ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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第一波は何とかしのぎ、然し思った以上に状況は最悪。

そんな時差し出される、救いの手は……ヴィクター経済連合!?


第三章 8

 ……んぁ?

 

「あ、起きました!!」

 

 アーシアの嬉しそうな声が聞こえて、俺は目を覚ました。

 

 どうやら、ロキに宣戦布告した後で気絶したらしい。

 

 編み出した必殺技を当てれなかった挙句、撤退されて気絶するとか正直ちょっと恥ずい。

 

「起きたようですね、ヒロイ先輩」

 

「おはようさん」

 

 と、小猫ちゃんとイッセーもいた。

 

 どうやら、イッセーの倍加を使いながら小猫ちゃんの仙術とアーシアの神器による治療を行っていたらしい。

 

 ああ、槍王の型は負担でかいからな。実戦投入もお初の隠し玉だったし、心配かけたか。

 

「悪い、心配かけた」

 

「まったくだぜ。アーシアのあんまり効果がなかったし、小猫ちゃんの気の方が良かったんだよなぁ」

 

 だろうな。負担はでかいとはいえ、肉体のダメージはそこまで高くないし。

 

 そういう負担のかかり方がする仕組みなんだよ、アレ。

 

 だがまあ。ヴァーリの来訪もあったとはいえ何とかしのげた。

 

 神クラス相手に全員生存は、間違いなく誇っていいだろ。

 

「……気の流れがめちゃくちゃでした。どんな無茶を?」

 

「ん? ああ、後で話す」

 

 俺は小猫ちゃんにそう言った。

 

 今から話してもいいんだけど、言ったらなんか怒られそうだし。

 

 それに、今は元気を使うべき事があるからな。

 

「ったく。肝が冷えたけどおかげで助かったぜ。ありがとな」

 

「ああ。それで……ヴァーリはどうした?」

 

 イッセーのお礼を受け止めながら、俺はヴァーリについて聞いた。

 

 ヴァーリの奴、何考えてやがる?

 

 ロキは俺達三大勢力より、ヴィクターに協力する方がましだと言った。いや、本命は鎖国らしいけど。

 

 まあ、そいつぁすなわちロキはヴィクターと共闘できるわけで、ヴァーリからすれば挟み撃ちのチャンスだ。

 

 なのに、ヴァーリはフェンリルを攻撃しやがった。

 

 相変わらず、何考えてんのかわからねえ奴だ。

 

 だから聞いてみたら、イッセーは警戒心を見せて指をさす。

 

 馬車の外で、ヴァーリはお嬢達と向き合っていた。

 

 駒王学園の校庭に止まった馬車の近くで、ヴァーリチームは勢揃いしてやがる。

 

 ……そしてアーサーと黒歌は、馬車から隠れるようにヴァーリの後ろにいた。

 

 見れば、ペトが俺とは別の席に寝かされている。

 

 あのソウメンスクナを見てから、ペトはかなりパニックを起こしてたからな。

 

 話を聞く限り、ペトの両親を殺してペトすら襲ったソウメンとかいう鬼を素体にした人形があれらしい。無理もねえな。

 

「ペト、どうしたんだろうな」

 

「ああ、それは後で姐さんから聞いてくれ」

 

 俺はペトに上着をかけると、外に出る。

 

 それを見て、姐さんがほっと息をついた。

 

「ヒロイ、大丈夫?」

 

「おうよ姐さん! もうばっちり回復したぜ!!」

 

 俺はそう元気よく言うと、ヴァーリ達に視線を向けた。

 

「一応礼を言っとくべきか?」

 

「一応受け取っておこう。……だが、大変だな君達も」

 

 そういうと、ヴァーリは苦笑を浮かべる。

 

「オーディンの会談を成功させるには、ロキを撃退するしかない。だがこのメンバーではロキ達だけならともかく、あの術者と鬼神までは対応しきれないだろう? 今は亡命絡みの戦闘で、どこもかしこも手いっぱいだから増援も見込めないしな」

 

 苛立たしい事を言ってくれるじゃねえか、ヴァーリ。

 

 確かに、今はどこもかしこも小競り合いだらけで増援は難しい。

 

 自衛隊は協力してくれるだろうが、それにしたって限度があるしな。そもそも彼らの戦力じゃあ、あの化け物共の相手は手厳しい。

 

 せいぜい目くらましがいいところだろ。集中砲火を受けても大したダメージにならないのが明白だって感じだ。

 

 とは言えイラつくのはイラつく。特にイッセーはイラついていた。

 

「随分偉そうに言ってくれるじゃねえか。お前がロキを倒してくれるってのか?」

 

「いや、流石に俺でもフェンリルとロキ、更にあの鬼神を同時に相手取るのは不可能だ」

 

 ……随分殊勝な事で。

 

 で? だったらなんでこんなところに来てやがるんだ?

 

 こいつらがテロリストの特殊部隊なのはもう分かってんだ。イッセーの件で借りがあるたぁいえ、何度も見逃せるかっているとまた別の話だ。

 

 場合によっちゃぁここで戦う事になる。

 

 そう俺達が緊張してるなか、ヴァーリはとんでもない事を口にしやがった。

 

「……だが、二天龍が組めば話は別だ。俺たちは、今回共闘を申し出たい」

 

 ………はぁ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……その次の日。

 

 兵藤邸の地下。そのホールにかなりの人数が大集合していた。

 

 ペトを除いたいつもの兵藤邸メンバー。更に近くのマンションに住んでる木場とギャスパー。さらにオーディン護衛団からバラキエルさんと小犬。そこにシトリー眷属も追加。とどめにヴァーリチーム。

 

 で、こんな事になった理由はヴァーリの爆弾発言。

 

 北欧と日本神話と日本政府の和平会談を妨害したいロキと捧腹。奴らとの戦いに一枚かませろと言ってきやがったからな。

 

 流石に即答出来ないわけで、ちょっと時間を取ってからこうして集まったわけだ。

 

 つっても事態はあまりに難易度が高い。

 

 なにせ、今は何処の勢力も亡命合戦で色々と手が離せねえ。亡命しようとしてくる連中が出ないように取り締まったり追撃したり、亡命してくる連中を助けたり受け入れ先探したり。

 

 と、言うわけで上の方針は俺達でどうにかしてくれとほぼ丸投げだ。

 

 そして、其れをなすのが大変だ。

 

 なにせ敵は神と鬼神。更に外法の使い手と伝説の魔獣。

 

 どいつもこいつもハイスペック。一人だけでも充分脅威って言えるレベル。それが半分は文字通り伝説級で、もう半分もそれに近いと来てやがる。

 

「で、ヴァーリ。俺達と共闘するわけは何だ? 何企んでやがる?」

 

「純粋に神と戦いたいだけだ。美候達も了承してくれている。……不服か?」

 

 いや、信じられるか。

 

 っていうか正気じゃねえ。俺達大絶賛戦争してるんだぞ? お互いの特殊部隊的な扱いなんだぞ?

 

 それが神との戦いに共闘? それも、共通の敵じゃなくヴィクター経済連合(ヴァーリ側)とは交渉の余地のある奴と?

 

「不服な上に解せねえよ」

 

 アザゼル先生の言う通りだ。誰も納得出来るわけがねえ。

 

 だけど、アザゼル先生はため息をついた。

 

「……だが、戦力が必要不可欠なのは事実だな」

 

「でもいいのかしら? ヴィクター経済連合からしてみれば、ロキは交渉の余地があるんじゃないの? こちらよりはいいと言っていたわよ?」

 

 姐さんがそう言うけど、ヴァーリは首を横に振った。

 

「いや、ヴィクター経済連合には半アースガルズ団体が所属していてね。あそこには武器を作っているドワーフが在籍しているから、発言力が大きめなんだ。こと、彼らの先祖が作った武器を半ばだまし取ったロキは有力粛清対象だよ」

 

 あら、ロキはともかくヴィクターの方は共闘勘弁ってわけか。

 

「そういうわけでリムヴァンからの許可は得ている。本格的な戦闘時には、向こうからも増援を派遣するとの事だ」

 

「……大盤振る舞いだな、オイ」

 

 ああ、ヴィクター経済連合は何考えてやがる?

 

 ここで日本神話や政府と、アースガルズが連携をとるのは面倒だろうに。

 

「ねえねえ。それで、ボク達が断ったらどうするの?」

 

 と、小首を傾げて小犬が聞いた。

 

 それに対して、ヴァーリは不敵に笑う。

 

「その時はまとめて相手にするだけだ。元々敵同士なのだから当然だろう?」

 

 ……これ、共闘しないとホントに死者が出るな。

 

 つっても俺達が勝手にやったら上から怒られそうだ。いや、アザゼルは総督だけど独断で動ける内容じゃねえし……。

 

「……サーゼクス達からは苦渋の決断ってやつが出てる。旧魔王の末裔のお前の申し出を無下に断るわけにはいかねえってな」

 

「現場としては納得出来ない事も多いけどね」

 

 アザゼルの言葉に、お嬢は不満げだった。

 

 まあ、ヴィクター経済連合に迷惑かけられまくっている三大勢力の本音だろ。会長も不機嫌さを隠してもいねえしよ。

 

 とはいえ、悪魔側としちゃぁそんな事を言われたら断れねえな。トップの許可は出てんだしよ。

 

「……不穏な動きを見せれば、さっさと後ろから刺せばいいでしょう。精々肉の楯に使えばいいわ」

 

 と、姐さんがさらりと怖い事言い放った。

 

 が、ヴァーリ達は苦笑するだけで特に気にしてねえ。

 

 それどころか、アーサーと黒歌に至っては割と上機嫌だ。

 

「……ふっ。狙撃でなければ全部回避して見せますよ」

 

「狙撃さえなければ全部惑わして見せるにゃん!!」

 

 こいつら、ペトがまだ寝込んでるの喜んでるな?

 

 オカ研メンバーはそれにイラつくが、しかしイラついてないメンバーも何人かいた。

 

「まあ、そうなるよな」

 

「……ですね」

 

「そうよね」

 

 イッセーに小猫ちゃんにお嬢だった。

 

 ……間近であの二人が撃たれるところを見たメンバーは納得してやがる。

 

 ペトよ。お前はどんだけドン引きさせる方法で狙撃をぶちかましやがったんだ。

 

 思わず俺達は結構ドン引きした。

 

 仲間思いでこういう時真っ先に怒りそうなイッセーに、そこまで言わせるとは。相当怖い撃ち方したらしいな、オイ。

 

 今後、ペトを怒らせないように気を付けよう。俺達の心は一つになった。

 

「まあ、お前らはこの際置いておく。……それとだ」

 

 そして、アザゼルは言いにくそうにした。

 

「……ロキの協力者について、京都から情報がでた」

 

 そして、アザゼルは言葉を続ける。

 

「奴は捧腹。京都出身の術者である鬼で、主に外法対策を専門にしていた」

 

 ふむふむ、あいつ鬼だったのか。

 

 パッと見人間に見えたが、どうやら変化していたらしいな。

 

 で、なんでそんな奴がロキと組んでんだ?

 

 ロキは他の神話と関わりたくないって言ってやがった。日本神話と協力関係にある京都の妖怪が、なんでロキと組んでやがる?

 

「……それについてだが、アースガルズとの間で起きた事件が原因らしい」

 

 その事件は、今から十年ほど前に起きた事だ。

 

 捧腹は、児童保護施設に出資するなど、善良な人物で知られていた。

 

 そいて、慈善事業として、私費を投じて施設の子供達を海外旅行に連れて行ったりもしたのだ。

 

 なんつー素晴らしいこったよ。俺もそんな人と知り合いになりたかった。

 

 ……だが、そこで問題が発生する。

 

 旅行に行った子供達が、アースガルズの神話勢力圏内に近づいてしまったのだ。

 

 当時のアースガルズは鎖国も同然で、排他的だった。そして、その旅行に行った子供達には、捧腹のつてで妖怪の護衛がついていた。

 

 不幸な、行き違いだったのだろう。

 

 結果として小競り合いが勃発し、最悪な事に子供達に犠牲者が出てしまった。

 

「それ以来、奴は北欧との交流だけは断固として反対していた。アースガルズに敵対しているテロ組織に出資しているという噂もあったそうだが、まさかマジだったとはな」

 

 そう言って、アザゼル先生はため息をついた。

 

「調べた結果、その組織の一つはロキが情勢をコントロールする為に立ち上げた、いわゆるスパイ的な組織だったらしい。それをつてに、お互いの交流断絶の為に敵の敵は味方理論で動いていたってところだろうな」

 

 うっへぇ。どす黒い協力関係だなオイ。

 

 だがまあ、そういう事ならちょっと可哀想な気もするが……。

 

「だからと言って、遠慮する気は欠片もないけどね」

 

 姐さんは、かなり怒気を強めてそう切り捨てた。

 

「恨みつらみがあるのは結構。だけど、憎しみに囚われてこれだけの騒ぎを起こすっていうなら遠慮はしないわ。……何より、ペトと小犬の前でソウメンを使った兵器を見せるだなんて………」

 

 うっわぁ。姐さんマジギレしてる。

 

 ペトのこと可愛がってたからなぁ。当然姐さんとしちゃぁブチギレ案件って事か。

 

「うん。ペッちゃんの仇はボクがとるよ!!」

 

 小犬さんや。お前なんか他人事。

 

 っていうかペト死んでない。寝込んでるだけ。

 

「ま、そういうわけで俺達も対策が必要ってわけだ。まずは五大龍王の一角、終末の大龍(スリーピング・ドラゴン)、ミドガルズオルムに接触する」

 

 と、アザゼルが建設的な意見を持ってきた。

 

「み、ミドガルズオルムって?」

 

「タンニーンと同じ、龍王の一角よ」

 

 と、イッセーの質問にリアスが答える。

 

 そして、其れに続く声があった。

 

「……ロキが作ったカイブツの一匹ッス」

 

「「ぅっ!?」」

 

 その声に、アーサーと黒歌が肩をビクリと震わせ、ルフェイが警戒心をあらわに二人を庇う。

 

 が、ルフェイもその姿を見て息をのんだ。

 

 ……ペトは、いまだに額に汗を浮かべている位不調だった。

 

「ペト!? いいから寝てなさい!!」

 

「ペッちゃん! 落ち着いてよ!!」

 

 姐さんと小犬が慌てて駆け寄るが、ペトは明らかに無理のある笑顔を浮かべてピースサイン迄浮かべる。

 

「寝てたらだいぶ良くなったッス! それに、作戦会議はきちんと聞かないとッス」

 

「いえ。無理は禁物です」

 

「そうよ、何なら寝れるように術をかけようかにゃん?」

 

 アーサーと黒歌も気遣うが、お前ら狙撃が怖いだけだろ。

 

「とにかく寝とけ。必要な情報はあとで教えてやるから」

 

「その通りだよペトさん。ここは無理せず回復に専念するんだ」

 

 と、アザゼル先生と木場からも言われて、ペトはうぐっと答えに詰まる。

 

「その通りよ。これは部長命令だから素直に従いなさい」

 

 更にお嬢が強権発動。これで完璧にペトは休む事決定だ。

 

「うぅ……。わかったッス……」

 

 そう言ってとぼとぼふらふらと戻って行くペトに、殆どのメンバーが痛ましい視線を向けていた。

 

 美候も、何やら思うところがあったのか眉間にしわを寄せている。

 

「……あのむちゃくちゃ怖かった嬢ちゃんがあれとは、そのソウメンってのはどんな奴だったんだよ」

 

 確かに、事情を知ってるのは殆どいないだろうしな。

 

 全員、よく分かってないのが見て取れる。つっても、俺達の一存だけで言える相手じゃないし……。

 

「ま、僕もペッちゃんも家族殺されて襲われてるしね。トラウマだよ普通」

 

 って小犬さんんんんん!?

 

 お前それ言っちゃう? そんなヘビーな過去さらりと言っちゃう!? 平然とのたまっちゃう!?

 

「小犬、貴女しゃべっていいの?」

 

「え? でもこうなったら話さないといけないよね? それに、もう終わってるし」

 

 な、なんか平然とぶちかましたな。

 

 この子、実はペト並みに壊れてるんじゃねえか?

 

 俺は心配になるが、小犬はその視線に気づいたのはにこりと笑う。

 

「大丈夫っ! 二年ぐらいずっと病院にいたけど、もう大丈夫だって先生もお墨付きだもん!!」

 

 ……そうか、餓鬼っぽいのは二年分遅れてるからか。

 

 まあ、それなら大丈夫なのかねぇ?

 

 

 

 

 




ヴィクター経済連合「お前なんぞこっちから願い下げだ!!」

過去の失態が原因で嫌われているアースガルズ。いや、禍の団が各勢力のはぐれ者の集まりなので、いろんな勢力を出したかったんです。





捧腹についての来歴も説明。すべては排他的なかつての異形勢力の在り方が生み出した悲劇。乗り越えねばならない過去の傷です。
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