ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
今回は、その一部をご紹介しましょう。
そして、戦闘は何処でも激化している。
精鋭同士がしのぎを削り、大量の戦力が押しつぶしを図る状況。
すでに作戦目的は伝えられている。
トライヘキサの制御に使われている聖杯に、その本来の持ち主であるヴァレリーが接触することで、聖杯同士を共鳴させて聖杯を無力化。
そこに、対トライヘキサ用の術式を発動させ、トライヘキサを一時的に無効化する。
そしてその間に超獣鬼を利用して周囲の敵を可能な限り減らし、一定戦力まで減らせれば、各勢力から選ばれたメンバーによる、対トライヘキサ用の最終手段を起動させるとのことだ。
そして、トライヘキサは超獣鬼が直接迎撃を行っている。
ニエ・シャガイヒが投降したことでできた、この切り札。各方面の技術者が協力したことで、一時的にだが超獣鬼に収束特化した形で業魔化を発動。それで対抗することが可能になった。
むろん、超獣鬼の戦闘能力は龍神に比べれば間違いなく劣る。まともに戦えば短時間で倒されるだろう。
しかし、そこはきちんと考慮済み。
トライヘキサの足止めに必要ない性能は業獣鬼並みに低下させることによって、トライヘキサの足止めに特化した対トライヘキサ用アンチモンスターになった。そのしぶとさは、間違いなく龍神ですらうんざりするほどだ。
そして、その足止めが成功すればこちらの勝利の可能性は大きく増える。
しかし、そう簡単にそれをさせるほどヴィクターも馬鹿ではない。
すでに連合軍は、ヴィクターの猛威にさらされ始めていた。
迫る来る拳によって叩き込まれた爆発が、一撃で上級悪魔を粉々に吹き飛ばす。
それに激昂した眷属悪魔が一斉に攻撃を放つが、それは敵の体に触れた瞬間に、爆発によって弾き飛ばされた。
そして、その瞬間大量に放たれたロケット弾が、眷属たちすら跡形もなく粉砕する。
この間わずか数分足らず。文字通り圧倒的な戦闘能力を示したものは、それに気おされる連合軍を見て鼻で笑う。
「なんだなんだぁ? 和平連中の英雄たちは、こんなもんで足を止めるのかよ?」
心底呆れたといわんばかりに、英雄派幹部であるヘラクレスはため息をつく。
人間がどこまで異形たちに戦えるか。そして、人という生命体は一体どこまで遠くへ、高くへ、先へと進むことができるのかを求める組織。それこそが、英雄派だ。
その英雄派の在り方に忠実な自分たちとしては、この世界の危機に立ち向かうであろう強者たちとの戦いは楽しみだった。
なにせこちら側は最強クラスの魔獣を投入しているのだ。いやでも日本にいる勢力は最強クラスが出てこなければいけない。
それが、蓋を開けてみれば雑魚しか出てきて来ない。たかが上級悪魔と眷属を、文字通り秒殺した程度で気圧されるような生ぬるい相手だ。
混戦にもほどがあるせいでD×Dのメンバーとも接敵していない。実に残念だ。
この戦いは、まず間違いなく世界の歴史でも類を見ない激戦だろう。だからこそ、戦場の
ああ、あの時自分と立ち会った、あの男のような敵が来てくれないものか。
そう思いながら有象無象を超人による悪意の波動で殲滅しようとし―
「そうはいきません!」
その瞬間、周囲に穴が開いて攻撃が発生した。
放たれた攻撃がすべて撃ち落とされる中、その爆炎を切り裂いて、黄金の輝きが迫りくる。
そして、その拳をあえてヘラクレスはノーガードで受け止める。
代わりに放つのはカウンターの拳。むろん禁手も発動させ、遠慮も躊躇もない最大威力。
それを相手も、真正面から受け止める。
ヘラクレスがこの戦場で発生させたすべての攻撃を上回る威力と轟音に、その場の戦場にいた字があるものが全員戦慄する。
ヘラクレスがそれだけの威力を出したことにもだが、相手がそれと同等の威力を出したことにも驚愕ものだった。
そして、そのお互いの攻撃はお互いを倒すには遠く及ばない。
その事実に再び多くの者たちが戦慄する中、ヘラクレスは歓喜にその身を震わせる。
思えば奇妙な男だった。
種族としての才能は絶無に近い。にもかかわらず、若手の純血では最強というわけのわからない男。
しかし、その実力は正真正銘本物。なにより、自分とは因縁がある。
ならば、この最高の舞台で決着をつけるのも面白い。
「来たな、サイラオーグ・バアルぅ!!」
「ああ、冥界の、いな、この世界の敵たる貴様を倒しに来たぞ、ヘラクレス!!」
拳の応酬を再開しながら、2人は同時に戦意を全力で燃やす。
ネメアの獅子を従える、次期大王サイラオーグバアル。
ネメアの獅子を屠ったものの魂を継ぐ、英雄派幹部ヘラクレス。
今ここに、冥界でつかなかった決着をつけに、この戦場で最大の打撃戦が展開された。
一方そのころ、グレモリー眷属で苦戦に追い込まれるものたちが続出していた。
彼らはこの戦線においても、間違いなく最高峰の戦士たちである。切り札といってもいい。
しかしそれでも分散されたうえで精鋭をぶつけられれば、苦戦は必須だ。
そして、そのうちの一つをなすのは、英雄派幹部が一人にして、最大の成果を上げた者、ジャンヌ・ダルク。
「あらあら、聖剣使いが二人掛かりでこの程度かしら?」
「ちぃ!」
振り下ろされるデュランダルを素早くかわしながら、ジャンヌは遠慮なく生み出した魔聖剣を振るう。
デュランダルやエクスカリバーに比べれば格下の魔聖剣だが、しかしその多様性はそれを凌ぐ。
さらに、ジャンヌは生み出す魔聖剣の形状をすべて全く同じにして、しかも一撃一撃ごとに完全に別のものに切り替えるという戦法を取っていた。
外見こそ同じながら、能力、質量、重心のすべてが全く異なる魔聖剣。それは、一見すると同じように見えて全然違う攻撃に他ならない。
受ける側として完膚なきまでに調子が崩され、そしてそれが悪条件となり追い込まれる。
むろん、言うほど簡単な攻撃ではない。
一撃一撃ごとに外見以外は全く違う攻撃は、確かに敵にとってやりにくい。しかし、それは振るう側にとってもやりづらいのだ。
それをなしとげるだけの技量。それを十代で習得するだけの修練。そしてそれを欲し望む執念。
彼女は英雄の末裔として、
もっと前方へ。もっと高所へ。もっと遠地へ。
それを戦場で求める者として、その才能と努力をすべて費やし、さらに神器を大量に移植する狂気すら費やした。
それを、たかが悪魔と天使に変化するだけの強化で済ませているものに崩せるわけがない。
いかに伝説の聖剣デュランダルとオートクレール、そしてエクスカリバーを組み合わせようと、数多くの神器を複合して生み出された魔聖剣がある限り崩されることは決してない。
現実問題、ゼノヴィアとイリナは見事に追い込まれていた。
それをアーシアが回復でしのいで見せるが、然し限界はある。
すでにアーシアの禁手は使用時間を超えて使えない。そして、それを見計らっていたかの如く、ジャンヌは攻撃の手を激しくしていた。
さらに魔聖剣の龍がバックアップで攻撃を行い、周囲の味方を接近させない。
このままでは、間違いなく押し切られる。
「くっ! これが、英雄派の幹部、ジャンヌ・ダルクの本気だというのか……?」
「まるでクリスタリディ猊下やストラーダ猊下を相手にしているかのようだわ……っ」
動きそのものには若さがあるが、しかしそれを勢いという明確な武器として運用している。そして、その天賦の才を圧倒的な執念で鍛え上げ、さらに狂気的な神器移植手術によって強化したのが、目の前にいる難敵。
「足りないわよ天使ちゃんに悪魔ちゃん! そんなことで、私達
ジャンヌは失望すら感じて、攻撃を激しくする。
これでも攻防のバランスをあえて崩し、付け入るスキを与えている。すぐに直せる程度の余裕は置いているが、せめてそれぐらいしてくれなければ全力を出す価値もないのだから。
しかし、ゼノヴィアもイリナも追い込まれ続けているのが現状だ。
心から言おう、つまらない
もっと遠く、もっと高く、もっと早く、もっと強く。弱い人間として生まれてきて、然しだからこそもっと向こうを目指す存在である
しかし、敵は未だに自分の足元にも及ばない。この禁手の真の力を出させることもできない。
これではだめだ。この自分たちが行ってきた中でも最大限の戦いが、この程度で終わるなどあってはならない。
こうなれば、さっさと目の前の敵を蹂躙して、次の敵に挑むべきか。
八百万の神々と相対すれば、より難敵と戦うことで、より遠くへと行くことができるはず。
そう、思ったその時だった。
「……させません!!」
上空から振り下ろされる攻撃を、ジャンヌは攻防のバランスを戻すことで防ぎ切った。
しかし、その衝撃波デュランダルのごとく豪快勝つ壮絶。ジャンヌの筋力では受け流す必要があるレベルだ。それを、馬鹿正直に受け止めてしまった。
結果、ジャンヌは一気に地面に叩きつけられ、膝をつく。
……その事実に歓喜し、ジャンヌは目を輝かせて攻撃を行ったものを視界に映す。
そこにいたのは、堕ちた聖女。
かつて苦しみから逃げるように悪魔の甘言にはまり、そしてその結果さらに苦しむことになった馬鹿な女。
しかし、自分達とは違う英雄によって立ち直り、最後の意地を張りとおした元聖女。
「雑魚が追加した程度では意味がないでしょう。……ですが、そう簡単にはさせません!!」
シシーリア・ディアラク。ここに登場。
そして、この戦場もまた急変することとなる。
一方そのころ、この戦いの切り札であるヴァレリーは、あえてもう一人の切り札と共に、ごくわずかな護衛で突貫していた。
下手に目立てばその時点で集中攻撃を喰らうこととなる。いかにヴァレリーが吸血鬼の真祖である
ツェペシュ家の出で、ハーフであるがゆえに神滅具まで持っているとはいえ、それでも戦闘など経験したことのないか弱い女性なのだ。しかも、つい最近まで昏睡状態だったものだ。
自衛能力は間違いなく低い。然しだからこそ、目立つような護衛の数を用意するわけにはいかなかった。
やるならば少数精鋭。それも、神にすら届くような精鋭でなければならない。
ゆえに、それに選ばれるのは神殺しに他ならない
『ヴァレリー! 危ないからしっかりつかまっててね!』
「わかってるわよ。ギャスパーったら心配性なんだから」
「……ヴァレリーさんはさすがに緊張感が足りない気がするのですが……」
ギャスパーの言葉にのほほんと対応するヴァレリーに、ロスヴァイセは額に手を当ててため息をつく。
わずか三人でのチーム構成だが、この三人が担う役割は非常に重い。
なにせ、ヴィクター経済連合の最大最強にして根幹たる戦力、トライヘキサをどうにかする、本命ともいえる2人なのだ。その価値は非常に重いといっても過言ではない。
トライヘキサの封印術式を何とか用意することに成功した、ロスヴァイセ。
トライヘキサを制御する聖杯をどうにかできる可能性がある、切り札中の切り札であるヴァレリー・ツェペシュ。
この二人に何かあれば、作戦は瓦解するといってもいい。
しかし、大量の護衛を投入するのも帰って目立って困難だ。最悪、トライヘキサを無理やり動かして砲撃すればそれで片が付いてしまう。
だからこそ、その護衛はギャスパーに任されたのだ。
精鋭中の精鋭であり、且つその気になれば数を増やすこともできるギャスパーこそ、この護衛に最適。そして、ギャスパー自身この役目を譲る気など欠片もない。
そしてその作戦を成功に導くために、仲間たちや多くの戦力が敵を引き付けてくれている。
ゆえに、この戦いを逃すわけにはいかず―
「させると思っているのかしら?」
―そして、敵も馬鹿では決してなかった。
舞い降りる影は、二つの魔剣をもってして、攻撃を叩き込もうとする。
それをギャスパーは闇で迎撃するが、しかしその瞬間、魔剣もまた闇を纏った。
ぶつかり合う闇と闇。そして、その拮抗は魔剣の担い手に傾き、ギャスパーの頬を浅く切り裂く。
『ヒルト・ヘジン!』
「ええ。貴方の相手は私みたいね」
静かに魔剣を構えたヒルトは、そして視線をロスヴァイセに移す。
そこには、明確な敵意があった。
「オーディンのお付きだった女ねぇ? 八つ当たりじみてる気もするけど、確実に切り殺したいところね」
そして遠慮なく刃を向けようとするが、それより先にギャスパーが攻撃を仕掛け、ヒルトはそれを防ぐ。
適合率ならオリジナルのギャスパーの方が上。しかし、能力の相性差でヒルトはそれに対抗できる。
超広範囲を対応し、大漁の闇の獣を生み出すギャスパーの力は対軍に向いている。
反面、個人の鎧として機能し、超高密度で運用するヒルトは、対人に向いている。
ゆえに、真正面からのぶつかり合いに限定すれば、ヒルトはギャスパーを凌ぐのだ。
『……彼女はこちらで引き受けます! ヴァレリーは任せました!!』
「わかりました。無茶はしないでください」
ロスヴァイセの言葉に、ギャスパーは頷きながらも無理だと確信していた。
相手はイグドラフォースの一員であり、かつ自分と同じ神器の持ち主。それも、さらに魔剣まで用意している。
だが、やるしかない。
ここでロスヴァイセを消耗させるという選択肢はない。ヴァレリーを戦わせるなどもってのほかだ。
志願して護衛を引き受けた。なにより、この戦いを否定することなどできるわけがない。
ならば、やる。
ただそれだけだ。
トライヘキサ停止前に、三か所で戦闘が勃発。
特にヒルトは、速攻で撃破しなければ作戦に支障をきたすヴァレリーの妨害を行うことになっております。
ゆけギャスパー! 男を見せろ!!