ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
Other Side
日本の山中で、十数人の者達が走っていた。
確実に三大勢力の勢力圏に入る為に、かなり大雑把に転移術式を組んだのがまずかった。
雑すぎたが為に隠匿も不可能で、即座に追手のドーインジャーが差し向けられた。
かろうじて今は死亡者はいないが、このままでは全滅の可能性も大きい。
だが、それでも自分達はヴィクター経済連合を抜けたかった。そこに後悔は全くない。
旧魔王派の暴走による激戦が終わってから、ヴィクター経済連合と現体制側との戦いは、ネガキャン合戦になったとも言える。
なにせ旧魔王派の会議内容が公開された事で、これまで正義の執行者と思われていたヴィクター経済連合が、実は問題を多く抱えている事が発覚したのだ。
悪魔以外を家畜と蔑む旧魔王派の実態。さらにヴィクター経済連合のスポンサー達による、ストリートチルドレンの洗脳教育。そして禍の団を構成する組織の数多くが、人体実験や凶悪犯罪、さらには人食いなどを行っているものまで参加しているという事実。
ヴィクター経済連合の負の側面の多さは、彼らに衝撃を与えるのには十分すぎた。
しかしヴィクター経済連合も負けてはいない。それ相応の報道合戦の準備はきちんとしていた。ただ単に、それが泥沼になると分かっていたから相手がするまでしたくなかっただけだ。
現政権側である三大勢力の数多くの不祥事を即座に公開。特に悪魔側の転生悪魔に対する非道な扱いに対して、批判を行う事でカウンターを叩き込む。
具体的に口喧嘩の形にすると、こんな感じだ。
現政権「お前さんの有力組織、人間の味方する気欠片もなさそうなんだけど? ほれ、証拠の会話ー」
ヴィクター「あいつらが勝手に暴走しただけだし! 処罰したし!! っていうかそっちの悪魔もゴロゴロ同意してんじゃねえか!!」
現政権「既に和平成立と同時に引き締め行ってるわ!! 第一、そんな連中の大半がそっちに亡命しようとしてましたけどー!!」
ヴィクター「馬鹿が暴走しただけだしー? 既に馬鹿は処罰したっていったしー? そもそも、肝心の教会側も外道行為してんじゃねえか!! 堕天使側も問題行動してるしよぉ!!」
現政権「当然処罰や追放や解散させ始めてるわい!! つか、堕天使側の連中はそもそも禍の団の前身だろうが!!」
ヴィクター「主流派も神器保有者始末とかしてんだろうが!! 現政権側の方針だって知ってんだぞ、あぁ!?」
現政権「似たようなことは何処の国もやっとるわい!! それに技術交流による発展でどんどんしなくても良くなってるしぃ!? ストリートチルドレンを洗脳してるお前らに言われたくないわい!!」
ヴィクター「そっちが和平結んでる連中はどうなんですかー? アースガルズとかオリュンポスとか、割と外道行為ぽんぽんしてますけど? 正義謳ってるならむしろ滅ぼさんといかんのとちゃうんかい!!」
現政権「だからそういうことさせない為の和平だっつってんだろ!! つか、お前らの構成組織、半分ぐらい犯罪組織や外道行為やってる連中じゃねえか、あぁん!?」
……泥沼の罵倒合戦である。
実際に、これによって「どちらにもつきたくない」という者達もどんどん生まれており、そちらに亡命する両陣営も数多い。
人間の国家だけでも、現政権・ヴィクター・中立を分けて大勢力と化している。
を分けて大勢力と化している。
単純な数だけなら、4・5対3・5対2といったところか。割と伯仲していると言ってもいい。
当面の間は、各神話も含めてそう言った浮動票を獲得する方向でいくだろう。この調子で戦争を行っても、現政権もヴィクターも共倒れする可能性が大きい。
その為、どこの勢力もどこかの誰かが亡命して、それを追いかけて戦闘をするという形が大きくなっている。
こと三大勢力関係においては、教会の人員が大きく動いている。
亡命の為の準備を前から行っていたヴィクターは、いまだに教会に対してのロビー活動や勧誘を行っている。
なにせ前提条件である主が死んでおり、さらに天界は悪魔と和平を行っている。そしてその悪魔や堕天使には問題行動も数多い。教会内部にすら存在した。それらの公表で新たに愛想が尽きた者も多いのだ。
反面、ヴィクター側に付いた者達が改めて現政権に亡命する事も多い。
聖書の神は死んだが、彼の遺したシステムは確かに奇跡を起こしている。それを思い出した者達には、短慮を起こして後悔した者も多いのだ。さらに少し前の激戦で、悪魔側がその後悔を受け止めて投降を了承した事も大きい。
その亡命合戦の一つとして注目されているのが、日本である。
なにせ、日本の駒王町は和平会談の場所だ。どちらの勢力にとっても、その精神的価値は大きい。
加えて、あそこはかなりの戦力が集まっている。悪魔側は大活躍した魔王の妹が二人。堕天使側は総督自ら。天界側も、セラフのトップが直属の部下を送り込んでいる。
さらにその悪魔側は、我に返った信徒がやけを起こして強襲を仕掛けてきたのにも関わらず、受け入れてくれた懐の広さを持つリアス・グレモリーが代表だ。さらに眷属の赤龍帝は、女性限定で強力な読心能力を持っている。
ここに女性を連れて亡命すれば、そこに嘘はないことを確実に理解してとりなしてくれる。
その希望が、日本の関東地帯を裏で激戦区にしている要因だ。
ヴィクター側の教会関係者が絡まった亡命は、その五割が駒王町周辺に収束している。それゆえに文字通りの激戦区なのだ。
「あとちょっとだ! もう少し踏ん張れ!!」
「駒王町の結界まであと3kmだ!! 走れ!!」
悪魔祓いの女性を庇いながら、亡命者達は全力で走る。
ドーインジャーだけでなく、英雄派からの神器使いも突撃してくるが、しかし後ちょっとだ。この調子なら逃げ切れる。
なにせ森が多いので、狙撃の危険は少ない。これなら何とか結界の範囲内に逃げ込める。
ゆえに後少し。
そして、その油断を遠慮なく敵はついてくる。
爆発が、亡命者達を襲ったのはまさにそれだった。
「「「ぐぁああああ!!!」」」
連続で起きたその爆発に、多くの者達が重傷を負う。
「なんでだ!! 狙撃できるような環境じゃないはずだぞ!?」
「い、一体どこから……!」
慌てて周りを見渡しても、敵を視界に捉える事は出来ない。
そう思った次の瞬間、とっさにメンバーの一人が結界を張る。それも、上方にだ。
何をしているのかと思った次の瞬間、結界に何かがぶつかって爆発が起きた。
しかし、上空にも敵はいない。だから攻撃が来るはずもない。
疑問に思う亡命者達に、軍隊上がりのその男は声を張り上げる。
「曲射だ!! あいつ等、砲弾みたいな軌道を描く装備で、間接照準射撃を行ってやがる!!」
人間の世界での砲撃は、基本的に重力の影響を受ける。
つまり、弾道は下に曲がっていくのが基本だ。
ゆえに長距離射撃を行う時はその分だけ計算が必要で、最初から曲がることを利用して、遮蔽物越しに砲撃をあてる装備も数多い。そちらの方が射程距離が長いのが基本とも言える。
そして、其れを利用したドーインジャーは既に開発されていた。
ドーインジャーは、魔獣創造を利用した兵器である。
そして、兵器にはバリエーションというものが存在する場合もある。
ドーインジャーはまさにそれを前提とした兵器だ。素体を用意したうえで、それを最大限に利用してバリエーションを作る事で戦術や戦略の幅を広げる。
陸戦や対空迎撃を前提とし、腕を一対増やしているA型。これが一番生産性が高い。
制空権確保や飛行可能な存在との戦闘を想定し、背中に飛行ユニットをはやしているB型。こちらも生産性が高い。
そして、遠距離からの火力支援や砲撃戦を考慮し、背中にキャノンアームを装備したC型。これが今の砲撃の正体である。
これによる狙撃ではなく砲撃が、亡命者達を足止めする。
そして、追撃に部隊が襲い掛かる。
A型B型のドーインジャーが、それぞれ百を超える数投入された。
さらに、英雄派から神器保有者が追撃を仕掛ける。
「くそ! このままだと!」
数が圧倒的すぎる。このまま追いつかれれば確実に終わる。
その事実に恐怖に震える者達まで出る中、負傷した亡命者達が一歩前に出た。
「俺達が足止めする。お前達は先に行け」
「馬鹿言うな!! ここまで来たんだ、見捨てられるか!!」
何とか抱え上げようとする者達もいるが、しかし負傷者が声を荒げる。
「俺達はもう走れない!! このまま共倒れする気か!!」
「気にすんな。教会を裏切った罰だ!!」
一度は離反した悪魔祓いからの亡命者である彼らは、命を捨てる覚悟も決めた。
もとより、一度は離反した身だ。そもそも今更戻るというのが虫の良すぎる話でもある。
失敗しても当然の自業自得。そう言う気持ちで行った事だ。
だが、後少しで逃げられるところまで来ている。そして、同じ亡命者達の中にはヴィクターに参加した国家の兵士もいる。
彼らはどうしようもない状況下だったのだ。だから、自分達とは違い許されるべきである。
「ふ、亡き主が天罰を下したのだと思えば、これで地獄ではなく煉獄に行けるという事だろう」
「むしろ安心出来るってもんだな」
ゆえに、だから気にせず走れと言い出そうとして―
「……いいえ! 主ならその覚悟にお慈悲を与えよとおっしゃってくれるはずよぉおおおおお!!!」
場の雰囲気にそぐわぬ、ハイテンションな声が響き渡り、追撃してくるドーインジャーB型が数体両断された。
Side Out
よし、間に合った!!
俺も魔剣を磁力操作でサーフボードの様に操り、空から亡命者達を支援する。
禁手の出力ゆえに、手数特化型といえどかなりの磁力が運用できる。それゆえにサーフボード型魔剣によって空を飛ぶ事ができるのだ。それも複数名を輸送しながらな。
そして俺に輸送されたアーシアちゃんが下りて、回復オーラを広範囲に展開する。
一瞬で亡命者達の傷が治り、捨て駒になろうとした悪魔祓い達も走れるようになった。
「さあ、ここから先は私達に任せなさい!!」
そして、お嬢ことリアス・グレモリーが一気に数十体のドーインジャーを消滅させた。
相も変わらず大火力だな、オイ。一人でドーインジャーを全滅させれるんじゃねえか?
「早く逃げなさい!! ソーナ・シトリーとその眷属が、あなた方を保護する準備を整えているわ!!」
その言葉に、亡命者達の目に希望の光が灯る。
なにせソーナ会長達は、あの白龍皇を伸した猛者チームだからな。
さらに、赤龍帝を擁するリアス・グレモリー眷属。そして黄昏の聖槍と煌天雷獄という名の二つの上位神滅具。
この救出部隊を前に、希望を感じない方がおかしいってもんだ。
「はい、怪我を治しました。これで走れるはずです」
「おお、まるで聖女だ!」
「ありがとうございます! アーメン!!」
アーシアに癒された者達が、礼を次々に言いながら後方へと走っていく。
さて、それじゃあ俺達も戦闘を開始しますか!!
『こちらリセス。砲撃部隊を確認したわ。護衛はいないから、数十体まとめて屠ってあげる』
「頼んましたリセスさん!! 俺と木場は、神器使いをぶちのめします!!」
別行動していた姐さんが、砲撃を行っている部隊を発見。広域殲滅に優れた煌天雷獄ならすぐに終わるな。
そしてイッセー達は、英雄派の神器使いと戦闘開始。こっちも何とかなるだろう。
なにせ、イッセーの禁手は覇龍の影響で大幅に性能が向上した。
二分も掛かったチャージ時間は三十秒に減少。持続時間も大幅に向上。さらに、使用後のインターバルも、持続時間が残っているのならほぼないに等しい。
シャルバのクソ野郎にはむかついたが、結果的にイッセーの大幅パワーアップをしてくれた事には感謝しねえとな。おかげでイッセーの欠点がむちゃくちゃカバーされたぜ。
生き残ったみたいだし、もし再会したらお辞儀してお礼しよう。きっと憤死するぐらいぶちぎれてくれるだろうしな。
「アーシアの護衛は私に任せろ!!」
「あらあら。ゼノヴィアちゃんだけには任せませんわよ?」
と、回復の要であるアーシアの護衛はゼノヴィアと朱乃さんが受け持ってくれている。
「ヒロイ先輩! 神器使いが迂回して亡命者を追いかけてます!! ドーインジャーは停止しましたけど、他には抜けられました。カバーお願いします!!」
と、蝙蝠状態で広域監視をしていたギャスパーが俺に要請。
見れば、木場と小猫ちゃんは敵の神器使いの相手で忙しそうだ。
ギャスパーも、イッセーの血を飲んで神器を制御しているのだが、どうやら対策を敵もとっていたらしい。
見れば敵の神器使いには光力の使い手もいる。其れなりに考えてるってわけか。
性能差を作戦で補う。是もまた人間の力で、英雄の多くもそれによって強者を屠ってきた。俺も参考にしないとな。
と、言うわけで俺は一気に追撃開始。
『こちらペト! 足止めしてるから今のうちに追いついてくださいッス!!』
と、ペトからのナイスサポート!
この森の中で狙撃なんて高難易度だろうに、相変わらず狙撃に関しちゃ神業だな、ペトの奴。
そういうわけで、俺も即座に追跡完了!!
敵の神器使いは二名。
その多くは、ヴィクター経済連合が集めて洗脳教育を施したストリートチルドレンだとか。
俺も近い来歴だから、できれば殺すのは忍びねえ。雷撃をスタンガン代わりにして抑え込むか。
そう思った瞬間、一瞬で魔剣が磁力制御を失って墜落する。
あれ? まだ禁手の持続時間は無くなってねえぞ?
疑問に思ったが、そもそも紫電の双手そのものが使えなくなっている事に気が付いた。
「我が
「おうよ!! 目覚めろ、
チッ! 敵の神器は能力封印系か!!
しかも攻撃担当も光力使い。どうやらイッセーの赤龍帝の鎧対策らしい。
だが、相手を間違えたな!!
「吠えろ、
俺は遠慮なく聖槍と魔剣を展開すると、敵の光力使いを一蹴する。
洗脳されてる連中かもしれないから、殺しはしてねえ。即死しなければアーシアが治してくれるしな。
「て、てめえ!! まさか頭の痛くなる奇跡、ヒロイ・カッシウスか!!」
「せめて教会の秘密兵器といいやがれ!!」
なんでそっちの異名を知ってんだ! 身内の恥一歩手前だから、上の一部しか使ってねえ記号だぞ!!
そう思いながらも、俺は敵の封印能力者に回し蹴りを叩き込む。
どうやら所有者の負担が大きいタイプの神器みたいだ。ろくに動けなかったな。
さて、それじゃあ拘束して―
「……負けてたまる……かぁ!!」
おお、意外とガッツあるな。
骨をへし折るつもりで蹴ったんだがな。魔剣も切れ味はろくにないが、頑丈差なら伝説級に次ぐ割断しようだ。間違いなく重傷のはず。
だが、そいつはふらつきながらも血を吐きながらも、戦意を消さずに立ち上がった。
「てめえには……負けねえ。我は……てめえには……負けられねえ!!」
ん? 俺、なんか恨みでも買ったか?
特に見たことねえし、人間と敵対したことはそんなにないはずなんだがな。
だが、その男はかなり本気モードだった。強い意志をもって俺と戦う決意を持っていた。
そして、神器は想いを力に変える能力。
それは、当たり前っちゃ当たり前だった。
「うぅ……ぉおおおおおっ!!!」
その男が、強大なオーラを発動させながら光り輝く。
なんだ、何が起きた!?
俺はバックステップで警戒しながら、戦闘態勢を取り直す。
だが、俺が戦う事はなかった。
気づけば奴の足元に魔方陣が展開される。
悪魔式じゃない。堕天使式でもない。って事は、魔法使いのどっかか?
結構な数の魔法使い組織が、禍の団に参加しているとは聞いている。そいつらの何割かが、一部の魔法を人間の軍隊に指導しているということも聞いている。
チッ! 既に実戦投入できるレベルにまで、鍛えられたって事か?
俺は警戒したが、だけどそれは戦闘用じゃなかった。
一瞬でその男に光が纏わり付くと、そのまま男は姿を消した。
……ん? 逃げた? かなりやる気だったみたいだけどよ?
俺はなんか拍子抜けするが、その耳にお嬢の通信が届く。
『ヒロイ? そっちで急激な力の上昇が確認されてすぐに転移したけど、もしかして……敵は至ったの?』
俺は、その言葉にピンときた。
あ、あれは禁手だ。俺や木場が至った時と似てやがる。
「多分ですかねぃ。ってことはそっちも?」
『ええ。私達が倒した影使いも、祐斗が至った時のような現象を起こしてから転移したわ。他の人達も転移したけどね』
あ、あの野郎に気を取られてたけど、あの光力使いも何時の間にか消えてやがる。
しまったぁ。やらかしたぜ。
『……紫藤さんの指摘で気づいたのだけれど、今回の目的、もしかすると脱走者の追跡だけじゃなくて、禁手に覚醒を促す為の実験の可能性もあるかもしれないわ』
「マジですかい?」
『ええ。脱走者の追跡だけなら、私達がいる以上もっと戦力を投入するはずだもの。……あえて戦力を減らして窮地に追い込む事で、禁手に覚醒させる環境を作ってる可能性もあるわね』
なるほどな。確かに覚醒を促すなら、そうなるような環境を作るのが効果的か。
……こりゃ、向こうも色々考えてるってわけか。
俺も、一つ禁手に至ったからって、調子に乗ってるわけにゃいかねえなぁ。
そういうわけでヴィクター経済連合との戦争は泥沼のでぃすり合戦へと突入。それにより亡命合戦にも突入。
脛に傷者同士がその辺を突っつきだすと泥沼です。
そして次はデート回です。