ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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名前が出ないのも含めて、因縁キャラが登場します!


第二章 4 

 

 それから数日、俺たちは冥界観光を楽しんでいた。

 

 冥界って、実は人間界にも匹敵するぐらい栄えてるな。しかも人口が圧倒的に少ない分空気がうまい。

 

 とはいえ、街のどこかしこでは暗い表情を浮かべている人も何人もいたけどな。

 

 やっぱり、あれだけのことがあった以上、心配になる奴は多いか。

 

 なにせ、下手をすれば人間の軍隊がこの冥界に襲い掛かりかねない。

 

 数の上で人間は知的生命体の中でもぶっちぎりトップなんだ。それも、神器や魔法という悪魔に対抗する手段は数多い。

 

 ヴィクター経済連合はそれを積極的に人間に教えているはずだ。それが利用されれば悪魔にとっては最悪だ。

 

 かつての三大勢力の覇権争いなんて目じゃない規模の戦いになりかねない。下手すりゃ、核戦争だって起きかねねえ。

 

 そんなことになれば地球が死の星になるから、いまのところは三大勢力が各国家に働きかけて仕掛けられないように抑えているけど、それもいつまで持つことやら。

 

 兎にも角にも、禍の団の連中は本気で俺たちと全面戦争をぶちかます気だってことだけはよくわかった。

 

 ……そんでもって、それをさせる気になるほどのきっかけの一つを俺が担ってるってこった。

 

 食うに困って受けた人体実験。まさかそれが、神器を移植するものだってのはさすがにな。

 

 それが奴らのテロを勃発させるきっかけの一つになってたってのに、俺はその力で英雄になれるかもしれないと思っていた。

 

 ちょっと……ショックだよな。

 

 はあ。こんなこと考えちまうのも、一人寂しくビルの入り口前で待ってるからだ。

 

 いま、お嬢たちは若手悪魔の会合に参加してる。

 

 上級悪魔のお偉いさんがこぞって参加して、その若手悪魔の目的の表明とかを聞いたりするそうだ。

 

 で、そんな会合に俺たちが参加できるわけねえから、こうしてビルの下で待機してるってわけだ。

 

 ぶっちゃけ暇を持て余しながら、三人そろってスマホをいじったりして時間をつぶしている。

 

「あ、またどっかの国がヴィクターに喧嘩売って瞬殺されたそうッスよ?」

 

「核攻撃の準備までしてるって噂になってるわね。……さすがにこちら側の上が止めてるみたいだけど」

 

「……なんか、数年前から勢力圏じゃストリートチルドレンを引き取っている財閥がゴロゴロ出てたとか判明したぞ。わかりやすい洗脳教育じゃね、これ?」

 

 などとだべりながら、俺たちはお嬢たちが戻ってくるのを待っている。

 

 ま、こういう会合はかなり長くなるって相場が決まってるからな。たぶんあと小一時間ぐらいたつかもしれねえなぁ。

 

 しかし、ヴィクター経済連合と禍の団は、初戦において圧倒的に動いているといってもいいなオイ。

 

 そして、その要因の大きな一つは―

 

「……姐さん。俺たち、どうしたらいいんだろうな」

 

「ヒロイ?」

 

 俺は、どうしてもそれを言いたくなっちまった。

 

「ヴィクター経済連合の主力はほとんどが神器を移植してて、しかもそのデータは俺が原因だ」

 

 俺は、うれしかったんだ。

 

 神器を三つも持っていて、しかもそのうち一つは神滅具。

 

 神器は持っているだけでレアで優秀になれる。それがいくつもあってうち一つは最強の代物。どう考えてもチートだった。

 

 そんなものがあって、俺は英雄になりやすいってことは思ってたんだ。

 

 それなのに……っ。

 

「俺は、英雄どころか災厄の原因じゃねえか……っ」

 

 ふと思ってしまうと、もう考えっぱなしだ。

 

 英雄に、なりたかった。

 

 俺にとっての姐さんみたいに、誰かの心をともす輝きになりたかった。

 

 それが、戦争の切り札を生み出す理由になって、誰かの心を曇らせる要因になるとか、最悪だろ。

 

「だったら、強くなりなさい」

 

 そんな俺に、姐さんはそう言い放つ。

 

「誰かの心を曇らせてしまったのなら、それ以上の人々の心を照らす存在になりなさい。そうすることでしか、それを清算することはできないのよ」

 

 突き放すように、しかし言い聞かせるように姐さんは、リセス・イドアルはそういった。

 

「忘れちゃだめよ。英雄とは何かを斃した者。どうあがいても倒した誰かの家族の心は曇るのよ」

 

 それは、どこか自分に言い聞かせてるように思える、そんな言葉だった。

 

 そして、其れは英雄の真理だ。

 

 英雄とは、戦って勝った奴のことだ。

 

 つまり、死人の一人や二人は最低でも出すような連中なんだ。

 

 そんな奴が讃えらえられるのは、人の心を照らす輝きだからにほかならねえ。

 

「少なくとも、(要因の一つ)はそうするわよ。あなたはそれを黙ってみているつもり?」

 

 そう、姐さんは不敵に笑う。

 

 俺は、まっすぐにそれを見据えて答えるしかねえ。

 

「まさか、俺は輝き(英雄)になるって決めてんだぜ、姐さん」

 

「それでいいと思うッスよ?」

 

 と、ペトが俺の方を見てほほ笑んだ。

 

「第一悪いのはリムヴァンの奴で、お姉さまもヒロイも被害者みたいなものッス。迷惑料としてしっかり受け取っとけばいいんスよ」

 

 た、確かにそうじゃねえか!!

 

 俺たち人体実験うけてんだもんな! それぐらい請求しても罰は当たらねえよな!!

 

 ああ、そう考えたら少しは気が楽に―

 

「……クソが! あの無能、次のレーティングゲームでぶち殺してやる!!」

 

 ってな大声が響いてきて、なんか台無しなんだけど!?

 

 視線を向けてみれば、なんか明らかにガラの悪そうな悪魔が、同じくなんというかヤンキーとかビッチとかの印象が強い連中を連れてずかずかと歩いてきていた。

 

 なんだありゃ? ここは貴族の跡取りがあつまってる場所じゃねえのかよ?

 

 てか、なんか顔がはれ上がってるな。喧嘩でもしたか?

 

 それで負けてイラついてると。……典型的な馬鹿だな。

 

「ああ!? 見世物じゃねえぞ!!」

 

 周りの連中に当たり散らしながら、そいつはずかずかと俺たちを通り過ぎる。

 

「ゼファードル様、と、とりあえず顔を冷やしてくださいませ!!」

 

 と、そのうちの一人。濃い茶髪の少女悪魔が俺たちのすぐ近くを通り―

 

「「―っ!?」」

 

 ―姐さんと目が合うと、お互いにぎょっとした。

 

 なんだ? 知り合いか?

 

「貴女……」

 

「り、リセ……」

 

「何してやがんだ!! とっとと帰んぞ!!」

 

 お互いに何か言いかけたけど、不良悪魔が怒鳴るとすぐにその子は走り去っていった。

 

「お姉さま、知り合いっすか?」

 

「い、いえ……。よく似てただけで別人でしょう。上級悪魔がわざわざ眷属にするような子じゃなかったしね」

 

 ペトにそう答える姐さんだが、しかし明らかに嘘だって俺でもわかる。

 

 だってあの子の方も面識ある感じだったからな。

 

 それでもそういうってことは、なんかあるってことか?

 

「……ヒロイ」

 

 と、ペトは俺に耳打ちする。

 

 タイミング的に露骨すぎだろとは思うけど、幸い姐さんはその子が去っていった方向に顔を向けていて気が付かなかった。

 

「姐さん、あれでナイーブなところもあるんス。聞かないでやってほしいッス」

 

「オーライ。俺も姐さんを困らせたくねえしな」

 

 俺がそう答えていると、さらに悪魔が何人もぞろぞろと出てきた。

 

 ああ、もう終わって帰るところだってのか。

 

「……ディオドラ様。これからどうしますか? 私は何のお役にも立てない気がしますが……」

 

「そこまで自分を卑下することはないよ。其れより、彼に連絡を取るからもてなしの準備をしておこうか」

 

 そう話し合っている主と下僕がいたが、下僕の方は主に顔を向けていたので―

 

「―あ」

 

「っと」

 

 俺とぶつかってしまった。

 

「悪い。話してたんで反応が遅れちまった」

 

「い、いいえ!! 私が愚図なだけなんです。前をちゃんと確認してなかったから―」

 

 なんか勢いよく自虐しながら、その少女は顔を上げて―

 

「……シシーリア?」

 

 俺は、その顔に見覚えがあった。

 

「……ぃ……ん」

 

 その少女は、俺の顔を見ると目を見開いて硬直する。

 

 お、オイオイオイオイ。なんでこんなところに彼女が―

 

「……すまない。悪いけどこれから用事があるんだ」

 

 と、其の主悪魔が割って入ってきた。

 

「あ、すいません! 主のお手間を取らせるなんて、私は本当に愚図で……」

 

「いや、僕が注意しなかったのも悪かったよ。気にしなくていいよ」

 

 頭を下げるその少女に、主の悪魔はそう和やかに答える。

 

「眷属が済まなかったね」

 

「いや、俺たちもこんなところで突っ立ってて悪かった」

 

 俺はすぐにそういうが、それを聞いた主悪魔は眷属の手を取ると足早に去る。

 

「悪いけど用事があるんだ。縁があったらお詫びにお茶でも奢るよ」

 

 俺は、その背中を見つめて声も出せない。

 

 ……まさか、彼女は本当にシシーリアなのか?

 

 いや、いくらなんでも彼女が悪魔になってるとは思えねえ。

 

 あんなに、信仰心が強くて聖女とまで呼ばれた彼女が、悪魔になってなってるわけがねえしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんでもってイッセー達と合流したが、結構ひと悶着があったらしい。

 

 例の不良悪魔はゼファードル・グラシャラボラス。凶児と呼ばれる、グラシャラボラス家でもかなりの厄介者だそうだ。実力だけはあるんでちょっと前に事故死した当主候補の代わりに次期当主になったとか。

 

 で、その素行不良の阿呆がアガレス家の次期当主に「処女なら俺がもらってやろうか」とかぶちかまして殺し合い一歩手前になったらしい。

 

 阿保じゃねえの?

 

「あの子……苦労してるのね」

 

 姐さん、あの子と知り合いなの隠す気ねえだろ。

 

 で、それに関しては何とワンパンで終了。

 

 お嬢の従兄弟のサイラオーグ・バアルとかいうのがゼファードルを殴り倒して終了したらしい。

 

 マジでワンパンだったとか。あれ? ゼファードルって素行の悪さを差し引いても次期当主に選ばれたんじゃねえのかよ?

 

 で、それが終わってお目通りがかなったわけだが、ここでイラつく出来事があったとか。

 

 なんでも、ソーナ会長の夢を上役たちが笑ったとか。

 

 ソーナ会長の夢は、誰もが通えるレーティングゲームの学園設立。

 

 それを「非現実的な夢」とか言ったそうな。

 

「ったく。古い悪魔ってのは教育の力を何もわかってねえ」

 

 俺は心底ため息をついた。

 

 教育ってのがどれだけ重要なのか、上役は理解してねえな。

 

 日本人でもそうだが、誰もが普通に教育をうけることができるってのがどれだけ素晴らしくて力になるかわかってねえよ。

 

 失敗国家ってのがある。

 

 簡単に言えば、国家として機能してねえ駄目な国ことだ。問題国家でおなじみの北〇鮮もなかなかトップテンに入らねえ。いや、この場合はワーストか。

 

 で、その判断基準の一つは、「教師にきちんと給料が払えているか」。

 

 一部のエリートを育てるだけじゃねえ。底辺の水準がある程度高いことが、いい国の条件ってやつだ。

 

 先進国の大半は、教育がしっかりしてるし義務教育もきちんとある。これが人間の発展の理由だろうに。

 

 ちゃんと周りのいいところを理解しねえとだめだってのによぉ。何考えてんだ、上役は。

 

「……上役は、冥界を豊かにしたいんじゃなくて冥界でお金持ちになりたいんでしょうね」

 

 といったのは姐さんだった。

 

「だから、冥界の下民がいくら貧困にあえいでいても気にしない。冥界という世界で、自分たちが上の立場になることしか考えてないのよ」

 

 そういうと、姐さんはため息をついた。

 

「……私も貧困層の出身だから、そういうのはむかつくわね」

 

「まったくね。耳が痛いわ」

 

 お嬢もそれには同意見だった。

 

「悔しいけど、お兄様たちはまだ若いから、上役たちには強気に出れないことも多いわ。天界や堕天使領との付き合いで軟化してくれればいいのだけれど……」

 

「悪魔は何処も大変だな、オイ」

 

 アザゼルはそうまとめるが、さてどうしたもんか。

 

 ま、俺たちが何か言っても聞くわけねえんだろうけど。

 

 悪魔は寿命がなげえから、老害とかがなかなかくたばらなくて困ったもんだなオイ。

 

「ま、それはともかく今気にするべきはレーティングゲームだな。……ソーナのところとするんだって?」

 

 と、アザゼルは話を変えてくる。

 

 ああ、そういやサーゼクス様の発案で、若手悪魔でレーティングゲームをするんだったな。

 

 たしか、アガレスとアスタロト、バアルとグラシャラボラス、で、お嬢と会長だったな。

 

 ……いきなりサイラオーグとゼファードルって、上役面白がってねえか?

 

「凶児と無能。どっちが勝ってもどっちが負けても、面倒な奴を笑えてラッキーとでも考えてんだろうな。悪魔の上役は趣味が悪いぜ」

 

 と、アザゼルがぼやくが、俺たちとしては気になるのはお嬢と会長の試合だ。

 

 ……全体的にはチートが四人もいるお嬢の方が有利か?

 

 聖魔剣の木場。デュランダルのゼノヴィア。聖母の微笑のアーシア。そして赤龍帝のイッセー。

 

 この四人は、一人確保できただけでレーティングゲームで名を上げれそうなチート枠だしな。そんなの全部確保してるとか、お嬢のチームは反則だろ。

 

 並の現役上級悪魔のチームなら、一蹴できるんじゃねえか?

 

「で、リアス部長はどうするんスか? 勝てると思うっすか?」

 

「勝つわ。ソーナには悪いけど、こんなところで躓いていられないもの」

 

 と、気合万全のお嬢。

 

 ダチ相手でも容赦ねえってか。ある意味熱い友情なのかねぇ。

 

 と、俺が思った時だった。

 

 グレイフィアさんが、リビングに姿を現した。

 

「皆様、温泉の用意が整いました」

 

 ………お、温泉、だと?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ~。酒が染みるぜぇ!!」

 

 アザゼルが、文字通り羽を伸ばしながら酒を飲んでる。

 

 今俺たちは、温泉に入ってる。

 

 ヨーロッパでも温泉はあるところはあるから、仕事のついでに入ったことはある。いや、おれはシャワー派だけどな?

 

 しっかし、これどう見ても日本風なんだが。旅館かここは。

 

 そういや、お嬢ってなんか勘違いしてる感じだけど日本大好きだったな。当主継いでも日本と行き来したいとか言ってたし。親父さんかお袋さんの影響なのかもな。

 

 しかも天然温泉。マジで金掛けてるなグレモリー。

 

「イッセーくん。背中、流していいかな?」

 

「嫌だ! 俺は初めて背中を流し合いするのは女って決めてんだ! 気持ち悪いぞ木場!!」

 

 木場、お前は何をしてぇんだ。

 

 男同士で背中の流しあいとか、誰得だよ。一部の腐った女どもにしか需要ねえよ。

 

「で? ギャスパーはなんで胸までタオルまいてんだ」

 

 お前、男だろう。

 

「い、いいじゃないですかぁああああ!!! そんな事より恥ずかしいですぅうううう!!」

 

 男同士で何言ってんだよ。

 

 ま、いいか。たまには湯船につかるのもいい……

 

「あら、リアス、胸が大きくなったのではなくて?」

 

「あなたには負けるわよ。……ちょっと、揉まないで……あんっ」

 

 つかるのも……

 

「アーシア。女の胸は人にもまれると大きくなるらしい。ここは一つもみあおうじゃないか」

 

「ぜ、ゼノヴィアさん!? く、くすぐったいですぅ」

 

 つかるの……

 

「お姉さまぁ。自分、ちょっと湯あたりしちゃいましたぁ。何か冷たいものないですかぁ」

 

「あら。だったらちょうど水風呂に入ったばかりの私の胸とか……どう?」

 

 つかる……

 

 いかん! ちょっと水を浴びて冷静に冷静に!!

 

 勢い余って透視能力に目覚めようとすんな俺!! 女子に迷惑はかけないのが、プレイボーイの作法!! やるなら堂々と誘って混浴でだ!!

 

 とにかく水風呂にダイビングを―

 

「これが一流だ! 男なら混浴だぞ、イッセー!!」

 

「うわぁあああああ!!!」

 

 何やってんだぁ、この駄天使!!

 




教育関係がしっかりしてるかどうかって、実は意外と大事なんですよね。恵まれてるやつは自分が恵まれてる自覚がないってよく言ったもんだと最近思います。

皆も勉強してもいいかなーって思ったら、ちゃんと勉強しよう!
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