ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
その日の夜、俺は会長を呼び出すと、隣町のラーメン屋に誘った。
「なんだよカッシウス。俺と会長を呼び出して何の用だ?」
「悪魔の依頼だよ、依頼。親しき中にも礼儀ありってこの国じゃ言うだろ?」
ああ、ちょっと色々あるからな。少し人の力が借りたかったんだ。
お嬢達はレーティングゲームが近いから、あまり人手を割かせたくねえ。ディオドラにも関わるから、ちょっとあれだしな。
つーわけで、俺の近くでお嬢達以外の悪魔の集まりといや、会長達ってわけだ。
ちなみに、お嬢達に心配かけたくねえから今回の依頼は「近場の美味い飯屋を教えてもらう」ってことにしてる。匙は数駅離れた所に住んでるらしいからな。
「……依頼そのものは匙という事にして、本当に依頼したい事は私にですか。冥界そのものに関わっている可能性もありそうですね」
会長がため息交じりにした推測は、見事に大当たり。
ああ、ちょっと気になる事があってな。
「ディオドラの眷属の一人について、詳細なデータが知りたいんだよ」
「……確か、夕方にリアス達が揉めたと聞きましたが」
会長には少しは話が通ってるようだな。
と、いうわけで俺は簡単にまとめて説明する。
当然、反応はよろしくなかった。
「……婚約の成立をレーティンゲームで賭けたリアスでは断りづらいですね。あの時とは状況が何もかも違いますが」
「惚れた女をそんな形でものにしようとか、何考えてやがんだ!」
二人とも割と不機嫌になったけど、匙、お前はちょっと反論難しくねえか?
できちゃった結婚を狙うってのも、色々あれだぞ、マジで。
「しかも和平が成立して人間との交流も考えられる時期に、その態度はいただけませんね。せめて人間がいないところで言ってもらわないと」
やれやれといわんばかりに、会長はまたため息をついた。
まったくだ。アイツ和平が結ばれたって自覚足りねえんじゃねえか?
ま、俺が相対した悪魔の連中は、はぐれ正統含めてかなりの数の連中が人間を見下してたけどよ。
「俺のダチを馬鹿にしやがって! 会長! いっそのこと俺達がレーティングゲームでボコボコにしましょう!!」
「落ち着きなさい、匙。気持ちは分かりますが、それはリアスに譲りましょう」
おや、たしなめてるつもりがあまりたしなめられてねえな、会長。
ま、そんなことしてるうちに目当ての店に到着。
隣町の名店らしい。安くて美味くて早いという三拍子揃った店で、匙はよく世話になってるとか。
「……俺、夏休みのごたごたの成果で年俸上がったから、家族も呼んだらどうだ? 奢るぞ」
「気持ちだけもらっとくよ。元吾も華穂ももう寝てるからな」
「いや、親御さんはまだ起きてるだろ。明日土曜だし―」
俺は最初から親御さんを呼ぶつもりだった。
いや、確かに都市の小さな弟妹がいるみたいだし、両親を二人とも連れ出すのはまずいのか?
「―両親は、二人とも死んでんだ」
「……あ、悪い」
マジかぁ。俺、地雷踏んだぁ……。
この日本で学生が両親と死別とか、そうはねえだろ、なんだよこのピンポイント。
こ、これは俺の英雄スキルである土下座を披露する時か?
「……親に捨てられたお前よかマシだよ。気にすんな」
い、言われてみれば俺のが酷いか……?
「ま、そういうわけで俺が悪魔稼業で稼いだ金で食ってるようなもんなんだ。気にしてんなら、報酬は割高で頼むぜ?」
そうおどけて言われちゃ、あんまり気にするわけにもいかねえか。
「よっしゃ! そんなんじゃ高いもん食ったことねえだろ! 会長も一緒に一番高いメニューと行きますか!! トッピングもマシマシでな!!」
「お、いいねぇ!! 会長も思いっきり食べてやりましょう!!」
「この時間帯の暴食は太るのですが……。まあ、たまにはいいでしょう」
お、会長も乗ってくれたよ!
よっしゃ! ここはいっそのこと太りそうなラーメンを頼んじゃうかな!!
そう思いながら扉を開けようとすると、それより先に扉が開いた。
「お、聖槍と邪龍の兄ちゃんじゃねえか」
「ほう。偶然だな」
―そこに、美候とヴァーリがいた。
「「「!?」」」
俺達は度肝を抜かれたが、すぐに下がって警戒する。
お、オイオイオイオイ! こんなところで戦闘したらこの店が吹っ飛ぶどころの騒ぎじゃねえぞ!?
どうすんだよ、この状況!
とにかく戦闘態勢を取ろうとするが、それより早くヴァーリは掌を見せて制止する。
「まあ待て、この良い店を吹き飛ばすような真似はしない。俺達も用事は済んだしもう帰る」
「……流石に、ここで人間界に危害を加えるわけにはいきませんか。二人とも、矛を収めなさい」
か、会長がそう言うなら仕方がねえか。
俺と匙はしぶしぶ闘う姿勢を解除する。ヴァーリもすぐに笑みを浮かべると手を下げた。
そして、美候はヴァーリの後ろから匙を見て片手を上げた。
「よぅ! おまえさんがヴァーリを沈めたって? そこの嬢ちゃんも見事な作戦じゃねえか!!」
「お、おう……」
「一応、誉め言葉と受け取っておきましょう」
匙と会長はそう答えるが、しかし何考えてやがる?
こいつら、よりにもよってテロリストの精鋭部隊だってのに、こんなところにのこのこと現れやがって。
何かあったら、すぐにでも戦闘を開始しないとまずいな。会長と匙も警戒だけは解いてない。
それを見て、ヴァーリは苦笑した。
「そう警戒しないでくれ。せっかく見つけた輝く原石だ。磨かれるまで俺から手を出すつもりはない」
「まったくだぜい。やるならせめて、そこの邪龍の兄ちゃんが禁手に至ってからだぜい」
このバトルジャンキーが。そんなに戦いたいか。
そりゃ俺だって戦果は上げてえが、其の為に罪のない連中を不幸にする気はねえぞ。
こいつら、遠慮なく和平会談でテロったからな。全く信用できやしねえ。
「まあいいさ。ついでに君達にも伝えておこう」
ヴァーリは苦笑して帰り支度を始めながら、俺達にこう言った。
「……ディオドラ・アスタロトには気を付けた方がいい。兵藤一誠にも伝えておいたが、一応言っておこう」
……おいおい、この男がわざわざ名指しで指定するほどの奴だってのか、あの野郎は。
ちなみに、ラーメンに関しては深夜だったので学生お断りと言われてしまった。残念!
うっへぇ。残念無念。
と、思いながら帰ってきてみれば、そこにはエロいコスプレをした美少女達の姿が。
「イッセーもげろ」
「なんでだよ!?」
とりあえず、イッセーにはそう言っておいた。
だって、アーシアも小猫ちゃんもこっそり俺から見えないように移動してんだぜ?
あのゼノヴィアですら、いつの間にやらイッセーの近くによっている。まあ、とっくの昔にイッセーに狙いを定めたのは知ってるけどな。
つまり、この馬鹿は自分が気づいてないだけでもうハーレムできてるようなもんなんだよ。
悪魔は実力さえあればハーレム作れるし、まず間違いなくイッセーは戦闘能力だけなら上級余裕で狙えるし、もう障害なくね?
くそ! 俺はまだ童貞なのに許せん!
そんな俺の両肩に、やわらかい感触が振れた。
ん? なんぞこれ?
「おやおや~? ヒロイ、英雄が嫉妬はダメだと思うっすよ?」
「そうそう。私達が可愛がってあげるから我慢しなさい」
……お、おお! エロアニメで見るようなサキュバスの恰好をした姐さんとペトが、俺の体にくっついてふっはっ!
「ヒロイしっかりしろぉおおおお!!!」
ふと気づくと、俺は鼻血を流しながらイッセーに抱きかかえられていた。
「死ぬな! 俺達はこれからこの桃源郷で人生ゲームをするんだ!! だから死ぬな!!」
「イッセー。はは、幸せすぎて死ぬところだったぜ……」
俺達は、お互いに鼻血を流しながらも根性で命をつなぐ。
ちなみに人生ゲームは割と面白かった。ボードゲームも結構いいな、オイ。
「まさか、ここまで効果覿面だなんて……。ちょっと可哀想だと思っただけなんだけど」
「そう言えば、ヒロイさんはリセスさんを初対面の時から慕ってますね。なんででしょう?」
「それが心当たりがなくて。悪魔祓いとは共闘したことあるけど、それ五年も前だから彼は現役じゃないし」
と、姐さんは小猫ちゃんと会話していた。
ああ、そういえば言ってなかったな。言う気もなかったけど。
「あと二年ほど前に敵対したことがあるわね、京都府で」
「そうなのか? 確か、ジークはその時から精神の均衡を崩したらしいな」
と、俺が指摘する前に会話の矛先がジークってやつに映る。
確か、どっかの戦士育成機関出身のスーパーエリートだったな。俺が現役の頃には精神に異常をきたしかけてたとか聞いたけど。
それ、姐さんが関わってんのか?
と、姐さんはすごく言いづらそうに視線を逸らしていた。
「……はぐれ者の妖怪と出くわして退治したんだけど、そいつ信徒にも危害を加えてたみたいなのよ」
「そうなんすよ。自分もその時襲われて、その時お姉さまに助けてもらったッス!」
ペトが姐さんの会話をつなぐ。
ああ、どこで接点があったのかと思ったけど、そこで接点があったのか。
「その時は、総督と気の合った神社にお世話になってたんすけど、そこを狙った犯罪者の妖怪に襲われて大変だったッス。で、そいつが殺した信徒の仇討ちの為に実力者揃いの悪魔祓いが介入してきて三つ巴になったッス」
……ああ、そういえば日本で現地の連中や堕天使勢や妖怪と揉めたって話があったような。
で、その時にジークを倒しちゃったと?
「確か、その時は魔剣を五本も持ってたっスね、お姉さま」
「ええ。腕が三本もあって持ち替えながら仕掛けてきたけど、魔剣に頼り気味だったから思ったより楽に勝てたわ。調子に乗ってたんでしょうね」
と、姉さんはそういうが、なんかすごく言いづらそうにしていた。
それにちょっと気になるんだけどよ。あの時ジークの奴、グラムしか使ってなかった気がするんだけどよ。
まさか、何かしたのか?
「……その時、独り言でぽつりと感想漏らしたのよ。自戒も込めて」
「なんて言ったんだ?」
ゼノヴィアが先を促すと、姐さんは少し躊躇して―
「―すごいおもちゃをたくさん持ってるからって、強くなれるわけじゃないわよね……って」
少し顔が赤かったのは、責任感じてるからなんだろうな。
確かに、それが聞こえてたならジークの奴、アイデンティティぶち壊れるだろ。
魔剣五本に選ばれるとか、自慢にしかならねえだろうしな。まず間違いなく心の拠り所っつーか、柱になってただろ、それ。
それが負かした相手にそんなこと言われたら、ショックもでかかっただろうなぁ……。
「リセスさん。それ、とどめだったんじゃないですか?」
「……責任をもって倒します」
珍しく姐さんが敬語使ったよ、それもイッセー相手に。
「たっだいまー! なんかリアス部長と朱乃さんが喧嘩してたけど、何かあったの?」
と、そこでイリナが帰ってきたので空気がやんわりとなった。
イリナの奴、こういう時ムードメーカーになってくれるから役立つな。明日学食奢ってやろう。姐さんを助けてくれてありがとよ。
「あ、悪魔式の人生ゲームとかすごく面白そう!! 転生天使が悪魔の人生を追体験とか、複雑怪奇で楽しくなるわね」
と、イリナはこっちのゲームに興味をしめした。
いや、それどうよ。
なんつーか、こいつなんだかんだで人生楽しく生きていきそうなタイプだよなぁ。前向きっつーか立ち直りが意外と早いっつーか。
「……ふふっ」
と、そこでアーシアがクスリと笑う。
ん? なんだなんだ?
「なんだか、すごく毎日が楽しいです」
そういって、アーシアは笑顔を見せた。
そっか。毎日楽しいか。
それってすごく幸福な事だ。嬉しいなんて感情をろくに知らない路上生活を送ってきた俺だからこそ、断言できる。
「ずっと、こんな毎日が続くといいです」
「……そうだな」
イッセーがそう答え、俺達は皆でほっこりする。
ああ、こりゃディオドラに負けるわけにはいかねえな。いや、俺や姐さん達は関われねえんだけどよ。
こりゃ責任重大だぜ、イッセー?
そんなこんなで人生ゲームを仕切り直してると、お嬢が入ってきた。
つかなんでバニーガール? いや、似合ってるけどよ?
「……冥界から、連絡が来たわ」
と、なぜかお嬢は戸惑ってた。
部屋中の視線が思わず集まる。いったい何事ですかい?
「私達グレモリー眷属に、冥界のテレビ局が番組に出演してほしいって……」
三秒ぐらい沈黙した。
「「「「「「「「て、テレビ番組ぃ!?」」」」」」」」
おいおい、マジかよそれ!!
ま、俺や姐さんは参加しなかったんだけどな。
「ぶはははははは!!!」
「わ、笑うなよヒロイ!!」
俺は、駒王学園に返ってきたイッセーの説明を聞いて爆笑した。
いや、マジで笑える。ホント笑える。
なんだよ、乳龍帝って!!
「お、おま……っ。流石にそれはねえだろオイ!」
俺は目に涙を浮かべながら、笑いを抑えるのに必死だった。
テレビ番組に出演する事になったイッセー達だが、理由は結構単純だった。
夏休みの終盤に起こったヴィクター経済連合の襲撃事件。その事件で活躍して賞を受賞した若手眷属。そして悪魔祓いを迎撃し、大半を投降させたグレモリー眷属。
それに対するいわゆるインタビューってやつだ。会長やサイラオーグ・バアルも眷属もろもろインタビューを受けたそうだ。
その時、サイラオーグから「小細工無用の真っ向勝負」をしたいとイッセーが言われたそうだが、それはまあ置いといて。
なんだかんだで美男美女が揃っているグレモリー眷属だから、割と冥界でも人気が出てるらしい。特に木場と朱乃さんがそれぞれ異性から人気抜群だとか。
で、イッセーは子供達に人気らしいんだが、そこで名付けられたのが乳龍帝!
ゴロが合ってるのがマジでキツイ。腹がいてえ。
『……マジで泣くから勘弁してくれ』
「済まねえドライグ。ツボにはまった……ブフッ」
駄目だ。思い出しただけでマジで笑いが出てくる。
乳首つついて禁手に至ったのが知れ渡った事が原因でこんな異名が付いたらしいが、冥界って意外と緩いんだな、オイ。
ま、二天龍は三大勢力に多大な迷惑かけてるからな。それぐらいで済むなら安いもんだろ。
しっかし、もうすぐレーティングゲームだってのにすげえもん見せてくれるな、イッセーめ。
「こりゃいろんな意味で負けられねえな。負けたら子供達泣くぜ?」
「分かってるよ。ディオドラの野郎はぶちのめしてやるさ」
そう言いながら校庭を歩いていると、校門の前に何人かの男性がいるのが見える。
なんか高級そうなスーツを着たオッサンが一人。加えて何人ものSPみたいな連中がいた。
なんか全員鍛えられてるみたいな感じだけど、いったい誰だ?
ふむ、ここは英雄としてあえて危険を確認して犯してみるか。禍の団じゃねえだろうが、それでも警戒は必須だろ。
「……すいませんがぁ、ここ部外者は立ち入り禁止なんですわ。誰かに用があるなら、放送委員に呼んでもらいましょうか?」
「お前、怖いもの知らずだな」
イッセーに呆れられるが、お前に言われたくねえよ。
ミカエル様に直談判する悪魔よりかはましだ。いや、こいつは本当に知らねえだけか?
ま、今はこのオッサン達だな。
俺は一応体に適度に力を入れながら観察するが、そのオッサンは物珍し気に俺達を見ると、豪快に笑った。
「はっはっは! 悪い悪い、仕事が早めに片付いたんでな、近くに来てたからこの学園を見てみたかったんだよ。いや、怖い兄ちゃん達引き連れてて悪いな!」
そういうオッサンは、俺達をしげしげと眺める。
……なんだ? 俺達に興味があるのか?
それにこの学園に興味がある? 一応進学校だし、子供を通わせてえのかねぇ?
いや、そういえばこのオッサン、どっかで見たことがあるような……。
「…………あ゛」
と、イッセーが焦った顔をした。
なんだ? 知り合いか?
「お、気づいちまったか。こりゃ騒ぎになりそうだし、そろそろ退散するかねぇ」
といって、黒づくめの男達に指を鳴らすと、そのオッサンは車のドアを開ける。
こっちも高級そうな車だな。相当の金持ちかこのオッサン。
「ま、いっそアザゼルやグレモリーの嬢ちゃんに挨拶しておきたいとこだけどよ。この業界、アポなしで突然の来訪とか非常識な行動だからな」
アザゼル先生やお嬢の知り合いか? いや、そもそも業界的に非常識って、どういうこった?
そう思った俺達だが、その疑問にそのオッサンは答えない。
「ま、赤龍帝と聖槍使いを見れたから良しとすっか。……近いうちにまた会おうや。その時は土産もんも持ってくるとすっか! 帰るぞ」
「「「「はっ!」」」」
そんなことを言いながら、オッサンは黒服を連れて去っていく。
な、なんだったんだ一体……。
「ひ、ひ、ヒロイ……」
と、イッセーが我に返ったのか目をまん丸くして俺の肩に手を置く。
そういや、なんかに気づいたみたいだったな。
「知り合いか?」
「違う、でも、めちゃくちゃ有名人だ」
ほほう。そんな有名人なのか。芸能人か何かか?
流石に日本の芸能界にはまだ詳しくねえからな。定住してから数か月だし、ひと月ぐらい冥界に行ってたし。そもそも勉強とかやること多かったしな。
で、誰?
「だ、
ほほう。総理大臣か……。
………って―
「この国で一番偉い奴じゃねえか!!」
総理大臣かよぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!
Other Side
専用の送迎者の中で、大尽統は含み笑いをしていた。
ようやく仕事を片付けて暇ができたので、ちょうど近くにあった駒王学園を覗き見してみたが、まさか赤龍帝である兵藤一誠と、聖槍使いヒロイ・カッシウスを生で見ることができるとは思わなかった。
「総理。こういった形でフットワークの軽さを見せないでください」
「悪ぃ悪ぃ。どうしても生で一度見ておきたかったんだよ」
秘書に軽い調子で詫びながら、大尽はミラー越しに駒王学園をもう一度見る。
駒王学園。悪魔陣営でも有数の名家である、72柱のグレモリー家次期当主が管轄する学園。
この街の異形的な意味での支配者であるリアス・グレモリーには、この国のトップとして感謝するべきか文句を言うべきかわからない。
なにせ、彼女がいたからこそコカビエルを撃退してこの街は救われたわけだが、彼女がそもそもいなければ、この街がターゲットになることはなかったのだ。
この情報化社会の先端側にいる日本で、都心にも割と近い地方都市が吹き飛ぶなど、大事件だ。
異形側の対応で秘匿する必要があるが、その負担は間違いなく日本政府にも来る。
そんな面倒事と多大な被害発生を食い止めた事を感謝するべきか、それともそんなターゲットになる要因を作った事で文句を言うべきか、それを考える必要もある。
まあ、幸か不幸かそんなレベルを超えた事態の所為で問題にならないわけだが。
「さて、確かそろそろ北欧のジジイが、この国の神話体系に接触するんだったよな?」
「はい。主神オーディンは、三大勢力の和平に関しても積極的に賛同しているとの事です」
秘書の説明に頷きながら、大尽は一瞬で今後の行動を決めた。
なにせここは日本だ。そして自分はこの国の表のトップの1人である、総理大臣だ。
なら、できない事もないだろう。そう大尽は判断した。
「その会談に俺達も一枚かませるように言ってくれや。官邸を場所として指定できねえか打診しろ」
「……よろしいので? 五代宗家や各妖怪組織が何か言ってきそうですが」
「んなもん無視しろ。この国で政治会談するってのに、俺ら日本政府を無視して話進めさせるわけにもいかねえだろ。なにせもう存在が公表されてんだからよ」
秘書にそう答えると、大尽は静かに思考を巡らせる。
自分が総理大臣に当選した時にこんな事が起こるとは想定外だが、だからこそ、自分は総理大臣としてするべき事をしなければならない。
そして、この事態は自分の願いを叶える最高のチャンスだ。
「各神話の和議。それをなすのにこの国は都合がいいのは分かってるぜ? なにせこと神話と宗教に関して、この国ほど良くも悪くもいい加減な国はそうはねえしなぁ?」
だが、自分達国家に一文の得もないというわけにはいかない。
そもそも、そんな事が何の問題も起きないわけがない。
そして、其れは利益を得る最大のチャンスでもある。
こんな言葉がどこかの創作物であった。
国家とは、ヤクザである。
ゆえに、利益を得る為ならば手段は選ばない。非合法組織による暗殺や謀略など、しない国の方が少数派だ。
それに、異形の存在が知れ渡ればこちらもややこしいことになるのは確定だ。
どこぞの老害どもの所為で、この国は国際問題の火種を抱えている。
その遠因となった
「五大宗家の奴にはこう伝えとけ。空蝉機関の件、殆ど全部そっちの落ち度だろうが……ってな」
あれの真相を公表する羽目になるのも時間の問題だ。
自分の任期中に発生した事件でないとはいえ、あれだけの大問題を日本政府に意見できる異能組織の不始末で起きたなど、間違いなく大問題に発展する。少なくとも国際的につつかれることは明白だ。
なにせ、外国の人間にも死者が出ているのだから。
ゆえに、その分の埋め合わせぐらいはそろそろしてもらわねばならない。ちょっと強引に関わるぐらい見逃してもらわなければ割に合わない。
その為の準備に必要なものを考えこんでいると、秘書のスマートフォンが振動する。
そして、車の中にいる者達が全員警戒心をあらわにした。
この振動回数は、割とレベルの高い揉め事が発生した場合の震え方だ。それも異形方面の問題である。
「……総理。どうやら我々は運が良かったようです」
「あん? トラブルが起きてんのにか?」
自国内の予定外のトラブルで運が良いとはどういうことだ。どう考えても問題だろう。
しかし、秘書は静かに駒王学園に視線を向ける。
「駒王学園で異形のものと思われる武装勢力が、リアス・グレモリーの
その言葉に、大尽はため息をついた。
「……この街は、飽きさせてくれねえなぁオイ」
果たしてそれが吉と出るか凶と出るか。もし凶と出るならどうやって被害を最小限に抑えるか。
大尽は、その計算を即座に始めながら、さっき顔を見たばかりの2人の少年のことを少しだけ心配した。
Side Out
リセスとジークの因縁を少し説明。そしてリセス、教会との共闘は覚えているのにヒロイについては未だに気づいておらず。
それはともかくとしてジークがリセスを執拗に狙う理由も発覚。これはリセスにも問題がありますね。
総理大臣登場。そりゃ人間世界も巻き込んだ作品にしてるんですから、一人ぐらい表世界の政治関係者を出しますよ。