ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
俺達の目の前で、聖剣のオーラが消える。
そして、ボロボロの服を纏ったディオドラが姿を現した。
くそむかつくことに、あの野郎の体はほぼ無傷だ。
「やってくれるね。この服はお気に入りの服だったんだけどさ」
ぱんぱんと、服についたほこりを払いながら、ディオドラは余裕の表情だ。
いくらなんでもお嬢の同期で格下にしちゃぁ強すぎる。こりゃ、オーフィスの蛇とやらを移植してやがるな?
上等だ。移植しまくりの俺が言うのもなんだが、ドーピングした程度でいい気になるなよ、三下!!
「ディオドラぁ!! てめえがシスター堕として悦に浸ってる下衆だってのはすでにシシーリアのメールで知ってんだ!! 今更俺たちがタダですますと思ってんじゃねえ!!」
俺は、英雄魂が許すなと叫ぶ巨悪に対してドスをきかせる。
こいつの趣味はよく知っている。シシーリアがメールで教えてくれた。
シスターを堕として囲うのが趣味の下衆野郎。眷属の女性もほとんどがその手のタイプで、シシーリアもまたその類。
和平成立前ならそれもまた許されただろう。だが、今は教会と仲良くやっていこうとしている時期なんでな。これ以上の狼藉は認められねえ。いい時代だ。
「アーシアの神器の特性をどこで知ったかは知らねえが、それをつついて教会から追放させるたぁいい度胸だ。聖遺物の裁きを食らわせてやるから覚悟しやがれ!!」
俺は本気でムカついている。
この下衆野郎は、今ここで叩き潰す!!
待ってろシシーリア。お前をたぶらかしたこの腐れ外道は、ここでぶちのめす。それも、殺すつもりでだ!!
「……あの、私アーシアさんにはそこまで伝えてないんですけど」
シシーリアがそう戸惑いながら言った。
俺は固まった。
イッセーも固まった。
ゼノヴィアも固まった。
ディオドラですら固まった。
そして、視線がアーシアに集まった。
「………そ、そんな………」
もはや表情すら消え失せて、アーシアは泣いていた。
………や、やらかしたぁああああああああ!?
「誠にすいませんでしたぁああああああああ!!!」
俺は渾身バク天ひねり土下座を敢行する。
そして、その俺の頭の横にアスカロンとデュランダルが突き刺さる。
「なんで言ったんだよ、ヒロイぃいいいい!!!」
「君は本当に持ち上げて落とすな、ヒロイ」
いやぁああああ!!! ディオドラに対する殺意が全部こっち向いたぁあああああ!!!
なんで俺は上げて落とす! そんな英雄スキルはかけらも必要としてねえのに!!
助けに入って心照らした後じゃん! ある意味ドンピシャのタイミングで最悪の情報をアーシアに漏らしてるじゃん!!
「……ヒロイさん、英雄に向いてないんじゃ?」
シシーリア! 酷い!! この場で一番酷い!!
くそ、何が一番酷いって反論できねえことだ。
なんか、自分でも心底納得しちまった。こういうところが俺の要修行ポイントなんだよ。クソッタレがぁああああ!!!
見ろ! ディオドラですら呆気に取られて口をぽかんと開けている。まさかこのタイミングでと顔に書いてあるのが馬鹿な俺ですらわかるよ此畜生。
「と、とりあえず元凶ぶちのめす!! 謝罪はそっからだ!」
「後でホントに謝れよな!」
「まったくだ」
ゴメンイッセー、ゼノヴィア!!
「シシーリアさんだっけ? アーシアを安全な場所まで送ってくれ」
イッセーがシシーリアに振り返って、声を張り上げる。
確かに、これ以上アーシアをここに置いておくのは逆に危険性がでかいな。
だけど、シシーリアは涙をにじませながら首を振った。
「無理です! 私の力じゃこの拘束具を壊せないんです!!」
そんなに頑丈な拘束具なのか? アーシアの身体能力で、そこまで頑丈な拘束具を用意する必要なんてないはずだ。
いや、そもそも拘束具にしてはなんかでかくないか? 明らかに必要以上の造形をしてっぞ。
くそ! まさか拘束具自体が変な能力持ってるんじゃないだろうな!!
「イッセー、ゼノヴィア! ディオドラをぶちのめして情報を吐かせるぞ!! 増援が来るまでにケリをつける!!」
「おう!」
「無論だ!!」
俺たちは同時に飛び出すと、三方向から攻撃を叩き込む。
なんでぴんぴんしてるのかは知らねえが、同時に聖なる武器三つはきついだろう!!
「ふふふ。君たちも強くなったんだろうけどねー」
左右から迫る俺とゼノヴィアの攻撃を、ディオドラは腕を構えて防ぐ。
気づけば、その腕には鎧が展開されていた。しかも、かなりのオーラが込められている。
そして真正面から迫るイッセーには―
「―僕も強化させてもらったんだよ?」
背中から生えた龍が、砲撃を叩き込む!
イッセーはそれを両手を交差させて防ぐが、しかし防ぎきれず十メートル以上吹っ飛んだ。
なんツー火力だ! SSランクはぐれ悪魔の黒歌でもびくともしなかったんだぞ!?
『……ほぅ。そう言うことか。こりゃまいったな』
ドライグが、感心したのかあきれたのかよくわからない口調でそうつぶやいた。
なんなんだドライグ。アイツの手品の種がわかったのか!?
「痛たた……。ドライグ、何か分かったんなら教えてくれ!!」
イッセーの言う通りだ。
俺たちはこれからこの馬鹿をとっちめなきゃならねえんだ。すぐにでも教えてくれないと困るぜ?
つっても、ドライグも隠すつもりはないのかすぐに教えてくれた。
『あのディオドラとかいう悪魔。高位の龍の神器を二つも持っているぞ』
………はいぃ?
思わず、俺たちは一瞬ぽかんとなった。
その瞬間、大量の魔力弾がばらまかれて俺たちに迫る。
少なく見積もっても一発一発が上級悪魔クラス。直撃すればリアスのお嬢ですら、ただでは済まない攻撃が十発以上。
普通なら、恐怖で絶望してもおかしくねえ。
だが、俺たちを舐めるよ!!
「吹きとばせ、デュランダル!!」
豪快にゼノヴィアがデュランダルを振るい、大半を薙ぎ払う。これで半分以上が吹き飛んだ。
さらに、俺も聖槍で打ち漏らしを迎撃。これで九割ぐらいが消滅した。
そして、残りの魔力弾をもろに受け止めながら、イッセーが突撃を敢行する。
そしてその後ろから俺とゼノヴィアが追撃のために走り出した。
くらえ、ジェットスト〇ームアタック!!
「なるほど。蛇で強化された僕の魔力も簡単に防ぐんだね。だけど……」
ディオドラは、まず蹴りでイッセーの拳をはじき、追撃の俺の聖槍をさらに蹴り飛ばす。
この時、ディオドラの両足にさらに鎧が形成される。
そして、ゼノヴィアのデュランダルを紙一重で避けた。
さらに、胸部に鎧が生まれる。
そして同時に三方向から仕掛けた俺たちに、カウンターで魔力を放って回避させる。
直後、ディオドラの全身に鎧が形成された。
んの野郎、すでに禁手にまで至ってんのか!!
『これは警戒した方がいいぞ、相棒』
「んだよドライグ! あれを知ってるなら早く教えてくれ!!」
イッセーが、すぐに立ち上がりながらドライグに説明を促す。
まったくだぜ。はよ能力を教えてくれ。
『奴は今、二つの高位のドラゴンを保有している。日本の八面王と、西洋のリントドレイク。……どちらも、龍王程じゃあないが、並の上級悪魔なら眷属ごとぶちのめせる化け物だ』
にゃ、にゃんだとぅ!?
八面王ってのは知らねえが、リントドレイク!?
結構有名なすっげえドラゴンじゃねえか!
そんなものを神器に封印した主もすげえが、なんでそんなもんをディオドラが二つも持ってるんだよ!!
「驚いただろう? これが
そう自慢げに答えて、さらにディオドラは指を慣らす。
その音とともに壁が崩れて、大量のケルベロスが姿を現す。
お、おいおい。なんだこのケルベロスの数は!!
「そして、知性の少ない獣を使役する
そう、ディオドラが得意げな表情を浮かべたのが、鎧越しでも嫌って程わかる。
こ、この野郎……!
「……ごめんなさい。ごめんなさいっ!」
いらだつ俺の耳に、声が届いた。
シシーリアが泣いていた。
「私が利用されなければ、歯向かう気概もない屑のままだったら!」
床にいくつもの涙の跡を作りながら、シシーリアは後悔している。
なるほど。ディオドラの奴、俺たちをおびき寄せるために、わざとシシーリアを泳がせやがったな?
シシーリアは、そのまま地面に崩れ落ち、ハルバードを取り落とす。
「……私は本当に、愚図で、ゴミで、役立たずで―」
「そいつは違うぜ、シシーリア!!」
これ以上、そんなことは言わせねえ。
俺は震脚を叩き込むと、その空気を一蹴する。
全員の視線が集まる中、俺は聖槍を掲げて断言する。
「お前は! 何人もの人の病を癒してきた!! 聖女シシーリア・ディアラクは! 荷が重いとわかっていても、聖女であろうと努力してきた!!」
俺は、それをすごいと心から思う。
そりゃぁ、そこをつつかれてディオドラに転がったのは痛いところだけどよ、お前が救ったやつらがいたことだけは否定しようのねえ事実だろうが。
だから、これだけは言わせねえ。
「お前は、屑でもゴミでもカスでも塵でも駄馬でもない!! 何より……」
俺は、攻撃が来る可能性があるけど構わず、シシーリアと視線を合わせる。
「俺が照らすと最初に約束した、女の子だ」
「……あ」
その言葉に、シシーリアは目を見開いてくれた。
ああ、そうだろう。シシーリア。
「英雄が初めてその役目を果たすといった女の子。つまり俺の初めてさ。姐さんに次ぐすっげえ奴なんだぜ、お前は」
ああ、だから泣くなシシーリア。
いろいろ道を踏み外したお前だが、しかしお前は間違ってない。
だから、必ず照らして見せる。
「……覚悟決めるぞイッセー、ゼノヴィア!! ここで、俺達が、ディオドラを、倒すんだよ!!」
負けられねえ理由が、増えちまったなオイ!!
「ふっ。確かにその通りだね」
一瞬気圧されていたゼノヴィアだが、すぐにデュランダルを構えて立ち上がる。
その目に、躊躇は欠片もない。
「悪魔でありながら信徒であることを許された身として、彼女も救わないとな」
ああ、そうだろうゼノヴィア。
お前は特にそうだ。やけになって悪魔になっても、結局信仰を捨て切れなかった。
ある意味生粋の信徒なんだ。だったら自分の所為じゃない罪すら悔いているこの子を助けなきゃダメだろ!!
「ああ、まったくだな、オイ」
イッセーもまた、鎧からオーラを全力で出して気合を入れる。
その目はやる気と怒りと、何より闘志に満ち溢れていた。
「アーシアを苦しめただけでも許せねえってのに、こんな可愛い子泣かせてんだ。ここで立たなきゃ男じゃねえ」
そうだな。お前はハーレム王になるんだもんな。
ハーレム作る男が、女の子に優しく出来なきゃ駄目だろうよ。それも、自分の女ならなおさらってやつだ。
気合を入れろイッセー。ここで決めなきゃハーレム王の名が廃るぜ!
「いいねぇ。それ位噛み付く気概がなければ、叩き潰し甲斐がないよ」
そうほざきながら、ディオドラは片手を上げる。
そして、同時にケルベロスたちが飛び掛かる体勢に入った。
さて、ここからどうやって凌ぐか……。
「イッセー! アスカロンを貸せ!!」
ゼノヴィアが、声を張り上げた。
アスカロンを? 確かにあれは中々強力な武器だし、イッセーの場合は剣術の心得がないから使いこなせてるたぁいいがたいが。
いったい何に使う気だ?
「よ、よくわからないけどわかった!!」
イッセーは籠手からアスカロンを外すと、ゼノヴィアに投げて渡す。
それを見ずに受け取り、ゼノヴィアは両手に聖剣を構えた。
「……アーシアは私の友達だ。それも、イッセーと同じぐらい大事な存在だ」
静かに、ゼノヴィアはオーラを高めていく。
そして、それに応えるかのようにアスカロンとデュランダルは共鳴する。
もとから、ゼノヴィアはアスカロンを運用する時にはデュランダルのオーラを併用していた。
だからだろう。二つの聖剣の親和性は、マジで究極の二文字をつけるぐらい上昇している。
「そして、シシーリアは踊らされていたとはいえ、そんなアーシアを助けてくれた恩人だ」
ゼノヴィア。シシーリアのことまでそんな風に思ってくれてるのか。
俺はちょっと目頭が熱くなった。よかったな、シシーリア。
そう、だからゼノヴィア。
シシーリアとアーシアを助けてくれや。
「だから助ける! だから救い出す!! 誰が相手だろうとそれだけは諦めるものか!!」
その思いに応えるかのように、さらにデュランダルとアスカロンは輝いた。
「な、なんだその出力は! あ、あり得ない! 下級悪魔ごときが……!」
流石にディオドラもビビリが入りやがった。
ま、当然だろう。
人間の俺ですらピリピリしてる出力だ。悪魔のアイツからしてみりゃぁ恐怖を感じたっておかしくねえだろうしな。
「デュランダル、アスカロン! 私の想いに、答えてくれぇええええええ!!!」
その思いとともに、ゼノヴィアはそのオーラの剣を真横に勢いよく振り払った!!
その瞬間、城が勢いよく吹っ飛んだ!!
すいませぇえええええん!! 流石に、非戦闘員まで巻き込むのは心苦しぃんだけどぉおおおお!?
俺の心のツッコミとともに、ケルベロスが勢いよく吹っ飛んだ。
さらに、アスカロンの龍殺しのオーラをもろに受けて、ディオドラも吹っ飛んだ。
ああ、あいつ高位の龍を封印した神器を二つも装備してたからな。しかも悪魔だから龍殺しの聖剣のオーラとか天敵だろ。ついてない奴。
「このぉ……薄汚い下級転生悪魔風情がぁあああああ!!!」
吠えるディオドラは、背中の龍から大規模な砲撃を放ち、さらに自分も魔力の槍を放つ。
そして、それに立ち向かうのはイッセーだ。
「全力全開、ドラゴンショットぉおおおお!!!」
大火力の砲撃と砲撃がぶつかり合い、せめぎ合う。
しかし、その合間を縫って魔力弾がイッセーの全身に叩き付けられた。
その大半は鎧でたやすくはじかれるが、一部の攻撃はピンポイントに鎧の隙間や装甲の薄いところに突き刺さる。
「ぐぁ!?」
その激痛で威力が落ち、砲撃のせめぎ合いはディオドラが押し始めた。
「あはははは!!! いくら二天龍を宿していようと、しょせん君は屑なんだよ! 魔力の扱いで僕に勝てるものか!!」
ディオドラが勝ちを確信して吠えた。
確かに、ゼノヴィアもまた負担が大きかったのかへばっていて、イッセーはこのままなら押し切れるだろう。
……うん、バカだ。
「屑はお前だ、ディオドラぁあああああ!!!」
俺を忘れてんじゃねえ!!
全速力で、俺はディオドラに突進する。
今奴はイッセーとの撃ち合いで動けない。下手に動けばドラゴンショットが直撃するってわかってるからだ。
すなわち、攻撃し放題!!
ここで一気にケリをつけて―
「……バカは君だよ」
その瞬間、俺の周囲を魔力の杭が包囲する。
なるほどなぁ。まだ余力を残してるってわけか。
流石はドーピングだよりとは言え、魔王を輩出した72柱の次期当主だ。やるじゃねえか。
「この数を全部捌くことはできないだろう? 君の動きは見切ってるんだよ!!」
その言葉とともに、一斉に杭が襲い掛かる。
ああ、流石にこれは躱しきれないし捌ききれないな。
「「ヒロイさん!!」」
シシーリアとアーシアの悲鳴が重なる。
ああ、確かに絶体絶命。悲鳴も上げる。
状況は確かに大きく不利だ。
そう、奴の現段階での出力は俺よりでかい。
死闘を繰り広げた。
致命の攻撃を叩き込んだ。
そして、勝利を確信した。
「だから断言しよう。……いいや、まだだ。勝つのは俺だ」
英雄譚のお約束をありがとうよ!!
これで、俺の逆転フラグは積み立った!!
放たれる魔力の杭がピンポイントで俺の急所に当たる直前に―
「
俺は、その急所をピンポイントでカバーするところに魔剣を生み出す。
直撃する魔剣と魔力。
だがしかし、是は木場との協力で確保した魔力吸収用の魔剣。そう簡単には壊れない。
そして、その瞬間俺は限界を超える。
呼吸を整え、全身を脱力させ、そして一気に力を込め直す。
放たれた魔力の杭の一部を、逸らしてあえて受けることで、推進力へと変換。
割とダメージはでかいが、意地で無視。そのまま全速力で突っ走る。
一気に、距離を詰めた。
「舐めるな!!」
しかしディオドラは攻撃をやめない。
槍に狙いを定めて魔力砲撃を発射。それで俺を止める算段だろう。
だから、俺は槍を手放した。
「なぁっ!?」
想定外の行動に狼狽するディオドラは隙だらけだ。
そしてそのまま、俺は右腕に爪のように魔剣を伸ばして―
「シシーリアを包む小汚い闇風情が―」
懐に飛び込み―
「―てめえはもう、黙ってろ!!」
渾身の力を込めて、魔剣の拳で殴り飛ばした!!
ディオドラ、超強化。
因みに龍の外装は文字通り龍の鎧を展開する神器なので、まだディオドラは禁手に至っていません。
龍の咆哮もハイスクール・ストラトスとは形状が違いますが、ただの亜種です。こちらも禁手にはなってません。
野獣の指導者も、今回しか出てこないんで、禁手もだすつもりです。
ディオドラは、まだ奥の手をいくつも隠し持っているといっておきましょう。ここで倒せなかったのは痛いです。