ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

48 / 324
別の作品でも言ってますが、ここでもいいます。









自分は、匙のこと気に入ってます。


第二章 16 ジャイアント・キリング

 

 俺は、全力で走る。

 

 ……ヴァーリは間違いなく強敵だ。なにより直接戦ったことのある俺だからこそ分かる。

 

 負傷していたとはいえ、不意打ちとは言え、あのコカビエルを一瞬で倒したのがあの野郎だ。

 

 しかも、まともな禁手が誰もいなかったとはいえ、神滅具持ちの俺と姐さんとイッセーを三人同時に相手して余裕だったマジ化物。

 

 そんな奴を相手にして、狙撃ポイントの連中が無事で済むとも思えねえ。

 

 しかもイッセーと姐さんもそこそこできる奴と戦ってて足止めくらってるし! 想定外!!

 

 くそ、間に合え間に合え間に合え間に合え―

 

「さて、それじゃあそろそろペトを―」

 

「間に合ってないか此畜生が!!」

 

 俺は、飛び蹴りをヴァーリに叩き込んだ。

 

 それをヴァーリはあっさりと鎧で受け止めるが、とりあえず隙は作れた。

 

 そのまま本命の聖槍を振り回す。

 

「おらよっと!!!」

 

「おっと!」

 

 流石に聖槍はやばいと判断して、ヴァーリは飛び上がると距離を取る。

 

 そして俺は着地して、一瞬で周りを確認する。

 

 ……結構やばいな。

 

 こっちの担当だった上級悪魔と眷属は半殺しにされている。それを見て、周りの悪魔達は大半が戦意を喪失。戦意が残ってるのは、会長達シトリー眷属ぐらいだ。

 

「ヒロイか! 来てくれたのか!!」

 

「おうよ! 後はこの英雄様に任せとけ!!」

 

 俺は匙にそう答えると、ヴァーリを真正面から見据える。

 

 ヴァーリは、俺を見て楽しそうにしていた。

 

「いいね。前闘った時より格段に強くなってるのが分かる。アザゼルに指導されたのだからそれも当然か」

 

 鎧越しでもにやけてるのが分かる気配をビンビン出だしてやがる。

 

 この野郎。これでもまだ余裕だってのか?

 

 いや、こいつ、強い奴と全力で戦えたのならば死んでも悔いなさそうだかんな。たぶん普通に喜んでんだろうな。

 

 っていか、ペトは無事なのか?

 

「ペト! まだ生きてるな!?」

 

「今キルスコア三桁の大台突入寸前ッス! そろそろいくんで時間稼ぎよろしくッス!!」

 

 余裕だなこの女!!

 

「……それに、ここで仕事しとかないと、それこそ守ってもらってる人に悪いっすからね!」

 

 ……前言撤回。姐さんの妹分なだけあって、こいつも英雄の相があるな。

 

 いいぜ。同じ女性を敬愛する者同士、少しはいいところ見させてやろうじゃねえか。

 

「……姐さんとイッセーが来るまでは、粘らせてもらうぜ!」

 

「いいね。兵藤一誠も禁手に目覚めたというし、疑似禁手であったとしても戦闘能力は向上してるだろう。前よりも楽しめそうだ」

 

 チッ! 既にイッセーが今回禁手になれないのも想定済みか。

 

 ま、どっちにしてもこの戦闘狂なら喜ぶだろうがな。前回と同じシチュエーションで、どれだけ強くなったのかよくわかんだからよ。

 

 ああ、よく分らせてやる。

 

 俺も姐さんもイッセーも、強くなったって事をよ!!

 

 だから、ここは俺一人であいつらが来るまでしのぎ切って―

 

「おいおい、勝手に二人で盛り上がってんじゃねえよ」

 

 其の声に、俺達は視線を向けてしまった。

 

 俺の隣には、何時の間にか匙元士郎が並び立っていた。

 

 んの、バカ!!

 

「下がれ!! お前でどうにかなる相手じゃ―」

 

 そう言いかけた俺の前で、匙は神器を展開する。

 

 それは、今まで見てたようなトカゲのデフォルメなんかじゃなかった。

 

 黒い蛇のような触手が、両手を覆うようにいくつも顕現している。

 

 おいおい、完璧に別物じゃねえか。何があったらそんなに変化するんだよ!?

 

「驚いたかよ。俺だって、兵藤が禁手になる事を前提に対兵藤を考えて修行してきたんだよ」

 

 今までの匙とは、明らかに段違いだ。

 

 この野郎。どんな特訓したらそんなことになるんだ?

 

 上昇率だけで言うなら、お嬢達の眷属でもここまでの奴はそういねえぞ!

 

「……なあ、俺達はお前らにむかついてるんだよ」

 

 そして、その怒気を匙はヴァーリに向けた。

 

 それをヴァーリは平然と受け流し、それがさらに匙の怒気を爆発させる。

 

「俺達の夢の為に必要な、グレモリーとのレーティングゲームが、お前らの所為で台無しだ。……その所為で会長の学園建設が遠のいたら、どう責任取ってくれるんだ、ああ?」

 

「ふむ、まるで赤龍帝と聖魔剣を代表に、逸材が揃っているリアス・グレモリーの眷属を倒せると思っているようだね」

 

 匙の視線を真っ向から受け止めながら、ヴァーリはため息をついた。

 

「彼我の実力差が分らないのは弱者の証明だ。君では兵藤一誠を倒す事など夢のまた夢だよ。……何なら証明してやろう」

 

 そう言うと、ヴァーリは足を踏みしめ―

 

「手加減した俺に瞬殺されれば、身の程を知るかな?」

 

 その瞬間、一気に匙を間合いに捉えた。

 

 させるか! 俺がいるのを―

 

追憶の鏡(ミラー・アリス)!!」

 

 その瞬間、ヴァーリと匙の間に、一枚の鏡が浮かんだ。

 

 ヴァーリはその鏡を意にも介さず拳で割るが、その瞬間―

 

「かかりましたね?」

 

 ―にやりと、会長が嗤った

 

 ものすごい衝撃が、ヴァーリに襲い掛かる。

 

 その衝撃がヴァーリの鎧にヒビを入れたその時、匙の触手が俺の聖槍にくっついていた。

 

「先手はもらうぜ、この野郎!!」

 

 そして、匙の拳がヒビの入ったヴァーリの鎧を砕き、ヴァーリに明確な打撃を叩き込んだ。

 

「何だと!?」

 

「死ぬほど痛ぇが、聖槍のオーラも移動できるみたいだな、これは!!」

 

 この馬鹿! なんつー無茶を!!

 

「会長も止めてくだせぇよ!! ったく!」

 

 だが、この一撃は十分だ。

 

 俺は聖槍で一気に仕留めにかかる。

 

 それを即座にかわしながら、ヴァーリは静かにほほ笑んだ。

 

「ほう? 今のは追憶の鏡か。砕いた攻撃の衝撃を反射させる、比較的珍しい神器だ」

 

 流石にアザゼルのところにいただけあって、少しは神器について知識があるんだな。

 

 なるほど衝撃反射か。物理攻撃の天敵みたいなもんだな。こりゃすげえ。

 

 ヴァーリは割と全力で叩き込んだようだ。その所為で攻撃の威力をもろに喰らっちまったと。

 

 ……だが、ヴァーリは静かに首を振る。

 

「だが、この程度ではね。俺のオーラを奪い取るにはまだ足りない」

 

 そういうと、ヴァーリは自分の体に繋げられたラインを見てため息をつく。

 

「さっきから全く力を吸い取れてないぞ? 聖槍のオーラを経由した影響で、ラインが焼け付いたと見える」

 

 チッ! やっぱ悪魔が聖槍のオーラを使うのは無理があったか!

 

 匙の野郎、死んでも責任取れねえってのに。

 

「そうかよ。だけど、雑魚に一発もらって悔しいのはそっちじゃねえのか?」

 

 匙くんや! 挑発しない。そいつ意外と乗るから。

 

「なるほど。油断した所為で夢を見せてしまったようだ。なら……」

 

 その瞬間、白龍皇の光翼が光り輝く。

 

 あ、あれマジモード入ったか?

 

「ラインを経由して、本気の半減を味合わせてやろう!!」

 

『DivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivide!!』

 

 その瞬間、一気に半減が多重化して匙を襲い掛かり―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「反転(リバース)!!」」」」」」」

 

 その一斉に放たれた掛け声とともに、ヴァーリ・ルシファーのオーラは急激に減少した。

 

 そして、その瞬間に匙元士郎のオーラは爆発的に上昇した。

 

「……なんだと?」

 

 あり得ない現象に、ヴァーリは思考が一瞬止まる。

 

 あり得ない現象だ。白龍皇の光翼の力は、相手の力を半減してそれを上乗せする事。まかり間違っても相手の力を強化したり、自分の力を弱体化させる能力ではない。

 

 そして、その一瞬のスキをついて、匙の拳がヴァーリにめり込む。

 

 容赦なく、再形成されて傷も修復したはずの鎧を砕いた上で、肉を潰し骨すら砕いた。

 

「が……はぁ!?」

 

 内蔵すら破裂寸前になり、ヴァーリは血反吐を吐いて殴り飛ばされる。

 

 たった一発で数十メートル吹き飛ばされ、ヴァーリは地面を転がった。

 

 あり得ない。あり得ない事だ。

 

 匙元士郎の神器は、龍王の魂をそのまた大量に分割したものだ。天龍そのものを宿している自分とは比べるのもおこがましい。

 

 確かに鍛え上げられた事で大幅に上昇したがそれでも差は歴然。兵藤一誠ほど楽しませる者ではない。

 

 だが、それでもヴァーリは大きなダメージを負わされていた。

 

 そして、そのカラクリもまたヴァーリはグリゴリに所属していたがゆえに気が付いた。

 

「……反転(リバース)か!」

 

 グリゴリで研究していた、神器技術の発展形。

 

 聖と魔、光と闇などといった相いれない属性を反転させる事を目的とした力だった。

 

 つまり―

 

「半減して奪い取った力を自身に上乗せするのではなく、自身の力を差し出して、相手の力を倍化させる……というわけです」

 

 ソーナ・シトリーが、前に出てそう告げる。

 

「今のあなたは素体の能力だけなら下級悪魔と同レベルでしょう。白龍皇の光翼と鎧までは無理なようですが、それでも状況はひっくり返せました」

 

 その鋭い視線を浴びて、ヴァーリ・ルシファーは笑みを浮かべる。

 

 なるほど。自分は彼女達を舐めていた。

 

 あの赤龍帝を倒す為に、彼女達はそれなりの手段を講じていたらしい。

 

 ならば、こちらも返礼をしなくてはならない。

 

 ヴァーリは、覇龍を使う決心すらし―

 

「それに、もう詰んでます」

 

 その瞬間、ヴァーリは目の前が暗くなるという現象を体験した。

 

 もはや立つ事も出来ず、ヴァーリは崩れ落ちる。

 

「え? えええ?」

 

 ヒロイ・カッシウスもまた、何が起こったのか分かってない。

 

 だが、ヴァーリもヒロイもすぐに気づいた。

 

 この謎の現象は分らないが、現在進行形であるそれを起こしているかもしれないきっかけだけは分かっている。

 

 匙元士郎の打撃でつけられたラインを、ヴァーリは即座に引きちぎる。

 

 その瞬間、血が勢いよく噴出した。

 

「……ラインを利用して血液を奪い取り、レーティングゲームのシステムで強制的に退場させる。それがレーティンゲームにおける赤龍帝対策でしたが、白龍皇にも通用するとは思いませんでした」

 

 眼鏡を光らせながら、ソーナ・シトリーはそう告げる。

 

 そして彼女を護衛する為に間に入りながら、匙元士郎はヴァーリを睨みつけた。

 

「……会長は、この冥界に誰でも通える学校を作るのが夢だ」

 

 それは、日本での生活を送っていた匙達にとっては当たり前の事。

 

「……それを、冥界の貴族達は馬鹿にしやがった」

 

 そして、冥界では当たり前でない事。

 

「……俺達には結果がいるんだよ。……会長の夢は実現可能で現実的な夢だって」

 

 それを叶える為に、レーティングゲームは必要だった。

 

 それが、この襲撃の所為で中止になった。

 

「……それを、お前らは邪魔しやがって!」

 

 そして、匙は全力で駆け出した。

 

 一気に出力が上昇した事で発生した大量出血の影響から、ヴァーリはまだ回復してない。

 

 ゆえに、それを回避する事はヴァーリには不可能であり―

 

「……人の夢の邪魔すんな、この馬鹿野郎が!!!」

 

 渾身の拳で、意識を喪失する瞬間、ヴァーリは己の敗因を悟った。

 

 ―なるほど。これがジャイアントキリングというやつか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Side Out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺、殆ど何もしなかったんだけど。

 

 聖槍を取り落としそうになりながら、俺は( ゚д゚)とした。

 

「あれ? なんかヴァーリの気配が消えたんすけど、逃げたんすか?」

 

「いや、倒した……シトリー眷属が」

 

 俺は、なんか無常感に包まれた。

 

 え、えっと……ええ?

 

 あれ、白龍皇だよな? 魔王の末裔だよな?

 

 史上最強の白龍皇とか言われてたよな? それが……えぇ~?

 

 禁手にもなってねえ下級悪魔が、仲間達のサポートを受けてとはいえ、倒しちゃったよ。

 

「……私達は、確かにリアスやリアスの眷属に比べれば、素質は低いです」

 

 唖然としてる俺の隣に並びながら、会長がそう告げた。

 

 しかし、その表情は少し得意気だった。

 

「ですが、やりようはあります。私達はそうやって強くなりますので」

 

 そう、はっきり言った。

 

「貴方が聖槍の使い手であろうと、油断していたら追い越していくので覚悟してください」

 

 ……ははっ。

 

 おいイッセー、お嬢。

 

 同時期にすごい逸材がいるぜ。なんたって、史上最強の白龍皇をあっさり撃破した激やばチームなんだからよ。

 

 俺も気合入れ直さねえとな。ああ、曹操とか言ってる場合じゃなかったわ。

 

「匙、お前らすげえよ」

 

「あったりまえだろ! 会長はすげえんだよ!」

 

 匙の笑顔を見て、俺はしっかり覚悟を決める。

 

 ああ、やっぱり英雄になるのは大変だ。

 

 同時期に、こんな化物がいるんだからよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「会長! 霧が出ました! 絶霧です!!」

 

「あ、ヴァーリがいねえ!!」

 

 しかし、まだまだ若いので詰めが甘かったです。

 




ヴァーリ「ペトをボコるどころか逆にボコられた。見所がある奴を見つけたので満足している」

ヒロイ「助けに来たつもりが全く必要なかった。なんか複雑」









ジャイアントキリング達成。ある意味最大の戦果ですが、捕縛できなかったのがネック。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。