ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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第二部一章 15

 

 コカビエルが振り下ろす腕と共に、魔聖剣の騎士団は剣を突き出した。

 

 全てが光力対策を施した刺突型の長剣。もちろん全てが魔聖剣である。

 

 一振り一振りがペトを一撃で殺す事も可能な高性能の魔聖剣。それが、全方位から十数本もまとめて襲い掛かる。

 

 端的に言って、ペトではどうしようもない。

 

 リアス達も割って入る余裕などない。

 

 イッセーですら、ヤクサの相手で手一杯。

 

 端的に言って詰んだこの状況下。凌ぐ事は今のリアス達には不可能であり―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「させるかぁあああああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―必然、それをなすのは新たなる参戦者に他ならない。

 

 一筋の、神すら殺す聖なるオーラが突破口を開き、そして全方位に放たれる雷撃が魔聖剣の騎士団を弾き飛ばす。

 

「何だと?」

 

「チッ! 時間を掛け過ぎたか」

 

「あ、新手!?」

 

 ヤクサ以外の三人がそれぞれ反応する中、割って入った少年は、ペトを庇う様に悪魔の翼を広げてその場に浮き―

 

「……ゲフゥ!? 無茶しすぎた……っ」

 

 ―勢いよく血を吐いた。

 

「ッスぅうううううう!?」

 

 その突然の出来事に、ペトが悲鳴を上げたのも仕方がない。

 

 そして、その隙をジェームズは逃さなかった。

 

「コカビエル、グレモリー眷属は任せるぞ。俺は新手を潰す」

 

 ジェームズは即座にイグドラヨルムの力で術式ミサイルを生成。それを一斉に放つ。

 

 よくは分からないが、どうやら新手は反動の大きな技を使ったらしい。その反動で隙が生まれている。

 

 そんなチャンスを見逃すほど、こちらも酔狂でもなければ余裕もない。遠慮せずに一気に叩き潰すのが吉だった。

 

 だがしかし、世の中そんな上手くはいかないもの。

 

 単独で来たわけでは断じてなかったりする。

 

「苦笑。気持ちは分かるが程々にしろ」

 

 その言葉と共に割って入るのは、時草福津。

 

 彼はその身を盾にすると、生体ミサイルを全弾受け止めた。

 

 そして発生する爆炎を切り裂き、ジェームズに突撃。

 

 遠慮なく、魔力で強化した拳を叩き込む。

 

 鍛錬を何度も積んでいる事が分かる、無駄のない拳。それはサイラオーグほどではないが、しかし上級悪魔にも通用する威力だろう。

 

 だがしかし、イグドラヨルムたるジェームズ・スミスには届かない。直撃ですらダメージは軽く、防御されては意味がない。

 

 そして、ジェームズはゼロ距離から流星滅装(メテオ・バスター・マックス)の銃口を突き付ける。

 

「ぬかせ、中級如きが!」

 

 そして、ゼロ距離から叩き込まれた砲撃が、頑健な福津の胴体に風穴を開け―

 

「失笑。対処できる自信もなしに突貫するか!」

 

 ―その風穴が、炎と共にあっという間に塞がる。

 

 そして、その銃身を福津は掴んで動かせないようにする。

 

 そう。福津の目的はジェームズを倒す事ではない。

 

 ジェームズの動きを一瞬でもいいから防ぐ事。それをなせる可能性が一番大きいからこそ、彼はこの場で突貫したのだ。

 

不死鳥の灯火(ランプライト・フェニックス)か」

 

「正解。俺はハヤルト様がヴィクターにいた時からの付き合いでな。神器移植はさせてもらったさ!」

 

 ジェームズに対する福津の返答に合わせるかのように、左右から挟み撃ちを敢行するのは二人の少女の姿をした悪魔。

 

「福津さんありがと!」

 

「こちらも動きます!」

 

 左右に魔力による丸鋸を展開したプリスと、ハルバードを聖別化させたシシーリアが挟み撃ちで攻撃を行う。

 

 ジェームズは流星滅装の具現化を解除して、それを回避。そして即座に術式ミサイルで反撃を行う。

 

 近距離からのこの数、三人がかりとは言え全弾防ぐ事は不可能に近い。単純に反応速度が足りないはず。

 

 だがしかし、その攻撃を前に前に出たのはプリス・イドアルただ一人。

 

 そして、プリスはミサイルが着弾する一瞬前に一呼吸して―

 

禁手化(バランス・ブレイク)! 相克雷電(デュアル・マクスウェル・ゼーベック)!!」

 

 その言葉共に、全ての生体ミサイルを氷の刃で迎撃する。

 

 数十発のミサイルを、一秒足らずで全弾弾き飛ばす。

 

 あり得ない。少なくとも、上級クラスの悪魔の反応速度では不可能だ。

 

 だがしかし、彼女はそれをなした。

 

 その種も、彼女自身がはっきりと言い切った。

 

「チッ! 禁手か!」

 

 仕組みは分からない。教えてくれるとも思えない。

 

 だが、プリス・イドアルがついに禁手に至ったというだけでも警戒レベルは跳ね上がる。

 

 もとより彼女は実力者だ。ゼファードル・グラシャラボラスの眷属で唯一、努力する才人ぞろいのサイラオーグ・バアル眷属と相打ちになった猛者。神器を魔力で歪める事で、あのヒロイ・カッシウス相手に禁手にもならずに渡り合った実力者。

 

 その彼女が禁手になった以上、彼女が強敵でないなどという事はあり得ない。

 

 そして、その迎撃の直後に、今度はシシーリア・ディアラクが突貫する。

 

 それに対して、ジェームズは流星滅装を再具現化させて対応。同時に継承した黄昏の聖槍を展開する。

 

 ジェームズは、継承時に黄昏の聖槍を亜種として具現化した。

 

 その能力は、単純明快。手に持つ武器を黄昏の聖槍と化すというただ一点。

 

 だがしかし、流星破装に慣れ親しんでいるジェームズからすれば、これほど便利な亜種の形もない。

 

 それに対してシシーリアはハルバードを手放し、無手で突貫する。

 

 それを無策とは判断せず、ジェームズは流星滅装の出力を全開にして対応。即座に叩き潰すべく、挑む。

 

 現段階では火力はこちらが圧倒している。それを最大限に生かすのが得策だと判断した。

 

 しかし、シシーリアもまた、目を見開いて声を放つ。

 

禁手化(バランス・ブレイク)! 聖女の共振する祝福(ホーリーライト・シンクロニティ)!!」

 

 その言葉と共に、黄昏の聖槍が具現化してジェームズの攻撃をいなす。

 

「……なんだと!?」

 

 眼を見開いたジェームズを挟み撃ちする為に、福津とプリスがすれ違いざまに攻撃を叩き込む。

 

 それを滑り込むように回避するジェームズだが、しかしその隙にシシーリアもまたジェームズをすり抜けて突撃。

 

 気づけば、三人はグレモリー眷属と合流してしまっていた。

 

「なるほど。まずは合流して対抗するということか」

 

「その学び舎の安全を最重要視したというわけか。日本の公務員は大変だな」

 

 流星滅装を軽く回して感心するジェームズに、魔聖剣を構えながら軽く笑うコカビエル。

 

 二人の視線を真っ向から受け止めながら、福津は肩をすくめるとリアスに視線を向ける。

 

「提言。有象無象はこちらとシトリー眷属で引き受けますので、リアス様達はコカビエルの相手に集中なさってください」

 

「それは良いけど、ジェームズの方はどうするの?」

 

 リアスとしてはありがたいが、しかしそれでも厄介だ。

 

 何故か悪魔の少女は見学に終始しているからいいが、ジェームズは普通に戦闘を行うつもりである。

 

 シトリー眷属を単独で壊滅寸前にまで追い込んだその実力は、まさしく脅威。更に神滅具を継承して更に厄介な事になっている。はっきり言ってコカビエルに並ぶ脅威だ。

 

 だがしかし、福津達は自慢げに笑みを浮かべると、まっすぐそのジェームズの後ろを見据える。

 

「大丈夫です。彼ならいけますよ」

 

「そうだね。あの子はこういう時強いから」

 

「確信。撃破ではなく撃退だったら、アイツだけで増援が来るまでしのげるさ」

 

 三者三葉に確信を覚えながら、三人は一人の同僚を見据える。

 

 そして、それに答えるように、サラト・アスモダイは血をぬぐうと拳を構えた。

 

「……アンタの相手は、僕がするよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 追撃の雷撃を叩き込まれそうになったイッセーは、しかし横から掻っ攫われる様に引っ張られると、その攻撃から外れていく。

 

「あ、危なかったぁ……」

 

『まったくだな。あの直撃は紅の鎧でも危険だったぞ』

 

 ドライグと共に、一誠は冷や汗をかく。

 

 そして、誰か分からない恩人に礼を言うついでに顔を確認しようとして―

 

「げほぉぅ」

 

 ―その恩人たるハヤルト・アスモデウスの吐いた血を、顔面から被る羽目になった。

 

「うわぁああああ!?」

 

「す、すまぬ。ちょっとGを体にかけすぎたようだ」

 

 思わず絶叫を上げるイッセーに、ハヤルトは謝罪する。

 

 顔色は悪くないが、しかしコップ一杯分ぐらいは血を吐いている。普通に緊急事態だ。

 

 まさか攻撃を受けたのではないかと、イッセーは心配する。

 

 その視線の意味を悟ったハヤルトは、しかし首を横に振った。

 

「安心せよ。余は虚弱体質でな、上位異形クラスの動きに匹敵するGがかかると、いつもこれぐらいは吐くのだ」

 

「アンタなんで前線出てきたの!?」

 

 イッセーのツッコミは当然であった。

 

 そんな虚弱体質が、前線に出て来て何をするというのか。一言無謀である。

 

 というより、戦えるのかどうかが甚だ疑問だった。

 

 だがしかし、ハヤルトは胸を張る。

 

「安心せよ、我が乗騎であるこの人工神器、鉄蠍の騎兵(スコルピオ・チャリオット)があれば、並の上級悪魔よりは戦える」

 

 そう言いながら、ハヤルトは得意げな表情となる。

 

「なにより、余は本質的に技術開発系のウィザードタイプ。直接戦闘よりサポートの方が得意なのだ。……追い返すぞ、イッセー」

 

 そういうと同時、ハヤルトはスピーカーらしきものをONにすると、声を出す。

 

「サラト! 増援が来る前に見せつけるぞ! この駒王町を守護する駒王駐屯地に、我らアスモデウス眷属ありとな!!」

 

『了解義兄さん! 鬼手(カウンター・バランス)を使おうか!!』

 

 その返答に頷きながら、ハヤルトは一誠に振り返る。

 

「ではイッセー。反撃を行うが、主力はお主だ。余ではあれには勝てん」

 

「当然でしょうが! ダーリンの仇!!」

 

 既にヤクサも追いつきかけているが、しかしそれをハヤルトは気にしない。

 

 そして、イッセーに顔を向けるとにやりと笑った。

 

「イッセー。鬼手(カウンター・バランス)とは人工神器の禁手の正式名称だ。余がアザゼル技術顧問の研究を発展させて、つい先日完成させた」

 

 とんでもない事実をさらりと告げてくる魔王末裔だが、しかしイッセーはとりあえずそこはスルーする。

 

 そんな時間的余裕がない。なので、ここは重要なところを聞くべきだと判断した。

 

「そして、余の鉄蠍の騎兵の鬼手の能力は―」

 

 ―その説明を聞いて、一誠は勝ちの目が見えた事を理解した。

 




 この作品ではE×Eの連中の襲撃がまだないので、ハヤルトが鬼手の理論を完成させた設定にしております。

 直接登場前から「ある意味チート」と説明していたハヤルトですが、其の本質は研究者。「最強のものを用意できるのなら、自分が最強である必要はない」を地でいくというか、虚弱体質ゆえにそうするしかないというか……。タイマンで戦えば若手四王の王四人にすら負けるレベルですが、技術力による後方支援では、化け物レベル。アザゼルとアジュカをたして1,5ぐらいで割った感じです。

 そしてハヤルトの眷属たちは全員強いです。いまだ底を見せない福津。禁手に目覚めたプリス。そしてある反則手段で聖槍を使ったシシーリア。

 そんな中、吐血したサラトですが、これはちゃんとした手順を踏まずに全力を出したため。彼は彼でいろいろと面倒な難儀な体質なのです。

 次回、サラトとハヤルトの鬼手による、コカビエル達への反撃タイムが始まります。
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