ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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それでは皆さん。








処刑用BGM、スタート!!


第二章 31 紫に輝く双腕の電磁王

 Other Side

 

 その瞬間、ディオドラは恐怖を感じて振り向いた。

 

 時間は掛かるが確実に叩きのめせると判断したヒロイは置いておいて、先ずは利用できたとは言え裏切り者のシシーリアを殺そうとしていた時だ。

 

 なにせ、この感覚は自分が至った時と同じだ。

 

 すなわち、神器の究極段階。禁手(バランス・ブレイカー)

 

 ディオドラは、これでも一応ヒロイのことを警戒しているのだ。

 

 自分と同じく三つの神器を保有している、神器多重保有者。それも、最強の神滅具たる黄昏の聖槍(トゥルーロンギヌス)の持ち主だ。

 

 悪魔にとっての天敵の一つにして最高峰たる聖槍。それが禁手に至れば、自分にとっても脅威となる。

 

 特に、聖槍の亜種禁手の中には対龍種に特化した黄昏の光にて眠れ蛇よ(トゥルー・ロンギヌス・サマエル)があるという情報を掴んでいる。

 

 もしそんなものに覚醒されれば最悪だ。自分は高位の龍を封印した神器を、二つも保有している。カモである。

 

 ゆえに、シシーリアを後回しにて振り返り―

 

 その視界に、八つ首の雷の龍を見た。

 

「なっ!?」

 

 否、それは目の錯覚である。龍ではない。

 

 だが、八つに分裂した雷が、一気にディオドラに襲い掛かる。

 

 それを同じく八つ首の龍で迎撃しながら、ディオドラはさらに攻撃を叩き込もうとメインの頭部からブレスを放とうとする。

 

 ……その瞬間、ディオドラの左右を巨大な魔剣が挟み撃ちにした。

 

 攻撃そのものは鎧で防げたので衝撃が通っただけだが、刃渡り数メートルのバスターソードが直撃した事で、割と効いた。

 

 そして、さらに聖槍だけが突進してきた。

 

「まさか、三つ全部至ったのか!?」

 

 とっさに飛び上がって回避するが、聖槍はまるで意志を持つかのようにディオドラを追撃する。

 

 雷撃を放出するだけの、紫電の双手(ライトニング・シェイク)。それが、雷撃を分裂させて曲射するという芸当を可能とする。

 

 魔剣を生成するだけの、魔剣創造(ソード・バース)。それが、魔剣そのものが独自に動いて攻撃を行う。

 

 聖遺物にして神殺しの槍であるだけの、黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)。それが、自分を追尾して攻撃してくる。

 

 恐ろしい事に、三つ全てが能力を拡張させていた。

 

 その想定外極まりない事態に、ディオドラはパニックに陥った。

 

 当然だ。神器全てを禁手に至らせているという最大の優位点が、これで一気に無効化された。

 

 種族の優位性や蛇という強化はあるが、しかしこれは明らかに異常なレベルの覚醒だ。明らかに脅威である。

 

 この時点で、ディオドラはヒロイのとっさに取った策にはまっていた。

 

 本来なら、ディオドラも高度な教育を受けた上級悪魔だ。当然この仕掛けと誤解に気付いたはずである。

 

 だが、決意と怒りに燃えながらも、しかしそのうえで思考を回転させたヒロイの策は成功した。

 

 そして、それに気付かないままディオドラはパニックを起こしながら、全方位から迫りくる大量の攻撃を回避し続ける。

 

 魔剣、雷撃、聖槍。それら全てが自由自在に空を舞いながら死角はおろか、あえて真正面から襲い来る。

 

 その三次元立体攻撃に、ディオドラは完全に翻弄されていた。

 

 これはディオドラの失策である。

 

 彼は、慣らし運転すらろくに行わずに複合禁手を使用していた。

 

 自分は現魔王の末裔である。自分はオーフィスの蛇で強化された。自分は複数の高位の神器を受け入れる事が出来て、更にそれを禁手に目覚めさせている。

 

 その傲慢が隙を生む。その油断が、弱点となる。

 

 巨大な体に慣れていない状態では、ディオドラは命懸けで聖槍だけを回避する事に精一杯だ。他の攻撃が次々と当たっていく。

 

 それらは全てかすり傷だが、しかし回避に専念しているにも関わらず、攻撃が当たっているという事実にパニックを起こしていた。

 

 重ね重ね言おう。ディオドラは高い素質を持つ存在だ。

 

 72柱直系の次期当主は伊達ではない。魔王の血族というのは、間違いなく素質の証拠だ。オーフィスの蛇の強化は凄まじい。神器を三つも移植できるなど、悪魔の身ではヴァーリが白龍皇を宿した事にも匹敵する奇跡だ。さらに全てが高位で、禁手に至っているなど冗談と言われた方がいい。

 

 だが、ディオドラはその全てを研鑽させなかった。

 

 ヒロイ・カッシウスは英雄を目指す者である。

 

 彼は、英雄というものが簡単に成れるものではない事を嫌という程理解している。

 

 だから、努力を怠らない。

 

 だから、勉強も真剣に受ける。

 

 それらが戦法を鍛え上げて戦術を組み立てる。それが彼の力となる。

 

 ヒロイ・カッシウスは、まず間違いなく馬鹿なところがあるが、同時に頭の回転は決して悪くないのである。

 

 その差が決定的な差となる。圧倒的な違いを生み出す。

 

 ゆえに、ディオドラは完璧に罠にはまった。

 

 攻撃をかわそうとして地面スレスレを移動したその瞬間、その罠が成立する。

 

 地面が隆起し、崩れた残骸から鉄製品がディオドラを拘束する枷となる。

 

「な、な、なんだぁああああ!?」

 

 ディオドラは暴れるが、然しその隙は致命的だ。

 

 魔剣がさらに圧し掛かり、さらに雷撃が消え失せたかと思えば、その馬力が大幅に上昇する。

 

 ディオドラは、完全に動きを封じられていた。

 

 そして、その隙を逃さず聖槍が突き刺さる。

 

「ぐぁああああああああ!? 痛い痛い痛いぃいいいいい!!!」

 

 聖なるオーラに体を焼かれ、ディオドラは絶叫を上げる。

 

 むしろ、この直撃を受けて致命傷になっていないという事実にこそ驚愕すべきだ。それこそ今のディオドラが、化け物と呼称されるべき領域である事の証明である。

 

 戦い方次第では、本当に魔王クラスともまともに渡り合えただろう。研鑽を積めば、勝つ事も不可能ではないはずだ。

 

 だが、その怠慢が全てを台無しにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 よし、何とかなったな。

 

 俺は、立ち上がってディオドラの体をよじ登る。

 

 くそ、でかいから上るの大変だな。結構ボロボロだから痛ぇしよ。

 

「お、お前ぇえええええ!!! なんで、なんで三つも禁手に目覚めてるんだよぉおおおお!!!」

 

 聖槍に体を焼かれながら、ディオドラは絶叫する。

 

 よっしゃ! どうやら俺の策は成功したみたいだな。

 

「あ、やっぱ驚くか? 驚くよなぁ。いきなりそんな連続覚醒、パニック起こして当然だよなぁ?」

 

 まさに想定通りの展開。

 

 土壇場での多段覚醒。そんなとんでも状態は意味不明だから、パニックを起こしてもおかしくない。

 

 三つの神器がそれぞれ拡張されてる風に見えんだから、そりゃそうとしか思えないわなぁ。

 

「ああ、まんまと引っ掛かってくれて助かったぜ」

 

「え?」

 

 ああ、そうだ。お前が狼狽するのは当然だ。

 

 禁手に目覚める事はそれだけでも奇跡と言ってもいい芸当。そんなのが三連続で起きるだなんて狼狽して当然。普通そんな事はあり得ない。

 

 そう、()()()()()。普通無理だ。

 

 だから、あえてそう見せかけた。

 

「……お前、いったい何の禁手に目覚めたんだ!?」

 

「冥途の土産に教えてやる。俺が至ったのは紫電の双手だけだよ」

 

 そう、それが俺の作戦だった。

 

 英雄とは、何も圧倒的な身体能力と武技だけで戦う生きもんじゃねえ。

 

 かの英雄シグルドは、ファーヴニルの通り道に穴を掘り、そこに隠れる事で最高の一撃を叩き込むことに成功した。

 

 かの大英雄ヘラクレスは、十二の難行を勇気と武技と、そして知恵をもってして乗り越えた。強敵を相手に待ち伏せで暗殺という手段を取った事もあるらしい。

 

 かの聖女ジャンヌ・ダルクは、奇襲や夜襲などを駆使する事で、オルレアンを奪還した。

 

 そして三国志の曹操など、指揮官としての側面を持つ英雄は数多い。

 

 英雄ってのは、なんだかんだで考える存在だ。圧倒的な存在や化物と戦う為に、脆い体を補う知恵を武器にしてきた。

 

 だから、俺も先人に倣った。

 

 どんな相手でも立ち向かう事ができる方法。それすなわち手数である。

 

 陽光でも星光でもなく閃光を求めた俺に応えたのは、雷光を司る紫電の双手だった。

 

 ゆえに、俺の禁手は出力だけなら大したことがない。単純に至った事によるグレードアップ分だ。

 

 だがしかし、その能力が規格外だった。

 

紫電の双手(ライトニング・シェイク)の亜種禁手(バランス・ブレイカー)紫に輝く双腕の電磁王(ライトニング・シェイク・マグニートー)。能力は電磁力の精密制御だ」

 

 そう、単純にいえば、電磁力を操る。

 

 だが、それは圧倒的な手数を生み出す事ができる手数特化型だ。

 

 雷撃そのものを操作する事により、多角的攻撃を可能とし、磁力を操作する事によって魔剣と聖槍を自在に操った。

 

 そして、ゆえにここでとどめを刺す事が出来る。

 

 俺は、遠慮なく聖槍を掴むと、そのまま全力を込める。

 

「これで終わりだ……ディオドラぁあああああ!!!」

 

「ふ……ざけるなぁああああああ!!!」

 

 増幅された聖なるオーラに焼かれながら、しかしディオドラは全力で抗う。

 

 この野郎! どんだけ頑丈なんだ!!

 

 いや、俺が性能を引き出せてねえだけか! くそ、マジでむかつく展開じゃねえか!!

 

 ここにきて未熟で敗北とか、マジで最悪じゃねえか!!

 

「魔力を持たないバアルを蹂躙する予定なんだ!  情愛なんかがあふれているグレモリーの尖兵なんかに負けてたまるか!! 僕は神器多重適合者のディオドラ・アスタロトなんだぞぉおおおおお!!!」

 

 激痛で動きがぎこちないながらも、しかし背中の龍の首を無理やり動かす。

 

 くそ、ここにきて最後の凌ぎあいってか―

 

「―いえ、ここで終わりです、ディオドラ・アスタロト」

 

 そんな聖槍を、シシーリアの手が包み込んだ。

 

 シシーリア、お前……。

 

「ヒロイさん。今なら、はっきり言えます」

 

 シシーリアは、俺の顔を真正面から見つめて、微笑んだ。

 

 ……ああ、これこそまさに聖母の微笑《トワイライト・ヒーリング》だ。ボロボロの体の痛みが全部吹っ飛んだぜ。

 

「私は、今、貴方に照らされてます」

 

「……そうか」

 

 ああ、なんていうか、俺―

 

「俺は、輝き(英雄)に成れたぞぉおおおおお!!」

 

「そ、そんなもののついで感覚で……ぎゃぁあああああ!!!?」

 

 あ、ゴメンディオドラ。

 

 最後のセリフを言うの忘れてた。

 

「……あばよ、腐れ外道」

 




紫に輝く双腕の電磁王は、書いた通り攻撃力はそこまで上がってません。

しかし、その汎用性においては他の追随を許さないレベル。おそらく禁手としての多様性の向上率では、霧の中の理想郷に匹敵するレベルで手数が向上します。

電磁力という様々な現象を司る能力なので、使用者の科学的知識次第で様々な応用が可能です。









こんな能力にしたのは、ひとえに今後のストーリーが長くなるため。

なにせまだ、原作6巻ですから。この時点で短編集の番外編含めれば20巻以上あります。

なんとか展開に合わせて成長できる禁手を一つは用意しないと、主人公であるヒロイに空きが来てしまいますから。









圧倒的強者を、知恵によって打倒する。是もまた、英雄譚にしるされし英雄たちの戦い方の一つ。それが兵法。

そういう意味では、ヒロイは英雄派と近い思考なわけです。
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