ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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さて、今回はあえてここまで持っていきたかったので長いです。


駒王会談は無事終結。そして、若き英雄たちの敵の正体は……


第一章 17 駒王会談成立、そしてその次の日にて

 

 

 

 うっへえ。死ぬかと思った。

 

 三大勢力の会談で、テロが勃発。

 

 しかもそのテロリストのボスはあのオーフィス。史上最強の存在ときたもんだ。

 

 それもさらに宰相は神滅具を何十個も持っていて、しかも神器を組み合わせて禁手に至らせることができるというマジで化物。

 

 ……そして、俺と姐さんはそいつによって神器をいくつも保有した存在になった。

 

 畜生がっ! 礼を言うべきなんだろうけど、やってることがひどすぎていう気になんねぇ。

 

 大体、なんでリムヴァンの野郎は俺たちをその場で捕まえて洗脳したりしなかった?

 

 三大勢力に与したのは偶然だけど、だからって神滅具をほっぽるとか、何考えてんだ?

 

 わからないことだらけでわけわかんねぇ。

 

 髪をかきむしって考えてるあいだに、戦後処理は進んでいく。

 

 幸い、倒した魔獣は溶けるように消えていったので味方のけが人の治療とかに集中してればいい。

 

 そのせいでアーシアちゃんが大活躍。あの子本当に便利だなぁ。

 

「……お疲れ様」

 

 と、そこに姐さんが缶ジュースをもってこっちに来てくれた。

 

「お互い、いろいろと大変だったわね」

 

「確かに。ま、これも英雄の乗り越えるべき試練ってやつかねぇ」

 

 俺は缶ジュースを受け取りながら、そうおどける。

 

 姉さんも同感だったのか、クスリと笑うと缶ジュースを飲んだ。

 

 そして、耐え切れなくなったのか苦笑を浮かべる。

 

「こういうの、喜んだらいけないってのはわかってるんだけれど……」

 

 その表情には、間違いなく喜びの色が映っていた。

 

「英雄が活躍するにはいい機会が訪れようとしているのよねぇ。どうあがいても、戦争が英雄を生むことには変わりないもの」

 

「闘うことでつかめる栄光だもんなぁ」

 

 そう、それが英雄の困ったところ。

 

 血なまぐさい戦争が起きないと、英雄が生まれる環境が生まれねえことだ。

 

 駄目なんだけど喜んじゃうあたり、俺達はいろいろ駄目な奴だ。

 

「……でも、示したいのよね」

 

 そう、姐さんはつぶやいた。

 

「私は英雄になりたい。人々を魅せるぐらい、強くなりたい」

 

 その声は、どこか震えていた。

 

 ……姐さんにも、いろいろあるんだろう。

 

 英雄を目指すだけの理由が、きっかけが、あるんだろう。

 

 それを俺は知らねえし、多分教えてくれねえだろうけど……。

 

「大丈夫さ、姐さん」

 

 俺は、姐さんににやりと笑う。

 

「姐さんはすでに英雄だぜ? あとはそれを知らしめればいいだけさ」

 

 ああ、姐さんは英雄(輝き)だ。

 

 俺の心をともしてくれた輝き。そう、間違いなく英雄なんだ。

 

 だから、姐さんには自信をもって英雄を名乗ってほしい。

 

 コカビエルを止めて、俺達を助けて、三大勢力の戦争再開を止めたのは、間違いなく英雄なんだから。

 

 俺の想いは全く届いてないだろうけど、姐さんはクスリと笑ってくれた。

 

「ありがとう。よくわからないけど、あなたの期待に応えられる英雄でい続けたいものね」

 

 そういうと、姐さんは立ち上がる。

 

「其れじゃあ行くわ。そろそろあの子が抱き着いてくることでしょうし」

 

 あの子?

 

 ん? なんかそらの向こうから高速で接近してくるやつがいるような……。

 

「お姉さまぁあああああ!!!」

 

 へぶぁ!? はねられたぁ!!

 

「こらこら。ヒロイを轢いちゃったわよ、ペト」

 

「お姉さまお姉さまお姉さまぁあああああ!!! お姉さまの帰りをホテルで待っていたらこんなことになるなんてぇええええ!! このペト一生の不覚ッスぅうううう!!!」

 

「御免マジで俺に謝ってくれない!?」

 

 わずか数週間で二回も轢かれたじゃねえか!! なんだよこの交通事故遭遇確率!!

 

「あ、すいませんッス。……お姉さまぁああああ!!!」

 

 くそ、適当に謝られたし!!

 

「はいはい。あなたは今回の場合相性が悪いから、仕方がないでしょ? 今度闘う時は期待してるわよ」

 

「はいッスぅうううう!!! 今度会う時は禍の団だか渦の団だか知らないっすけど、バンバン風穴開けてやるっすぅうううう!!!」

 

 姐さんに期待されていることがよっぽどうれしかったのか、ペトは別の意味でわんわん泣き始めた。

 

 ……なんか、ここにいると邪魔になるだろうから退散するといいかねぇ。

 

「んじゃ、俺はイッセーたちの方見てくるわ」

 

「ええ。悪いけど任せたわ」

 

 そう言って別れ、俺達はイッセーを探す。

 

 と、ついたとこじゃぁ三大勢力のトップたちが集まっていた。

 

 俺はすぐに離れようとするけど、其れより先にサーゼクス様が俺に気づく。

 

「やあ、ヒロイくん」

 

「……うっす」

 

 いや、ミカエル様までいるからあまり近くにいるわけにゃいかないんすけどね。

 

 どうにかして離れる理由を作ろうと思ったけど、其れより先にミカエル様が俺に歩み寄った。

 

「あなたが、ヒロイくんですね?」

 

「うす。ヒロイ・カッシウスですが、えっと……」

 

 うわめっちゃ気まずい。

 

 信仰心ないからこそ気まずい。めっちゃ気まずい。

 

 だってそんな奴が聖槍持ってるってだけでもアウトに近いってのに。しかも悪魔側についてるとか……。

 

 そう思った瞬間、ミカエル様は俺に頭を下げた。

 

「……この度は、あなたを追放して本当に申し訳ありませんでした」

 

 うぇええええええええ!?

 

 み、み、ミカエル様が頭下げたぁあああああ!!!

 

「ままま待ってくだせえ!! 俺みてぇな信仰心も欠片もない半端もんが追放されんのは当然なんですぜ! 主の代行が頭下げるなんてそんな!!」

 

「しかし、あなたはコカビエルを倒すために全力を尽くし、三大勢力の戦争再開を止めてくださいました。……本来なら、我々は貴方に感謝するべきなのに」

 

「いや、本当にそういうのいいですから、頭上げてください」

 

 俺は、逆に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 

 だってそうだろう。俺は、最初から信仰心なんて碌に持っちゃいない。

 

「俺は、俺が英雄になるために悪魔祓いとしての教育をうけるために教会に所属したんですぜ? そんないい加減で不信心なやつ、追放されるのが当然でさぁ」

 

 ああ、本当に俺は失礼な奴だ。

 

 主の教えを信じ、主のために命を懸けて戦うことを目的として勉強してる連中の中で、俺は異端児だ。

 

 俺が一生懸命だったのは、何処にでもいるような悪魔祓いじゃ英雄何てなれないからだ。人の何倍も勉強して訓練するぐらいじゃなけりゃぁ、英雄なんて頂にはたどり着けねえからだ。

 

 俺の努力に信心なんて欠片もねえ。むしろ、異端者として殺されたとしても文句は言えない。

 

「だから、俺に関しちゃ気にするこたぁありやせんぜ。その頭はもっと下げるにふさわしい時に取っといてください」

 

「……わかりました。ですが、いつかあなたを信徒たちの前で賞賛できる日が来るよう、努力だけはさせていただきます」

 

 それはありがたい。

 

 どうせなら、英雄としてもてはやしてくれるとうれしいしな。

 

 と、そんな俺の視界にイッセーの姿が飛び込んできた。

 

 見れば、グレモリー眷属も何人も一緒にいる。

 

「魔王様。ご無事で何よりです」

 

「リアスか。戦後処理の打ち合わせは終わったかね?」

 

 ああ、確かに駒王学園はお嬢の担当だから、当然戦後処理の下準備とかに駆り出されるわな。

 

 お嬢は一礼すると、うっすらと笑みを浮かべた。

 

「護衛の方々が手伝ってくれたおかげで、すぐにでも終わりそうですわ」

 

 マジか。結構破壊されてると思うんだが、そんなすぐにおわんのかよ。

 

 いや、コカビエルとの戦いのときもドッカンバッカン壊されてたのに、あっという間に直してたしな。案外早くできるんだろう。

 

 お嬢とサーゼクス様は少しの間打ち合わせの話について話し合い始めるが、その間にイッセーがミカエル様に駆け寄ってきた。

 

「ミカエルさん。実は、お願いがあるんですけど」

 

「何でしょう? 内容にもよりますが……」

 

 イッセーは、視線をアーシアとゼノヴィアに向ける。

 

 二人はきょとんとするが、イッセーは視線をミカエル様に戻すと質問をする。

 

「神に祈りを捧げた悪魔がダメージを受けるのって、聖書の神様のシステムのせいなんですよね?」

 

 ああ、そういえばコカビエルが似たようなこと言ってたな。

 

 主は信徒への奇跡などをシステムによって運営していて、それをミカエル様が代わりに使うことで何とか動かしてるって。

 

「はい。アレは神が残したシステムの基本部分ですので、主がおられなくても当然機能します。それがなにか?」

 

 その答えを聞いて、イッセーは意を決したかのように頭を下げる。

 

「アーシアとゼノヴィアが祈っても、ダメージが出ないようにできませんか?」

 

 その言葉に、俺達は全員目を見開いた。

 

 そういや、ゼノヴィアもアーシアも時々神に祈ってダメージ受けてたな。

 

 それだけ信仰心が強いことの証明だけど、確かにちょっとかわいそうだ。

 

 でも、そんなことをわざわざミカエル様に直談判するとか、コイツ根性あるなぁ。並の精神じゃ恐れ多くてできねえぞ。

 

 こいつ、もしかしてすっごい大物なのか?

 

 ミカエル様も少しの間言葉を失ってた。

 

 だけど、すぐに考え込む。

 

「……確かに、悪魔なら教会に近づいたりはしないでしょう。二人分ぐらいなら何とかなるかもしれませんね」

 

 そういうと、ミカエル様はゼノヴィアとアーシアに向き直る。

 

「アーシア、ゼノヴィア、問います。神はすでに不在ですが、それでも祈りを捧げますか?」

 

「もちろんです」

 

「私もです。ミカエル様への感謝も込めさせていただきます」

 

 二人は、迷うことなく答える。

 

 その答えを聞いて、ミカエル様は優し気に微笑んだ。

 

「神に祈りをささげる悪魔ですか。これもまた、和平の象徴かもしれませんね」

 

 確かに、主に祈りをささげる悪魔なんて和平にでもならなけりゃみられねえわな。

 

 ああ、これが和平の良さってやつか。

 

「「ああ、主よ。感謝します!!」」

 

 あ、バカ!

 

「「あう!?」」

 

「あーあーあーあー。まだシステムは弄くられてねえってのに」

 

 俺は額に手を当てるとため息をついた。

 

 とたんに、おかしくなってみんなが少し笑ってしまう。

 

「ふふふ。すぐに戻ってシステムを調整しなくてはいけませんね」

 

 そうミカエル様は笑うと、サーゼクス様に向き直る。

 

「私はこれから天界に戻ります。和平はもちろん、禍の団についても対策を講じなければ」

 

「すまなかった。会談の場をセッティングしたものとして、謝罪させてくれ」

 

「いえ、悪魔祓いや天使の中にも同調したものがいるのです。お互いさまということでしょう」

 

「……だろうな。うちもヴァーリが迷惑かけた」

 

 アザゼルもそこに現れ、頭を下げる。

 

「アザゼル。やはり彼は……」

 

「ああ。あの馬鹿の育て方を間違えたのは俺の責任だ。その分俺たちはしっかり団結しないといけねえな」

 

「いや、こちらもカテレアが迷惑をかけた」

 

 サーゼクス様の言葉に、アザゼルは頭を掻いてそっぽを向く。

 

「カテレアなんて小物なんかより、ヴァーリの方がシャレにならねえよ。……こっからが大変だぜ」

 

「確かにその通りです。ですが、それに対抗するためのとっかかりができただけでも充分でしょう」

 

「その通りだ。我々三大勢力が手を取り合えた。これはとても大きなことだ」

 

 アザゼルに対するサーゼクス様とミカエル様の言葉に、アザゼルは苦笑した。

 

 そして、息を吸い込むと後ろにいる堕天使たちに大声を放つ。

 

「お前ら!! 堕天使はこれより三大勢力と和平を結ぶ!! それが嫌な奴は禍の団に移籍してかまわんが、敵対するなら容赦なくぶち殺すから覚悟だけはしとけ!!」

 

『『『『『『『『『『『我らが命、アザゼルさまとともに!!』』』』』』』』』』』

 

 一斉に帰ってきたその返答に、アザゼルは満足げにうなづいた。

 

 そして、振り返るとイッセーの方を見るとにやりとする。

 

 なんだ? なんか嫌な予感がすんだけどよ。

 

「ま、詫びと行っちゃなんだが、赤龍帝は俺が鍛えてやるよ。ついでに聖槍使いもな」

 

「「へ?」」

 

 え、俺も?

 

 っていうか、俺は仕事があるから堕天使側にはいけそうにないんだけどよ。

 

「くっくっく。白は戦で赤は女。どっちも決着以外にやることがあるとはな……」

 

 そうつぶやいたアザゼルの言葉が、やけに印象的だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんでもって次の日の放課後。

 

 いつものようにオカルト研究部の部室に入ると、そこにはアザゼルがいた。

 

「……なんでいんの?」

 

「明日から駒王学園(ここ)の教師に就任したぜ。これからはアザゼル先生と呼べ」

 

 ふふんと得意げにしているアザゼルに、俺はどうしたもんかと視線を向ける。

 

 すると、そこには姐さんとペトまでいた。

 

「姐さん!? どうしてこんなところに!!」

 

「おい、俺とは反応が全然違うんじゃねえか?」

 

「お前と姐さんが一緒なわけねえだろうが。寝言は寝て言えや」

 

 姐さんをあんたと一緒にすんなや。

 

「私はアザゼルの護衛よ。護衛もなしにこんなところに送り込んだら、周りがうるさいのよ」

 

「自分はお姉さまのものッスから。あ、ちなみにあんたのクラスに入ることになったッス」

 

 マジか。俺もそうだがうちのクラス転校生多すぎ問題。

 

「それで? なんであなたがここで教師なんてすることになったのよ」

 

 お嬢が頭を抱えながらも前向きに話を勧めようとしている。

 

 そんなお嬢をみて、アザゼルはからからと笑った。

 

「いやな? セラフォルーの妹に話したら、ここの教職をあたえられたんだよ。ま、これでも堕ちてきた者たち(ネフィリム)っつー学校みたいなもんを運営してたからよ、人並程度にゃ教えられるぜ?」

 

「……ソーナ?」

 

 お嬢の鋭い視線が生徒会長に突き刺さる。

 

 生徒会長は即座に視線をそらした!

 

「何とかしないと代わりに学校に来るとお姉さまに脅され……もとい懇願されまして」

 

 あ、それは仕方ねえな。

 

 あのキャラが学校に来るのはダメだろ。悪い意味でインパクトでかすぎるわ。

 

「要するに、オカ研を売ったのね?」

 

「私はこれで」

 

 早口で逃げに徹した会長は、即座に部室から退出する。

 

 にしても、堕天使の総督が悪魔が運営している学校の教師ってどうよ?

 

「どうすりゃそんな我儘が通せるんだよ……」

 

「簡単だぜヒロイ。こっちが本命だが、グレモリー眷属及びお前の神器を成長させるのに俺が適任なんだよ」

 

 ……へ?

 

「いや、ヴァーリの奴はどうやらイッセーに目を付けたらしいからな。あいつは禍の団でも専用のチームを作ってるらしいし、グレモリー眷属及びその護衛といってもいいお前さんは、いやでも強くなる必要がある」

 

 ヴァーリの奴、そんな待遇で参加してんのかよ。

 

「てっきり旧魔王派につくんだとばっかり思ってたぜ」

 

「彼、魔王の末裔であることは誇りに思ってるけど、基本的に面倒ごと嫌いだから」

 

 姐さんが俺のつぶやきに反応するが、確かにそういうの気にしなさそうなやつだったな。

 

 指導者とかそういうのには向いてないだろ。豆腐の角に頭ぶつけるぐらいしねえと変わらねえんじゃねえか?

 

 とは言え、相手は白龍皇の光翼を禁手に至らせた実力者。油断できる相手じゃねえな。

 

 そういう意味じゃあ、神器研究の第一人者が協力してくれるってのはいいことか。

 

「……できるんだろうな、アザゼル」

 

「安心しな。俺の指導をうけりゃぁ、神器の使い方は大幅にうまくなることだけは保証するぜ?」

 

 にやりとアザゼルが笑うが、しかしホントに大丈夫なんだろうな。

 

「いやいや、神滅具三つに噂の聖魔剣、更には停止世界の邪眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)とはな。心が躍るぜ!!」

 

 ……ほんとに信用して大丈夫なんだろうな。

 

「ひぃいい。僕のことなんて注目しないでほしいのにぃいいい」

 

 ギャスパー。段ボール箱がしゃべるとか意味不明な現象に注目すんなって方が無理だぞ。

 

 まあ、堕天使は神器研究の第一人者だ。ギャスパーの時もアドバイスは的確だったし、たぶん大丈夫だろ。多分。

 

「俺、ハーレム王になりたいだけだってのに、なんでこんなトラブルに巻き込まれまくってんだろうな」

 

 イッセーはイッセーで遠い目をすんな。

 

 そしてアザゼル。なんで目を輝かせてんだ。

 

「なんだ? お前まさか童貞か?」

 

「「童貞で悪いか!!」」

 

 やべ。つい俺も反応しちまった。

 

 まずい、この手の輩だから確実にからかってくるよな。

 

 だが、アザゼルはむしろあきれたような眼をしていた。

 

「いい年こいた赤龍帝が童貞とか一周回って不憫にしかなんねえな。……ちょうどいい、神滅具持ちの男が相手となりゃぁ、うちの女どもも乗り気になるだろ」

 

 へ?

 

 ま、まて。

 

 乗り気になる……だと?

 

「よし! イッセーにヒロイ、お前らこれから俺と一緒に童貞卒業ツアーだ!! 俺はハーレムを何度も作ってきた男だからな、その辺に関しちゃ遠慮はしねえから安心しな」

 

 な、なんだとぅ!?

 

 童貞卒業ツアー。なんていう素晴らしい響きなんだ。

 

 この世にそんな素晴らしいツアーが存在していただなんて。俺は、俺はまだまだ無学だった。

 

「は、はい!! 一生ついて行きま痛い痛い痛い!!」

 

「イッセー! 堕天使の誘惑に乗るなんて何を考えているの!!」

 

 あ、姫様が乱入した。

 

 ヤバイ。これはどうあがいても無理になりそうな流れだ。

 

「イッセーさん!? わたしを置いてどこに旅行するつもりなんですか!?」

 

 アーシア。それたぶん何か勘違いしてる。

 

「イッセーくん、僕のこと悪く言えなくなってきてるよね」

 

「イッセー先輩はいつも元気そうでうらやましいです」

 

 木場、お前はちょっと黙っていてくれねえか!

 

 あとギャスパー。それ、嫌味じゃねえよな?

 

 ああもう! こんな調子じゃ童貞卒業何て夢のまた夢じゃねえか!!

 

「あらあら。私が食べてもいいんだけど、この調子だとグレモリーに怒られそうね。ペトも食べたら駄目よ?」

 

「了解ッス。……でも赤龍帝の童貞かぁ。ちょっと食べたかったッス」

 

 俺の童貞は食べていいですぜお二人さん!! あ、できれば姐さんでお願いします!!

 

「……ま、とにもかくにもまずは夏休みに特訓だな。たしか、若手悪魔で会合も開かれるんだろ?」

 

 アザゼル、まだ話戻さないでくれねえか!?

 

 だが残酷なことに、お嬢もまたその流れに乗り始めた。

 

「ええ。次期大王と大公、そして現四大魔王を輩出した72柱の後継者が同時期ということで、ちょっとした集まりが始まるの」

 

 そんな面倒なことがあんのかよ。

 

 上級悪魔の会合とか、なんかギスギスしてそうだな。考えただけでもうへえってなるぜ。

 

 こりゃ、お嬢の眷属になれなくて正解だったかもしれねえな。よかったよかった。

 

「ま、そのついでに冥界で特訓でもするか。お前らも参加だからな」

 

「はいはい。せいぜい英雄らしい実力者に育てて頂戴」

 

「らじゃッス」

 

 マジか。つまり俺も禁手に至れる可能性があるってことか!

 

 神器の禁じ手にして究極、禁手(バランス・ブレイカー)! そんなのになったらもう英雄街道まっしぐらだろ!!

 

 俺も、姐さんのように人の心を照らせる輝きに……。

 

「アザゼル先生! 俺を強くしてくだせえ!!」

 

「おう! 安心しな! どっちにしたって将来的な抑止力に放ってもらわねえと困るからよ!!」

 

 期待してるぜ先生!!

 

「まあ、問題は連中の規模だ。サタナエルのあほが関わってた時は魔法使いの組織や日本の五大宗家のはぐれもんとかも参加してたからな。おそらくほかの神話関係者や世界各国の異能持ちにもつてがあると考えるべきだろうよ」

 

 アザゼル先生が怖いこと言ってきやがる。

 

 マジか。そんなに規模がでかいのかよ。

 

「それだけの戦力をもってして、ここに攻め込んでくる可能性があるの?」

 

 お嬢が不安げに聞くが、そこに関してはアザゼルが首を振った。

 

「流石にその線は薄いな。三大勢力のトップをまとめてつぶせるあのチャンスを逃したんだ。わざわざここに大戦力をぶつける意味は薄いだろ。よほどのことがない限り、お前らが在学中は平和だと思うぜ?」

 

「本格的な戦争前の小競り合いってことね」

 

 お嬢の言葉が一番わかりやすいか。

 

「まあ、まだ準備期間だということよ。おそらくヴァーリの馬鹿はイッセーに突っかかってくるでしょうけど、それでも学生生活を謳歌する余裕ぐらいはあるわよ」

 

 姐さんが安心させるように微笑み、しかし鋭い視線を向ける。

 

「だからって強くなることを怠らないようにしなさい。……世の中、心も体も強くあろうとすることを忘れた者は食い物にされるわ」

 

 それは厳しいが、しかし気遣いに満ちた言葉だった。

 

 なんか、深いな。

 

 そして、実感がこもってる。

 

「私はそれがいやなの。もう、弱い雌犬でいるのは御免だしね。……あなたは弱いままでいいの?」

 

「まさか。そんなわけがないでしょう?」

 

 その姐さんの言葉に、お嬢は毅然として返す。

 

「私はグレモリーの次期当主。そして赤龍帝の主よ。弱いままなんて、負けっぱなし何て絶対に嫌だわ」

 

「その意気があれば、大丈夫ね」

 

 そういうと、姐さんは微笑んだ。

 

 それを見て、アザゼルは俺達神器持ちを見渡した。

 

「ま、まずは神器持ちの強化が必要不可欠だがな。聞けば木場の奴も禁手を一日も持たせられねえそうじゃねえか。ヴァーリはひと月は持たせられるぞ?」

 

「一か月ぅ!? オレなんて条件付きで数秒ですよ!?」

 

「オイコラ。それは禁手に至ってすらいねえ俺やギャスパーに対する嫌味か、ああ?」

 

 一遍どついたろか、イッセー。

 

「ま、それはおいおいな。白龍皇の力も要練習だろうし、俺が直々に見てやるよ。そんでもって―」

 

 アザゼルの視線が、朱乃さんに向いた。

 

 その視線に朱乃さんは不快げな表情を浮かべる。

 

 考えてみりゃ、朱乃さんはアザゼルを視界に移してからずっと不機嫌そうな表情を浮かべてやがった。

 

 なんだ? 前から思ってたけど、朱乃さんって堕天使に対してかなりあたりきつくないか?

 

「……まだ俺たちが、バラキエルの奴が憎いか?」

 

「赦すつもりはありません。母はあの男のせいで殺されたのですから」

 

「……まあ、そうだろうな。だが、グレモリーに身を寄せたのは正解だと思うぜ? 他のところだったらアイツは殴りこんでたろうな」

 

 その言葉に、朱乃さんは何も言わなかった。

 

 ……なんか、事情でもあんのかねぇ?

 

「ま、何はともあれそろそろ期末試験もあるしな。まずはそこを何とかするとこから気合入れとけよ」

 

「よっしゃぁ! 現代の英雄は頭もよくなきゃやってらんねぇしな! 国語以外は学年一桁台目出すぜ!!」

 

 俺は気合を入れて両手を鳴らす。

 

 ふっふっふ。話題の転校生が成績優秀ともなれば、注目度は抜群。

 

 その勢いで彼女作ってやるぜ! 勉強できるチャラい男とか、年頃の女の恰好の獲物だろ!!

 

「おやおや、これは負けてらんないね」

 

「ふむ、私も国語以外なら頑張れる自信はあるぞ?」

 

 ちっ! 木場とゼノヴィアもやる気になりやがったか。

 

「あ、あうぅう。皆さんやる気になってますぅ」

 

「マジか。俺なんて赤点回避すんので大変だってのに……」

 

 アーシアとイッセーはさすがに大丈夫か?

 

 ま、そんなこんなで俺たちも気合を入れて行きますか!!

 

 英雄目指して一生懸命! ヒロイ・カッシウスは頑張るぜ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そうだった。サーゼクスから伝言があったんだ」

 

 ん? なにアザゼル?

 

「……眷属同士の結束を強めるため、グレモリー眷属は兵藤一誠の家に住めとよ。必要なら金は出すから増築していいとか言ってたぜ?」

 

 なんだとぅ!?

 

 こ、この誰がどう見ても美人だらけのグレモリー眷属が、変態と同じ屋根の下とかふざけんじゃねえ!!

 

「はいはいはい!! 俺もオカルト研究部所属なんだから、広義の意味でグレモリー眷属だと思いまっす!!」

 

 俺だってお色気ハプニングとか会いたいっす! てか合わせろやコラあ!!

 

「なあ、お前らもそう思うだろ!?」

 

 俺は援護射撃を求めて木場とギャスパーに助けを求める。

 

「いや、僕は別にいいよ」

 

「人の多いところ嫌ですぅうう!!」

 

 役に立たねえ!!

 

「イッセー!! 女だらけの空間に押し込められてもなぁ! ガールズトークばっかりで居心地悪くなるんだぞ!! 俺を入れとくとお得だぜ?」

 

「………いや、っていうか俺んちそんなにでかくねえって」

 

 あ、それもそうか。

 

 ごく普通の日本の家って感じだったな。なんかものすごく狭くなりそうだな。

 

「だから出資するって言ってるだろ? 悪魔の技術なら増築に一日もかからねえよ」

 

「なおさら入れてほしいと思います!!」

 

 俺は渾身の押し売りを仕掛ける。

 

 だってそうだろ!?

 

 この、明らかにハイスペック美少女の群れと同じ屋根の下!!

 

 男として、このシチュエーションは見過ごせねえ!!

 

 え? リアスのお嬢もアーシアの嬢ちゃんも朱乃の姉さんも全員イッセーに懸想してる? 知ってんだよそんなことは!!

 

 それでも!! 同じ屋根の下に入れるってことが重要なんだからな!!

 

「あら、だったら私も家賃を浮かせたいから下宿させてもらおうかしら」

 

「お姉さまが済むなら自分も住むッス!!」

 

 おお、さらに美人が増えた!!

 

「ま、いいんじゃねえか? 女だらけってのもイッセーの居心地が悪くなるだろうしな」

 

 よっしゃ! アザゼルからも言質取ったぁ!!

 

 この調子で、俺もまた美少女御殿へレッツゴ……。

 

「……リアス! アザゼル総督!!」

 

 と、生徒会長がやけに慌てた表情で入ってきた。

 

 な、なんだなんだ?

 

 その焦っているとしか思えない表情に、俺達は全員緊張する。

 

 なんだよいったい。まさか、言ったそばから禍の団が攻めてきやがったのか?

 

「どうした。何があった?」

 

 アザゼルが、今までのおちゃらけた表情を消してた会長に促す。

 

「……口で説明するより見てもらった方が早いでしょう。すぐにテレビがある部屋に来てください」

 

「其れならすぐに用意できるわよ」

 

 会長の言葉に、姐さんがどこからともなくテレビを取り出した。

 

 え、何それ。

 

「私の神器。曹操の言い分だと、これが私の本来の神器らしいけどね」

 

 そう言いながら姐さんはテレビを起動させ―

 

『繰り返します! これは映画ではありません!! ……謎のモンスターが、米国基地を襲撃しています!!』

 

 ―あれは、和平会談を襲った魔獣じゃねえか!?

 

 

 




どうしても、平穏から一転して急転直下の展開を出したかったんや!

ここから数話は完全に禍の団のターンです。……いや、違いますね。



















ここから、この物語の真の敵が姿を見せつけます。
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