ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
そして決着はつき、短い準備期間へと移行します。
これは、その最後の一幕と、残された者の別れの言葉…………。
第一部 エピローグ 残された者
それは、致命的な隙だった。
「曹操は愚か、リムヴァン宰相までも!?」
相次いで報告される戦士の報告にゲオルクは明らかに狼狽する。
この戦場でも最強格である曹操とリムヴァン。この二人が討たれる事など天地がひっくり返ってもあり得ない。
だが、現実はそうなった。
「なら、これ以上の殲滅戦は時間の無駄か」
ゲオルクはそう吐き捨てると、即座に結界を転移重視にし、戦場全体へと行き渡らせようとする。
宰相の戦死は間違いなく大きく混乱を生む。このままでは、ヴィクターの精鋭の多くが討ち取られる危険がある。
それを防げるのは、長広範囲の転移フィールドを作り出す事の出来る自分だけだ。
「―やっと、隙を見せましたね?」
―ゆえに、それを見逃すほど愚かな事は起こらなかった。
ゲオルクの腹部から、美しい刃が突き出る。
それは、最強の聖剣。
それは、騎士の王の剣。
それは、王者を選ぶ選定の剣。
聖王剣コールブランド。またの名を、カリバーン。
その一撃は、ゲオルクに明確な致命傷を与えていた。
「馬鹿な……っ! なぜ、我が居場所が―」
「ああ、うん。魔法の感知対策とかいっぱいしてたのはすごいんだけどね?」
意識が急速に消え落ちる中、プリス・イドアルの声が届く。
そこには、半分呆れの色が込められていた。
「科学的なアプローチが足りてないかな。知ってる、サーモセンサーって?」
その言葉の意味を理解する余力すらなくなったのは、彼にとって幸運だろう。
「熱源を誤魔化さなければ、私なら感知できるから。……なんか、ごめんね?」
この戦いで最もうっかりミスによって死んだなど、彼にとって死んでも死にきれない言葉を、理解させるのはあまりに酷だからだ。
戦いは、終わった。
全てのトライヘキサは、神々が隔離結界領域に引きずり込み、封印される。
そして各勢力の強き者達が一万年近い年月をかけ、トライヘキサを完全に滅するまで戦い続けるのだ。
むろん、不安の声も大きい。
トライヘキサが逆に彼らを倒し、再び地球に攻め込む可能性。彼らがトライヘキサを倒している間に、ヴィクター経済連合の攻撃でこちら側が負ける可能性。
挙げ出せばキリがない。それほどまでにトライヘキサの猛威は恐怖を刻み込んだ。その上ヴィクターは大打撃を受けたとはいえ、組織として壊滅したわけではないのだ。
宰相リムヴァンこそ討ち取る事に成功した。力の象徴であるリリスは、いつの間にかアザゼル総督が手なづけ、オーフィスとともに仲良く兵藤一誠の家に住んでいる。そして、トライヘキサは隔離結界領域に。
この時点で、力と実務のトップが無力化されたのだ。更に攻防戦による、精鋭の多くの戦死。負った怪我だけなら、ヴィクターの方が大きいと言ってもいい。
だが、同時にこちら側が受けた打撃も大きい。
各勢力は主神クラスを含めた指導者や強者を、トライヘキサ封印の為に大量に動員する事となった。
もとより立場ゆえに前線に出る事は少なかったが、彼らが後ろにいるという事は士気に繋がっていたのだ。
結果、どの勢力も程度はともかく混乱が起き、技術流出などが頻繁に発生する事となる。
これに対抗する為、それぞれの勢力も動きを見せる。
こと悪魔側は、これに対して三つの対策を提案。各勢力の重鎮達にも認められる事となる。
一つは、国際レーティングゲーム競技大会の開催。
もとより、和平をより強固にする為の方策は必要だった。例えば、各勢力の根強い他勢力への敵意を発散させるガス抜き。例えば、皆が共同で行う事による仲間意識を強くできるイベント。
そこに四大魔王のレーティングゲームをよりクリーンなものにしたいという思惑が重なり、堕天使元総督アザゼルの協力もあり、かなり進んでいた。
更にレーティングゲームによる競い合いが強者を育成するのはどの勢力も想定しているところ。戦力を失ったからこそ、死ぬことなくしのぎを削り合えるレーティングゲームの価値は上昇していくのだ。
一つは、この和平勢力に明確な名前を付ける事。
名前を付けるというのは、単純だが帰属意識を強めるのには効果的だ。明確に一つの組織や陣営としての名前があれば、同じメンバーという意識が仲間意識を呼びやすくなる。
ヴィクター経済連合に対抗する勢力の集まりという言い方も面倒である。明確な、誰もが使う共通の呼称は必須ともいえた。
これについては、ヴィクターとの戦いの始まりであった駒王会談及びその場所となった駒王町の駒王学園からあやかり、ピースキング和平連盟というのが最有力候補で、これに関してもほぼ確実に決定される。
そして、最後はある意味で単純な策だ。
英雄を祭り上げる事によって、そちらに意識をそらす。
ちょうど良い事に、ヴィクターとの主要な激戦の数多くに参加している者がいる。
その戦いが立志伝と言っても過言ではない、急成長を成し遂げた若者がいる。
リムヴァン・フェニックスを討ち取った、英雄が一人いる。
そして何より、彼は冥界の人気者だった。
歴代最優にして歴代最強の赤龍帝、兵藤一誠。彼の上級悪魔昇格が、試験を飛ばしたうえでほぼ確定になる。
これまでの転生悪魔史上でも類を見ない、転生後一年足らずでの上級悪魔承認が行われようとしていた。
そして、数時間後。
ペト・レスィーヴは、その海岸に一人訪れていた。
日本防衛戦からまだ半日。本来なら戦後処理を行わなければいけない時だ。
だが、それをこっそり抜け出して、ペトはここに来ていた。
それを手伝ってくれた小犬に、こんなことを言われた。
『ぺっちゃん。こうなること、気づいてなかったの?』
思えば、小犬は勘付いていたのかもしれない。
もし、二択しか選べない時、リセスは英雄である事を選ぶしかないのだ。ペトを選ぶ事はしないのだ。
だから、小犬はリセスになつかなかったのだろう。
小犬は、リセス・イドアルを英雄として愛したりはできないからだ。
そして、シシーリアはそれに気づいてもなおヒロイを愛した。
それは、ヒロイ・カッシウスを英雄として愛していたからだ。
そして、ペトはリセスもヒロイも大好きだ。だけど、2人を英雄として愛する事は出来なかった。
だからこそ、あの時ペトは一撃を放ったのだ。
勝手にやってろ馬鹿野郎。そんな感じの、ある意味で決別の一撃だった。
だが、それでも、ペトは二人が大好きだ。
三人でつるんで行動していた、この一年足らずの生活が大好きだった。
だからこそ、だからこそ、だからこそ。
「この、馬鹿コンビ英雄ぅううううううううう!!」
ペトは、渾身の思いを込めて決別宣言を放つ。
二人が心配しないように。二人に引っ張られたりしないように。
全ての思いをこの声に込めて、ペトは魂の底から叫んだ。
「絶対に、今まで以上に幸せになってやるっすからねぇえええええええええ!!!」
涙は流さない。
後悔はしない。
そして、前に進んで見せる。
ペト・レスィーヴは、必ず三人でいた時よりも充実した人生を送って見せる。
それが、2人に対する決別宣言にして手向けだった。
なんというか、消化試合的に終わってしまったゲオルク。すまん、入れるタイミングがつかめなかったんや……。
それと、プリスの禁手について以前言及していましたが変更します。
もともと熱振動を拡張発展させる形で振動操作能力を与える予定だったのですが、できることが増えてもほとんど効果がダブっていることに気が付いたので、変更することにしました。
それはそれとして、エピローグ終了。
遺されたペトが、ある意味で決別宣言をして終わりました。
ですがご安心ください。きちんと二部はやる予定です。すでに100kb以上書き溜めはあります。
とは言え、原作の方がまだまだ進んでないこともあり、新作とか復刻とかオリ展開とかいろいろ考え中ですね。