ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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シシーリアの事情説明はとりあえず終了。

次はプリスです。


第二部一章 6

「あ、質問追加していいですかー?」

 

 と、そこで女子生徒が手を上げる。

 

 タイミング的にも話を変えるのにはちょうどいい。ある意味で良い事をしたと言っても良かった。

 

「うむ。なんであるか?」

 

「そっちのプリスさんって人も元ヴィクターだそうですけど、イドアルってことはリセスさんの親戚だったりするんですか?」

 

 当然の質問ではある。

 

 なにせ、リセス・イドアルを知らない駒王学園高等部生徒はいないだろうレベルで、彼女は有名人だ。

 

 超絶美女。しかも身体能力抜群。ヴィクターの襲撃時では生徒達を守って八面六臂の大活躍をなしとげた猛者でもある。そしてエロい。

 

 そう、エロいのだ。

 

 男達のスケベ会話に嬉々として混ざる。そして隙あらば童貞を食おうと誘惑し、実際駒王学園の童貞率を数十パーセント単位で減らした猛者だ。ついでに言うと同性愛や両性愛に目覚めさせられた女子生徒も多く、処女率も結構な割合で減らしている。

 

 正真正銘スールの関係のペト共に、駒王学園でのエロ二大巨頭の名を欲しいままにしている。其れ迄筆頭だったイッセー達変態三人組を大いに引き離すエロっぷりだ。

 

 つい一月足らず前に流石に限度があるという事で校長から説教を受けた事もある。とにかく注目の的だったりするのだ。

 

 そのリセスと同じファミリーネーム。気にならない方がおかしいだろう。

 

「ふむ、どこから説明したらよいものか……」

 

「あ、ハヤルト様。自分で説明します」

 

 と、ハヤルトにそういうと、プリスは一歩前に出る。

 

 そして、一礼すると、まっすぐ前を見た。

 

「初めまして、プリス・イドアルって言います。リセスちゃんが色々迷惑をかけたみたいで……ごめんね?」

 

 そう言って小首を傾げながらの言葉に、生徒達が胸きゅん状態になったのは言うまでもない。

 

 腐っても元アイドルは伊達ではない。異様なほどの選球眼を持つ外道に見い出され、その後も選球眼のいい邪悪に見いだされ、とどめに質の悪い愉快犯にも見出される。見出す輩がことごとく質の悪い手合いだが、間違いなく磨く前から輝いている原石なのだ。

 

 男女問わず「か、かわいい!!」てきな感想が脳裏に浮かぶ。

 

 そしてそんな空気に慣れまくっている元セミプロアイドルは、静かに微笑みながら、頭を下げる。

 

「……リセスちゃんのことを大好きでいてくれて、ありがとう」

 

 その言葉には、たくさんの複雑な感情が込められていた。

 

 それを感じ取った何人かの生徒や、事情を知る者達は少しだけ目を伏せる。

 

 それに内心で感謝を抱きながら、プリスはまっすぐ前を見た。

 

「……私とリセスちゃんは、しちゃいけない間違いをして、失ってはいけない人を失ったの」

 

 そう。それはプリス・イドアルとリセス・イドアルの罪。

 

 アイドルになりたいという欲求から、悪質な嫌がらせを避け有用な支援を受ける為に、それを受け入れた。

 

「最初は夢の為だった。でも、何時の間にかそれが麻薬みたいに私達を犯して、いつの間にか私達は愛玩動物になってた」

 

 どこまで言えるのかは分からない。だが、ある程度は知っていてほしい。

 

「そして、その結果私達は大事な人を死なせちゃったの。……そして、そのしっぺ返しは一気に来たわ」

 

 そう。あの悲劇をプリスは知る前に咎を受けた。

 

 一瞬躊躇するプリスの肩に手を置きながら、ハヤルトが前を向く。

 

「悪魔の中には、政府の依頼で汚れ仕事をする者も何名かおるのだ。例えば、非合法な―」

 

 どこまで言えばいいか一瞬躊躇するハヤルトに、プリスは感謝の視線を向ける。

 

 そして、それは自分が言うべきだと判断した。

 

「―非合法な売春組織が政府にまで手を伸ばした時、悪魔がそれを暗殺するという事も、まれにあるんだ」

 

 その言葉に、少なからずどよめきが起こった。

 

 思ったよりは少なかったが、どうやらシシーリアの件が効いているらしい。それが慣らしになったようだ。

 

「リセスちゃんは奇跡的に逃げれたけど、私はそのまま取引の成果として悪魔側に譲られてね。だけど、私はそれでいいと思った」

 

 そう。それは傍から見れば悲劇だろうが、プリスからすれば当然だった。

 

 その後知ったからだ。

 

 ニエ・シャガイヒは自殺した。それも、自分達の嬌態を見て、絶望したのだ。

 

 だから、プリスはそれを受け入れた。

 

「私は奴隷でよかった。あてがわれた主の道具として使い潰されるような人生でよかった。それが、当然の報いだって思ったから」

 

 そう、あの頃は本当にそれでよかったのだ。

 

「でも、リセスちゃんは違った。あの子はその前に正気に戻れてたから」

 

 しかし、リセスは別の形で贖罪しようとしたのだ。

 

「弱い自分を捨てて、強い英雄になって、たくさんの人を救う。そうする事で、あの人の死に意味を持たせる事で罪を償おうとしたの」

 

 そして、その結果が巡り巡って多くの人達を救ってきた。

 

 邪悪を打ちのめす神殺しの拳は、世界でも有数のものになった。

 

 なにより、彼女の輝きに当てられて生まれた一人の英雄がいなければ、この戦いは早々にヴィクターの勝利に終わっていたはずなのだから。

 

「それは否定されちゃったけど、それでもリセスちゃんは積み重ねてきたものがあったから立ち直れた。それは、きっとこの学園での生活もあるんだと思う」

 

 そして、それに比べて自分はどうだ。

 

「……私は、違った」

 

 断言しよう。間違いなく、プリス・イドアルはリセス・イドアルに劣っている。

 

「ゼファードル様は、素行不良を踏まえてもグラシャラボラス家の次期当主代理に選ばれるぐらいの才児だった。だからかなり豪勢な生活をしてて、眷属にも相応のおこぼれがあったよ」

 

 そう。グラシャラボラス家次期当主とは、代理ですら相応の価値があるのだ。

 

 現四大魔王を輩出した、グラシャラボラス家。その次の跡取りとは、すなわちそれ相応のものでなければならない。

 

 素行不良で有名、凶児とすら称されるゼファードルが、代理とは言えそれに選ばれるのは、ひとえにその実力が評価されてからだ。ゆえにそれ相応の待遇を与えられる。

 

 そして、その眷属であるプリスも、それに見合った生活を送れていた。

 

「美味しいご飯は食べれて、ゼファードル様がどんな報復してくるか分からないし、次期当主代理に喧嘩売る人はそれこそいないから安全だった。ゼファードル様がトラウマを発症しなかったら、きっと今でも豪華な生活を送れてた」

 

 それが、本当に罪を償っている事になるのだろうか。

 

「リセスちゃんの贖罪は否定されたけど、私の怠慢は贖罪だと言われたけど、やっぱり思うんだ。……私は、罪を償いたい」

 

 そして、まっすぐにプリスは前を見る。

 

「今この世界にはびこっている、ヴィクターによって生まれた問題解決に貢献する。それが、私が選んだ私の贖罪」

 

 そう。それが今のプリスのしたい事だ。

 

「そして私はやりたい事があるの」

 

 そう。それがプリスのもう一つの決意。

 

「私は、上級悪魔になって、昔の私みたいな人が立ち直る為の場所を作りたい。ハヤルト様はその為のチャンスをくださったの」

 

 プリスはそのチャンスを掴む事を決めた。

 

 今度こそ、胸を張って罪を償う為に。今度は、自分が誰かを救う為に。

 

 そして、同じぐらい守りたいと思うものもある。

 

「………だから、リセスちゃんを見てきたあなた達にお願いがあります」

 

 プリスはそういうと桃色の髪をたなびかせながら、深く一礼した。

 

「どうか、リセスちゃんのことを覚えていてください。七年間も出遅れた私と違って、迷走したけど七年前から頑張ってきたリセスちゃんを、どうか少しでいいから認めてあげてください」

 

 難しい話だ。

 

 リセス・イドアルはあまりにもやってはならない事をした。

 

 そういう事をした者に、世間は厳しい。

 

 実際冥界でも賛否両論だ。彼女は被害者であるとして、なしてきた功績を認める者も多いが、やってしまった事がやってしまった事ゆえに、どうにも受け入れられない者も多い。

 

 ましてや、人間世界はもっと厳しい。

 

 だから、こんな事を言ってしまったのはやっぱり間違いだったかとも思い―

 

「―あったりまえでしょ!!」

 

 即答のレベルで返答が来て、思わず顔を上げた。

 

 そこにいたのは一人の女生徒だった。

 

「リセスさん、ぼかしてたけど結構話してたもの!! 私が女とやる事しか考えてない男に引っかかってた時、それだとどうまずいか実体験を踏まえて説明してくれてたわ」

 

「ああ、確かに! ともに快楽を貪り合う関係になる事はあっても、一方的に貪る餌を作るような真似だけはするなって言ってたな」

 

 と、男子生徒もなにかに気づいたのかそう過去を振り返る。

 

「そうそう。そう言う男の撃退方法とか考えてくれたし、殴り込みに来てくれた事もあったわよねぇ」

 

「あたし、おかげであの馬鹿と別れられたわ。いや、マジ正解」

 

「ホントだぜ。俺もしっかり更生できた。今は女の子と一緒に高め合う関係だからよ」

 

「ビッチのマナーを教えてもらったわ。真のビッチが最低限守るべき節度はあの人に教えてもらったもの」

 

 ……一部問題のある発言もあった。

 

 だが、彼女達はリセスを嫌っていない。それどころか、慕っている。

 

「……ふっ。人に歴史ありというが、リセスさんにそんな過去があったとはな」

 

「だけどまあ、そんなリセスさんがいたからこそ、俺達は覗きを卒業できたもんよ」

 

 と、シシーリアに言葉をかけた生徒二人もうんうんと頷く。

 

 流石にここまで綺麗な展開になるとは思ってなかったプリスは、得意げな表情を浮かべてくる女子生徒に顔を覗き込まれる。

 

「驚いた? こんな話聞いてもリセスさんの人気が陰らなくってさ」

 

 その返答より先に、にっこりとした笑顔が返ってくる。

 

「うちは覗きの常習犯を追放しない心の広い学園だもの。昔性的には酷い目にあって二次災害を生んだとしても、それをきちんと後悔してる人の傷口に塩を塗り込むような奴はいないわ」

 

「桐生、お前、良い事言うな……」

 

 兵藤一誠が感極まった表情を浮かべる中、しかし半目で皮肉げな視線を桐生と呼ばれた少女は向ける。

 

「だからあんたも覗きは卒業しなさい。もう童貞なんて卒業できてるんでしょ?」

 

「……うるせえよ!! できてねえよ!!」

 

 その反論に、生徒達の視線が一瞬で集まる。

 

『『『『『『『『『えぇ!?』』』』』』』』』』

 

「あんなにモテてるのに!?」

 

「お前スケベなのに!?」

 

「据え膳ありまくりだろうに!?」

 

「リセスお姉様と一緒の家に住んでたのに!?」

 

 驚愕というか愕然というか、とにかく信じられないという意見が出まくった。

 

 そして、その声を聴きながらゼノヴィアは涙すら浮かべてうんうんと頷く。

 

「そうなんだ。私たちはイッセーと子作りするために一生懸命なのに、なぜかイッセーは手を出してこない!!」

 

「せっかく天界から専用の部屋を用意してもらったのに、いろいろやってるのに全然その気になってくれないのよ!!」

 

「はい。イッセーさんがおトイレのときとかに先回りして準備してるんですけど、なぜかその気になってくださらなくて……」

 

「「「なんででしょうか、主よ」」」

 

 などとお祈りすら捧げる教会三人娘だが、コレに関しては呆れた視線が飛んできた。

 

『『『『『『『『『『そりゃそうだよ!』』』』』』』』』』

 

「「「えぇ!?」」」

 

 そんな漫才を見て、プリスはクスリと笑う。

 

「そっか。リセスちゃん、好かれてるんだね」

 

「ええ、それはそうよ」

 

 と、そんなプリスにリアスが声をかける。

 

 その目は、バカ騒ぎが起こりかけている生徒達に、慈愛に表情で向けられている。

 

「此処はそういうところよ。リセスにとって、救いになってくれたら嬉しいんだけど……」

 

「大丈夫ですよ、リアス様」

 

 そこについては問題ない。

 

 何といっても、付き合いが長いのだ。リセスの事も少しは分かっているつもりだ。

 

 そう、きっとこの学園は―

 

「きっと、居心地が良かったと思います」

 

 そうであったに、違いない。

 




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