ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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第二章 12

 

 

 

 

 

「とりあえず、全員生きてて何よりだな」

 

 と、アザゼル先生はそう言ってくれた。

 

 まったくだ。一時はどうなることかと思ったぜ。

 

 下手をすりゃ、あの場でリムヴァン達との殺し合いが本格的に勃発してたかもしれねえ。っていうかならないのがびっくりだ。

 

 ま、そんなことになったらただの従業員にもシャレにならない被害が出てただろうがな。ホテルも倒壊間違いなしだ。

 

「つーかお嬢に小猫ちゃんにペト。作戦会議に参加して大丈夫なのかよ?」

 

 そこが疑問だ。

 

 ぴんぴんしているイッセーはともかく、この三人は割と大ダメージだったはずだ。

 

 特にペトなんて、たぶん殺す気でど突き倒されたからな。普通に考えれば、それから一時間もたってない今のタイミングで動くのどうかと思うんだけどよ。

 

「お姉さまにハグしてもらってるから大丈夫ッス! 元気百倍!!」

 

「そもそも怪我はアーシアに治療してもらってるもの。ありがとう、アーシア」

 

 と、ペトと姐さんはそう言うけど、どっちも大立ち回りだったな。

 

 特にペト。姐さんは駒王会談の防衛には向いてないと言ってたけど、確かにその通りだ。

 

 強力な結界で覆われている、学園規模の敷地内だとあの圧倒的遠距離狙撃はぶちかませねえ。そう言う意味だと本領は発揮できねえわな。そりゃ外されるって。

 

「同感ね。第一、既にここに敵が来ているのでしょう? 72柱の一員として、休んでなんていられないわ」

 

「……もう大丈夫です」

 

 お嬢と小猫ももう大丈夫みてえだな。なら、いいのか?

 

 つっても結構強力な毒みたいだったしな。念には念を入れた方がいいと思うんだが……。

 

 俺がちょっと不安に思ってると、アザゼル先生はやれやれと肩をすくめた。

 

「安心しろ。基本的にリセス以外は後方だからよ」

 

「え? なんで!?」

 

 ちょ、ちょっと待ってくれ!!

 

 英雄を目指す者として、こんな緊急事態に後方待機とか流石に黙ってられねえんだがな。

 

「言っとくが、前線で暴れるのはあくまで大人だ。お前らガキを、必要がねえ時にまで積極的に動かすわけねえだろ?」

 

「え、でも先生。戦力かき集める必要がありそうなんですけど? あれ、一万超えてるとか言ってたんじゃないでしたっけ?」

 

 イッセーがそう言うけど、アザゼルは結構平然としていた。

 

 あれ? 数だけなら圧倒的不利だと思うんだけどよ?

 

 圧倒的な数の暴力に対抗するには、こっちもそこそこの数を用意する必要があるだろ。出し惜しみしている暇なんてあるのかよ?

 

 俺達はそう思うが、しかしアザゼルは結構余裕だった。

 

「あのな? ここにいったいどれだけの数の上級悪魔がいると思ってやがるんだ? 貴族のパーティだぞ?」

 

 ……あ。それもそうか。

 

 正真正銘大人の上級悪魔たちが、眷属たちとともに集結している。それも、四大魔王までセットでだ。

 

 挙句の果てに神の子を見張る者の幹部もゴロゴロ参加してる。そんなわけで護衛も武闘派ぞろい。

 

 とどめに北欧の主神であるオーディン神。しかも護衛にヴァルキリー迄ついているという至れり尽くせり状態。

 

 確かに、こんだけ実力者が揃ってたら、普通に考えて実戦経験の少ない子供を前線に投入するのもあれだな。

 

 しかも、お嬢はグレモリーの次期当主。悪魔の出生率を考慮すりゃ、積極的に出さねえ方が良いに決まってる。

 

 あれ? でも俺は?

 

「因みに、リセス以外はペトの護衛だ。防衛ラインから10kmほど離れた丘陵で、ペトには定点狙撃を行ってもらう」

 

 こいつに関しちゃ凄腕すぎて使わないのもあれだしな。そうアザゼルは付け加えた。

 

 ああ、確かにものすっげえ狙撃ぶちかましたからな。

 

 さっすが、姐さんの妹分。やるじゃねえか。

 

 いずれ弟分の英雄となりたい俺としちゃぁ、クロスレンジで鬼と言われるような技量を手にしてぇもんだ。いや、なってやるぜと気合を入れるぜ!

 

「で、チームメンバーをコテンパンにしまくったことでヴァーリがお冠だから、念の為護衛として神滅具持ちのお前らだ。ヒロイが右翼でリアス達が左翼な?」

 

 なるほど。そう言うことか。

 

 確かに、脅しかけてなけりゃぁ二人は殺せてたもんな。ぶちきれていてもおかしくねえ。

 

「むぅ。自分が一人も仕留めれなかった所為で済まねえッス」

 

「いや、仕留めてたらヴァーリはもっと本気出すんじゃないか?」

 

 すまなそうに謝るペトに、イッセーがツッコミを入れる。

 

 むしろ撤退せずに覇龍出していただろ。こっちも被害者多数だっただろ。

 

 そういう意味じゃあ、仕留め損ねたのは短絡的にゃぁよかったのかねぇ。

 

「ちなみに若手の連中はその狙撃箇所の警護だ。できれば逃げられるように転移魔方陣の近くに待機させたいが、上役達の多くは将来を見越して、大規模戦闘の空気だけでも味合わせておくべきという意見が強くてな」

 

 な、なるほどな。

 

 確かに、世界大戦レベルの激戦が勃発するんだ。そうなれば大多数同士の戦いだって何度も起きるはず。慣れないとな。

 

 上役も決して馬鹿じゃねえってことか。転んでもただでは起きない精神は認めるべきかねぇ?

 

「ですが先生。イッセーくんは禁手にまで至りました。今の彼なら並の上級悪魔を凌駕しますし、主戦力とは言わないまでももう少し前線に押し上げるというのも上役達は思いつきそうですけど」

 

 木場が手を上げてそう言い、全員納得する。

 

 ま、SS級はぐれ悪魔の黒歌を苦も無く一蹴してるからな。

 

 あいつ、火力は低いたぁいえ最上級悪魔クラスに認定されてたはずなんだけどよ。

 

 そんな実力者、それも死んでも心が痛まない転生悪魔という駒を使いたがらねえとか、上役は冷酷なうえに阿保なのか?

 

 と、思ったけどアザゼル先生はため息をついた。

 

「いや。今回イッセーは戦力としては不安定だ」

 

 へ?

 

「赤龍帝の鎧は今回、通常の禁手として発動は不可能だ。……ゆえに緊急手段としての疑似禁手用の腕輪を装備して参加する」

 

 ど、どういうことだ!?

 

「あ、マジで悪い。……今からだと時間が足りないんだよ」

 

 と、イッセーがすまなそうに言った。

 

 更に、補足説明の為かドライグが具現化する。

 

『今の相棒では、禁手になる為には神器を不使用状態にした上で二分間しのぐ必要がある。更に発動時間は30分で、それが終われば神器もろくに使わずに、一日のインターバルが必要だ』

 

 ……使いづれぇえええええ!!!

 

 三十分の使用制限はまあいいだろ。更に発動までに二分かかるのもまあいい。あんな大技、溜めに数分かかってもおかしくねえ。その辺は、こっちでサポートすりゃいいんだからな。

 

 だけどよ、使った後一日使えねえとか流石にまずいだろ!! 神器すら使えねえって、其の三十分で勝てなきゃ詰むじゃねえか!!

 

 ウルトラマンか、お前は。

 

「でも、姉様を歯牙にもかけなかった強さは本物です。十分に価値はあるのでは?」

 

 小猫ちゃんが反論するが、しかしアザゼルは首を横に振る。

 

「それは黒歌が下手を打っただけだ。むきになって攻撃に頼らず、幻術で足止めに徹して精神干渉を仕掛けりゃ、勝算は十分にあったからな。もう二度と真っ向勝負で仕掛けりゃしねえよ」

 

 ま、確かに。

 

 調べた限り、黒歌は直接火力よりそういったからめ手に長けてるタイプだからな。仙術も、直接攻撃力とは別の意味でキッツいタイプだしよ。

 

 そして、ヴァーリ相手に禁手になっただけじゃあ勝ち目がねえ。

 

「ペトの狙撃で分隊長や小隊長クラスを仕留めて前線を混乱させる。お前らはペトを狙ってくるだろうヴァーリ相手の時間稼ぎだ。本命は、お前らの一番近くの前線で総合指揮を執る、タンニーンが受け持つ」

 

 なるほどな。それぐらいしないと勝てない相手ってわけか。

 

 つまり、駒王会談の時はまだまだ手加減してたってことかよ。

 

 ………いつか、必ず禁手になって追いついてやる。

 

「それで先生。現状はどのような形になっているのでしょうか?」

 

 木場が、気を取り直して話を進める。

 

 確かに、俺達のやることは分かった。

 

 だが、敵は一体どんな戦術でくるんだ?

 

「敵の出方次第では危険ですわね。一万を超える戦力を投入している以上、相応に本気と思われますわ」

 

「そ、そそそそうですぅううう! 悪魔は数が少ないから、数ではやっぱり不利ですぅううう!!!」

 

 

 朱乃さんもギャスパーも不安になるが、しかしアザゼルは結構普通だった。

 

 と、いうより肩透かし感を感じさせてやがる。

 

「それが、敵勢力はまっすぐこっちを目指してやがる。魔法で視認する限り、本当に混成軍だった。ありゃ、勢いに任せた暴徒も同じだな」

 

 アザゼルは本気で呆れ果てている。

 

 ん? 上級クラスや最上級が動けば、一気にごっそり削る事だって出来るはずだよな?

 

 人間の軍隊も関わっている組織なんだから、そんな大部隊を戦線に集めたまま投入とかやらないと思うんだけどよ? 確か絨毯爆撃とかで一蹴されるからとか。

 

「だからこそ、逆に何か仕掛けてくる可能性もある。……お前ら! こんなところで死ぬんじゃねえぞ?」

 

「「「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」」」

 

 俺達は一斉に返事をする。

 

 そして戦闘開始は、朝日が昇る頃になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リムヴァン様。治療は完了いたしました」

 

「よし! これでもう大丈夫だね。ありがとう、デイア」

 

 治療を行っていた部下に礼を言い、リムヴァンは後ろを振り返った。

 

「デイアちゃんに感謝するように。体力の消耗が激しいから明日の戦闘は無理だけど、これでもう死なないからね?」

 

「はい! ありがとうございます!!」

 

 ベッドの上で眠るアーサーと黒歌の表情が安らかな事もあり、ルフェイは安堵して頭を下げる。

 

 そのわき腹を、容赦なくリムヴァンはつっついた。

 

「あうっ!?」

 

「次は君だからね? いくらデイアちゃんが広範囲での即効性が薄いからって、君も重症なんだから無理しない。傷跡が残っても知らないよ?」

 

「は、はい……」

 

 涙目で頷くルフェイを部下に預けてから、リムヴァンはヴァーリの方に視線を向ける。

 

「……礼を言う」

 

「お構いなく。ここで君達を失うのは、流石に得策じゃないからね」

 

 そう言って、リムヴァンは戦場へ向かって行軍する部隊の映像を見る。

 

 それを見て、リムヴァンは嘲笑を浮かべた。

 

「しかし、彼らもホント阿保だね」

 

「教皇の首を取ったやつがいるからな。その勢いに乗じたいのだろう。よほどこのひと月、積極的に侵攻せず訓練だけなのが不満らしい」

 

 ヴァーリはそう言うが、リムヴァンは肩をすくめる。

 

「今はまだお互いに準備期間だってのが分かってないねぇ」

 

 そう、この戦争は、長い時間を掛ける事が想定されているものだ。

 

 リムヴァンと曹操はある目的の為に、戦争が泥沼になる事こそ望んでいる。

 

 そして短期決戦などもっての他だ。如何に人類の多くを味方に出来たとはいえ、彼らの水準は異形達と戦争できるほどに高まっていない。

 

 万が一追い込みすぎて全面核戦争になれば、せっかく世界を統一しても旨味が薄いので、スポンサー達も難色を示している。

 

 様々な理由があり、全面戦争を行うにはお互いに準備期間が足りてないのだ。

 

「いくら数年間の準備期間があったとはいえ、量産型の工場が出来てないからね。ドーインジャーの大量生産体制を真の意味で完成させるには、あと半年ぐらい欲しいところなんだ。それに……」

 

 リムヴァンは、心底ため息をついた。

 

「……威勢がいいだけの雑魚に神器を与える気はないよ。独創性を得るべきなのは、元から実力のある連中だけだしね」

 

 そう、これの目的は正真正銘の間引き。

 

 勢い良く集めた勢力をふるいにかけ、強化に値する者を選ぶ為の儀式だ。

 

 有象無象の雑兵ならば、ドーインジャーで事足りる。マンパワーが必要なのは、むしろ生産や通信といった後方支援だ。

 

 神器を移植して戦闘能力を上げるにしても、決して無限に保有しているわけではない。使う相手は厳選する必要がある。

 

 それを見計らう為に訓練を積ませているのに、即座に実戦が出来ない事に不満が多く、訓練に実が入らない馬鹿どもが多すぎる。

 

 ゆえに、この戦いでふるいにかける。

 

 作戦も何もろくにないこの戦いを避ける事を選ぶ者は、神器を与えるだけの見所があるだろう。

 

 そして、この戦いの引き際を見計らった者は次点といったところ。

 

 これが出来ない輩は、力を与えても暴走するだけだ。例え強大な力を持っていようと、否、持っているからこそ力を与えるわけにはいかない。

 

「そんでヴァーリきゅん。君はどうするんだい?」

 

 その答えを知っているにも関わらず、リムヴァンはあえて尋ねる。

 

 ヴァーリは目を伏せていたが、しかし立ち上がる。

 

「美候。ルフェイ達を頼む」

 

「わかったぜぃ。俺は一発ぶちかましたから、後はおまえに譲ってやる」

 

 美候の笑顔を受けて、ヴァーリは外を見る。

 

 既に、冥界の連合軍は出陣を始めていた。

 

 それを見下ろして、ヴァーリは静かに目元を鋭くする。

 

「……ペトは一回殴らないと気が済まない。アーサーと黒歌、そしてルフェイの分は返しておかないとな」

 

 そこにいるであろうペトを見据えて、ヴァーリははっきりと宣言する。

 

 それに答える者は、決してペトではない。

 

 それに答えたのは、部屋に入ってきた一人の若手悪魔だった。

 

「おやおや。ルシファーの正当たる末裔は恐ろしいね」

 

「……ディオドラか」

 

 ヴァーリは振り向きもせずに、ディオドラ・アスタロトに返事をする。

 

 ……そう、ここはディオドラ・アスタロトがとっているホテルのスイートルーム。

 

 リムヴァン達はまずここに転移してから、頃合いを見張らってパーティ会場に転移したのだ。

 

 まさか転移して離脱した手合いが、同じ建物の中にいるなど普通は考えない。その盲点を突いた策だった。

 

 それに、魔王を輩出した名門が、まさか自分の親族である現魔王を裏切るなどと即座に想定できるものはそうはいない。

 

「いいのか? 新魔王の血統たる君なら、あちら側にいた方がいい思いができると思うんだが」

 

「それは無理だ。三大勢力で和平が結ばれ、更に君達があんなことをしたから、僕の好きなことを好きなようにするにはこちらにつくしかないからね」

 

 ヴァーリにそう答えると、ディオドラは下を見て鼻で笑う。

 

「それで、一応タイミングだけでも教えてくれないかな? 疑われない為に、一応本気で行くんだろう?」

 

「まあね。ほら、時間を教えるから、時計を合わせといてよ」

 

 そういいながらリムヴァンは、視線を外に向ける。

 

 そこにいるであろうリセス・イドアルを探し、しかしすぐに諦めた。

 

 それより先に、やるべき事がある。

 

「ああ、そうだディオドラ君。実は頼みがあるんだけど―」

 

 この戦いで彼女を殺せるとは思っていない。

 

 大きな成功を約束させてくれた事もあり、あえて泳がしておいたがそれも限度があるだろう。

 

 幹部達から反逆されない為にも、最低限の対策は整えておかなければならない。

 

 そして、やるからには面白くしなければいけないので―

 

「……ゼファードル・グラシャラボラスをこっち側に引き込んでくれないかな?」

 

 ―悪党らしく、派手にやってみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Other Side

 




イッセー、次の戦いでは禁手を出せないの巻き。

ぶっちゃけ肩透かしですが、しかしそれゆえにこそイッセーの特訓の成果を出せるというものです。

なんだかんだでやるときはやる男なのだということを駆けたらうれしいです。








そして悪党らしく相手を掌の上で転がすリムヴァン。

……ぶっちゃけ、ドーインジャーの大量生産が可能になれば、下級クラスの戦力は必要なくなりますからね。動かす側からすると、個々の性能にばらつきがないのでドーインジャーは指揮しやすい手ごまでもあります。

リムヴァンが欲しているのは特殊部隊的な運用ができる少数精鋭。能力が個性的な神器は、そういう任務にこそ向いていると判断しております。なので雑魚には渡す気なし。

さらに、たかだかひと月に準備期間で文句を言いだすような手合いは、もし力を与えても勝手に動き出す危険性があるので、間引いておこう。ついでに敵将の首の一つでも挙げれればたなぼたらっきー! って考えてます。
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