ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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はい、新たな整理の一環として、新作品に手を出してみました!!


第一部 プロローグ 赤龍と聖槍の出会い
プロローグ1 英雄譚の始まり


 

 英雄とは、何か。

 

 これに関して、ある枢機卿はこんな言葉を俺に告げた。

 

「自ら英雄と名乗るなど、愚かなことだ」と。

 

「英雄を目指すのではなく、がむしゃらに一生懸命生きた者がたまたま英雄と呼ばれるのだ」と。

 

 ……この言葉を聞いてから、俺は彼に対してどうしようもない嫌悪感を覚えた。

 

 そりゃぁ英雄なんて非現実的だ。人間相手にしろ化け物相手にしろ命がけで殺し合いをするんだから、ある意味忌避感があるのは当然だ。

 

 なろうと思ってなれる者でもない。そんな簡単なもんじゃないだろう。

 

 だけど、夢を目指した瞬間に、目指す事そのものが間違っているなんてふざけてるだろ。

 

 英雄はいる。いるんだ。そして、其れは決して忌み嫌われるものなんかじゃない。

 

 殺し合いという悲劇。血と臓物の匂いがこびりつき、そして心もやんでいくだろう地獄。それが戦場というのは分かっている。

 

 だけど、だからこそ。

 

 そんな地獄でなお輝くものは綺麗だって思えるんだよ。

 

 俺は知っている。そんな風に輝いている人を。

 

 俺は、ストリートチルドレンってやつだった。

 

 親の顔なんて覚えてない。

 

 あのスラム街のど真ん中で物心がついたんだ。ろくでもない親の可能性の方がでかいしな。

 

 そんな中、本能で雑草や残飯を食い漁って生活していた俺達は、化け物になった住人に襲われた。

 

 本国で違反行為をして追放処分を受けた吸血鬼達の仕業だった。

 

 ……人間だったものが人間を食い散らかすその光景は、間違いなく地獄だ。少なくとも、俺が今まで戦ってきた戦場であんなものは基本見ない。

 

 何とか一生懸命頑張ってスラム街の外に出ようとして、だけど化け物達に追いつかれた。

 

 その時は、なんていうかさ? あ、これで終わりかって自然と思ってたんだよ。

 

 俺の人生は不幸続きで、不幸しか知らなかったといってもいい。だから、怖くはあったけどそれが普通だとすら思っていた。

 

 幸せなんてそこになかった。本能で逃げていただけだ。

 

 だから、そこで終わりと思った瞬間に―

 

「……そこまでよ!!」

 

 舞い降りたその雄姿に、俺は恋をした。

 

 着地すると同時に化物達を一刀両断したその女性は、俺を見ると笑みを浮かべた。

 

「安心しなさい。あなたは、きちんと安全なところまで運んであげるから」

 

 そこから先は、正真正銘の英雄譚だった。

 

 襲い掛かる人間だった化物達を一人で叩き潰した彼女は、更に現れた本丸である吸血鬼達も、教会の悪魔祓いと協力して撃退した。

 

 貴族の出らしい高位の吸血鬼相手に、悪魔祓いにも何人か犠牲が出る中、彼女はボロボロになりながらもそれを成し遂げた。

 

 そして、俺は彼女に連れられて教会がバックについている孤児院へと送られた。

 

 初めてだった。

 

 温かい食事も

 

 暖かい寝床も。

 

 お湯で体を洗う事も。

 

 この時になって、俺はようやく自分が不幸だったということを実感した。

 

 生活費に困って人体実験じみたことを受けた事を伝えると、孤児院の院長は涙を流して抱きしめてくれた事も覚えている。

 

 ああ、俺は本当に不幸だったんだなぁって、その時ようやく自覚できた。

 

 そして、不幸なまま終わらせようとしていた化物達みたいなものは、世の中にいくらでもいる事を知った。

 

 故に俺は教会の悪魔祓いになる道を選んだ。

 

 それは決して、自分と同じ目に合う人を救いたいという正義感なんかじゃない。そんなものが形成されたのは、もっと後だ。

 

 最初に俺の心の中にあったのは、たった一つの想い。

 

 あの時、俺を救ってくれた彼女。

 

 あの英雄と同じ場所に立ちたい。

 

 そう、俺はあの時から彼女に―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこまで考えて、俺はふと我に返った。

 

「あれ? ヒロイくんどうしたの?」

 

 と、俺の頬っぺたをつついてくる、今回の仕事のメンバーである紫藤イリナを顔を見る。

 

 そして、俺はボケっとしていた事に気が付いた。

 

 ああ、そういえば昨日は思い残しの内容に溜まってた古本全部読んで寝不足だったんだ。

 

 飛行機に乗っている時間を全部睡眠に費やせばいいと思っていたが、思ったより眠れなかったな。

 

 ……まあ、いいか。久しぶりにいい夢を見る事ができたしな。

 

 ああ、そうだ。

 

「死ぬ前にいい夢を見れてよかったなぁ」

 

「ちょっとヒロイくん!? 縁起でもない事を言わないでくれるかしら!?」

 

「まったくだ。人がいい気分で寝ていた時に、気分を害する事を言わないでくれ」

 

 と、イリナ及びイリナの相方であるゼノヴィアに文句を言われるが、しかしそう言われてもなぁ。

 

「いや、俺達若手三人でコカビエルの相手何て、死んでもおかしくないだろ。っていうか全滅の可能性の方がでかいって」

 

 そう、なにせ相手はコカビエルだ。

 

 堕天使陣営の中でも十指に入るだろう超大物。聖書にすら記された歴戦の実力者だ。

 

 そんな奴を相手にするのなら、こっちだって大天使様の一人や二人には出てきてほしい。せめて噂の神滅具使い、デュリオ・ジュズアルドとか出て来いよ。

 

「失礼な奴だ。私が切り札を切れば、勝率は六割は硬いぞ」

 

「それは向こうだって同じだろ? エクスカリバーを強奪するなんて真似するんなら、そりゃもうぶちぎれたセラフ相手に通用するような切り札の一つや二つ持っていたっておかしくねえよ」

 

 そりゃあ、俺達は上級悪魔や吸血鬼だって返り討ちにした事のある実力者ですよ?

 

 俺なんて単独で上級吸血鬼をしとめた事もあるぜ?

 

 だが、今回は流石に状況が違う。

 

 かつての三大勢力の戦争で七つに砕かれ、そして教会が六つ確保していた伝説の聖剣、エクスカリバー。

 

 そのうち三本が、コカビエルによって奪われるという非常事態が発覚した。

 

 犠牲を出しながらも追撃したエージェントが見つけたやつの逃げ場所は、駒王町という日本の地方都市。

 

 よりにもよって、現四大魔王サーゼクス・ルシファーとセラフォルー・レヴィアタンの妹が管轄している土地だ。

 

 ……悪魔と堕天使。冥界を二分する勢力が手を組んで、天界を含めて教会を潰しに来た可能性は少なからずあると、上層部は考えている。

 

 故にエクスカリバー使いを二人も投入し、俺も投入するという割と本気な作戦だ。一応それなりに力を入れている事は間違いない。

 

 間違いないが、できればもう一押し欲しいところだ。

 

「ああ、できれば死にたくねぇなぁ」

 

「ヒロイ。君は信仰心に問題があるようだね」

 

 ゼノヴィアが軽く睨みつけてくるが、しかしだね、君?

 

「こんな大ごとに、実力があるとはいえ若手だけで事に当たれって酷くね? 勝率六割って事は四割は死ぬんだぜ?」

 

「充分な勝算でしょ? それに、殉教は信徒の本懐よ! ああ、主よ、砕け散った私達をどうか身元へとお運びください」

 

 イリナがなんか感極まっているけど、命投げ捨てるのはどうよ?

 

 あと、負けること前提に会話するのやめようか。

 

「しかもグレモリーに「手出しすんなよボケ」とかいちいち言えってんだろ? 素直に言えってんだ、「まず悪魔殺しとけ」ってよ」

 

 上は阿保なのか?

 

 自前の領地に敵の幹部が潜伏してたってだけでむかつく事実だろうに。挙句の果てに手出し無用だなんて言われたら、先ず言ったやつの首を飛ばして警告してくるぞ。

 

 下手すりゃ三大勢力での戦争再開だ。人間だって巻き込まれるだろうし、場合によっては他の神話体系だって関わってくるだろ。

 

 泥沼の戦争なんて、今時はやらねえよ。

 

 少なくとも、この状況下で余計な火種を投下するなんて、英雄のする事じゃねえ。

 

 とはいえ、主の名のもとに邪悪を滅ぼしたい教会側からしてみれば、なあなあで小競り合いに終始している今の現状こそ最悪何だろうがな。

 

 なんか憂鬱な気持ちになりながら、俺は飛行機の窓から空を眺める。

 

 ……嫌になるほど快晴だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは、俺ことヒロイ・カッシウスが「英雄」を目指す物語だ。

 

 光を目指して飛翔しよう。

 

 俺もまた、輝く存在になりたいと願うから。

 

 そう、これは「英雄」の物語だ。

 




かつて、英雄譚の物語の基本傾向としては、英雄の末裔や憧れた者が、自らも英雄足らんとする者が多かった。

それが、いつの間にか時代の定番は「英雄を目指すものはその時点で英雄失格である」に代わっていった。

この原作でもそれは言われている。


しかし、ハイスクールD×Dはスケベな主人公より草食系が中心となる昨今の業界で逆風に立ち向かう作品である。

なら、あえてこの言葉に立ち向かう作品があってもいい。

そう思って、この作品を書いてみました。
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