ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
米国陸軍は、未曽有の事態に対してしかしかろうじて反応していた。
テレビの取材に応じた基地が、突如として霧に包まれ、そしてそれが消え去ったときには大量のモンスターが現れたのだ。
それに対して、基地の司令官の反応は迅速だった。
これを強襲と判断した基地司令は、即座に攻撃命令を発令。
万が一、これが何かのサプライズだとしても、あまりにも悪質。ならば自分が責任を取ってでも即座に迎撃するべき。
そう判断した基地司令は英断であり、どちらかといえば善な判断を下したといえるだろう。
だが、それは焼け石に水だった。
「……第三分隊通信途絶! これで部隊の二割がMIAです!!」
「弾丸が効いてません! 突撃銃はおろか、重機関銃の弾丸すら意に介してません!! 対戦車兵器の許可を要請してます!!」
「機甲部隊の攻撃が通用してません! HEAT弾の攻撃すらモンスター一匹倒すのに数発は必要の模様!」
「攻撃ヘリ部隊、すでに飛行型モンスターによって全機撃墜!!」
通信兵が報告する内容は、全てにおいてこちらの圧倒的不利を告げていた。
世界最強の軍隊と断言できる、この米国の基地。それも国境近辺にあるがゆえに相応の戦力を集めているこの基地がまともな抵抗すらできずに蹂躙されている。
しかし、それでもなお闘う余地は残っていた。
「滑走路は死守しているな!? A-10で攻撃しろ!!」
かろうじて滑走路にだけはろくに敵がいない。まず真っ先に確保するべき滑走路に、敵がいない。
相手が何者かはわからないが、少なくとも現代戦の基本を理解していないことだけは確かだ。
制空権を確保することは戦場において非常に重要。そのための施設である滑走路の制圧は、間違いなく重要なピースの一つである。
このチャンスにすべてを掛け、司令官は攻撃機を緊急発進させた。
「A-10部隊に連絡。基地の被害はある程度無視していい。まずは基地内に侵入したモンスターを殲滅しろ!!」
「しかし指令! 一部では乱戦状態になっている地帯も―」
「責任は私がとる!! ここでこの基地が落とされてみろ! 本国にこのモンスターの群れが突入するぞ!!」
部下からの反論を一蹴して、指令は即座に攻撃命令を下す。
今ここでこのモンスターを撃破しなければ、どのみちこの基地は終わりである。
最悪、自分の首で済ますと覚悟を決め、司令官は攻撃命令を下し―
『こちらヘッジホッグ1! こちらヘッジホッグ1! 攻撃を受けている!!』
……その攻撃機部隊が壊滅寸前であることを思い知らされた。
「ヘッジホッグ1! 敵とはなんだ! こちらのレーダーには何も映っていない!!」
『こちらヘッジホッグ1! 敵は人間だ!! 人間が、箒に乗って空を飛んでいる!!』
その言葉に、全員の思考が一瞬真っ白になった。
気が狂っているとしか言いようがないが、しかし通信の声は真剣で正気を感じさせる。
『信じられねえ。こいつら、
その直後、通信が途切れて、ノイズだけが残る。
その事実が、すでに打つ手がなくなったことを示していた。
そして、その瞬間指令室の壁が破壊される。
……対戦車兵器の直撃程度なら一発ぐらいは耐えられるはずの頑丈な壁が、まるでバターのように切り裂かれた。
そして、そこに入ってくるのはおかしな格好の青年だった。
まるで日本のハイスクールの制服のような恰好をして、さらに中国の民族衣装を腰に巻いている。
そしてその手にあるのは、凝った装飾の一振りの槍。
どう考えても、現代の戦争に参加するものではない。
まるで日本のコミックに出てくる主人公のような青年の姿に、その場にいた者たちは訳が分からなくなる。
だが、それでも相手が敵であることだけはわかった。
「……撃て!!」
司令官の言葉とともに、MPが遠慮なくサブマシンガンを発射する。
訓練のたまものでオペレーターのほとんどが伏せていたこともあり、その弾丸は遠慮なく青年に襲い掛かる。
そして、その弾丸の嵐を青年はそよ風のように受け止めた。
「……さすがに、この程度が限界か」
其の在りえない光景に、全員が恐怖にかられる。
今目の前にいるのは本当に人間なのか。そんな可能性すら考えてしまった。
そして、その一瞬の隙をついてその青年は司令官に槍を突き付けた。
「司令官殿、投降をお勧めする。無駄に死人を出すのは、英雄のすることじゃないからね」
「英雄だと? ……ふざけるなよ、テロリストめ」
最後の抵抗とばかりに毒づく司令官だが、青年はそれに微笑を浮かべた。
「いや、英雄だよ。世界のゆがみを正す組織の、れっきとした一番槍さ」
その言葉とともに、青年はリモコンのようなものを取り出すとスイッチを入れる。
その瞬間、指令室のモニターの一つが一つの放送を映し出す。
その映像を見て、青年以外の誰もが息をのんだ。
「ほら、俺達はテロリスト何てちゃちな組織じゃないだろう?」
その放送の中で、リムヴァン・フェニックスは優雅に一礼した。
「お初にお目にかかる、神々に騙されている人間たちよ。僕の名前はリムヴァン・フェニックス。今起きている全世界同時クーデターの首謀者だ」
その言葉とともに、彼の後ろのモニターで数々の戦いの光景が移されていた。
場所はそれぞれ違うところを移しているが、しかし一つだけ共通点がある。
すべてにおいて、魔獣と生身の人間が、戦車や戦闘機などを圧倒していることだ。
「これは言っとくけどCGじゃない。っていうか、空を飛ぶとか人間ならだれもが一生懸命勉強すれば死ぬまでにできるようになるからNE!」
そうおどけていうと、リムヴァンはさらに続ける。
「我々の組織名は、ヴィクター経済連合。人類に新たな発展を与えるものだ」
そう告げるとともに、彼は魔法陣を展開する途中に浮かぶ。
「といっても、別に新しい技術を提供するとかいうわけじゃない。そもそもこの技術は千年以上前にとっくの昔に実用化されていたものだよん?」
そういうと同時、今度は炎を生み、氷を生み、雷を生み、暴風を生む。
「この技術の名前は魔法。かつて人間が神秘的な存在の力を模倣しようとして生み出し、神々によって隠された力さ」
そして、指を鳴らすと今度は魔獣達が姿を現す。
「この魔獣はドーインジャー。これは、
そこまで告げ、リムヴァンははっきりといった。
「今ここで真実を告げよう。つい先日、日本の駒王町という地方都市で、聖書の神の勢力は、悪魔及び堕天使と和平を結んだ」
そう、はっきりと告げた。
その言葉の意味を、見ている者たちはよく理解していなかっただろう。
しかし、それは大きな衝撃を数十億の者に与える。
当然だ。聖書の神、すなわちヤハウェを信仰するものは数多い。
キリスト教だけで二十億、イスラム教やユダヤ教も含めれば、世界人口の半分を占める。
そして、その前提として悪魔は神の敵である。
それが、和平を結んだ。すなわち、これから仲良くしていくということなのだ。
「これは真実だ。そして、暴挙はそれだけにとどまらない」
彼は苦笑を浮かべると、さらに指を慣らす。
そしてモニターの映像が変化して、様々なこの世のものとは思えない光景が映る。
「北欧神話、アースガルズ。ギリシャ神話、オリュンポス。中国神話、須弥山。……それ以外にも数々の神話の神々と彼らは和議を結ぼうとしている」
その言葉の意味を、映像を見ている者たちの殆どは理解していないだろう。
だが、それでもこの映像を世界に流しているという事実は大きなものを生む。
なにせ、この映像を流している男は、数多くの国で軍事クーデターを起しているのだ。
それも、モンスターと空を飛ぶ生身の人間という異常極まりない光景とともに。
この事実はどうあがいても消すことはできない。まず間違いなく世界中の人間が知ってしまった。
この時点において、もう聖書の教えと神々は後手に回ってしまったのだ。
「なによりも問題なのは、この事実を最大多数である人間の君たちの九割九部が知らないことだ」
そう、この事実を普通の人間は知らない。
「そして、たいていの国のトップたちはそれを知っておきながら、その事実を公表しなかった。これは君たちに対する裏切りだ」
そして、その衝撃に彼は付け込む。
「われわれ、ヴィクター経済連合はこの一方的な支配を打破するために結成された。彼らはその出資者だ」
その言葉とともにカメラが動き、何百人もの人々の姿を映し出す。
その姿を見て、彼らが誰かを知るものは数多いだろう。
財閥の長。石油王。小国のトップ。
人間世界で相応の地位についている者たちが、そこにはいた。
この事実が、彼らに現実味を与える。
人間世界において有数の地位を持つ者たちが、この荒唐無稽な話を認めているのだ。
これは事実だと、多くの者たちが思い知ってしまった。
「繰り返す。我々はヴィクター経済連合! そして、その実働部隊、
一呼吸貯められ、そして言い切った。
「歪んだ秩序を生み出す者たちに、
第一次真世界大戦の幕はついに開かれました。
ちなみに、各機会があるかどうかわからないのでここで書きます。
ヴィクター経済連合のスポンサーである金持ちの思惑は様々です。
実際に大義名分の通りに異形たちによるある種の支配ともいえるこの現状に憂いているもの。ただ単に異形の技術を使ってより儲けたいもの。異形の力があれば回避できた不幸を嘆くもの。
それらに対して、リムヴァンの協力者が言葉巧みに近づいて、スポンサーにしました。
………あれ? どっかでそういうの得意な奴がいたような?
ちなみにヴィクター経済連合のヴィクターは、ヴィクター・フランケンシュタインから名付けました。
人によってとんでもないものを創造してしまったという意味です。
ちなみに一章はあと一話。そして、次がヴィクター経済連合による最初の異形勢力に対する大戦果となります。