ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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大体後半戦の前段階でございます。


第二章 18 嵐の前にも波乱は起きて

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 禍の団の軍事施設で、リムヴァンは詰め寄られていた。

 

 詰め寄ってくる相手は、禍の団の派閥の中でも特に大きな派閥、旧魔王派。

 

 かつての戦争の終盤である、四大魔王と聖書の神が死んだ直後の、戦争継続派である。

 

 その最高指導者である、ベルゼブブの末裔であるシャルバ・ベルゼブブに、リムヴァンは詰め寄られていた。

 

「どういうつもりだ貴様!! せっかく集めた駒を十数万も消耗させて!!」

 

 殺意すら込めてシャルバはリムヴァンをにらみつける。

 

 圧倒的戦力差があることと、下手に手を出すと禍の団内部で内輪もめが起きることを知っているからかろうじて手は出さない。

 

 しかし、リムヴァンの返答次第ではそれも怪しい。そう確信させるほどに、シャルバは怒り狂っていた。

 

「だーかーらー。僕らに必要なのは後方支援の作業員と神器を移植させるに足る精鋭だけだって言ってるでしょー? 有象無象の雑魚なんて、ドーインジャーで事足りるじゃないか」

 

 その様子に心底うんざりしながら、リムヴァンはそう告げる。

 

 それに関しては真実本音だ。嘘偽りなどみじんもない。

 

 なにせ、リムヴァンが保有している神器も無限ではない。数に限りがあるのなら、移植可能なものからさらに厳選するのは当たり前の行動である。

 

 ましてやドーインジャーはその名の通り動員からとられた大量生産仕様とはいえ兵器である。下級の兵隊程度なら十分渡り合える性能があるのだ。人間の兵隊相手なら一個小隊もあれば歩兵大隊を蹂躙することもできる。

 

 指揮する立場からしてみれば、特性がバラバラゆえに個性の強い神器保有者は部隊に少ない方がいい。雑兵はある程度無個性である方が運用しやすいのだ。

 

 だからこその訓練だ。お互いに準備期間であろうこの数か月の間、雑兵であるドーインジャーより上の実力のものを少しでも用意して、それ以外はあくまで後方の警護程度にするつもりだった。

 

 しかし、人間相手に連戦連勝したのが悪かったのかすでに暴れ始める馬鹿が多かった。

 

 勢いづいた威勢だけのチンピラなど、いてもかえって邪魔になりかねない。無能な働き者ほど組織にとって害になるものはないのだ。準備もろくにせずに戦争を仕掛けようとする無駄に個性のある雑兵など、まさにその筆頭である。

 

 今の段階は準備期間だととらえているリムヴァンからしてみれば、当然止めたいところだ。第一訓練を申し付けているのであり、それに我慢できなくて暴発するような輩を切り捨てるのもある意味当然。大半はよりよい代替物が大量に確保できる有象無象に、そこまで意識を割くほど彼はお人よしではなかった。

 

 しかし、シャルバはそれを理解しようとしなかった。

 

「そんなもの、オーフィスの蛇をあたえればいいではないか! それさえあればあの偽物共の軍隊などこの時期だけで―」

 

「無理だね。いかに出力が上がっても、技量がなければ双方そろった実力者には勝てない」

 

 シャルバの反論を、リムヴァンは切って捨てる。

 

 額に青筋迄浮かべ始めるシャルバに、リムヴァンは指を突き付ける。

 

「シャルバ。今の君はおもちゃをあたえられてはしゃいでる子供と同じだ。戦争に勝つには、上が大人じゃなければならない」

 

「私が……餓鬼だと!? この偉大なるベルゼブブの末裔を、たかが貴族の末裔ごときが……っ!!」

 

 すでに全身から魔力を垂れ流し始めるシャルバに、リムヴァンも戦意を見せ始める。

 

 一触即発。その空気を換えたのは、その場にいた別の人物だった。

 

「落ち着きなさい、シャルバ」

 

 カテレアが、静かに割って入る。

 

 シャルバの敵意はカテレアにも向くが、しかしカテレアは落ち着いていた。

 

「シャルバ。しょせん今回の脱落者は我ら偉大なる悪魔とは違う下等な種族です。ドーインジャーで替えが効く以上、使い捨ててもいいではありませんか」

 

「何を言うかカテレア! そんなことでは―」

 

「確かに、オーフィスは蛇を無限に生み出せるが、生産速度まで無限というわけではないな」

 

 食って掛かるシャルバに、最後の一人であるクルゼレイ・アスモデウスがなだめるように声を出す。

 

 オーフィスの蛇は、確かに禍の団の力の根源の一つだ。

 

 しかし、各派閥にできる限り均等に提供し、さらに能力強化だけでない用途に使用しているものもある以上、現段階では生産速度に限度があった。

 

 ヴィクター経済連合として、全世界の四割を味方につけた今の禍の団の人員全てに蛇を与えるには、どうしても限界がある。

 

 むろん、最も多く確保しているとはいえ、いまだ全員に提供されているわけではないのは旧魔王派も同じ。

 

 それを思い出し、シャルバは少し溜飲を下げる。

 

「……今回の作戦で浮いた蛇は我々がもらう。あと、貴様は、この偉大なる真なる魔王の居城に当分顔を出すなよ!」

 

「……呼ばれたから来たんでしょうが」

 

「何か言ったか?」

 

「はいはい了解ですよ」

 

 そういい合い、シャルバは舌打ちをしてから部屋から出ていく。

 

「……すまんな。シャルバとしては、できる限り早く偽りの魔王どもを始末したいのだ。そのための肉壁が急激に減って、動揺しているのだろう」

 

「ま、オーフィスに許可取ったけど、彼に連絡が届いてなかったのは謝るよ」

 

 シャルバほど怒り狂ってないクルゼレイに、リムヴァンは肩をすくめて応じる。

 

 しかし、怒りの表情を示しているのはクルゼレイも同様だった。

 

「……いくら我ら悪魔以外は滅びるべき種族だとは言え、これだけの任務を我らに連絡しそびれるのは、72柱の末裔としていささか情けないぞ」

 

「わかったわかった。これからは直通ラインを作るから、それで勘弁してくれよ」

 

 そのリムヴァンの言い分に、一応の納得を見たのか、クルゼレイも矛を収める。

 

「ではクルゼレイ。私達も行きましょう」

 

「そうだな。……リムヴァン、見送りは―」

 

「結構。いちゃつきを見る気はかけらもない」

 

 熱いムードを見せ始める二人にひらひらと手を振り、リムヴァンは部屋から外に出る。

 

 そして城から出ると、ため息をついた。

 

「ご苦労様。我らが宰相殿」

 

「曹操に、ゲオルクも」

 

 そして、待ち構えていた曹操とゲオルクの姿を見て、ため息をついた。

 

 それは、曹操とゲオルクに対してついたのではない。彼らを見たことで気が緩み、つい出てきてしまったものだ。

 

「ったくもう。あいつら、僕の方が立場上だっていうことがわかってないよ。タメグチOKにしたのがまずかったかなぁ」

 

「古くからの名誉にとらわれて、周りが見えてないのだろうさ」

 

 リムヴァンの愚痴に、ゲオルクがそう皮肉を返す。

 

 実際そうだろう。

 

 確かに旧魔王派は、数と質のバランスでは有力な派閥の一つだろう。

 

 だが、数においてはすでに人類側のスポンサーが圧倒的であり、質についても英雄派と並んでいるといってもいい。そしてオーフィスとは比べるまでもない

 

 はっきり言って、組織の立ち位置では三強の一つ程度の派閥なのだ。宰相相手にそこまで偉そうにできる立ち位置ではない。

 

 しかし、彼らは身の程をわきまえていない。

 

 人生を健やかに生きるコツは、身の程をわきまえることである。

 

 身の程をわきまえないということは、ハイリスクな人生を送ることである。それを自覚しなくてはいけないのだ。

 

 しかし、シャルバたちはその双方ができていない。

 

 はっきり言おう。割と迷惑な存在である。

 

「カテレアは神器を移植できたからまだこっちの意見聞いてくれるけど、適合できなかったシャルバとクルゼレイはいつか暴走しそうで怖いんだよね~」

 

「そのカテレアも思想的には二人よりだろう? あまり信頼するのもどうかと思うけどね」

 

 曹操にそんなことを言われて、リムヴァンは苦笑した。

 

 極めて正論だが、しかし性分なので仕方がない。

 

「何事にも遊びを入れるというか、ギャンブル要素がないと燃えないタイプでねぇ」

 

「そうかい? 割と堅実に動いている風にも見えるけどね?」

 

 意外そうに、ゲオルクがそう漏らす。

 

 じっさい、ここまでの手腕は見事なものだというほかない。

 

 サタナエルが行動を起こすよりはるか前から行動を起こし、ヴィクター経済連合の前身ともいえるスポンサーの集団を集めた手腕は見事なものだ。

 

 ましてや、ジャンヌというある意味最大のプロパガンダを使い、教会の勢力を壊滅寸前にまで持っていったその作戦は見事極まりない。聖書の神の死を駒王会談で告げられたことを利用した、非常に即興のものであるにもかかわらずだ。

 

 しかし、リムヴァンはそれを苦笑しながら首を振って否定する。

 

「あれはサポート役がいたからね。Lはそういうスカウトとかアジテーションが得意なんだよ。彼を最初に味方につけれたからこそ、ここまで動くことができたからね」

 

「そうか。あなたの秘蔵っ子はそれほどまでの逸材なのか」

 

 一度会ってみたいものだと、曹操は思いながらも話を続ける。

 

「それで、今後の予定は?」

 

「そだねー。まずは今までと同様、ドーインジャーを生産する工場の生産だよ。あとは……そうだねー」

 

 リムヴァンは歩きながら考えこみ、そしてにやりと笑った。

 

「どっかの魔獣を、奪いに行こうか」

 

「ほう、魔獣退治なら英雄の仕事だけど、魔獣確保とは変化球だね?」

 

 曹操は面白そうにしながら、話を促す。

 

 それにうなづきながら、リムヴァンはある映像を映し出した。

 

 そこに映し出されるは、堕天使の総督アザゼルが開発した、人造神器の姿だ。

 

 龍王ファーブニルを封印して作られた、アザゼルの最高傑作。蛇で魔王クラスにまで強化されたカテレアを、神器を移植してなければ一蹴していたであろう代物だ。

 

 これはいい。実にいい

 

 封印系神器とは相性が悪いので、少しだけ確保するにとどめていたが、これなら一から設計すれば、自分用に高性能なものを作ることができるかもしれない。

 

 何より、強大な敵を捕らえて封印すれば、敵戦力を削減しつつこちらの戦力を強化するという皮算用すら狙える。

 

 そこまでかんがえて、リムヴァンは不敵な笑みを浮かべる。

 

「この発想、マルパクしちゃおう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふぅ~。ついたついたー。

 

 俺たちは、列車に乗られた体をのばしながら、駅に到着した。

 

「うっへぇ。とりあえず宿題は半分片付いたぜ」

 

「そんだけ出来りゃぁ、たぶん今日中に全部終わるんじゃねえか?」

 

 心底疲れてるっぽいイッセーに、俺はからかい半分でそういう。

 

 いや、でも半分ぐらいマジで言ってるぜ? だって結構多かったのに、もう半分もやっちまってるんだからな。

 

 その調子でやれば、宿題何てすぐ終わるだろ。

 

「……先輩、やっぱりやればできますよね」

 

 と、小猫ちゃんも同意する。

 

 そして、そのままイッセーにすり寄った。

 

「こ、小猫ちゃん?」

 

「にゃぁ」

 

 ……やべえ。可愛い。

 

 いつもクール系だった小猫ちゃんが、満面の笑みを浮かべてるぜ。これはすげえ来る。

 

 いや、問題は、それが、俺の、ほうに、向いて、ない、ことだよ!!

 

「お姉さま。ヒロイがなんか赤い涙流してるッス!? 敵襲っすか!?」

 

「いえ。あれは醜い男の嫉妬だからスルーしていいわ。半分ワルノリでしょうし」

 

 姐さん、きついですぜ!!

 

 だって、俺はまだ童貞なんだぜ!? いや、イッセーもまだ童貞だけど。

 

 だが、イッセーはいつでも童貞を捨てようと思えばすぐに捨てれる環境だってのに、俺は捨てたくても捨てれない環境。なんなんだこの違いは!!

 

 泣いていいか、マジで。

 

「キャッ!」

 

 と、そんな時悲鳴が上がった。

 

 これは、アーシアの悲鳴?

 

 殺気は感じないが槍を出しつつ振り向くと、そこにはアーシアに詰め寄る一人の少年悪魔の姿があった。

 

「やっぱり……やっぱりだ……」

 

 その少年悪魔は、何やら感慨深げな表情を浮かべていた。

 

 あれ? あいつ、どっかで見たような気がするんだが、誰だ?

 

 っていうか、アーシアのことを知ってるみたいだが……。

 

「おい! うちのアーシアちゃんにいったい何の用だ!!」

 

 イッセーが割って入るが、その少年悪魔は意に介さない。

 

 むしろ、何やら寂しそうな表情を浮かべていた。

 

「僕を忘れてしまったのかい、アーシア。僕たちはあの時出会っていたはずだよ」

 

 そういうなり、その少年悪魔は胸をはだける。

 

 まず悲鳴を上げて張り倒されても文句の言えない光景だったが、しかしそれどころじゃない。

 

 その胸には、ひどい傷跡があった。

 

「……あ、あなたは―」

 

 アーシアはそれを見て、目を見開いた。

 

 なんだ? その傷跡に見覚えがあるのか?

 

「ディオドラ……? あなた、ディオドラね!!」

 

 そして、騒ぎに気付いたお嬢が、その少年悪魔の顔を見るなり声を上げる。

 

 ディオドラって……あ。

 

 思い出した! あいつ、シシーリアを連れていたあの上級悪魔!

 

 しかもディオドラって、現ベルゼブブを輩出した、アスタロト家の家系じゃねえか!! つまりこいつが次期当主ってことか!!

 

 そ、そのアスタロトがいったいなんでここに?

 

「そう、僕はディオドラ・アスタロト。かつて君に助けられた悪魔だよ」

 

 そういうなり、ディオドラはアーシアにほほ笑んだ。

 

「傷跡を消してもらうことはできなかったけれど、僕は君のおかげで救われたんだ」

 

 そういうと、ディオドラはイッセーをすり抜ける。

 

 お、思ったよりできるな。

 

「会合の時はあいさつできなかったけれど、僕は君にお礼を言いたかったよ。そして―」

 

 そして、ディオドラは、アーシアの手の甲にキスをする。

 

 こ、こここ、この展開は、まさか!?

 

「君と出会えたのはきっと運命だ。どうか、僕の妻になってほしい」

 

 きゅ、求婚きやがったぁああああ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 旧魔王派の城の廊下を、シャルバ・ベルゼブブは苛立たしげに歩いていた。

 

 その後ろを、カテレアとクルゼレイがついて歩く。

 

 まるでベルゼブブがレヴィアタンとアスモデウスを従えているかのような状況に、シャルバは少しだけいい気分になる。

 

 だが、それもいら立ちの方が勝る。

 

 この禍の団の中でも最も偉大たる真魔王派。それを旧魔王派と言い放つ、72柱という配下の家系であることの自覚の足りないリムヴァンにはもううんざりだ。

 

「あの男に禍の団は任せておけん。貴重な駒を悪戯に消費するような馬鹿者の好きにはさせんぞ」

 

 殺意すら込めて、シャルバはここにいないリムヴァンに対する恨み言を漏らす。

 

 それをたしなめるように、カテレアは嘆息した。

 

「落ち着きなさい、シャルバ。今回の作戦で我々には痛手はないのですから」

 

「だが、我ら悪魔がこの星唯一の種となるための努力が足りないのは事実だ。すこし発言力をそぐ必要はあるだろう」

 

 それをさらにたしなめるようにクルゼレイが発言し、そして視線をシャルバに向ける。

 

「そのための策、すでにできているのだろう?」

 

「無論だ。神器については私も少しは詳しい。内通者に助言を告げれる程度にはな」

 

 そう告げると、シャルバはドアを開けて部屋に入る。

 

 そこには、一つの拘束具があった。

 

 神滅具、絶霧(ディメンション・ロスト)。その亜種禁手たる霧の中の理想郷(ディメンション・クリエイト)によってつくられた、特殊な結界装置。

 

 そして、これに磔にされる予定の贄は、アーシア・アルジェント。

 

「我々の内通者が見つけたあの小娘がいれば、この結界装置で神々すら一網打尽にできる」

 

 そうすれば、その圧倒的な戦果によってリムヴァンを黙らせることもできるだろう。

 

 そして、そのための準備は刻一刻と進んでいる。

 

「待っていろよ、リムヴァンめ。貴様は我々に傅く立場だということを、思い知らせてやる……!」

 

「流石にそれは恩知らずだと思いますが……」

 

「だが、真なる魔王をないがしろにしすぎではある。私は協力しよう」

 

 ため息をつくカテレアを、少し考えこみながらも同意するクルゼレイを背に、シャルバは醜く笑った。

 

 旧魔王派の作戦は、其の開始まであとひと月を切っていた。

 




身の程をわきまえてない自覚がない馬鹿って、迷惑ですよね。

わきまえてるなら謙虚だし、身の程を超えているとわかっていながらも求めるならそれなりの立ち回りはできるはず。だけどどっちもできてない奴ははた迷惑。しかもそいつに権力があると迂闊に排除もできない。

本作のシャルバはそんなキャラです。あ、原作でもそんな感じか








そんな感じで、リムヴァンも扱いに困っています。
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