ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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最終章の第一ラウンド。

一話丸ごと使って、サイラオーグとヘラクレスの決着を見せますです、ハイ。


最終章 11話 獅子大王と獅子殺し

 

 その打撃戦を見切れるものは、その戦場にはお互いしかいなかった。

 

 そして、見切って回避するだけではこちらが攻撃できないのも理解していた。

 

 また、どちらも自分の攻撃力と同じぐらい、自分の防御力にも自信があった。

 

 ゆえに、獅子王の大王と獅子殺しの英雄の戦いは、ノーガードでの殴り合いに終始する。

 

 殴る

 

 殴る殴る

 

 殴る殴る殴る

 

 殴る殴る殴る殴る

 

 殴りつけ殴り返し殴り倒し殴り殴り殴り殴り殴って殴って殴りまくる。

 

 小手先の技量など知ったことかといわんばかり。そんな極めて最高峰の戦闘能力の保有者により、極めて原始的な戦いが、その近辺で最高峰の激戦だった。

 

 獅子の鎧を身に纏うサイラオーグ・バアルは、最上級悪魔クラスに到達している。

 

 近接打撃戦ならば、ヴァーリ・ルシファーすら超えると称される、D×Dのなかでもトップクラスの実力者。つい先日、ビィディゼ・アバドンを匙元士郎との二対一とはいえ倒したばかりの男である。

 

 しかし、それに相対する者もまた規格外。

 

 英雄派幹部、ヘラクレス。

 

 大量に神器を移植し、その多くを禁手へと至らせた剛の者。すでに最上級悪魔すらこの戦いで撃破している猛者だ。

 

 その近接打撃戦は、神クラスですら接近できないほどの高密度だ。

 

 お互いに下手な防御は逆効果になると判断し、徹底的に頑丈さだよりのノーガード。そして、回避すら投げ捨てた攻撃に振り切った打撃は、それゆえに半端に回避や防御を考慮してしまう物には判別できない。

 

 その超高密度の打撃戦を行いながら、ヘラクレスは歓喜で嗤う。

 

「ははははははははははははははははは!!! そうだよ、こういうのがしたかったんだ!!」

 

 アッパーカットでサイラオーグの首をのけぞらせ、そこに遠慮なく拳を叩き込みながら、ヘラクレスは歓喜する。

 

 曹操が示し、そして長可が正してくれた英雄への道。

 

 それはすなわち、種別に問わず強き願いを持ち、前進すること。

 

 最後まで前進し続け、人より前に出ることこそが勝利への道だった。

 

「そうだそうだそうだそうだ!! もっと俺を殴り倒せ!! 殺す気で来いやぁ!!」

 

 フックにアッパーにリバーブローにストレート。そのすべてが、上級悪魔クラスなら一撃で粉砕できる桁違いの威力。

 

 それを全力で放ちながら、ヘラクレスは猛攻を続ける。

 

 そして、その勢いに任せてさらに一手を追加する。

 

偉人による決意の飛行(デトネイション・マイティ・フライト)ぉおおおおおお!!!」

 

 後方から連続で爆発が発生し、ヘラクレスは桁違いの推進力を発揮する。

 

 音速突破の急加速によって放たれたJOLTブローが、遠慮なくサイラオーグを後方へと弾き飛ばす。

 

 それは例えるなら、人間サイズのゼロ距離砲撃。

 

 ゆえに、空中という状況もあってサイラオーグは一気に数百メートルも弾き飛ばされる。

 

 それを周囲の連合軍が慌てて回避する中、ヘラクレスは一気に再加速して追撃を開始する。

 

超人による悪意の波動(デトネイション・マイティ・コメット)ぉおおおおお!!!」

 

 さらに連続攻撃で追撃を叩き込みながら、ヘラクレスは一期にサイラオーグに迫る。

 

 遠慮はない。微塵もない。そんなものは失礼極まりない。

 

 目の前にいるのは、神すら打倒しかねない、規格外の打撃戦の鬼。

 

 天賦の才に恵まれた自分とは違い、悪魔でありながら魔力をかけらも持たない底辺からスタートした男。

 

 それが、いつの間にやら若手悪魔最強。そこまで上り詰めることは奇跡といっても過言ではない。普通は不可能だと断言していい。

 

 それだけの強さを得るのに、一体どれだけの努力を重ねてきたというのか。死に物狂いなどという言葉でどうにかできる者ではない。

 

 脅威と認めよう。難敵と認識しよう。敬意すら払おう。

 

 ゆえにこそ殺す。

 

 先駆者(英雄)の好敵手として最高峰の存在だと認識し、ゆえにこそ華々しい散り方を与えてやらねばならない。

 

「行くぜ! 全力全開、最大出力!!」

 

 手加減無用。情け無用。躊躇いなど持てば、その時点でこちらが死ぬ。

 

 故に全力、最大威力。出せる限りの限界の一撃を叩き込み、最強の手札をもって倒す。

 

 出なければ、こちらが負けることすら十分にありうる。

 

 最高の敬意をもって、最大の一撃で勝利をもぎ取る。

 

 それこそが先駆者(英雄)という物だろう。

 

「あばよ! おまえを超えて、俺はさらに先に進ませてもらうぜ!!」

 

 そして、わずか数秒で音速突破で弾き飛ばされたサイラオーグに追いつき―

 

越人による、戦意の一撃(デトネイション・マイティ・ブレイク)ぅううううう!!!」

 

 最大の一撃を叩き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヘラクレスは、何一つ間違えてはいなかった。

 

 強敵を倒すために、自分にできる最良の手段を取ったことに否はない。

 

 サイラオーグ・バアルは間違いなく、ヘラクレスが現在闘っている中でも最高レベルの傑物。この戦場に出ている敵勢力の中でも、獅子の鎧をまとった状態なら上から両手で数えることができる部類だろう。

 

 故に手加減も遠慮も必要ない。ヴィクター経済連合がこの戦場に連れてきた中でも最上位の戦力であるヘラクレスが、全力を出す必要がある相手だ。

 

 どちらも小細工に長ける部類でもない。シンプルな戦い方の方が性にもあっているし、力を発揮することもできる。

 

 ゆえに、この勝敗は極めて単純。

 

「いや。そうはいかん。貴様は冥界だけでなく同盟国である日本にとっても大敵だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この戦いの決着は、明白に付けられる。

 

「貴様はここで倒す。俺のすべてをかけても、これ以上貴様に我が同胞たちは傷つけさせん」

 

 その拳が、完璧なカウンターでヘラクレスの顔面に吸い込まれる。

 

 単刀直入に言おう。ヘラクレスは油断も慢心もしていなかった。

 

 この状況下でも相手が反撃してくる可能性は踏んでいたし、むしろ必ず牙をむいてくると確信すらしていた。

 

 つまり、これは非常に単純。

 

 その状態のヘラクレスですら反応できないレベルの力で、サイラオーグが拳を叩き込んだからに他ならない。

 

「が……っ!? いきなり、強く……!?」

 

「いきなりではない、貴様が俺を殴り飛ばしている間に、準備を整えさせてもらった」

 

 サイラオーグが纏う獅子の鎧は、明らかにそのオーラを変化させていた。

 

 その出力は、神滅具の禁手と仮定しても明らかにおかしい。

 

 そして、明らかに外見が変化していた。

 

「なんだ!? 信頼の譲渡でもねえ……!?」

 

「何を言っている。獅子王の戦斧(レグルス・ネメア)は封印系の神器だ。ならば、当然あるだろう、究極系が」

 

 その言葉に、ヘラクレスはその種に気が付いた。

 

 神器の究極は禁手である。兵藤一誠やヴァーリ・ルシファーがさらにその上の領域に到達しているが、基本的にこれは変わりない。

 

 だが、一つだけ例外がある。

 

 それこそが、覇。封印系神器だけが持つ、封印されたものの力を最大開放する最後の切り札。

 

 それは基本的にドラゴン系神器である覇龍(ジャガーノート・ドライブ)が有名だ。兵藤一誠も不完全ながら発動した。ヴァーリの進化方向はその昇華だ。

 

 だが、それは決してドラゴン系神器の専売特許ではない。

 

 覇龍に比べれば若干劣るが、然しほかの魔獣封印系神器にもその領域はある。当然、その極点である獅子王の戦斧もまたしかり。

 

 そう、その名は覇獣(ブレイクダウン・ビースト)

 

 そして、その領域にまたサイラオーグも至ったのだ。

 

 見れば、鎧は黄金だけでなく紫にも輝く、全身からは小金を纏った紫のオーラが放たれる。

 

 これこそが、サイラオーグ・バアルがビィディゼ・アバドンすら圧倒した、彼が至った究極の領域。

 

 その名を―

 

獅子王の(レグルス・レイ・レザー・レックス)紫金剛皮(インペリアル・パーピュア)・覇獣式!! この力をもってして、俺は貴様を倒す!!」

 

 その瞬間、まさに決着はついた。

 

 今迄をはるかに凌駕する速度で、今迄をはるかに圧倒する威力で、今迄をはるかに超越した拳がヘラクレスに連続で叩き込まれる。

 

 その威力は、一発一発が兵藤一誠の真女王における必殺技、クリムゾン・ブラスターに匹敵。

 

 それが連打で叩き込まれ、ヘラクレスの全身は徹底的にたたき伏せられる。

 

 そう。勝敗を決めたのは単純な真理。

 

 できる限りおのれを鍛え続けたヘラクレスとサイラオーグだが、その方向性には違いがある。

 

 大量の神器をそれぞれ禁手に至らせたヘラクレスだが、一つ一つの神器を別々の禁手に至らせた都合上、一つ一つの出力は一つの神器でしかない。数が多い分分散してしまった。

 

 そしてサイラオーグは一つの神器を禁手に至らせただけだが、ゆえにこそ徹底的に鍛え上げ、さらにそれは神滅具だった。

 

 仮定の話でしかないが、もしヘラクレスがすべての神器を合わせて複合禁手にしていたのなら、この勝敗はまだわからなかっただろう。

 

 否。サイラオーグが覇獣をはなつ間もなく勝敗は決していた可能性がある。

 

 それは慢心ではない。しいて言うならば相性。

 

 愚直ゆえにこそ一つの道を究め続けてきたサイラオーグは、その土俵での勝負において圧倒的な力を発揮する。これはただ、それだけの話。

 

 一つの道を究めていた男に、点での勝負に挑んだこと。それこそがヘラクレスの敗因だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 サイラオーグは、かなり疲弊していた。

 

 なにせ、ビィディゼ・アバドンとの戦いを終えた後でのこれだ。そこ迄日が経っているわけではなく、その戦いにも覇獣を使用している。

 

 サイラオーグは確かに戦士としては死に物狂いの努力と恵まれた体によって神にすら届く傑物だ。しかし悪魔としては大王家の特性である消滅が出せないどころか、通常の魔力すらひとかけらも持ってない最下層だ。

 

 覇をどうにかするにはヴァーリ・ルシファーのように莫大な魔力などといった代用品が必要だが、残念なことにそんな器用なまねはできない。

 

 ゆえに強靭な肉体で無理やり生命力の消耗に耐えている。非常に愚直で馬鹿正直な対処方法だ。

 

 だがしかし、ゆえに頑健。故に強固。

 

 その拳は、短時間しか使用できないとはいえど、しかしその短時間でヘラクレスを戦闘不能に魔で叩き込んだ。

 

「……悪いが、俺は(これ)だけで戦ってきたのでな。そう簡単に負けてやるわけにはいかん」

 

「……はは、は。まさか、魔力が売りの悪魔が、(それ)で此処まで、やるとはな……」

 

 ヘラクレスは力なく笑うが、しかし満足げだ。

 

 全力を出し切った上での敗北。そこには一種の達成感があるのだろう。

 

 サイラオーグもそれには理解がある。しかし、それとこれと話が別だ。

 

 速やかにとらえ、封印処置を施した上で後方へと搬送する。

 

 情報を聞き出すもよし。捕虜交換で政治的な取引をするのも良し。そのあたりは政争になれた者たちに任せるほかないだろう。

 

 だがしかし、すぐにでも処置を終える必要がある。

 

 今この戦場では、この時でも戦い続けている者がいるのだ。それも、死んでいく者たちは分に一人や二人では聞かないだろう。

 

 ゆえにすぐにでもことを終わらせようとし―

 

「だが、曹操達(あいつら)の後は追わせねえ」

 

 その言葉に気づいた時、すべては遅かった。

 

 ヘラクレスの体から、光が放たれる。

 

 それは禁手に至ったものとはまったくとなる歪な輝き。

 

 そう、まるで自爆のような―

 

「英雄なら、輝かしく人生を終えてなんぼってなぁ!! 俺は最後まで先駆者(英雄)だ、醜い死体は遺さねえ!!」

 

「貴様、まさかッ!?」

 

 サイラオーグが一瞬の判断で行動するも、しかしヘラクレスの頑健な体を一撃で絶命させるのは不可能。

 

 ゆえに、その一撃を止めることなどできるわけがない。

 

「―死人による決死の自殺(デトネイション・マイティ・ジエンド)ぉッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その一瞬の爆発は、戦略核にも匹敵する威力を模ていた。

 

 それこそが、ヘラクレスが五つ取り込んだ巨人の悪戯(マイティング・デトネイション)の禁手が一つ。

 

 遠距離面制圧を可能とする、超人による悪意の波動(デトネイション・マイティ・コメット)

 

 近接戦闘において桁違いの威力を発揮する、越人による戦意の一撃(デトネイション・マイティ・ブレイク)

 

 人間ゆえに持つ欠点を克服する、偉人による決意の飛行(デトネイション・マイティ・フライト)

 

 神滅具の禁手による一撃にすら耐える、鉄人による覚悟の防壁(デトネイション・マイティ・アーマー)

 

 そして、最後の一つがこの禁手。

 

 英雄として、最後まで前のめりに死ぬ為に。そして仲間達に最後まで貢献する為に。その覚悟を決めた最後の一撃。それに特化したがゆえに神滅具の禁手すら凌駕する威力を込めた文字通りの最終兵器。

 

 それこそが、死人による決死の自殺(デトネイション・マイティ・ジエンド)

 

 その攻撃は付近にいた者達を跡形もなく消し去る。

 

 大半が下級、腕利きでも中級、良くて上級。その程度では、近距離から放たれた戦略核クラスの攻撃を防ぐことなどできない。

 

 そして、至近距離の爆心地では。

 

「………ぬかった、か」

 

 全身がぼろ雑巾のようになった、サイラオーグが息も絶え絶えにそう漏らす。

 

 魔王クラスすら打倒する覇獣をもってしても、至近距離からの戦略核クラスの火力は絶大だった。むしろ、生きているのが不思議なくらいのダメージを追っている。

 

 致命傷ではない。だが、全身をくまなく傷つけたその火力は、戦闘続行を可能にするような怪我でも断じてなかった。

 

「……無念だ。兵藤一誠、あとは、任せる……」

 

 その言葉を最後に、サイラオーグも意識を失って倒れ伏す。

 

 トライヘキサの日本侵攻をかけた大激戦。初戦より魔王クラスが戦闘不可能になるほどの桁違いの激戦が巻き起こされた。

 

 この戦い。これですら前座の一つでしかない、激戦の連続が繰り広げられることとなる。

 

 




ヘラクレス、意地でサイラオーグを無力化。ある意味でトップクラスの戦果をあげました。

ここで残念ながらサイラオーグ退場。ビィディゼとの戦闘から回復が完全でなかったことが仇となりました。
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