ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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窮地に追い込まれるグレモリー眷属達。

だがしかし、この地にはこの地で凄腕の連中がゴロゴロいたりするのだ!!


第二部二章 10 天帝先陣

 

 振るわれる魔槍は魔剣をあっさりといなす。

 

 何度目か分からないその攻防を前に、祐斗は歯噛みする。

 

 目の前のファンネルの戦闘技術は、非常に優れている。

 

 おそらく英雄派の幹部にも匹敵するだろう。それが、魔獣創造で生み出されたドーインジャーを上手く障害物として運用しながら、的確に攻撃を仕掛けてくる。

 

 端的に言って、苦戦していた。

 

「苦境。ほぼドーインジャーだけで、ここまで動かせるとは!!」

 

「当然。ドーインジャーを上手く利用した戦い方は研究されている!」

 

「……させない」

 

 福津に攻撃を叩き込もうとしたファンネルが、横合いから仕掛けてきた小猫の打撃を避けてドーインジャーの中に隠れる。

 

 そしてドーインジャーの攻撃は小猫に集中した。

 

 先程からこの調子で戦闘は膠着している。

 

 仙術による探知を避ける為に、ドーインジャーの攻撃は殆ど全てが小猫に集中している。

 

 そして割って入ろうと攻撃を叩き込もうにも、ダイドーインジャーによる攻撃が騎士団を破壊する為、うかつな運用は困難。

 

 ならばグラムでやろうにも、ファンネルが絶妙なタイミングで攻撃を行って妨害してくる。

 

 そして包囲戦で仕掛けてきている為、福津は戦闘としての相性が悪い。

 

 ドーインジャーが的確にこちらの視界からファンネルを隠す動きを取ってくる為、本体狙いも困難という有り様だ。

 

 このままでは十中八九負ける。

 

 そんな嫌な予感を祐斗達が覚えた時、しかし増援は来た。

 

『お待たせしました! 後は任せてください!!』

 

 其の声と共に、闇が周囲を包み込む。

 

 そして闇の中から赤い目が浮かび上がり、ドーインジャーが動きを一斉に停止させる。

 

 その増援に、誰もが誰かを把握して、そして勝機を見出した。

 

「む、ギャスパー・ヴラディか」

 

 ファンネルも、流石にまずいと判断したのか唸る。

 

 ギャスパー・ヴラディ。グレモリー眷属の一人にして、最高峰の戦力の1人。

 

 神滅具クラスへの変質を遂げた停止世界の邪眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)。滅びた邪神、バロールを宿してしまった、反則存在。リムヴァン経由で平行世界のアザゼルが名付けた名前が、時空支配する邪眼王(アイオーン・バロール)

 

 その反則極まりないイレギュラーの力は、まさに絶大。

 

 一瞬で戦場そのものを闇が多い、それを経由して停止の力がドーインジャーをほぼ全て停止させる。

 

 そして次の瞬間、闇で構成された獣達が、一斉に停止したドーインジャーに襲い掛かった。

 

 それに対して迎撃を行えたのはダイドーインジャーのみ。

 

 そして、ダイドーインジャーは瞬時の大量生産ができないゆえに、数にはどうしても限りがある。

 

 ゆえに、これまでのようにドーインジャーを適格に動かして相手の視界から逃げる戦法はもう取れない。

 

「これで決める!」

 

「同意。此処で仕留めなければ安心して眠れん!!」

 

「……あの、そういう方向性でいいのでしょうか?」

 

 ドーインジャー軍団の相手をギャスパーに任せ、三人は一斉に駆け出す。

 

 だがしかし、それより一手ファンネルが速かった。

 

「うん、これは撤退だな」

 

 瞬時にこれまでとは違う、まったく異なる魔獣が生成される。

 

 大量に生成され、それそのものが邪眼から残りの魔獣を守る盾となるように展開する魔獣達。

 

 それに囲まれたファンネルの姿が、一瞬で揺らめく。

 

「転移用の魔獣か!」

 

 祐斗が気づいた時にはもう遅い。

 

「では、君達の尻を味わうのはまた今度にしよう」

 

 そんな末恐ろしい捨て台詞を残して、ファンネルは瞬時に転移して離脱していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一斉に襲い掛かる変態軍団。

 

 その後頭部に、もれなく鏡が叩きつけられた。

 

「「「「「「「「「「へぶぁ!?」」」」」」」」」」

 

「「「え?」」」

 

 それにあっけにとられるプリスにロスヴァイセ。そしてラーグリフ。

 

 そして、その瞬間には莫大な出力の魔法攻撃がラーグリフに向かって放たれた。

 

「新手か!」

 

 素早く回避するラーグリフだが、その瞬間魔法攻撃は鋭角的に曲がって再び襲い掛かる。

 

 更に回避するも、しかしすぐに鋭角反転。それらが何回か続いて、ついに回避し損ねてラーグリフに魔法攻撃が当たる。

 

 かろうじて防御に成功したラーグリフだが、しかしその現象の種に気づいて、舌打ちする。

 

「……魔法反射能力持ちの鏡?」

 

 ラーグリフが魔法で強化した視力で認識したのは、まさにそれだ。

 

 魔法を反射する力がかけられた鏡。つい先ほど、三情の構成員達の後頭部にぶつけられた物と、まったく同じ物だった。

 

 気づけば、半径百メートルを超える範囲内に百個ほど展開されている。

 

 そして、それをなすものが割って入った。

 

 ……一人の、小柄の年若い少女だった。

 

 和風の衣装を着たその少女は、静かに両手を向けると、一言告げる。

 

「去ってください」

 

 そして、その瞬間数百もの魔方陣が展開される。

 

「……これは、凄いですね」

 

「うっわぁ。ゲオルク並みにできるよ、この子」

 

 ロスヴァイセもプリスも感心するほどに、その少女の魔方陣は完成されていた。

 

 形式としては西洋魔術が基礎だが、そこに東洋の呪術などをはめ込んだ独自アレンジが施されている。

 

 使いこなすには相当の技量とセンスが必要だが、使いこなす事ができれば間違いなく最高峰。そんな強大な能力を、見事に示していた。

 

「此処は偉大なる天帝の御威光注ぐ土地。こちらも天帝の戯れがありますので、ここで退くのなら追いはしません」

 

「……冗談には聞こえないわね」

 

 ラーグリフは苦笑すると、素早く転移魔方陣を形成する。

 

「撤退するわよ。食事巡りで死ぬなんて、流石にリーダーに悪いわ」

 

「は、はい!!」

 

「くそ! 処女に色欲を教えるチャンスを見逃す羽目になるとは……ぶふぁ!?」

 

 余計な事を言った一名の股間に、魔法攻撃が直撃した。

 

「え、エッチすぎるのはいけないと思います!!」

 

 どうやら、その少女はそういった事に免疫なさそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 瞬間的に発生した爆発。それに吹き飛ばされながらも、シシーリア達はすぐに態勢を整えていた。

 

 しかし、フリードはそれを見てなお余裕の笑みを浮かべる。

 

「んじゃあ、そろそろギアを上げていこうかなぁ……」

 

「いや、今日はこの辺にしときな」

 

 その言葉と共に振るわれる斬撃を、フリードは二刀を盾にして防ぐ。

 

 しかしそれを完全には殺し切れず、フリードは勢いよく弾き飛ばされた。

 

「新手か!?」

 

「でも味方っぽいわよ?」

 

 ゼノヴィアとイリナがそう言い合う中、フリードは素早く体勢を整えると、即座にノートゥングを振るう。

 

 その圧倒的な切断力が飛ぶ斬撃として襲い掛かる中、その新手である少年は、素早く持っていた魔剣を振るう。

 

禁手化(バランス・ブレイク)

 

 その静かな祝詞と共に、一瞬で爆発的な出力が発生する。

 

 その禍々しい極大なオーラが、ノートゥングの一撃をたやすく両断した。

 

 そしてその切り裂かれた斬撃をかいくぐるようにして、少年は素早く斬撃をフリードに叩き込む。

 

 それを軽やかにかわすフリードだが、その結果少年の姿がすぐに分かる。

 

「……アイツも白髪か!」

 

 ゼノヴィアがつい言ってしまったのも仕方がないだろう。

 

 特徴的な白髪の髪を振り乱しながら、少年はフリードを睨みつけて吠える。

 

「ホントに失せろ。出なけりゃ殺すぜ、フリード」

 

「おっほぉ! 誰かとおもりゃぁシグルくんじゃねえかい! 久ーしぶーりー」

 

 おちゃらけたノリで返答するフリードだが、しかしすぐに辺りを見渡すと肩をすくめる。

 

 既にゼノヴィアとイリナも態勢を整え直し、シシーリアもまた戦闘態勢を取っていた。

 

 そこに来ての新手。これ以上の戦闘は不確定要素が多すぎる。

 

 フリードはそう判断したらしい。わざとらしくふいーと息を吐きながら、素早く魔獣を展開する。

 

 その魔獣が生み出す光につつまれながら、フリードはにやりと笑う。

 

「ま、シグルド機関同士の同窓会はまた別の機会にしようや。そん時は盛大に殺し合おうぜぇ?」

 

「そうだな。ま、俺もお前の事は悪く言えねえ立場だがよ」

 

 その短い言葉と共に、白髪の男同士の別れは終わる。

 

 転移と共にフリードは消え、シグルと呼ばれた少年は、シシーリア達に向き直る。

 

「天帝先陣の1人、シグルだ。……とりあえず、そろそろ終わりそうだから味方と合流したらどうだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まだ戦う気満々の三情達変態軍団。

 

 その彼らのうちの一人が、独立具現型なのか魔獣を生み出して攻撃を仕掛けてくる。

 

 そう思った瞬間、光が僕達を通り過ぎた。

 

 その光は魔獣に当たると、一瞬で魔獣が石になる。

 

 そして、その魔獣を通り過ぎて、突っ込む一人の男性が一人。

 

「その辺にしてもらおうか!」

 

 そして素早く振るう斬撃に、変態達は慌てて回避する。

 

「新手か!!」

 

 反撃の魔法攻撃やオーラの弾丸はしかし男性には当たらない。

 

 一瞬で影が伸びると、それが攻撃を飲み込んだからだ。

 

 そして、影の別の場所から一斉に放たれて、変態達をかき乱す。

 

 そんな中、さっき魔獣を生み出した男性が反撃の為に再び魔獣を生み出そうとする。

 

「甘い。我がいる限りそんな事はさせねえよ」

 

 其の声と共に、生み出されかけた魔獣は一瞬で消え失せた。

 

「な―」

 

「遅いわぼけぇ!!」

 

 そしてその次の瞬間、突っ込んできた男に殴り飛ばされて、その神器使いは失神した。

 

 うわぁ。あれは痛い。もう芸術的なレベルで凄いパンチだよ。

 

 ……あれ? なんかイッセーさんが、乱入してきた男の一人を見てぽかんとしてる。

 

「な、な、な! なんでヴィクターがここにいるんだよ!?」

 

 え、ヴィクターまで来てるの!?

 

 慌てる僕だけど、イッセーさんが指刺した男はなんか感慨深げだった。

 

「覚えられる程度にはなったってわけか。少し感慨深いな」

 

「羨ましいな、こちらは確認する前に死んじまったからな」

 

 そんなことを言うパンチが凄かった人は、こっちを見ると片手を上げて動きを制する。

 

「安心しろ。我らはヴィクターを抜けている」

 

 へ? あの人もヴィクターのメンバーだったの?

 

 僕は確認の為にイッセーさんの方を向くけど、イッセーさんはぽかんとしていた。

 

 そして三秒ぐらい首を傾げて―

 

「ゴメン、誰だっけ?」

 

「貴様ぁああああああ!!!」

 

 凄い殴り掛かりたがってるよ。

 

「あ、亡命騒動の時にヒロイのボコられた神器使いッスよ、そいつ」

 

「いよっしゃ覚えてもらってたぞぉおおおお!!!」

 

 ガッツポーズを取ってるところ悪いけど、その覚え方で嬉しいの?

 

 ペトさんも、もうちょっとオブラートにくるんであげましょうよ……。

 

「ええい! これは流石に不利だ、撤退するぞ!!」

 

「了解!!」

 

 そして撤退する変態達を見送りながら、真っ先に援護してくれた人が片手を上げる。

 

「初めましてだな、赤龍帝。俺はペルセウスってんだ」

 

 ぺ、ペルセウスっていうと、ギリシャの有名な英雄だよね?

 

 襲名したとかそんな感じかな? っていうか、どゆこと?

 

 その疑問は、すぐにペルセウスの言葉で解決する。

 

「曹操達が迷惑かけて悪かったな。……メデューサの目を調達した身として、謝っとくぜ」

 

 …………。

 

 え、英雄派だぁあああああ!!!

 

 僕はバックステップで下がると、即座にペトさんを庇う。

 

「ふえ? サラト?」

 

「さ、さささ下がってペトさん!!」

 

 や、やばいやばいやばい!!

 

 英雄派っていえば、ヴィクターの精鋭部隊の中でもトップクラスの実力者揃いじゃないか。

 

 あの西遊記の三英傑を相手に、たった四人で互角に渡り合ったという実力者中の実力者。かつ構成員でも大半が禁手に目覚めていて、そのうえで神器を移植した人も数多いって話だ

 

 そして、ペトさんやイッセーさん達D×Dと戦って、幹部陣の大半が戦死したらしい。シシーリア姉も一人倒したとか。

 

 ま、まさかリベンジマッチとは思わなかったよ。お前を倒すのはこの俺だ的なムーブなんだね。

 

 いいよ、いいでしょう。いいじゃないか。

 

 やってやるよぉおおおお!!

 

「おい、何か勘違いしてるぞ、そこのガキ」

 

 影使いがそう言って、ペルセウスがぽんと手を打った。

 

「あ、違う違う。俺達は帝釈天の世話になってるから、ここでD×Dと戦う気はねえよ」

 

 ………はい?

 

「え、どういうことだよ?」

 

 イッセーさんも驚いて、ペルセウスに問い質す。

 

 それについて答えたのは、腕っぷしの強い方の人だった。

 

「簡単だ。我達は、ヴィクター側の英雄派と縁を切って帝釈天の側に就かせてもらっているんだよ」

 

 ………はい?

 




英雄派まで取り込んだ精鋭集団が割って入り、敵陣営は引き際をわきまえて撤退。

次の話で天帝先陣の詳細情報や、なぜ英雄派のメンバーが参加しているのかが語られます。
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