ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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ヒロイ「男のロマン、出します」


第三章 7 神喰狼と神殺槍

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、来るがいい我が息子、フェンリルよ!!」

 

「目覚めろ、ソウメンスクナ」

 

 二人がそう名前を呼び、そして姿があらわになる。

 

 現れたのは、巨大な狼と巨大な鬼。

 

 それだけでも問題だが、特に問題なのは鬼の方である。

 

 顔が前後に二つあり、首がない。そして腕は二対存在する。

 

 その異形の姿に多くの者達が目を見張り―

 

「………あ、ああ、あああ」

 

 ペト・レスィーヴは、明らかに動揺していた。

 

 目は見開かれ、瞳孔も開き、全身から脂汗が流れ出る。

 

 構えていた人工神器すら取り落とし、そしてそれにすら気づいていない。

 

「……いや、いや……いやぁ……」

 

 後ろに後ずさりながら、ペトは明らかに狼狽していた。

 

 そしてそのまま狙撃ポイントとして確保してた馬車から、足を踏み外す。

 

 空を飛ぶ事も忘れ、墜落しかけるペト。

 

 その手を、ぎりぎりで小犬が掴んだ。

 

「ペッちゃんしっかり!! 臭いは似てるけど、あれはソウメンじゃない!!」

 

 ペトに声を掛けながら、小犬は鬼を睨み付ける。

 

 その目には、僅かな怯えとそれ以上の疑念があった。

 

「でも、臭いがすごく似てる。……ううん、勝手に変えたような―」

 

「ほう。鼻が鋭いようだ」

 

 それを称賛するかのように、捧腹は頷いた。

 

 そして、鬼を見て蔑むような視線を向ける。

 

「私は対外法の研究を専門に行っていてね、翻せば、京都では一番外法に詳しい。これはその実験作だよ」

 

「……ソウメンを材料に、リビングデッドを作ったって事ね!!」

 

 全てを察したリセスが、殺意すら籠った視線を捧腹へとぶつける。

 

「この外道!! それを、よりにもよってペトと小犬に見せる!?」

 

「それについては謝罪しよう。私は死体の情報はある程度聞いているが、基本的にはスペックしか知らんのだ。奴が危害を加えた者達のパーソナルデータまでは把握してなかった」

 

 そういって、捧腹は素直に頭を下げた。

 

 しかし、だからと言ってソウメンスクナを下げる事はしない。

 

 なぜなら、捧腹と対峙する者たちはオーディンの護衛。オーディンを害そうとする自分達からすれば、遠慮する必要はないのだ。

 

 そして、其れはロキも同様だった。

 

「ふむ、どうやら思わぬ成果が出たようだな」

 

 むしろ僥倖といわんばかりの表情を浮かべて、ロキは顎を撫でる。

 

「かの禍の団のヴァーリチームを捕縛寸前にまで持ち込んだ狙撃の技術、敵に回せば神滅具に匹敵する脅威と見ていた。それが使えないというのならば僥倖か」

 

「……てめえ!!」

 

 それが癪に障った一誠が前に出ようとするが、それをアザゼルが肩を掴んで静止させる。

 

 その目は、ロキが召喚した巨大な狼に向けられている。

 

 その目が移す感情の名は最大級の警戒。

 

 今この場にいる敵手は皆強敵。そして、ロキが連れた巨大な狼こそ、最大級の強敵。それも、下手をすれば自分達の全滅すら考慮しなければならない。

 

 それほどまでの最大級の警戒。それをアザゼルは目の前の狼に対して持っていた。

 

「迂闊にあの狼の前に出るな!! 奴の牙と爪はシャレにならねえ!!」

 

 額に汗すら流しながら、アザゼルは叫ぶ。

 

 その声に全員が警戒心を強める中、アザゼルはその狼の名を呼ぶ。

 

「……神喰狼(フェンリル)! あれは、全盛期の二天龍にも匹敵する化け物だ!!」

 

 全盛期の二天龍に並ぶ。その意味を理解出来ない者はここにはいない。

 

 なにせ、いまだ不完全な力しか発揮できないイッセーですら、この場においては最高峰の戦力なのだ。それの全盛期をはるかに上回るとなれば警戒せずにはいられない。

 

 その事実に全員が瞠目する中、ロキは得意気な表情を浮かべる。

 

「そう。こいつこそ我が子の中でも最強のフェンリルだ。おそらく噛み付けさえすればどこの神話体系の神にも届くだろう」

 

 そう言い放つと、ロキは視線をリアスに向ける。

 

 その目は、明らかに危険な意志を宿していた。

 

「本来北欧の者以外に我が子の牙を使いたくはないが、まあ、たまにはいい経験となるだろう」

 

 そして、その指先がリアスに突き付けられる。

 

 誰もが、嫌な予感を察した。

 

「魔王の血筋、その血を味わうのも一興か。―やれ」

 

 その瞬間、フェンリルは一瞬で間合いを詰めた。

 

 それに反応できたのはごく僅か。そしてそれを対応にまで持って行けたのは更に僅か。

 

 それほどまでの神速を持つ事が、フェンリルがこの場で最強の存在だという事を示す証明だった。

 

 反応速度。

 

 戦闘能力。

 

 そして位置取り。

 

 それら全てが重なり、対応できたのは僅かに二人。

 

「俺の部長に触るんじゃねえぇええええ!!!」

 

 フェンリルの攻撃からリアスを守ったのは兵藤一誠。

 

 潜在能力に限定すれば、フェンリルに並ぶドライグを宿した者。それゆえに対応できる余地があった。

 

 しかし、一誠はフェンリルからリアスを守るのに必死でそれ以外にまでは頭が回らない。

 

 一方フェンリルは、一誠の攻撃を回避こそ出来なかったが、対応は出来た。

 

 カウンターにより爪が襲いかかり、一誠は反応どころか認識すら出来ていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―そして、其れに対応したのがもう一人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「槍王の型、流星(ながれぼし)

 

 

 

 

 

 

 

 

 その迫りくる爪。それを持つフェンリルの前足を、神々すら滅ぼす槍が貫いた。

 

 口と前足から血を流し、吹き飛ばされるフェンリル。

 

 そしてその勢いに巻き込まれ、ヒロイ・カッシウスもまた吹っ飛ばされる。

 

 かろうじて槍こそ握ったままだったが、何故か彼は全身を震わせながら動けない状態になっていた。

 

 その光景に、ロキや捧腹すら含めた全員が対応しきれない。

 

 あまりの神速の攻防。それも事実上フェンリルが返り討ちにあったという状況。それが、ロキ達に衝撃を与えていた。

 

 ……しかし、感情を持たない死体人形だけは別。

 

 ソウメンスクナは機械的な反応で動くと、その腕に邪炎を纏わせて殴り掛かる。

 

 ヒロイはそれに反応できない。いや、反応はしているが行動できない。

 

 そしてそのまま攻撃が当たりかけ―

 

「ぅぉおおおおおおおおおおおおおんっ!!!」

 

 遠吠えが、その動きを一瞬だが止める。

 

 そしてその隙に、真っ先に我に返ったバラキエルがヒロイをかっさらった。

 

「しっかりしろ!! 大丈夫か!?」

 

「す、すんません……っ」

 

 バラキエルの声に、かろうじてヒロイは反応する。

 

 明らかに大丈夫じゃない。

 

 全身からは脂汗が流れ、痙攣も収まってない。

 

 そして、その非常時を見逃すほどソウメンスクナも捧腹も愚かではなかった。

 

「仕掛けろ、ソウメンスクナ!!」

 

 捧腹の指示に従い、更に全力の邪炎を纏ってソウメンスクナは仕掛ける。

 

 しかし、それに対応する者はきちんといた。

 

「もう一度殺してあげるわ、ソウメン!!」

 

 これまでにないほど高出力の炎を展開し、それをバスターソードに巻き付けながらリセスが仕掛ける。

 

 超高熱による両断。焔には炎をといわんばかりの正面突破。

 

 そして、鬼神と神殺しが正面からぶつかり合った。

 

 余波で周囲一帯に炎をまき散らしながら、その激突はお互いを相殺するにとどまる。

 

 そして、その光景を見てロキは目元を歪めた。

 

「……我が子に反応し手傷を負わせ、更にソウメンスクナと渡り合うとは。今のうちに始末しておかねばな」

 

 神滅具(ロンギヌス)。神すら屠る可能性を秘めた、神器の究極十三種。

 

 そのポテンシャルを改めて思い知らされ、ロキは警戒度を大幅に高めていた。

 

 自らの最高傑作といえるフェンリル。そして協力者の最高傑作として認める他ないソウメンスクナ。

 

 それらとまともに戦える敵を見逃すほど、ロキは油断していない。

 

「させると思うかぁ!!」

 

 そこをアザゼルは光力で狙い打つが、しかしロキは魔方陣で即座に受け止める。

 

「その程度で我らが北欧の術式は破れんよ。我を倒したいのなら、例の龍の鎧を持ち出すがいい」

 

「なら、同じ北欧術式で!!」

 

 ロスヴァイセが即座に同様の魔方陣を作り出す、全力の魔法攻撃を叩き込む。

 

 それをロキは余裕で防ぐが、しかしその隙を逃すほどこの場にいる者達は甘くなかった。

 

 バラキエルを筆頭に多くの者達が一斉に攻撃を放つ。

 

 その猛攻に、ロキの魔方陣すら完全には防ぎきれず頬を掠めて微かな傷をつけさせた。

 

「……神を相手にここまで出来るとは見事! なら、こちらもそれ相応の手段を用いるまで―」

 

 ロキがそう言い放ち、更なる魔方陣を展開しようとする。

 

 ―その瞬間、白い流星が舞い降りた。

 

『Harf Dimension!!』

 

 フェンリルを中心に空間が歪む。その圧倒的な半減の力に、一瞬とはいえフェンリルは身動きが出来なくなった。

 

 しかし、牙をもってその歪みを食い破り、フェンリルは攻撃態勢を取る。

 

 それを真正面から見返しながら、白い流星―ヴァーリ・ルシファーは戦意を高ぶらせた。

 

「ヴァーリ!?」

 

「久しいな、兵藤一誠」

 

 そう告げるヴァーリは、兜を解除し、ロキに対して熱視線を向ける。

 

「初めましてだな、北欧の神、ロキよ。……貴殿を屠りに来た、白龍皇ヴァーリ・ルシファーだ」

 

 大胆不敵にヴァーリは堂々と宣戦布告をする。

 

 この状況下にヴィクター経済連合の介入。状況はあまりに混乱状態に陥りかけていた。

 

 そして、其れに対してロキは満足げな笑みを浮かべる。

 

「……今日は二天龍が見れて満足だ。捧腹、ここは出直すぞ」

 

 そう言い、ロキはフェンリルを自身の元へと引き寄せる。

 

 そして転移の魔方陣を展開した。

 

「いいのか?」

 

「かまわんさ。どうせやるのなら派手に行くべきだ」

 

 その返答に、捧腹も指を鳴らすとソウメンスクナを下がらせ、魔方陣の内側に移動させる。

 

 それを確認して、ロキは敵である一誠達を、そしてオーディンを鋭く見据える。

 

「この国の神々と政府に会談するその日! その時が我が子によって貴様が飲み込まれる時だと知るがいい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……させると思うか、ああ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、膨大な殺意がロキを貫く。

 

 そちらに視線を向けたロキは、それを見る。

 

 レール上に配置された巨大な魔剣。その先に、一本の長大な刺突剣を構えたヒロイが、顔を青くしたままで立ち上がっていた。

 

 その瞬間、ロキはとっさに首をひねり―

 

「ぶち抜けエペタングステン!! 必殺、マスドライバースティンガーぁあああ!!!」

 

 その頬を深く切り裂き、刺突剣が宙を飛翔した。

 

 フェンリルですら反応しきれなかった超超高速の一撃。

 

 それに対して、ロキもまた、目を見開いた。

 

「なるほど、電磁投射砲(レールガン)を魔剣と紫電で再現したか。……人間の技術を神器で再現するとここまで高まるとは―」

 

 ロキは心から賞賛し、そして鋭い敵意をヒロイに向ける。

 

「良かろう。貴殿はこのロキが滅ぼそう。神が直接殺しに来るのだ、名誉と思うがいい」

 

「そりゃいい。神殺しだなんて英雄でもやったことねえだろ」

 

 そう凄絶な表情で視線を交わし合い、ロキとヒロイは宣戦布告した。

 

「オーディンを死なせたくないなら、我を止めてみろ」

 

「オーディン神を殺したいなら、この俺を倒してみろ」

 

 そして、戦いは僅かな間で中断された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Side Out

 




ペト、トラウマ直撃。

反面、小犬はあまり大したことがありません。これに関してはペトのメンタルが弱いのではなく、きちんと過程を踏んで回復した小犬が強いのです。

ソウメン復活は誰もが予想してましたが、実際のところは変則的な運用。別に捧腹は無差別テロがしたいわけではないので、そのまま復活という真似はしませんでした。……ペトの心に大打撃を与えるのには十分すぎましたが。









そしてヒロイ、フェンリル相手に有効打。

いわゆる必殺技です。男のロマンです。ただし読んでいればわかる通り、現段階では反動がでかすぎる大技です。

因みに紫に輝く双腕の電磁王を利用した必殺技です。金成科学的なアプローチを使って編み出しました。
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