ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
そして、ハヤルト・アスモデウス眷属とリアス・グレモリー眷属は、中国の地方都市に来ていた。
国際フードフェスタ。食文化の発達している中国で行われる、世界各国の郷土料理を食することができる食の祭典。
帝釈天が自ら出資して規模を大きくさせたイベントであり、神話業界の人間世界への進出に注目が集まっているこの時代だからこそ、その参加人数は莫大だった。
帝釈天が自ら呼びかけたことで、神話や国家の重鎮達も何人も参加。VIP席で美食を楽しんでいる者たちも数多い。
そのうちの一人である大尽統は、しかし美食を楽しんでいるというよりかはやけ食いの形だった。
「ったく。今回のイベントは大事になりそうで困ったもんだぜ」
がつがつとワニ肉を食べながら、大尽は素早く周囲の視線を巡らせる。
異能に対しても相応の知識がある大尽にはわかる。このVIPルームは、神々の力で桁違いに頑丈に作られている。それこそ、戦術核程度の直撃ならば耐えられるだろう。
戦争クラスになれば地形すら変える異形の存在であろうとも、上級悪魔クラスの一人や二人では突破不可能。さらにその周囲には、最上級悪魔クラスの精鋭もいるという念の入りようだ。
しかしそれは、裏を返せばそれだけの警戒が必須ということでもあるのだろう。
国際情勢から考えても当然。VIPの顔ぶれを考えても当然。何もおかしなことではない。
だがしかし、既に下調べを終えていた大尽は警戒心が先に立つ。
このフェスタ周辺の警備網や警戒網。それらすべてに一見すると気づかないが、確かに存在する穴が存在する。
それ相応の諜報能力や潜入能力があるのなら、簡単に潜入できるだろう。諜報関係では他国に遅れる日本ですらつかめる穴だ。ヴィクターに属している有力勢力なら、いくらでも見つけられるだろう。
無論、警備は厳重だ。中国政府も軍を派遣しているし、須弥山からも仙人や妖怪が動いている。さらに帝釈天子飼いの尖兵たちが、広範囲にわたって待機している。
数か月前から雑居ビルなどの空いているスペースを戦力の待機場所としており、その数は歩兵一個師団を超えるだろう。中国・須弥山側だけでも、軍事拠点を超えるような圧倒的戦力である。
加えてそこに、各国政府や各神話体系からの腕利きの護衛があつまっている。彼ら全員が一致団結すれば、マイナー神話体系程度なら滅ぼせるだろう。
それほどまでの圧倒的な警備体制だが、これには致命的な問題がある。
これらは全て、問題が発生した後に鎮圧するためのものだ。その際に要人を護衛するための防衛網だ。
そもそも敵対勢力を近づけさせず、要人がいるこの場所で問題を起させない努力が明らかに欠けている。
「こりゃ、予想通りというほかないだろうな」
「おいおい、日本のトップともあろう人がなに不機嫌になってんだよ」
そこに声がかかり、大尽は振り返る。
そこにいたのは、若い外見の優男。
この状況下で無精ひげが残っているのは問題だが、しかしそれを踏まえてもVIP中のVIPだ。
北欧アースガルズ、新主神、ヴィーザル。
オーディンの後継としてアースガルズを担当する、若き主神である。
「こりゃどうも。そちらさんは中国料理はどうですかい? 寒い地方の出身でしょうし、四川料理とか食べてみるってのはどうですかねぇ」
「ビールに合うのはなんかないかねぇ。こう言うところだといいのがそろってそうだな」
そう世間話をしながら、大尽はヴィーザルと共に酒のあるスペースへと向かう。
そして、大尽は軽く肩をすくめた。
「……豪胆ですなぁ。何か起こるのはわかってるでしょうに」
「ビール一杯程度で不覚はとらねえよ。っていうか、むしろ一杯ぐらい飲ませてくれ」
当然のことだが、ヴィーザルクラスともなればわかっているようだ。
帝釈天は、この地にテロリストをおびき寄せている。そして集めに集めた戦力たちとぶつけ合わせる気だ。
自分達は其のための撒き餌なのだろう。これだけの要人がそろっているのなら、仕掛けたがるテロリストの数は十や二十では聞かないはずだ。
無論、危害が本当に加えられることだけは阻止するために本気は出している。周囲を警護する須弥山の戦力は、神格すら確認できるからだ。
だが、同時に帝釈天は外周部を警戒する護衛達は新米を中心に配置している。
それは確実だ。そして、彼らがテロリストとぶつかり合うことこそを帝釈天は目論んでいる。
そう、帝釈天の目的は新米たちに対する過激なまでの試練を与えること。
ただの雑兵はいらない。必要なのは、神々の戦争でも戦力として認識できる凄腕の猛者。少なくとも、戦車程度を生身で破壊できる戦闘能力は必須だろう。
そのためにテロリストをあえて引き寄せ、かき集めた兵士たちとぶつけ合わせることで戦力を育て上げようとしているのだ。
圧倒的な人口を誇る中国を牛耳っているからこそできる、人海戦術による強化方法。
一歩間違えれば国際社会からの非難もあり得るが、しかしそこは国際情勢が味方する。
「……戦争するなら
「同感だ。ヴィクターの相手で苦労してるんだから、
2人そろってため息をつくのも、当然といえば当然であった。
何だろう、ため息が聞こえた気がする。
そんなことを思いながら、しかし僕はそっちを気にする余裕なんて欠片もなかった。
なぜなら、僕のとなりではペトさんがおいしそうに鯨肉を食べていたからだ。
「……割とうまいっすね。これ、日本の郷土料理ッスから、帰ったら本場を食べに行くのもいいかもしれないっす」
そう言いながらニッコリ笑顔で食べるペトさんは、とてもきれいだ。
いや、ホントキレイだよ、ペトさん。
どれぐらい綺麗かっていうと、僕は食べている物の味を理解できないぐらい夢中になってる。
こんなきれいな人が、ベッドの上だと妖艶としていて別の形の美しさを見せるからすごい。
うん。間違いなくハイレベルだよコレ。きれいすぎるっていうか、美しすぎるっていうか。
「……サラト?」
見惚れてたら、ペトさんはなぜか不満そうな目でこっちを見てくる。
あれ、な、何かしたかな?
そう思って首をかしげていると、ペトさんは橋の先端を突き付けた。
「サラトはもうちょっと食事を楽しむッス! デートはそう言うのも楽しみ方だと思うっすよ?」
「いや、おいしそうに食べるペトさんがきれいすぎて」
ぶっちゃけ、ご飯の味がわからないです。
「むぅ。そう言われると照れるっすけど……」
顔を赤くしながら、もぐもぐとクジラ肉を食べていくペトさん可愛い。
だけど確かに、デートはお互いの顔を見て楽しむだけだといけないよね。一緒に食べるご飯を楽しめないと。
うん、ちょっと反省。
深呼吸して落ち着いて、そしてゆっくりと味わってみる。
……うん、おいしい
「いや、ほんと美味しいね、コレ」
「っすよねぇ。滅びない程度に食べる文化遺す程度で、テロリストまで出てくるとか迷惑っス」
うんうんとうなづきながら、僕たちは会話を続ける。
「でもまあ、僕記憶喪失だけどこういうのは良いですね。なんでも新鮮で、おいしい食べ物とかも新鮮に食べれるし」
「なるほどッスね。たいていのことにはいいことが一つぐらいあるもんっすね」
「ですよねぇ。あ、そういえばペトさんは何か大好物とかあるんですか?」
今度、でででででデートするとき、その手のお店に誘いたいので聞いてみた。
ペトさんは少し考えると、ぽんと手を打った。
「ペペロンチーノとか好きっすね」
ほほぉ。
「いや、スパゲッティは消化吸収いいし、にんにくは精が付くからヤる前に食べることとかがちょくちょくあって、そこから結構好きに」
ペトさんらしい理由だったよ。
「あはは。じゃあ、今度デートするときはホテルの前にパスタ専門店とかですかね」
僕は何を食べようかな。
ピザにするかマカロニグラタンにするか。いや、ペトさんと一緒にスパゲッティにするというのももちろんありだし。
まあ、ペトさんと一緒ならよほどのことがない限りどれでもおいしいかもね。
……おっと。
いけないいけない。これは休暇にかこつけた助っ人としての待機任務だった。
おいしい食べ物がいっぱい食べられるけど、食べ過ぎちゃいけない。
激しい運動をすることになるかもしれないから、適度に胃を開けておかないと。穴が開いたら大惨事だよ。
「ペトさん、今度任務とか抜きで遊びに行きません? ……二人っきりでなくていいですから」
「……嵌ったっすか? それならかわいい子を何人か見繕わないとっすね」
いや、そういう意味じゃなくて。
「イッセーさんとかでもいいですよ。なんとなく、色んな人と一緒でもいいからペトさんとの時間がほしいんです」
「いや、イッセーを連れて行くとリアス先輩たちにぶち殺されそうなんすけど……」
だから、そういう意味じゃなくて―
『―こちらミラリル。外周南西部で警備部隊と新秦が小競り合いを開始した』
その言葉に、僕たちは即座に食事を掻っ込む方向にシフトした。
やっぱり始まったよ。それも新秦かぁ。
小国クラスの軍事力を誇る組織だからね。小競り合いでもそれ相応の規模になりそうだよ。
『同時多発的に潜伏している連中が暴れだしかねない。全員コンディションイエロー。遊びの時間はここまでだ』
だろうね。
うん、やっぱりペトさんとのデートはまたの機会にしよう。
さて、こっからは自衛隊として頑張りますか。
各勢力のトップが集まる中、やっぱり起きましたよトラブルが。
事実上の初デートが困難で、サラトは残念。今度もっとまともなデートを書いてみるから我慢してくれ。