 

 勢いよく噴き出た炎は傷口を焼かない。

 

 それどころか、炎が収まるころには傷口は完全にふさがっていた。

 

 その光景に、俺達は目を見開くしかない。

 

 馬鹿な。あれはまるでフェニックスの炎の再生!?

 

「そんな馬鹿な! レヴィアタンの家系にフェニックスの血が混ざっているだなんて、聞いたことがないわよ!?」

 

 お嬢が動揺する中、カテレアは得意気に微笑むと傷があった個所をなでる。

 

 すでに傷があったことすらわからない状態になっている肌を見せつけながら、カテレアはアザゼルに視線を向ける。

 

「アザゼル。あなたならわかっているでしょう?」

 

「……不死鳥の灯火(ランプライト・フェニックス)か」

 

 アザゼルのその言葉に、カテレアは笑みを深くし、リムヴァンはパチパチと手をたたく。

 

「そのとおりSA! 傷口を炎で包み再生する神器。カテレアっちはそれとの適合値が高いんだよNE」

 

「複合移植はもちろんのこと、神器をノーリスクで移植させることも余裕だってのか」

 

 リムヴァンをにらみながら、アザゼルは唸る。

 

 だけど、リムヴァンは少しだけ残念そうな表情を浮かべて苦笑した。

 

「ま、誰にでもできるってわけじゃないんだけどねぇ。これが複数となると一気にできる奴が減るんだよ。それが限界ってやつさ」

 

「そうかい。俺から言わせりゃ十分すぎる強さだがな。……お前も増やすのか、ヴァーリ」

 

 アザゼルに話を振られたヴァーリは、しかし静かに首を振った。

 

「いや、俺は光翼(コレ)だけでやっていくつもりさ。余計な追加装備に興味はない」

 

 そう告げると、しかしその視線をイッセーに向ける。

 

「だが、君には必要不可欠だろう。できれば大量に移植してもらいたいところだね。……いけるか、リムヴァン」

 

「いや無理だねー。彼にそこまでのポテンシャルはないかなー?」

 

 リムヴァンの言葉に、ヴァーリは心底残念そうに肩を落とした。

 

「まったく。本当に残念だ」

 

 うわ、この野郎本気で言ってやがるな?

 

「……この野郎! 人のこと残念って、どういうつもりだ!!」

 

 イッセーは当然むかついて怒るが、しかしヴァーリは兜を除装すると、憐憫の視線を向ける。

 

「事実そうだろう? この()()()()()たる俺の宿敵が、ろくに才能のないただの一般人の出なんて笑い話にもならない。」

 

 確かにイッセーは一般人の出だが、そこまで言うか。

 

 ……いや、ちょっと待て?

 

「待ちなさいヴァーリ。……魔王の末裔ってどういうこと!」

 

 お嬢も聞きとがめたのか、ヴァーリに向かって鋭い声を浴びせる。

 

 それに反応したのはカテレアだった。

 

「あきれましたねアザゼル。まさか、まだ言ってなかったのですか?」

 

「ああ、そういやいうタイミングを失ってたな」

 

 アザゼルがついと視線を逸らす中、姐さんが苦虫をかみつぶした顔をして口を開いた。

 

「落ち着いて聞いて。あいつはヴァーリ・ルシファー。……正真正銘本来のルシファーの末裔よ」

 

 は、はぁ!?

 

 ルシファーの末裔ってことは、奴は旧魔王の血族ってことか。

 

 それが何で堕天使側の子飼いになってたんだよ!!

 

 っていうか、なんでそんな奴が白龍皇の光翼を!?

 

「俺は死んだ先代ルシファーの孫と人間の間に生まれた者でね。魔王の力から莫大な魔力を、人間の力から神滅具を手にすることができたんだ。……奇跡とは、俺のためにあるような言葉だ」

 

 つまり、悪魔と人間のサラブレッドってわけか。

 

「そんな……嘘でしょう」

 

「現実よ。よく言うでしょう、事実は小説より奇なりって」

 

 現実を認められず狼狽するお嬢に、姐さんがかばうように前に出ながらそう言い切る。

 

 うっわぁ。いくらなんでもありえねえだろ、オイ。

 

「しかし、運命とは残酷だと思わないか?」

 

 と、ヴァーリは唐突に話を変えた。

 

 その視線の先にいるのはイッセーだ。何がどういうことだ?

 

「俺のように伝説の魔王と龍の組み合わせという、子供が考えたような最強の存在がいる。しかし同時にただのなんにもない人間に伝説の龍が取りつく場合もある。いくらなんでも、この偶然の組み合わせは残酷だ。両者の間にある溝が深すぎる」

 

 確かに、いくらなんでも土台が違いすぎるな。

 

 いくら死んでいるとはいえ、悪魔の、それも魔王の末裔に神殺しを宿すとか、神器のシステムはどうなってんだよ。

 

 そしてイッセーをさらに見ると、やれやれと首を横に振った。

 

「君について調べたよ。父親は普通のサラリーマンで母親はたまにパートに行く程度の普通の専業主婦。先祖もある程度は調べたが、神器持ちも魔法使いも特にいなければ、悪魔と契約したものもいない。本当に、本当に何の特殊な事例もない、たまたま悪魔に転生しただけの普通の男子高校生だ」

 

「それが、どうしたっていうんだよ!!」

 

 何を言われているのかよくわからねえ。

 

 イッセーも同じ気持ちだからこそそう怒鳴ったんだろう。

 

 そして、その言葉を受けてヴァーリはあからさまにため息をついた。

 

「こう言いたいんだよ。「ああ、なんでこんな男が俺と同時期の赤龍帝なんだろう」ってね」

 

 その言葉に、イッセーは当然顔をしかめた。

 

 当たり前だな。寄りにもよって目の前で「赤龍帝として落第点」とまで言われやがったんだ。むかついたっておかしくねえ。

 

 だが、ヴァーリはその表情を見ても何も感じないらしい。

 

「ああ、何もかもがありきたりだ。ありきたりな家族にありきたりな環境。……そこで俺は考えた。じゃあ、どうすればありきたりじゃなくなるか」

 

「ヴァーリ。あなたろくでもないことを考えてるんじゃない?」

 

 姐さんの言葉に、ヴァーリはもったいぶらず口を開いた。

 

「簡単だよ。彼を復讐者に仕立て上げようと思ってるんだ」

 

 ―なんだと?

 

「俺が兵藤一誠の両親を殺す。そうすれば少しは身の上もありきたりじゃなくなるだろう。なにせ、両親を殺したのはアザゼルが「現在過去未来含めて最強の白龍皇になる」とまで言ってのけた男だ。そんな男に復讐するために生きるなんて、ありきたりな人生では決してない」

 

 とてもいいことを思いついたかのように、ヴァーリの奴は饒舌だった。

 

「どうせ彼の両親は、今後も普通に暮らして普通に老いて普通に死んでいくつまらない人生だ。そんな人生より俺たちの戦いを彩った方が華やかで素晴らしい人生だと思わないかい?」

 

 ………この野郎。

 

 自分が面白い戦いをするためだけに、イッセーの両親を殺すだと?

 

「―ぶち殺すぞ、この野郎」

 

 イッセーが、特大の殺気を放ちながら口を開いた。

 

 短い付き合いだが、たぶん今までで一番の殺気を放ってやがる。

 

 だが、それは俺も同じことだ。

 

「そんなこと、させるとでも思ってんのか、あ?」

 

 俺も、まだ完全に治療されてないが立ち上がる。

 

 ああ、こんなことを聞かされて、怒りに燃えないで何が英雄だ。

 

 いや、英雄以前に人として許せねえ!!

 

「さっきから黙って聞いてりゃ。白トカゲ風情がなに寝言ほざいてんだ、あぁ?」

 

 俺の言葉に、ヴァーリは不快な表情を浮かべる。

 

「トカゲ? 俺たちをトカゲといったか」

 

『後天的に神滅具を宿しただけのただの人間が、我ら偉大なる白龍皇を侮辱するか』

 

 アルビオンもまた不機嫌さを声だけで出してくるが、知ったことか。

 

「てめえの享楽のために罪のねえ連中殺そうとかするやつと、それをたしなめもしねえ奴が、御立派な存在なわけねえだろうが。そんな連中はトカゲで十分だ馬ぁ鹿」

 

 俺は聖槍を突き付けると、心の底から殺気を出す。

 

 親がいる。そして愛される。

 

 その当たり前がどれだけ素晴らしいことか、こいつはかけらもわかってねぇ。

 

 その大事なもんを、お前の退屈しのぎにぶっ壊すだと。

 

「……害獣風情が御大層な演説述べてんじゃねえ。どうやら神器に封印されても欠片も反省してねえようだな。……駆除の時間だ」

 

 いうが早いか、俺は速攻で聖槍をもってとびかかる。

 

 無論、雷撃も纏わせて一気に叩き潰すつもり満々でな。

 

 くたばれ、この野郎!!

 

「なるほど、俺は何処までも馬鹿にされたらしい」

 

 それを、ヴァーリは結界を張って受け止める。

 

 チッ! さすがに魔王と神滅具のコンボはきついか。

 

「なら、それ相応の報復というものを―」

 

 その瞬間、上部から落雷が降り注ぎ、ヴァーリに直撃する。

 

「……身内の恥は身内で濯ぐものよ」

 

 姐さんもまた声に怒りのオーラをのせていた。

 

「この英雄の目の前で、邪悪になり果ててただで済むと思ってるの?」

 

「ふふふ。まさか神滅具持ち二人が同時に仕掛けてくるとはね」

 

 ヴァーリは楽しげな表情を浮かべると、兜を展開して顔を隠す。

 

 俺は着地しながら素早く槍の切っ先を向ける。

 

 んの野郎はマジでぶち殺す!

 

 そして、其れは俺達だけじゃねえ。

 

「おらイッセー! お前もすこしは気合を入れやがれ!!」

 

「ここまで言われて黙ってる気? 少しは男を見せなさい!!」

 

 俺と姐さんが撃を飛ばし、そしてイッセーは前にでる。

 

「……確かに、俺の両親は普通だよ」

 

 一歩、右足が前に出る。

 

「父さんは毎日俺たちの生活のために働いてる」

 

 一歩、左足が前に出る。

 

「母さんは毎日俺たちのために家事をしてる」

 

 二歩、右と左の足が前に出る。

 

「でも、それは俺にとって大切な生活だ」

 

 そして、怒りに燃える目が、ヴァーリを貫いた。

 

「俺の両親を! 俺の生活を! お前が楽しむためなんかにぶち壊させねえぞ、ヴァーリぃいいいい!!!」

 

 その瞬間、イッセーの全身が赤い龍の鎧に包まれた。

 

 おお、ヴァーリにも負けねえオーラだ。

 

 そして、そのオーラを見てヴァーリはビビるどころか喜んでやがる!

 

「ははは! 見ろアルビオン! 赤龍帝のオーラがここまで高まるとは思わなかった!!」

 

『想いが純真であればあるほど、神器の力は増大する。神器とは人の想いを力に変えるもので、ドラゴンにとっても純粋な心はよきものだからな』

 

「なるほど、曹操にとってのヒロイ・カッシウスと同じく、俺の方が二天龍として圧倒的格上でも一つぐらいは劣るといったところか」

 

「わけのわからねえこと言ってんじゃねぇええええ!!!」

 

 イッセーは鎧からオーラを放ちつつ、一気にヴァーリに殴り掛かった。

 

 そして、其れをヴァーリは地面に降下して躱す。

 

「だか単純すぎる! 馬鹿というのは罪だよ、兵藤一誠―」

 

「―だったらお前は大罪人だな」

 

 イッセーは、そうにやりと笑った。

 

 ああ、まったくだ。

 

「俺がいることを忘れてんじゃねえぞ?」

 

 すでに、お前は俺の射程内だ。

 

 何の躊躇もなく、俺はヴァーリに槍を突き出した。

 




何でもかんでも誰にでもいくつでも移植できるわけではないのです。移植できる神器にも適正がありますし、複数移植可能なのは、全体でも一握りです。




そんでもってノリノリで悪党やってるヴァーリ。おかげで神滅具三種を同時に敵に回しました。

しかしヴァーリは覇すら制御する難物、そう簡単には倒せませんです、ハイ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。