ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
振るわれる雷撃が空を埋め尽くす中、リアスたちも苦戦を強いられていた。
その理由は単純明快。
圧倒的な数と、高性能の装備。
現代の軍隊の戦術で、此処の兵士の練度を凌ぐレベルで重視されることもあるそれが、リアスたちに猛威を振るう。
数百の騎士たちが一斉に襲い掛かり、様々な方向から攻撃を行う。
そして、彼らが持つ剣は聖と魔のオーラを融合させている。その威力は伝説クラスとすら撃ち合いを可能とするほどで、多種多様な属性を追加したうえで振るわれるそれは対処するのも一苦労だ。
そして何より、それが本来あり得ないことであるがゆえに、リアスたちは動揺している。
そう、あり得ないのだ。
これを保有する使い手は、大事な自分たちの仲間がその命を犠牲にして討ち取った。もういない筈なのだ。
其の在りえない力。それを振るうのはコカビエル。
そして、其の在りえない力の名は―
「なぜ、あなたが
襲い掛かる三十以上の魔聖剣の騎士たちに、全力の消滅の魔力を放ちながら、リアスは吠える。
この複合禁手は、聖魔剣とほぼ同等の効果を持つ魔聖剣を生み出し、更には旅団レベルの騎士団を生成するもの。
当然、
神滅具の禁手に匹敵する力を持つそれは、リムヴァンの死によってこの世から消えたはずだった。
ヒロイ・カッシウスとリセス・イドアル。二人の大切な仲間が、命をなげうってリムヴァンを倒したのだ。
にもかかわらず、リムヴァンが持っていた複合禁手は、コカビエルに使われている。
まるで、2人の死が無駄だったかのようなこの存在。
リアスは怒りに燃え、そしてそれに呼応するように消滅の魔力の出力が増大する。
そして対魔力を考慮した魔聖剣をもった騎士団が消し飛ばされていくのを見ながら、コカビエルは楽しそうに笑いだす。
「ふはははは!! すでに赤龍帝無しでも最上級悪魔クラスではないか! 流石はサーゼクスの妹といっておこうか!!」
「ふざけないで! なぜ、あなたごときがリムヴァンの複合禁手を!!」
吠えるリアスの攻撃を、コカビエルは光力を纏った魔聖剣で切り刻む。
そして、それを左右から挟撃するはリアスの
「「コカビエル!」」
木場祐斗のグラムと、ゼノヴィア・クァルタのデュランダルとエクスカリバー。
その絶大な一撃を、コカビエルは魔聖剣で受け流す。
「光力を吸収して強度を高める魔聖剣だ。いなす程度なら簡単にできるぞ?」
そう嘲笑いながら、コカビエルは大量の光の槍を連射する。
それらはギャスパーの停止の力で大半が受け止められるが、しかしそれでも一部がリアスたちに迫る。
それをロスヴァイセと朱乃が展開する防御魔法に任せながら、リアスはコカビエルをにらみつけた。
「質問に答えなさい、コカビエ―」
「簡単だ。継承したのさ」
その返答は、コカビエルのものではない。
そして、頭上から聞こえてきた。
振り仰ぐリアスの視界に、
すでにイグドラヨルムを展開した彼は、静かに告げる。
「そういう実験をしていたのさ。倒された神器使いの神器を、禁手ごと再び運用するための実験、神器継承者実験をな……っ!」
その言葉と共に、流星滅装が力をはなつ。
そして、其の力はただの荷電粒子ではなかった。
聖なるオーラが、神殺しの力が、魔王クラスの攻撃力を発揮する荷電粒子に加わり、超越者の領域へと至る。
それに全員が寒気を覚える中、ジェームズは言い放った。
「因みに俺は
そして、絶大極まりない神殺しの聖なる荷電粒子が、リアスたちに襲い掛かった。
一方そのころ、一誠も大苦戦を強いられていた。
ただでさえ雷撃の威力は神クラスだったのに、すでにその威力は主神クラスすら超えている。
かすめただけで紅の鎧が砕ける威力。それを、あろうことか連続で振るうのはヤクサ・ライトアボイト。
その雷霆鎚の能力は単純明快。
絶大な雷撃をはなつ武装。ただそれだけでありながら、其の力は神すら超える。
文字通り規格外の力を振るい、ヤクサは目を血走らせて一誠に迫る。
「ダーリンの仇! 死ねぇえええええええ!!!」
「く、クソッタレぇ!」
一誠は直撃を意地で避けながら、一誠は唸る。
間違いなく強敵だ。今まで戦ってきた女性の中で、もっとも強大な敵だ。
なにせ洋服崩壊を当てることが不可能に近い。しかも、思考が単純すぎるせいで乳語翻訳もあまり意味がない。
兵藤一誠を代表する二つの力が、ヤクサの前だと本領を発揮しない。
この事実に、一誠は見事に追い込まれる。
パワー馬鹿とすら評される兵藤一誠が、パワー馬鹿によって追い込まれている。
まさに単純明快な力の差だ。それが如実に表れている。
赤龍帝の籠手は、神滅具としては中堅だった。そして、煌天雷獄という神滅具は神滅具の中でも二番目に強いといわれている。
それが絶大な力の差を生み出している。それが、一誠を力で追い込んでいる。
龍神の血肉すら取り込み、前代未聞の進化を遂げてきた兵藤一誠を、よりにもよって力で蹂躙せんとする。
其の在りえない在り方を示すヤクサを前に、一誠は覚悟を決めた。
もとより、アザゼルたちを隔離結界領域へとみすみす行かせ、挙句の果てにヒロイやリセスを失なったことで覚悟は決まっている。
自分たちの日常を破壊しようとするのなら、それをなす者たちは滅ぼしてでも倒す。
目の前の女もそうだ。ゆえに、滅ぼすことに躊躇する意味はない。
「ドライグ! ジャガーノート・スマッシャーで吹っ飛ばすぞ!!」
『応! 任せろ相棒!!』
一誠は飛竜を展開するとそれを自身の鎧に装着。
そしてチャージを開始しつつ、胸部装甲を展開して砲身を具現化する。
それを見たヤクサは、舌打ちをした。
ジャガーノート・スマッシャー。その絶大な威力は当然ヴィクターでも警戒視されている。
ダーリンたるユーグリット・ルキフグスですら、改良されたイグドラゴッホの力を使ってようやく凌ぎ切れたものなのだ。
喰らえば、神クラスですら下位のものなら一撃で戦闘不能になるだろう。下手をすれば一発で死亡することも十分あり得る。
なにせこちらは人間だ。神滅具はもちろん、その禁手も身体能力を強化する類ではない。それが、魔王クラスを輩出するだけの素質を持つ、ルキフグスの血ですら強化装備が必要だった攻撃を凌がなければならないのだ。
だがしかし―
「―舐めてもらったら困るんだけど!?」
―それをどうにかしてこその―
「天君、舐めるなぁあああああ!!!」
―新たなるヴィクター経済連合の主力の一角でもある。
放たれる神滅の一撃を前に、ヤクサは超絶雷霆鎚を振るい、それにぶつける。
それは深く考えられたものではなかったが、しかし頭の悪い彼女が最高戦力の一角に数えられる理由を示していた。
単純にぶつかるのではなく、最低限の傾斜を付けたうえで側面からぶつけられた超絶雷霆鎚。
その雷霆鎚の出力は、超絶の二文字がついているだけはあるのだ。
ゼウスの雷霆を超える。トールの雷鎚を超える。雷撃というジャンルにおいてなら、まず間違いなく最強格。
それこそが、
その一撃は神すら消し炭にする規格外。ゆえに―
「蜥蜴なんかに、負けたりしないんだから!!」
―なれてない今の段階ですら、天竜の全力をいなす程度のことはしてのけるのだ。
そして、それをされてたまらないのは一誠の方だ。
現段階で放つことができる、イッセー最大火力の技。
チャージに数十日は必要になる、その絶大な反動と引き換えに、威力に関して言えば間違いなく最強レベル。
その、圧倒的な火力が砕かれた。
パワー馬鹿と称され、力の化身とまで思われ、事実力によって敵を打破してきた、グレモリー眷属の筆頭格。
その自分の一撃が、いきなり現れた残念な女に砕かれる。
思わず、プライド迄砕かれかけた。
そして、それを一瞬でつなぎとめることができるからこその兵藤一誠。
もともと歴代最弱と呼ばれていた。今でも、赤龍帝の籠手とドライグのサポートが無ければD×Dでも最弱レベルである。そして何より、ここに至るまで自分一人で強くなったことなどない。
何人もの指導者がいた。何人もの支援者がいた。そして、自分の戦いをサポートしてくれる仲間たちがいたからこそ、自分はここにいる。
故にへこたれてなどいられない。すぐに自尊心は立ち直り、目の前の敵に集中する。
だが、それでも一瞬のスキが生まれていた。
「もらったわよ、ダーリンの仇!!」
その一瞬で、ヤクサは一誠を間合いに取り込んでいた。
「くたばれ赤龍帝!!」
そして雷霆鎚の攻撃を受け、イッセーは上空へと弾き飛ばされた。
その壮絶な戦いを、駒王学園の生徒たちは目の当たりにしていた。
コカビエルとジェームズの2人がリアスたちを翻弄し、ヤクサが一誠を追い込んでいく。
その双方の戦いは、一般人の目に留まることなど一瞬一瞬でしかない。
だが、それで十分だ。むしろ目にもとまらぬ戦闘が繰り広げられているということが、彼らの認識を改める十分すぎる理由となっていた。
心の底から理解させられる。
……この戦いは、格闘技の世界大会などとは次元が違う。
文字通り神魔の領域。その超絶の戦いを、一誠達は潜り抜けてきたのだということがよくわかる。
「か、会長! これ、俺たちも援護した方がいいんじゃないですか?」
「ダメです。まだ一人残っている以上、こちらも迂闊に動くわけにはいきません」
匙が鎧を展開しながら動こうとするのを、ソーナが押しとどめる。
そして、その元凶たる襲撃者の最後の一人は、両手に光の刃を展開して牽制しながら、しかしその戦闘を半ばあっけにとられるように見ていた。
「わたし、あんなふうになれるのかな……?」
そんな言葉が出てくるほどの激戦に、誰もが息をのまれる。
誰一人として迂闊な介入ができない、大激戦。
「兵藤達、こんな戦いを何度もしてきたっていうのかよ……?」
「うそでしょ? あいつ等、あんなに強かったの?」
生徒たちを唖然とする中、戦闘の趨勢がわずかに傾き始める。
「そうだ、言っておくがエクスカリバーの欠片程度の真似事は、できるようになっているぞ?」
その言葉と共に、騎士団を相手にしていたペトの背中から鮮血がほとばしる。
「っ!? いつの間に……!」
とっさに距離を取るペトを追撃するのは、半ば透明化した騎士が一人。
リアスたちが援護に出ようとするが、しかしそれをジェームズとコカビエルは妨害する。
まず一人確実につぶす。そしてそれを繰り返せば、敵の戦力は減っていき、士気もまた下がっていく。
戦術の基本を忠実に遂行し、コカビエルとジェームズはグレモリー眷属をつぶそうとする。
流石にまずいとソーナたちも動こうとするが、しかし騎士団が牽制の動きを見せて接近を妨害する。
そして、ペトは騎士団に包囲された。
「こ、これやばいっす……っ!」
全方位に光力の槍をはなちながらペトはうめく。
実際問題、ペトの戦闘技量はこれに単独で対応できるほど高くはない。
彼女の能力は狙撃特化型だ。それ以外の土俵で勝負に持ち込まれれば、格下にすら押し負けるほど、狙撃ぐらいしかできない。
オーフィスの力によって最上級クラスの出力を発揮できるようになっているペトだが、それでも狙撃戦以外で挑まれれば、上級クラスの戦闘能力しか発揮できない。
端的に言って、詰みであった。
それを詳しく理解することができない生徒たちも、しかしペトがまずいことだけは理解できる。
「おい、ペト先輩まずいぞ!?」
「ちょ、ペトちゃん逃げて!!」
生徒たちが悲鳴を上げるが、しかしペトにもそんな余裕はない。
それがわかっているのか、コカビエルは面白そうに唇をゆがめると、リアスを見下ろしながら嘲笑う。
「どうした? 情愛の深いグレモリーが、仲間を助けられないとは情けないぞ?」
「そこをどきなさい、コカビエル!!!」
その挑発にキレたリアスが消滅の魔星をはなつが、コカビエルは魔聖剣を生成すると、それを両断する。
同じことを、ヴァスコ・ストラーダもまた成し遂げた。レプリカのデュランダルで、老体のみで成し遂げた。
そしてコカビエルは、第二次大戦期にストラーダと闘い、生き延びた猛者だ。
その彼が、あのリムヴァン・フェニックスが持っていた複合禁手を手にしてこの戦いに参加している。
断言しよう。今この場において、コカビエルは兵藤一誠とも単独で渡り合える規格外の化け物へと強化されて舞い戻ったのだ。
そしてコカビエルは腕を振り上げながら、騎士団に意志を飛ばす。
「では、先ずは一人確実につぶすとしよう。―やれ」
その手の動きに合わせ、魔聖剣の騎士団はいっせいに剣をペトに突き出し―
ヴィクターの新たな力、神器継承者。
自分が死んだ後にもヴィクターに勝算が残るようにと、リムヴァンが研究させていたものです。つくづくよけいなことをする男です。
ヤクサもヤクサで、上位神滅具を一点特化型パワータイプにしただけあって規格外。イッセーをパワーで押すという暴挙をなしとげました。
そして窮地に追い込まれたペト。果たして彼女の運命は!?