ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
「ハイ次ぃいいいい!!!」
俺は速攻で敵をぶった切り、速攻でケリをつけた。
これで九十体! あと十体!!
はっはっは。特訓の成果が出てきたぜ。思った以上に攻撃が速くできる。
聖槍だけだと攻撃速度に限界があったが、全身から魔剣をはやすことでそれもカバー!
ハイタックルぅううううう!!! 残り9体!!
この調子でこの辺りのドーインジャーを全部ぶちのめして、すぐにでもペトの護衛に戻らねえとな。
ほら、残りはどこ行った?
と、思った次の瞬間―
「……おい、誰か追い込まれてるぞ!!」
其の声に、俺は振り向いて全力疾走。
見れば、ハルバードを持った少女悪魔が追い込まれていた。
どうも動きが鈍いな。まともな指導を受けてないのか?
ハルバードはかなり万能性の高いポールウェポンだ。だけどその分扱いが難しい。
どちらかというまでもなく上級者向けの武器だぞ? 実力者が使うべき獲物のはずなんだが……。
そう考えながら、俺は遠慮なく回し魔剣蹴りでドーインジャーをぶち壊す。
纏めて三体撃破! 残り五体!!
「よし! 俺が討ち取ったぞぉおおおお!!!」
と、勝鬨が上がる。
お、どうやら他の連中も頑張ってたみてぇだな。
もう全滅か。思ったより早く片付けれたぜ。
「……おい、大丈夫か?」
俺はとりあえず、倒れた悪魔に手を貸す。
とりあえず立たせる程度の事はしても大丈夫だろ。
「あ、ありがとうございます。こんな愚図の為に……」
なんかものすごいネガティヴなことを言いながら、その悪魔は顔を上げて―
「―やっぱり、シシーリアか」
俺は、その懐かしい顔を確認した。
「……英雄の目はごまかせませんね。ヒロイさん」
そう、彼女は寂し気に微笑んだ。
シシーリア・ディアラク。教会の孤児院出身で、神器を保有していた少女。
その能力から、聖女とまで言われて祭り上げられていた、アーシアに近い来歴の少女だ。
一度、其の力を活かす為により大きな教会に連れて行く時に護衛やったんだけど……。
まさか、アーシアに似た来歴だと思ってたらこいつまで悪魔になってたとはな。
「シシーリア」
「っ! は、はい! こんな聖女失格の馬鹿に何か御用でしょうか!?」
怯えたように肩をすぼめるシシーリアに、俺は携帯を向けた。
「携帯持ってたら、番号交換してくれ」
「へ? ……あ、一応、持たされてます」
あ、最新型だ。
どうやら主にはそこそこ大事にされてるらしいな。
よし、番号交換……っと。
「じゃ、悪いけど俺は本命の仕事があるから」
「え? 何も、言わないん、ですか?」
シシーリアは、震えながらそう尋ねる。
ああ、悪魔になってたから怒られると思ってんのか?
ったく、バカだなぁ。
「お前にも色々あったんだろ。俺も色々あって悪魔の護衛役やってるからな。そもそも三大勢力は同盟結んでるしよ」
そんなことで一々怒れねえよ。
ま、どうやらシシーリアは色々あったみたいだ。元から悲観主義なところがあるが、なんか酷くなってる。
だから、俺はかつて彼女に言った言葉をもう一度言う事にした。
「俺は、
その言葉に、ビクリと肩を震わせながら、シシーリアはだけど思い出したみたいだ。
俺は、それに応えるようにニカリと笑った。
「お前の心が暗いなら、俺のことを思い出せ!! 英雄だからな、……照らしてやるよ。何か相談があったら、そこにメールしてくれや」
最後にもう一つ付け加えると、俺は一気に走り出した。
思ったより早いが、それでも時間食っちまった。
頼むから、ヴァーリに襲われてるとかいうのだけは勘弁してくれよ、ペト!!
Other Side
敵を全滅させて、味方の援護に行くヒロイを、多くの若手悪魔達が喝采で背中を押す。
一時はどうなることかと思った真後ろからの強襲を、彼の激励と奮闘が覆したのだ。
その喝采の声を一人だけ出さずに、シシーリア・ディアラクは涙をこぼした。
……思い出した。
あの笑顔に、自分は一瞬だけとはいえ救われた。
だけど、自分は致命的な間違いを犯している。
もう、戻る事はできない。
「ごめんなさい。……私は、貴方に照らされるような立派な女じゃ、ないんです」
イッセーSide
うぉおおお! 危ねえ!!
俺は振るわれる槍を避けて、後ろに飛びのいた。
かすめてもないのに体が痛い。肌はちりちりとして、煙すら上がってる。
そりゃそうだ。あれ、聖なる武器だよ。
『ほぅ。面白い物を見たな』
ドライグ、知ってんのか?
『あれはアスカロンの相方だ』
アスカロンの相方?
でも、ゲオルギウスは人だよな?
『龍を退治したゲオルギウスは、先ず槍で龍を串刺しにした。そして龍に苦しめられていたものが改宗を約束すると言ってから、龍の首をアスカロンではねたのさ』
……なるほど。馬鹿の俺でもよく分かった。
つまり、あの槍も
それに光の剣も銃も一応持ってるみたいだ。
どんな距離でも対応できる武装。これに対抗するには……。
「部長!
「かまわないわ。イッセー、やってしまいなさい!!」
周りの悪魔祓い達を吹き飛ばしながら、部長が俺に許可を出してくれる。
ああ、ありがとう部長。俺を信じてくれて。
思えば、禁手に至った時もそうだった。
乳首をつつかせてくれ。自分でも、冷静に考えて頭がいかれてると思う。戦闘中にそんなこと言われたら、普通オッサンみたいに怒鳴るのが基本だよ。
でも、部長は俺がそれで禁手に至ると信じてくれた。
だから、俺は今回も期待に応えるぜ!!
「うぉおおおお!! プロモーション・クイーン!!」
俺は女王にプロモーションすると、一気に接近する。
「舐めるな!」
もちろん相手だって馬鹿じゃないから、カウンターで突きかかる。
それを滑るように交わして、俺は懐に潜り込んだ。
そして、其れに相手の少女はカウンターで光の剣を引き抜いた。
そこを、俺は方向を転換して一気に距離を取って躱す。
最初からそこまで考えてスピードを調整した。だからここまで回避できる。
「だったら銃で―」
「それも読んでる!」
一気に反転して、俺は光の中に赤龍帝の籠手を叩き付ける。
勢いよく叩き付けられて銃が壊れた。これで遠距離戦に持ち込める!!
よっしゃ! そしてこのお姉さん相手に、
「……やられてたまるかぁああああ!!!」
そう思った瞬間に、顔面に拳が叩き込まれた。
お、思った以上に鋭い拳……。かなり効いた……。
「覗きの常習犯なんかに! 淫蕩の罪を犯しまくりのクソ野郎なんかに!! 負けてたまるか!!」
そこで空いた隙をついて、お姉さんは槍を振り下ろす。
俺はとっさにそれを籠手でガードするけど、更に光の剣が突きこまれた。
とっさにアスカロンを伸ばして軌道を逸らすけど、肩をかすめる。
あ、これちょっとヤバイ。
禁手に成れたからって調子に乗りすぎたか?
「ここで死ねぇえええええ!!!」
……その目は心から本気で、マジで俺をぶち殺す気満々の目だった。
俺は、こんな目で見られたのは初めてかもしれない。
レイナーレも、コカビエルも、ヴァーリも、俺を殺す気で来た奴は、だけどどこか俺を馬鹿にしてた。
だけど、この人は違う。
心から全力で、俺を見て殺そうとしてる。
少なくても本気だ。俺を殺すのに本気を出して、全力で向かってる。
……それが、ちょっとだけ嬉しい。
こんなに本気で倒す気で向かってこられたのは初めてだ。
……だから、俺も本気を出す!!
Other Side
「ペトのところにヴァーリが!?」
敵と戦闘しながら、リセスはその咆哮を聞いた。
その可能性は想定して、念には念の為に近くに神滅具を二つ配置するという対抗策を取ってはいた。
だが、状況が悪かった。
どうやらまだホテルに潜伏してたらしいリムヴァン達によってドーインジャーによる挟撃をうけ、さらにその混乱に乗じて前線から敵が一時突破。
ヒロイは後方から現れたドーインジャーで混乱する後方のサポートに回るはめに。イッセーは突破してきた元悪魔祓い中心の戦力相手に迎撃に。どちらも現状動けない。
加えて、ホテルに待機していた護衛部隊も中に出現したドーインジャーの相手に手が離せない。
護衛として指揮を執っている上級悪魔も、史上最強の白龍皇となるだろうヴァーリの前には流石に勝ち目が薄い。
ペトの命が本気で危ない状況だった。
『リセス嬢! こちらも勢いづいた連中の所為で時間が掛かる。ここは良いから妹分を助けに迎え!』
連絡を入れてくれたタンニーンが気を利かせてくれるが、リセスは静かに首を振った。
「それは出来ないわ。英雄として、やるべき事をやらずにそんな事をすれば、それこそペトに怒られるもの」
今、狙撃で一人上級クラスの敵が負傷した。そしてそこをついて味方陣営が攻撃を集中させる。
ヴァーリの強襲という緊急事態であるにも関わらず、ペトは自分の仕事に集中している。
本来なら、敵に発見されたのなら即座に逃げるのが狙撃手の基本だ。至近距離で敵との戦闘を無視して狙撃を続行するなど、アホでしかない。
だが下手に逃げに回って、業を煮やしたヴァーリに覇龍を使われれば、それこそ終わる。後方での被害が甚大になり、戦線は完璧に瓦解するだろう。
だから、あえてペトはそのまま狙撃を続行している。
それだけの胆力を持つ妹分の期待に、自分は応える義務があった。
そうでなければ英雄ではない。英雄としての強さを持ってない事になってしまう。
それを感じて、リセスは身震いする。
……とはいえ、身震いするのはそれだけが理由ではないのだが。
「どちらにしても、目の前の強敵を打破しないと。……背中を向けて全力疾走する余裕はないのよ。っていうか寒すぎ」
「それはそうだろうなぁ!!」
振り下ろされる巨大な拳を飛び退って躱し、リセスは火球を叩き付けた。
しかし、その一撃は氷の鎧によって簡単に防がれる。
「ぐっはっはぁ! このギガターン様の前に、そんな火の玉が通用するものかよ!!」
豪快に罵倒して氷の塊を投擲するのは、この場の戦場でおそらく最強の敵手。
全長20メートルに届かんばかりの、巨人がリセスと激突していた。
体格と能力からして、北欧神話体系のヨトゥンヘイムの霜の巨人。それも相当に高位の存在だろう。
「ラグナロクが起きそうにねえから、禍の団に参加してみりゃ訓練ばかりで退屈でよぉ!! ようやく暴れられるぜ!!」
そう粗野な笑みを浮かべながら暴れる巨人を放置すれば、間違いなく多大な被害が出る。
明らかに短絡的で思慮が足りない性格だから、何をしてくるか判らないというのもある。
そして何より……。
「こんな野蛮な屑を、ペトの視界に見せるわけにもいかないしね」
万が一にでも、この巨人が前線を突破してペトに接近するのだけは避けたい。
この巨人の性根は、あの鬼に近い。
……あの鬼は確実に仕留めたと断言できる。首を氷の刃で切り落としておいた。
だが、あの性根の腐った鬼にペトと彼女がされた所業を思えば、それを連想させる下衆を近づけさせるのは避けたかった。
ゆえに、こちらも特訓の成果を見せる時だ。
「行くわよ、
静かに、リセスはその為の装備を起動した。
フラグ成立。伏線はしっかり撒きました
と、いうことで逆転フラグをきっちり出して今回は終了。続きをお楽しみくださいな