ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

42 / 324
それでは皆さん、お待たせいたしました。

ペトによる、おそらくロンギヌス・イレギュラーズ一の凄惨な戦闘シーンです。


第二章 10 堕天の魔弾

 

 

 そして、返り血を浴びながら、コールブランドがくるくる回って俺たちの頭上に飛び上がる。

 

「な……っ」

 

「ちょ、それはさすがに!!」

 

 アーサーが訳も分からずうめくなか、黒歌が慌てて落ちてくるコールブランドを、袖から木の根を出して受け止めようとする。

 

 あ、聖剣だから悪魔がじかに触れたら痛いからか。

 

 そんでもって俺たちも美候も、何があったのかわからなくて呆然としてたので動けず―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はい隙ありッス』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その言葉とともにまた金属音が響いた、コールブランドがはねた。

 

 そして、其のまま勢いよく回転したコールブランドは、黒歌のおなかを横一文字に切り裂いた。

 

「………え?」

 

 何が起こったのかわからなくて、黒歌は唖然としながらそのままゆっくりと地面に倒れる。

 

 な、なにが起こったんだ?

 

 突然金属音が響いたと思ったら、アーサーのコールブランドがいきなり動いて、アーサーと黒歌が切り裂かれた。

 

 そんな意味不明な光景に、俺や部長はもちろん、オッサンだって動けない。

 

「ね、姉様!?」

 

「「黒歌!?」」

 

 そして、すぐに我に返った小猫ちゃんと美候とアーサーが、黒歌に駆け寄ろうとする。

 

 あ、駄目だ小猫ちゃん!! その二人はまずいって!!

 

 っていうか美候もアーサーも意外と仲間思いだな! ただ強い奴と戦えればいいってわけじゃないのか?

 

 なんて思ったその瞬間―

 

『だから動かないッス』

 

 その瞬間、アーサーの胸に小さな穴が開いた。

 

「な……っ!!」

 

「アーサー!?」

 

 そのまま倒れるアーサーをみて、美候はどっちを助けに行けばいいのかわからなくなった。

 

 小猫ちゃんも訳が分からず、立ち止まってしまった。

 

 な、なんだなんだ? 何が起こってんだ!?

 

 そう思ってたら、いきなりでかい腕に俺と小猫ちゃんがつかまれる。

 

 タンニーンのおっさんの腕だ、コレ。

 

 そして、オッサンは俺たちをつかんだまま部長のところまで向かうと、そのまま俺たちを包み込むようにかがみこむ。

 

「全員おれの陰から出るな!! 狙撃だ!!」

 

 そ、狙撃!?

 

 狙撃って、狙い撃つぜぇ!! ……のあれ? 眼鏡割れるの!?

 

 でも、最後にアーサーの胸を打ち抜いたのはわかったけど、それ以外は!?

 

 俺たちは突然の事態に困惑するけど、すぐに声が響いた。

 

『安心するッス。自分ッス』

 

 と、また声が聞こえる。

 

 みれば、小さなドローンがふよふよと浮いていた。

 

 あ、この一人称としゃべり方は!!

 

「ペト! おまえペトか!!」

 

『そうっス。外に出てったのに気づいたんで、気になって空から様子をうかがってたら、結界に包まれたんでちょっとビビったスよ。大丈夫ッスか、イッセー?』

 

 その言葉とともに、さらに美候の足元に何かが突き刺さる。

 

 あれは……光でできた針?

 

『そこのお猿さん? 動くと今度は眼球ごと脳みそをぶち抜くッス。いくらなんでも上級クラスの貫通性特化なら眼玉ぐらいは貫けるっすよ?』

 

 す、すっげええげつねえことをペトははっきり言い切った。

 

 よく聞くと、俺たちに対して話してる時よりも、声に感情が乗ってない。

 

 何ていうか、氷みたいに冷たい言葉だった。

 

「てめえ! 何しやがった!!」

 

 美候が額に青筋を浮かべながら、大声で怒鳴る。

 

 た、確かに、いったいなにしたんだ?

 

『別に、コールブランドの柄を撃って、弾き飛ばすついでにそこの眼鏡と猫を切り裂いただけっス』

 

 平然と、ペトはそういった。

 

 いや、口で言うのは何だけど、それめちゃくちゃ難しいよね!?

 

「ふざけんな! こんな森の中でそんなことできる場所、俺と黒歌が気づかねえわけがあるか!? どこにいやがる……っ!」

 

 視線をさまよわせながら美候がわめく。

 

 た、確かに、多分近くにいるはずだよな?

 

 仙術を使えれば隠れてても気を感知できるって言ってたはずだし……。

 

 そのよくわからないその狙撃場所に気づいたのは、俺じゃない。

 

「……ち、違う、美候……」

 

 黒歌が、口から血をこぼしながら声を出す。

 

「……あいつ、2キロぐらい離れてる。……そこから、私達をっ!?」

 

『はいちょっと黙るッス』

 

 しゃべりかけた黒歌の足を撃って黙らせて、ペトはその軽い口調を続ける。

 

 こ、怖い! 怖すぎるよペトさん!!

 

 っていうか、2キロっていうと意外とそんなでもないような……。

 

「あ、あり得ません……」

 

 小猫ちゃんが、いろんな意味で顔を真っ青にしながら震える唇を開く。

 

 え? なんで?

 

「イッセー先輩のような攻撃範囲の広い砲撃ならともかく、狙撃は1km先から撃ったら、人体のどこかに当たるだけでも奇跡といわれているんです。それを2kmも先から、動いている剣の柄にピンポイントであてるなんて……神業だなんてレベルじゃありませんっ」

 

 ま、マジで!? そんなに難しいの!?

 

「実弾に比べれば光力ならまっすぐ飛ぶのでまだ難易度が下がりますが、それでもそんな速度じゃ時間差が―」

 

『あ、アザゼル総督から弾速強化型の人造神器もらったんで、チャージさえできれば第三宇宙速度超えるッスよ』

 

 さらりと、なんかものすごいことをペトは言い切った。

 

 え? 第三宇宙速度? なんかわからないけど、宇宙何てつくからにはものすごく速いんだろうなぁ。

 

『ちなみに自分は上級堕天使。威力を中級クラスまで下げれば、一秒に一発は撃てるっすね。だからこんな風に……』

 

 その言葉とともに、地面に落ちたコールブランドがはじけた。

 

 そのまま何回も空中ではじけ飛んで、その軌跡が一筆書きの五芒星を描いて、地面に垂直に突き立った。

 

 す、すげええええええ!!!

 

 なにあの曲芸。人間業じゃねえ。

 

 くるくる回転してるコールブランドの柄に正確に当てて、五芒星描いたよ!?

 

「……ヴァーリの奴、なにが的あて程度しか能のない上級堕天使より芸人が似合う奴だよ……っ!!」

 

『そりゃ、専用武器までもらったッスからね』

 

 美候がうめく中、ペトは得意げにもせずにそういう。

 

 そして次の瞬間、アーサーと黒歌の足が続けざまに光の針で打ち抜かれる。

 

 ……もう、悲鳴を上げることすらしなかった。

 

「……てめえ!!! 何のつもりだ!! やるなら真正面から戦いやがれ!!」

 

『逃げられないように足の腱を撃ち抜いただけっスよ。それと戦う気ッスよ。……狙撃主として』

 

 美候の怒りの声に、ペトは何言ってんだお前って感じで答える。

 

 其の声に、恥なんてものは一切ない。

 

『狙撃手は戦士とまともに戦わないスよ。離れたところから、敵の動きを妨害し、足手まといを作って泥縄式に敵を無力化する、戦士と同じ土俵で戦わない存在。それが、狙撃手ッス』

 

 せ、正論だけど、えげつねえ!!

 

 むかし松田や元浜と試しに見た戦争映画で、狙撃手がリンチされるところを見たけど気持ちわかる。

 

 そんなのに痛い目を見せられたら、そりゃむかつくなんてもんじゃねえよ!!

 

 しかも2km先から動いてる剣の柄にピンポイントで当てる!?

 

 そんなの無理だよ。絶対無理だよ!!

 

 俺も鎧を着たドラゴンショットなら2km先の家も吹っ飛ばせるだろうけど、あんな精密狙撃は絶対無理!!

 

『っていうか、パーティ会場にリムヴァンがヴァーリとか連れて乱入してるっすよ。何考えてんっすか』

 

 まじか! リムヴァンとヴァーリがパーティ会場にきましたか!

 

「な、なんてこと……っ。最悪…‥だわ」

 

 まだ毒が抜けきらない部長が、顔を青くする。

 

 あの二人が暴れたら、何百人の悪魔が犠牲になるじゃねえか!

 

 あそこには戦えない人たちだって何人もいるんだぞ。何とかしねえと!

 

 そう思ったその時、さらに狙撃が放たれる。

 

 ちょうど倒れてる黒歌とアーサーの頭のすぐ近くに、正確に光の槍が突き刺さった。

 

『……今すぐヴァーリに助けを請うッス。出ないとホントに撃ち殺すッスよ?』

 

 ペト。すごく頼りになるけど、それどう考えても悪党のやり方だよ。

 

 た、頼もしいけどマジで恐ろしい!

 

 俺、絶対ペトを怒らせたらこっちから謝ることにしよう。狙撃されたら絶対にかわせないよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺たちの目の前で、とんでもないことが言われた。

 

 っていうか、ペトの奴、なんて化物だよ。

 

 間違いなく狙撃の化け物だ。アイツ、下手したら俺やイッセーよりよほどシャレにならねえんじゃねえか!?

 

 あまりの事態に、その場にいる全員が何も言えない中、姐さんは絶対零度の視線をヴァーリに向ける。

 

「ヴァーリ。私は孤児院の出身よ」

 

 ……姐さんも、親がいなかったのか。

 

 俺は共感を覚えたが、さらに衝撃的な言葉を姐さんは口にした。

 

「ペトは、両親を目の前ではぐれ者の妖怪に殺されたわ」

 

 な、なんだって?

 

 あいつ、普段はものすごい軽いのに、そんなにひどい目にあったっていうのかよ。

 

「両親を殺されるだけでもひどいのに、それが目の前だなんて……っ」

 

「ひどすぎます……っ」

 

 ゼノヴィアとアーシアが絶句する。

 

 俺は、両親がいない。

 

 だけど、両親がまともに親をしてくれるってのはすごいいいことだってのはわかる。それが幸せだってのも分かる。

 

 それが、目の前で殺された……だと?

 

「そのあとのペトはひどかったわ。あの子の心は今でも少し壊れてる。私はちょっとした経験で演じるのがうまいから、それを隠す技術を教えたけど、それでもあの子の心の傷は深いのよ」

 

 姉さんも一瞬目を伏せるが、だけどすぐにヴァーリをにらんだ。

 

「そんなあの子の耳に、あなたが自分の趣味をよりよくするためだけに罪もないイッセーの親を殺すといったことが届いた。……あなたにわかる? あの子がどれだけあなたに怒りを覚えたか」

 

 一歩一歩前に進み、姐さんはヴァーリの前に立つ。

 

「そのあなたとチームを組むほど馬が合う連中。……同類だと判断してもおかしくないわね。そりゃぁ遠慮何てものないでしょう。あの子の心の破壊は、こういう時容赦する無自覚のブレーキを踏まないという利点になってるしね」

 

 そして、真正面からヴァーリの目を見て、はっきりと告げる。

 

「投降しなさい。あの子は殺すと言ったら本当に殺すわよ」

 

「リセス、ペト……っ」

 

 歯ぎしりをして、ヴァーリは姐さんをにらむ。

 

 だけど攻撃しない。戦闘もしない。

 

 すれば、そのアーサーと黒歌ってのが殺されると本当にわかってるんだ。

 

 お姉さま命のペトが把握できる状況でそんなことをすりゃぁ、最後の一線すら踏み越えるってわかってんだろうな。

 

「……どうします、宰相?」

 

「流石に少し様子を見ようか。僕たちが動いても殺しに来るだろうし……僕らを拘束してこない限りは僕らも動かないようにしようね」

 

 ジークもリムヴァンも様子見に徹している中、姐さんは答えを聴こうと、あえて何もいわない。

 

『まずい! アーサーも黒歌も急所をやられちまった! 俺も二人同時にカバーはできねぃ!』

 

 通信越しでわかる美候の追い詰められ具合も半端じゃない。

 

「人間と悪魔なら、中級クラスの光力でも十分致命傷を狙えるわ。さすがに闘戦勝仏の末裔を相手にしてはペトだと火力負けしそうだけど、いかに仏の末裔とは言え、カバーできる人数には限界があるわね」

 

 姐さんは油断なく全身からオーラを纏いながら、静かにそういう。

 

 ああ、そういう倒れ方するように狙撃したのか。ペトの奴抜け目ねえな。

 

 これ、完全にヴァーリのやつ詰んだんじゃねえの?

 

『すまねえ! ルフェイ……。面倒ごとになっちまった……!』

 

 美候はここにはいない誰かに謝罪する。

 

 こりゃ、相当追い詰められてんな。

 

 だが、ヴァーリが今から動こうとしてもその隙にペトはどちらかを殺すだろう。

 

 完璧に、勝敗は決したな。

 

「……ヴァーリ。あまり時間は与えられないわよ? せいぜいあと一分―」

 

「―ってくれ」

 

 ヴァーリが、姐さんの声をさえぎって小さく告げる。

 

 其の声に、姐さんは目を見開いた。

 

「……あなた、正気!?」

 

「正気だ。撃ってくれと、俺は言ったんだよ」

 

 そう返すヴァーリは、普段の余裕に満ち溢れた態度を取り戻していた。

 

 その発言に、全員が唖然となる。

 

 おい、さっきまで動揺するぐらいに仲間思いな感じを見せていたはずだろう。それが何でいきなり見捨てる方向に!?

 

「ああ、一応言っておくが―」

 

 ヴァーリは姐さんを見る。

 

 あ、いや違う。

 

 ヴァーリが見てるのは、あいつが声をかけているのは―

 

「―俺たちは、まだ()()じゃないし、今のはペトには言ってない」

 

 その言葉に、姐さんは何かに気づいた。

 

 そう、ヴァーリののど元に、魔方陣が展開されている。つまり―

 

「ペト! 逃げて!!」

 

 ……ペトじゃない、別の誰かだ!!

 

 

 




狙撃一点特化型ハーフ上級堕天使。それがペトです。バケツ頭に一発かます、成層圏まで狙い打つ人が声優にふさわしいでしょう……いや、ペトは女だった。

狙撃に限定すれば格上すらあのように圧倒できる猛者ですが、それ以外だと格下にすら圧倒的敗北をしかねない、非常に偏った戦闘能力を持っております。

くわえてリセスの言った通り壊れた精神性を持っているため、時に敵の1人を動けなくしてから助けるために飛び出した増援を狙い打つなどといった真似をする必要にも迫らる狙撃手としては、かなり精神的な適正も保有。怒らせるとご覧の通り容赦がないです。



ちなみに、人工神器は五発分のチャージを代償に第三宇宙速度にまで弾速を上げる仕様です。狙撃の難点の一つである、弾着までの時間差を可能な限り解決した人工神器ですが、それを異形で発揮できる距離からピンポイント狙撃できるのがペトぐらいしかないため、専用人工神器として開発してデメリットを極限まで減らしました。







しかし、総取りを狙った結果痛恨のミスをしでかしました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。