ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
北欧神話の大本、アースガルズ。
アース神族が一大勢力であるユグドラシルの神話体系。その長であるオーディンは、長いひげをなでながら、空を飛ぶ馬車で外を見ていた。
窓の向こう側には海が広がっている。その名は日本海。
ヨーロッパからユーラシア大陸を横断して、この馬車は日本へと向かっていた。
「それでロスヴァイセ。あと何時間ぐらいでつくかのぅ?」
「そうですね。この調子ならあと十分もかかりません」
お付きのロスヴァイセが、メモを確認しながら予定を告げる。
とはいえ、それを実行するのはだいぶ後になるだろう。
本来なら何日も後になってから向かう予定だ。それを、急遽早くして来日しようとしているのだ。
「オーディンさま。ロキさまは本当に動くのでしょうか?」
ロスヴァイセは不安げにそう告げる。
オーディンが急遽来日予定を早めたのは、ひとえにロキ神の暗躍が原因だ。
アースガルズと、そこのトップであるオーディンのとっている路線である和平路線。これに悪神であるロキが強硬に反発をしているのだ。
彼は勢力圏の人間の国家にアースガルズの神々をしらしめ、鎖国政策をとるべきだと強硬に主張。妥協案としても、近年増えてきている中立国との連携を取るべきと訴えている。更にはそれが無理ならせめてヴィクターの方と和議をするべきだと主張していた。
なんだかんだで神話のトリックスターゆえにフットワークの軽い彼に対抗するには、こちらもフットワークを軽くするほかなかった。
「動かないなら観光を楽しむまでじゃ。じゃが、奴のことだから何かしら行動を起こすじゃろうて」
「考えたくはありません。この世界の一大事に、仮にも神であるかたが自陣営の利益のみを追求するというのは……」
ロスヴァイセの意見は希望的観測ではあるが、しかし人々が神に持つイメージではあった。
だが、それは若さゆえの妄信というものだ。
オーディンはかつて自分がそうであったように、神というものを語る。
「神とは割と我儘で傲慢な物じゃよ。こと儂らアースガルズとゼウスたちオリュンポスは、我が強いからの」
神話を紐解けば、神の傲慢で悲劇が起きた例など数多い。こと北欧神話とギリシャ神話は有名な部類だ。
実際、自分たちは
その過程において、戦いの流れすら動かしたこともある。その過程においていくつもの悲劇が生まれた。
当時の北欧の文化において、戦死とは最高の名誉である。それを踏まえれば悪行ではないかもしれないが、その価値観すらも自分たちの考えが影響しているのだ。
その傲慢さをいまだ持っているのが、ロキという神だ。
間違いなく、あの男は和議阻止のために行動を起こすだろう。ゆえに必然的に早く動く必要があった。
「それに、日本の内閣も動いておるのじゃろう? 総理大臣とかいう日本のトップが会談場所を用意するとか言っておるが?」
「はい。日本の実質的代表である大尽統内閣総理大臣が、総理官邸を会談場所に指定してます。すでに根回しもすんでいるらしく、会談日時に変更はないとのことです」
その事実に、オーディンは考え込んだ。
この大混乱の情勢下で、こうも手際よく動く手腕。日本の政治家も侮れない。
しかし、今の混乱する情勢下でこうも手早く事を運べば、何かしらのトラブルが発生することを予想しているのだろうか?
人間の勢力が動くだけならまだいい。しかし、異形の勢力が動く可能性もきちんと考慮するべきだ。
人間の国家が保有する軍事勢力で、裏の戦力に対抗するのは困難だ。それは、世界各国の軍隊の大敗で証明されている。
しかも日本の軍隊は実戦経験をろくに保有していない。こういうのはどうしても実戦経験というものが大きく影響を受けるからだ。
加えて国民の多くが平和ボケを起こしているとも聞く。憲法そのもので戦争を外交手段にすることを禁じているからだが、それは諸外国がそれを使ってこないという妄信によって成り立っている安心といってもいい。
馬鹿というものは、相手が殴り掛かってこないのをいいことに一方的に殴りつけて悦に浸る類も多い。そしてそれは異形社会にも存在している。
そのあたりの理解が足りていないものが、政治家にもいるのは問題だ。
まさかと思うが、総理大臣ともあろうものがそのあたりの危険性も理解できていないのだろうか? 他人事だが少し心配になってくる。もっとも、その火種を持ち込むことになると確信している自分にいう権利はないのだろうが。
「まあよい。それで、そろそろ日本からの護衛と合流する頃合いかのぉ。確か、京都の方も協力者の人間を派遣するとうるさかったが」
「反発勢力に対する警戒でしたね。……ですけどコレ、本当に注文したんですか?」
ロスヴァイセは、メモを見ると半目になる。
具体的には、オーディンからの要望だった。
一つ、三大勢力の上級クラスとも渡り合えるレベルが戦闘能力の最低条件。一つ、できれば自分のおつきとは別ベクトルで美女。一つ、お忍びで観光もする気なので、祖父が秘書を連れて孫と遊びに来た感じに装えそうな外見年齢。
オーディン自身も思うが、ぶっちゃけこれ、難癖付けて護衛を断ろうとしている風にも思える。
京都が要望通りのものを用意して見せるといって見せたので、少し悪乗りしすぎた。さすがにこれは無理だとオーディンでも思う。なぜか京都は適任がいると断言したが。
「……ババアを術でごまかしてとか言う意趣返しをされるのは嫌じゃのぉ」
「それ位されても自業自得だと思いますが」
お付きに冷たい視線を向けられたが、さすがにその通りなので反対できない。
因みに、堕天使からも護衛が派遣される。
グリゴリ幹部の一人、バラキエル。純粋な堕天使の中では最強と称されるほどの実力者で、雷光の異名を持ち神クラスとも戦えるだろう。なんでも日本には割と長く住んでいて詳しいとか。
それなら観光も楽でいいと思いながら、オーディンは合流ポイントに視線を向ける。
……そこには、一人のガタイのいい男と、一人のかわいらしい少女がいた。
男性がバラキエルなのは間違いない。そして、少女の方も要望通りであることを考えると京都から派遣された護衛だろう。
そして馬車が降り立ち、オーディンたちは一度馬車から降りる。
「ほっほっほ。待たせたの。いや、待たせなさすぎた……のほうがいいかのぅ?」
「いえ、誤差の範囲内ですので、お気遣いなく」
外見通りの武骨な物言いで、バラキエルらしき人物は返答する。
しかし、時々視線を少女の方に向けると、少し困ったような顔をしていた。
それにつられて、オーディンは視線を少女に向ける。
それに気づいて、少女はオーディンの………髭に視線を向けた。
「あ! すっごいお鬚!! もしかしてお爺ちゃんがオーディン様?」
少ししたったらずな、無邪気な言い回しだった。
演技かと一瞬思ったが、しかしその必要性もない。それに完全に髭に熱視線が向いている。
「……あの、バラキエル様。彼女は?」
「京都からの伝言なのだが、「要求は全部クリアした。多少の問題は目をつむれ」……と」
丸聞こえだが、小さい声でロスヴァイセとバラキエルがぼそぼそと会話している。
どうやら、さすがに京都側も腹を立てているらしかった。ちょっとワルノリが過ぎたと反省する。
とはいえ、邪気の類は全く持って感じられない。天然で孫のようにふるまってくれそうだし、そういう意味では好都合だ。
……なにより、まず間違いなく実力者だ。
体の動きに隙がほぼ見えない。しかも、かなり天然の感性によるものだと見える。素質だけなら、アースガルズに仕える
意趣返しと要望の完全クリアを同時にかなえられる人材だということか。京都も個性的な人材がいるらしい。
「ほっほっほ。自慢の髭を褒めてくれてありがとうの。仕事中はお爺ちゃんといってくれてよいぞ」
「うん! よろしくね、お爺ちゃん!」
「ほっほっほっほ」
この国では、若い学生に「パパ」と呼ばれたがる中年男性が多いと聞くが、その気持ちがよくわかった。
これはいい。実にいい。スケベ根性的に素晴らしい。
オーディンはポケットから飴を取り出すと、少女に渡す。
「ほれ、ご褒美をやろう」
「やたっ! ありがとうお爺ちゃん!!」
和やかな雰囲気が生まれる。
あてられてロスヴァイセとバラキエルも緊張感が自然と和らぐ。これならほぼ家族連れと思われることだろう。
ここまで考えて送り込まれたのかもしれない。そうだとしたら、京都もなかなかやりてのようだ。
そこまで考えて、オーディンは大事なことを忘れていたことに気が付いた。
「そうじゃった。お嬢ちゃんの名前を聞いてなかったの」
孫と祖父に見せかけるのなら、名前ぐらいは知っておかないといけないだろう。孫をお嬢ちゃんなどと呼称する祖父は間違いなく珍しい。呼び捨てで呼ばなければ。
飴を舐めるのに夢中になっていた少女は、それに気が付いて慌てて一礼した。
「あ、お仕事忘れてた! ごめんね、お爺ちゃん」
そして、少女はにっこり微笑む。
「ボクは
で、そんなこんなで学生生活も満喫中だ。
なにせ秋となればイベントの宝庫。学業が基本の学生だが、こういうイベントも楽しまねえとな。
ちょっと前は体育祭。あと少しすると修学旅行。そしてそのあとは文化祭。マジで楽しいイベントが盛りだくさんだ。
ま、さすがにこれは余裕がありすぎるとは思うがな。それでも楽しめるなら楽しまねえと。
「ヒロイ! 修学旅行は京都だそうだな! 日本が代表する観光地らしいじゃないか!!」
すでにパンフレットをもってノリノリなゼノヴィアに俺はちょっと苦笑した。
おまえももうちょっと緊張感持とうぜ? 俺たち一応現役の戦闘要員だろ?
ま、ゼノヴィアは旅行なんてやったことねえから仕方がねえか。
任務で世界各国に行ったことはある。だが、ゼノヴィアは当時楽しむということをあまりしなかったからな。ついでに観光するとか言った感覚は、あまりねえんだろ。実際そんなことしてたら怒られるだろうから俺もしてねえし。
何ていうか、学生生活を俺よりも満喫してる気がする。悪魔になってから女の子っぽさが急上昇してるな。
こんな感じなら俺も即口説いてたね。今はイッセーに夢中なのがわかってるからやらねえけどよ。クソうらやましい。
「だが、修学旅行は俺たちでやることになったな」
「ああ、女子で俺たちと組んでくれるのは、お前らぐらいだもんな」
と、松田と元浜がすこし寂しげに納得していた。
「……男どもも一緒に行動してくれねえしさ」
イッセーも遠い目をした。
まあ、班と部屋割りが一緒になるんだからな。こうなるよな。
イッセー達、覗きの常習犯だから一緒になってくれる奴が少ねえもん。この辺は完璧に自業自得だがよ。
むしろ一緒の班になってやる俺に感謝しやがれってんだ。お前らのとばっちりで俺も女子人気低いんだぞ。もっとかわいい子とお近づきになりてぇのに!!
「そんな変態どもと一緒に組んでやる、自分たちに感謝するッスよ!」
と胸を張るのはペトだ。
まあそりゃそうだろ。こいつらの童貞食べたこいつなら、その辺のことは気にしねえだろうしな。
「この学園で自分がご相伴にあずかった男子たちからのお誘いは多かったんスよ。それを蹴って二人と組んでやることに感謝するッス!!」
「え? ペトってそんなに食べてるの、性的な意味で!?」
イッセーが驚愕するが俺も驚くぞ。
お前、なに食い散らかしてんの?
「そりゃもう、そこの一ノ瀬とかあっちの佐藤とかも食べたッス。でもこの二人に比べると豪快さというか野性味が足りなくて物足りなくって……」
「「わぁああああああ!?」」
ペトが何も気にせずとんでもないことを言って、一ノ瀬と佐藤が絶叫を上げた。
あ、あの反応だとマジで下の口で食べられたな。
男女問わず半目が浴びせられ、二人はこそこそと隠れ始める。
うん、ペトさんや。そう言うのはもっと小さい声で。
「因みに女子なら佐々木とか山田がおいしかったっス」
「「きゃぁああああああああ!?」」
「「「「女子も食べたんかい!!」」」」
女子も絶叫をぶちかまし、俺たち四人はそう突っ込みを入れた。
「え、レスィーヴさんって女子も行ける? あ、じゃぁ私も……」
「お、俺、遊びでいいからレスィーヴで童貞卒業したいかも……」
一部男女がすごいこと言ってきたな。
いや、声でかいぞ? 丸聞こえだぞ?
ちなみにレスィーヴってのはペトのファミリーネームだ。今までろくに出す機会がなかったので、ここで言ってみる。言いにくいけど覚えとけよ?
そして、一躍注目の的となったペトは、色っぽい目つきで誘うようにスカートをちらりとめくる。
「なんなら京都でしっぽり貪り合うっすか? 修学旅行ではめ外すとか、意外とよくある話っスよねぇ」
「「「「「「「……ごくり」」」」」」」
俺も含めて、その色っぽい誘いに結構な人数が生唾を飲み込む。
え、いいの? マジで?
しゅ、修学旅行でエロスとか、同人誌とかエロマンガじゃ定番だけど、マジでいいの?
まず間違いなく本気にするぞ!! 俺はできることならマジでそんな展開がしたくてたまらないのですが!!
「ちょ、ペトさんったらいやらしすぎよ!! 学生は学生らしくもっと清く健やかに!!」
「いや、私はイッセーとそういうことがしたいな。リアス部長もいないのだし、好都合だ」
イリナは顔を真っ赤にするし、ゼノヴィアはゼノヴィアで爆弾発言をぶちかましやがる。
すでにアーシアは赤くなりすぎて気絶しそうだ。想像したな、このむっつりシスター。
桐生すらうかつに介入できていない。この匠にエロ会話で介入すらさせないとは見事だ。さすがは経験者なだけあるな。
しっかし、このクラスだけでも相当数が餌食になってんな。松田と元浜だけじゃなかったのか。そもそもクラスメイトを食べるな、気まずくなるぞ。
この調子だと、この学園全体でいえばどんだけになるのか想像もつかねえ。相当数の童貞がペトに食われてんじゃねえか?
いや、そもそもペトは姐さんと一緒にヤリ部屋の常連やってたな。学園外でもかなりオイタしてそうだ。
先生方ー? ある意味イッセーよりペトの方が問題児ですよー? とんだビッチが潜んでますよー?
っていうか思い出したが、こいつ転校したての時にとんでもないことをぶちかましてたな。
『ペト・レスィーヴっす! エロいこと全般が大好きっすので、下半身が暴発寸前の野郎どもは、暴走するぐらいならペトに食べられるッス!!』
……速攻で職員室の世話になったよ。もう少し隠せと思ったね。
ちなみに、一気に松田と元浜が落ち着いてたんでだいたいそういうことだと納得した連中が相当いたらしい。
イッセーだけ落ち着いてないんで、つまりそういうことだとも納得されたらしい。男どもからすごい同情の視線が集まったとか。女子も覗きの体罰ではなく説教になっていた時期があるぐらい同情したとか。
そりゃ食べ放題だよ。食べに行けるよ。
よし、こうなりゃ俺も混ぜてもらえないか交渉を―
「こらこら、そこまで」
と、教室の窓を開けて、作業服姿の姐さんが苦笑した。
「あ、お姉さま!!」
「「リセスさん! ちーっす!!」」
「反応が遅れた!? 姐さんどうも!!」
速攻でペトと松田と元浜があいさつして、それに出遅れた俺もすぐに追随する。
用務員やっている姐さんも結構人気者だ。
なにせ美人だからな。そのくせエロいスタイルだし、そりゃ男子からの人気も集まる。
そのくせ仕事はきちんとこなすし、女子生徒からの受けもいい。
同時期に教師をやり始めたアザゼルと同様に、高い人気を誇っている。
「あまり羽目を外しすぎると、アザゼルもフォローできなくなるわよ? 私もつまみ食い程度で我慢してるんだから、少しは抑えなさい?」
「うぅ……。お姉さまがそう言うなら、京都の食べまくりツアーは我慢するッス」
「「「「「「「「「「そんな!?」」」」」」」」」」
姐さんの言葉にペトが素直に従って、一斉に絶叫がほとばしる。
俺は言ってねえのになんで増えてんだよ。どんだけ食べられたいんだこいつら。
「ま、まあ三人とも感謝しなさい。このクラスでの有数の美少女五人組と一緒に行動できるんだからね」
この空気の流れを見事につかみ、桐生が自慢げに胸を張る。
まあ、アーシアとゼノヴィアは間違いなくイッセーと行動を共にしたいんだし、そうなったら桐生とイリナもついてくるわな。ペトもそうなる可能性はでかいか。
「ああ、お前以外全員美少女な」
元浜がいらんことを言うので、俺はチョップを叩き込んだ。
「おい、桐生も性格はともかくものすごい美少女だろうが」
「どこに目をつけてるっすか。ぶっちゃけペトは食べたいっす」
「あら、私も食べたいわね。こういう子がかわいい反応を返してくれるし」
「はいぃ!?」
すさまじい連続コンボが俺から生まれてしまい、桐生が珍しく顔を赤くする。
あ、確かにこいつ耳年増っぽいし、シリアスにそういうことになったら意外とかわいいかもな。
「っていうか姐さん? そういうこと言うのも問題じゃねえの?」
「用務員何てそれ位の役得がないとやってられないわよ。じゃ、私はそろそろ仕事に戻るわ」
俺のツッコミをさらりと流し、姐さんは仕事に戻っていった。
まあ、そんなこんなでちょっと空気はピンク色になったが、修学旅行の準備も進んでるぜ。
さて、修学旅行は何事も起きないといいけどな。
まあ、その前に野暮用を片付けねえといけないんだがよ。
本章ゲストヒロイン、神代小犬嬢が登場です。年齢はイッセーと同年代です。
イメージとしてはケイオスワールドのナツミに近い精神年齢のキャラですね。その辺に関してはまあのちのち事情を説明します。