ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
彼女の禁手をあまり生かせなかったのは、正直心残りです。リベンジの機会がちょっとほしいところ
放たれる全包囲攻撃を回避若しくは防御しながら、リアス達はデイアに反撃するチャンスを見定める。
既に異空間に飲み込まれ、こちらが圧倒的に不利である。
その力により大量のドーインジャーとあらゆる方向からの魔法攻撃が放たれ、リアスたちは苦戦を強いられていた。
この四人の中で最強ともいえる祐斗が、デイアとの相性が致命的に悪い事も大きい。
魔剣創造から派生する神器の力を基本とする祐斗にとって、神器の段階を一段階下げるデイアの禁手は最悪の相手だ。
聖魔剣の力も、聖覇の龍騎士団も使えない。
かろうじて聖剣は使うことができるものの、相手が悪魔でない以上、魔剣と大して変わりはしない。まったくもって意味がない。
ゆえにグラムを使うしかないのだが、これまた負担が致命的に大きいという最悪の状況。
ある程度の安全運用は確立したが、それは聖魔剣や騎士団を使っての事。そもそも禁手を封じられては意味がない。
「これは、流石にまずいですわね」
「……接近できない……っ」
朱乃も小猫も苦戦を強いらている。
ただでさえ、デイアの力は遠距離戦闘に特化している。その砲撃戦闘能力は、生身でもロスヴァイセに匹敵する。
そこにイグドラシステムによる身体能力向上。更に保有する聖母の微笑による回復まで追加されているのだ。
不幸中の幸いは、一人で相手をしている為、味方を回復するという手段が使えない事だ。
もしこれで、他のイグドラフォースがいたらどうなっていたことか。いや、量産型のグレンデルやラードゥンがいただけでも決着はついていただろう。
ひとえに周囲の敵を殲滅できるだけの力があることが理由だ。それをなせるリアスたちが、若手の領域を遥かに越えた規格外であることの証明だろう。
しかし、相対する敵も規格外。
イグドラフォースが一角、アルケイデスの精鋭、デイア・コルキス。
その戦闘能力は、後天的移植も含めれば極覇龍とすら渡り合えるだろう猛者だ。いかにリアスたちが若手の規格外といえ、それには限度がある。
そして、デイアはここに来て更に手札を切った。
「出し惜しみはしません! 禁手化!!」
その言葉共に、デイアの周囲から赤く輝くフィールドが発生する。
それに対して防御を行おうとし、リアスはふと気が付いた。
デイア・コルキスの神器は
そしてそれを展開する理由はない。箱庭の力によって生み出されてるドーインジャーでは回復の効果は届かないのだ。
なら、何をするつもりなのか。
リアスはそれに一瞬で思い至った。
理由は簡単。その輝きだ。
聖母の微笑の輝きは緑系統だ。しかし、今の光は赤系統である。
まるで
「皆! あの光に触れてはダメ!!」
言うが早いか、機動力で劣る小猫を抱えてリアスは一気に飛び退る。
それに合わせて離脱する朱乃と祐斗を見ながら、デイアは感心する。
「……既に読みましたか、お見事です」
「やっぱり! その力は、回復の反転現象……!」
聖母の微笑の回復力は強大だ。
その回復力があるからこそ、リアス・グレモリー眷属はこの一年足らずの激戦を全員で生き残る事ができたと言ってもいい。
ゆえにこそ、それが攻撃力と変換された時の恐ろしさは察する事ができる。
それほどまでに、圧倒的な力の具現が襲い掛かっていた。
「我が禁手、
その宣言と共に、デイアは一気に接近する。
神速を誇る神喰狼フェンリル。その子供であるハティを取り込んだイグドラハティ。その速度は、神速と言っても過言ではない木場祐斗にすら匹敵する。
そこに範囲に特化したデイアの力が加わわれば、一瞬で勝負はつくだろう。
そして、僅か一分でオーラは届き―
「いいえ。滅すのは私の専売特許よ」
―その一分で、反撃の策はなされていた。
リアスは、これでも勤勉である。そして、努力家である。
というより、悪魔業界では珍しい努力を旨とする人物だ。眷属を鬼コーチとして鍛えているし、自身もしっかり特訓している。
そう言う性分故にアザゼルの指導も受けている結果、既に彼女も最上級悪魔クラスの力を身に着けている。ゆえにこそ消滅の魔星という極みを得ているのだし、それによって二度も伝説級の邪龍を倒す事ができたのだ。
そして、その勤勉さは仲間達の戦い方も学んでいる。
……かつて、彼女の幼馴染であるソーナ・シトリーはヴァーリ・ルシファーの襲撃を受けた。
史上最強の白龍皇と呼ばれる事が確実で、既にその片鱗を見せつけてきたヴァーリは、その時点のソーナ達が戦うには危険過ぎる相手だった。
だが、ソーナ達は勝った。
ゆえにこそアウロス学園設立が可能になったのだ。それほどまでのジャイアントキリングをなしとげる彼女ならば、多くの悪魔をヴィクターから貴族達を守る戦士とできるのではないかと考えた者達が多かったのだ。
そして、その策の根幹が
元々は、堕天使側が神器研究の過程で編み出した技術だ。本来の用途は相反する属性を入れ替える事で、防御に転用する事である。
だが、ソーナはこれを攻撃的に運用した。
ヴァーリ・ルシファーの白龍皇の光翼の力を反転させて、一気に短期決戦に持ち込んだのだ。
そして、その本来の本命は、その襲撃の一件で中止になったリアス達とのレーティングゲームだった。
その力をデュランダルの力を無効化させることや、アーシアの回復を反転させてアーシアを無力化し、あわよくば多くの者たちを倒すことが狙いだった。
その技術と発想は見事であり、旧魔王派がアーシアを利用したこともあったほど。それほどまでに、技術力も発想も成果も絶大だったのだ。
そう、
「
リアスは渾身の魔力で、圧倒的な効果範囲を発揮する攻撃を反転させる。
一瞬で、攻撃の力は本来の回復の力に反転された。
そして、その一瞬をもってして、祐斗が迫る。
ドーインジャーを朱乃と小猫に任せ、祐斗はグラムを全力で解放させて一気に接近した。
想定外の事態に、デイアの反応は一瞬遅れる。そして、その瞬間に祐斗は間合いにまで入っていた。
「……くっ!!」
我に返ったデイアは、魔法の展開が間に合わないと見るや爪での近接戦闘に切り替える。
その攻撃速度はまさに神速。並大抵の最上級悪魔なら、この一瞬で迎撃されて即殺だろう。
しかし、その一瞬の攻防を木場祐斗は決して逃さない。
彼は、最強の騎士である沖田総司の弟子。そして、この一年足らずの極限の戦場を生き抜いてきた、リアス・グレモリーの剣。なにより、史上最優にして最強の赤龍帝たる兵藤一誠と並び立つ存在。
熾烈な激戦と過酷な訓練で高められた技量は、まさしく神業。
イグドラフォースがなんだという。神滅具がどうしたのという。その程度乗り越えられないようで、歴代で最も規格外の赤龍帝たる兵藤一誠は越えれない。
如何に神殺しの具現を持ち、神殺しの狼を宿そうと、デイア・コルキスは魔法使いであって戦士ではない。その近接戦闘技量は、性能頼りで修練が足りない。
ゆえに―
「僕達の、勝ちだ!!」
―この近接戦闘に持ち込めた時点で、グレモリー眷属の勝利は確定した。
祐斗Side
あ、危ないところだった。
聖母の微笑を反転させて、攻撃に特化させた禁手。まともに触れれば、即死は免れない。それほどまでの脅威だった。
だけど、僕達は決して一人じゃない。そして、たった一つの眷属で戦っているわけでもない。
D×Dは様々な眷属やチームが一つになった組織だ。そして、その戦いの経験なども語り合っている。特にシトリー眷属とは、同じ駒王学園に通っている事もあってよく戦いについて会話しているなかだ。
だから、何とかなった。
シトリーがヴァーリを倒した方法を知っていたからこそ、この難敵相手に逆転の布石を打てた。
……とはいえ、僕も限界に近い。
イグドラハティの装甲を突破する為に、グラムの力を文字通り最大出力で発揮した。それも、聖覇の龍騎士団に持たせる事もしていなければ、聖魔剣による防備もない状態でだ。
おそらく、どちらにしても僕は戦線離脱だろう、呪いが酷過ぎてこれ以上の戦闘は無理だ。
まったく。これを躊躇することなく全力で振るい続けてきたジークフリートには頭が下がるよ。イッセー君の力を借りたとはいえ、一瞬でも五分の戦闘ができたことが信じられない。
とはいえ、流石に今は倒れるわけにはいかない。
リアス部長の剣である僕が、目の前の敵を倒す前に倒れるのはいただけない。小猫ちゃんや朱乃さんだけに任せるわけにもいかないしね。
だから、僕はイッセー君から受け継いだ根性で無理やり剣を構える。
そして、目の前のデイア・コルキスは血を吐くと、静かに苦笑した。
「……調子に乗りすぎました。やはり、前衛は必要でしたね」
そう言いながら、彼女は魔方陣を展開する。
そして僕が動くよりも早く、イグドライバーに触れた。
その瞬間、イグドラハティの装甲が解除され、イグドライバーとジェルカートリッジがどこかに転移する。
「さす、がに……。あれを奪われるわけには、行きませんから」
そう言いながら、デイアは壮絶な笑みを僕たちに向ける。
「アルケイデスはまだ残存、しています。オリュンポスには……それ、相応の、罰を与えて見せると……断言、し、ま―」
そして、それを最後まで言い切る事なく、デイアは海に落ちていく。
……倒したか。
イグドラフォース。かつて僕達を圧倒した存在。そして、今この場においてもリアス部長が機転を利かさなければなすすべもなく殺されていたであろう実力者。
達成感はある。敵将を討ち取った事に対する高揚感もある。
だけど、それ以上に仲間達が心配だ。
後衛特化という明確な欠点を持つ相手ですらこの脅威だ。他のメンバーはより強大だろう。少なくとも、油断できる相手ではない。
にも関わらず、ここで戦線離脱しなければならない自分が恨めしい。
そう思いながら、一瞬目の前が真っ暗になる。
どうやら呪いの影響で失神したらしい。
まずいね。すぐに立て直さないと、僕も海面に激突してしまう。
そう思ったその時、僕の体が柔らかく温かい何かに包まれた。
「……お疲れさま、祐斗」
リアス部長……。受け止めてくれたんですか。
あ、これイッセー君に嫉妬されるかもしれないね。後で知られたら色々大変そうだ。
リアス部長もそう思ったのか、少し苦笑している。
「ありがとう、私の最強の
ええ、光栄です、部長。
僕はそう思いながら、今度こそ意識を失っていった。
出来る事なら、例え死んでも起きて戦い続けていればよかったと、後悔するのは起きてからの事だ。
聖母の微笑の禁手として、回復能力の反転は一度やってみたかったのです。実際にダメージを与えることはできませんでしたが、グレモリー眷属を追い込む活躍を掛けたので満足です。