ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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対ロキ会議、スタート


第三章 10

 それから数日後、俺達は作戦会議の場所に集まっていた。

 

 アザゼル達によるミドガルズオルムとの接触は成功。フェンリルとロキ対策が何とかなったとのことだ。

 

 なんでもダークエルフやドワーフの力を借りる事で対策が出来たとの事。すっげえ共同作戦もあったもんだ。

 

 で、今からそれが説明される。

 

「よっし、集まったなお前ら! これから、北欧神話勢と日本神話勢及び日本政府との会談を妨害する、ロキと捧腹に対抗する方法を説明する」

 

 ホワイトボードを背に、アザゼルは今回の作戦の概要を説明する。

 

 ヴァーリチームが面白そうに、そして俺達が真剣に見つめる中、アザゼルはまず一つのハンマーを取り出した。

 

「ロキの対する切り札はこれだ。北欧の闘神トールが保有するミョルニルのレプリカだ」

 

 おお、あれがミョルニルか。

 

 レプリカはロキも作っていたが、こっちも凄い感じがするな。

 

 一見するとただの豪華な金槌だが、しかしイッセーが魔力を流すと一気にサイズを変える。

 

 単純な性能ならムジョルニアを超えるとの事だ。ただし、再現されすぎていて使える奴も限られている。使う奴が肝だな。

 

「まず、ロキの相手はミョルニルを装備したイッセーを中心に、ヒロイとヴァーリで行う。基本はヴァーリとヒロイの攻撃で追い詰め、イッセーがミョルニルでとどめだ」

 

「了解です!!」

 

 元気良くイッセーが頷く。

 

 ああ、こういう時素直なイッセーは士気を上げてくれるぜ。

 

 反面、ヴァーリは少し残念そうだった。

 

「できればフェンリルと戦いたかったんだがな。まあ仕方あるまい」

 

 はいはい。お前ら敵対勢力なんだから、見逃してるだけでありがたく思えってんだ。

 

「で、フェンリルに関してはタンニーンとヴァーリチームが前衛につき、今回の為にダークエルフが強化したグレイプニルで封じる。突破されたときはタンニーンを中心に叩きのめす」

 

「……ヴィクターと組む事になるとはな。妙な動きをするなら即座に噛み砕くから覚悟しておけ」

 

 ミニドラゴンに変化したタンニーンさんがそう凄みを見せるが、ヴァーリチームはその大半が不敵な表情を浮かべていた。

 

 こいつら、こっちが状況悪いからって挑発的な目をするな。

 

「駄目ですよ、皆さん。ここは仲良くしませんと」

 

 と、ルフェイがたしなめている。

 

 さて、とりあえずロキ対策はこれでいいとして、次は捧腹とソウメンスクナか。

 

「ソウメンスクナはリセスに任せる。オリジナルのソウメンをぶちのめしたお前がキョジンキラーを使えば、勝ち目は十分にある。そして足止めに徹してくれても構わねえよ」

 

「あら、強者(英雄)に失礼ね。直ぐ始末しろと言ってもいいのよ? こちらもする気だし」

 

 姐さんすげえやる気だ。もう殺る気と書くぐらいだ。

 

 だが、アザゼルはそれに対して首を振った。

 

「いや、あれは捧腹が半分ほど制御しているから、奴をどうにかしてからの方が楽だろう。捧腹に関してはグレモリー眷属とイリナが受け持ってくれ」

 

「分かったわ。彼は滅してもいいのかしら?」

 

 お嬢がそう聞くと、アザゼル先生はうなづいた。

 

「ああ。奴は今回の件で京都が切れてる。ぶち殺してくれて構わねえってお達しだ」

 

 あらら。相当暴走したみたいだな、おい。

 

「ロスヴァイセとバラキエルは北欧式魔法と雷光で臨機応変にサポート。俺も行きたいところだが、会談の方に行かなきゃならねえんでな。……で」

 

 そして、アザゼル先生はペトの方を向いた。

 

「……ペトは小犬と一緒に総理官邸の護衛だ。シトリー眷属もそっちに付く事になる」

 

「!? なんでっすか!?」

 

 ペトは食って掛かるが、しかし誰もそれに続かない。

 

 ヴァーリチームが面白がって突っつくこともしない。そんな気分になれないって方が近いだろう。

 

 それぐらい、ペトの調子は未だに悪かった。

 

 それをちゃんと分かってるから、俺達は何も言わない。

 

 それに気づいて、ペトは落ち込むと座り直す。

 

「ペト。今のお前は自覚はあるだろうが絶不調だ。そんな奴をロキ達との戦いに送り込んだら間違いなく足を引っ張る。そもそも、転移で同じ戦場に飛ばす予定だから、お前は本領を発揮できねえよ」

 

 その肩に手を置いてアザゼルは諭す。

 

 確かにそうだ。

 

 この戦いは、シトリー眷属達の協力の元、ロキとフェンリルを戦場となる採石場に転移させる事から始まる。

 

 だから、距離を取りにくいのが実情だ。距離を開けての狙撃戦に特化しているというかそれ位しか能がないペトではヤバイ。

 

 ……小犬も下げたのは配慮なんだろうな。それと、万が一の護衛役が必須だと判断したのか。

 

「あと、会談場所の総理官邸では護衛として自衛隊も展開する。まあ、国民に対する一応の言い訳ってやつだ。目くらまし程度にはなるだろうよ」

 

 なるほどな。日本政府も大変だな。

 

 神と魔獣が相手じゃ、戦車だって役に立たないだろうに。それでも動きましたって形を見せないと国民からツッコミが出かねねえ。

 

 実に面倒だ。総理大臣にも同情するぜ。

 

 と、そこまで聞いて俺はふと気になった。

 

「すんません。そういや匙の姿が見えねえんすけど?」

 

 匙は一体どこに消えたんだ?

 

 なんだかんだでヴァーリを撃破したジョーカーだ。シトリー眷属の切り札にすらなりえるアイツが、なんでいねえんだよ。

 

「ああ、あいつは今グリゴリの施設で強化改造……もとい特訓中だ」

 

 誤魔化してるつもりか、オイ。

 

 な、何で強化改造!? あいつそこまで重要視されてんのかよ!?

 

「ヴィクターからの亡命者のおかげで技術流出もあってな。アイツなら神器複合移植者になれるはずだ……たぶん」

 

「それモルモットだろぉ!?」

 

 ああ、匙、頑張れ。

 

 生きて帰ってきたら、お前の弟妹もまとめて回らねえ寿司をおごってやる。金はあるから安心しろや。

 

 っていうか万が一の時は俺が何とかしよう。実は報酬のいくらかは日本の児童保護施設にも送ってるんだ。何とかねじ込めるだろ。

 

 アーメン!!

 

「ロキ戦については以上だ。それまでは各員英気を養え。んじゃ、解散!!」

 

 その言葉とともに、一旦会談は解散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなんで暇して家をうろついていたら、ヴァーリに出くわした。

 

「……何してんだ、ヴァーリ?」

 

「北欧の術式を調べていた。これでロキと戦う時にはそこそこ動けると思っている」

 

 なるほどマジか。俺はそっちの辺りからっきしだからな。

 

 なにせ教会では物議かもしてたからな。開き直って使ってた連中もいるけど、俺の場合使っているとさすがに限界超えたお偉いさんに追放されそうだったからよ。

 

 しっかし魔法かぁ。最近ゲームやってるから、少し興味はあるな。

 

 魔法剣士ならぬ魔法槍使い! なんか英雄っぽくてかっこいい響きがするぜ!

 

 ……いや、ただでさえ電磁王で手数が増えすぎて正直そっちの研究で忙しいんだ。これ以上手数を増やすのはいったん終了だな。

 

「しっかし、手数増やすならなんか頼めばよかったんじゃねえか? このタイミングなら新武装の一つぐらい貰えただろ?」

 

 俺はそういって茶化すが、ヴァーリは首を横に振る。

 

「リムヴァンからも誘いがあったが断った。俺は強い武装ではなく、俺自身の力を高めて強くなりたいんでね」

 

 なるほど。俺の英雄道と似たようなもんか。そういうのはちょっとはわかるぜ。

 

 しっかし、それで何とかなるんだからこいつはバケモンだ。マジ最強というか天才というか、とにかく才能がバカげている。

 

 そういう意味じゃあ俺もそこそこあるんだろうがな。なにせ、実験段階で神器に三つも適合したんだ。それも一つは神滅具。

 

 だが、同時に俺には才能がなかった。なにせ、生まれ持っている神器や異能の類は全くない。

 

 才能がないのかあるのかわからねえな。

 

 そういう意味じゃあ、俺はサイラオーグ・バアルと近いのかもな。野郎も魔力の才能は欠片もねえそうだが、体術の才能は間違いなくあるだろうからよ。

 

 そして、才能に満ち溢れてんのがこいつか。

 

「……お前さんは良いよなぁ。親父は魔王でお袋の血から神滅具か。親御さんも鼻たかだかだろうな、オイ」

 

 俺はそう嫌味を言うが、その瞬間、ヴァーリは動きを止めた。

 

 ……なんかすごい空気が固まってる。どういうこった?

 

「ヒロイ・カッシウス。君の親はどんな人なんだ?」

 

 と、なんか微妙に歯切れ悪くそんな質問が来やがった。

 

 この野郎。今度は俺を挑発する為に俺の両親に危害加えようとかそういう腹か。そこまで強い奴と本気でバトりたいか。

 

 だが残念だったな。その戦法は俺には通用しねえ。

 

「捨て子の浮浪児だよ、俺は。お前さんとは違って豪遊の経験なんてつい最近だ」

 

「そうか。俺も経験があるからわかるが、浮浪児は大変なものだ」

 

 そうかい、嫌味……あれ?

 

「お前が浮浪児? 何の冗談だ」

 

「冗談ではない。俺は家から逃げ出して浮浪児をしていたことがある。6、7年ほど前にシェムハザにつかまってグリゴリに送られた」

 

 は、はあ?

 

 あのプライドの塊で新魔王を敵視している旧魔王派の生まれのこいつが、家を逃げ出したぁ?

 

 なんでまたそんなことを。

 

「自慢の息子と愛でられてたろうに、なんでそんな真似を」

 

「自慢を通り超して恐怖だったのさ。あの男にとってはな」

 

 そういうと、ヴァーリは遠い目をした。

 

「奴は、俺に暴力を振るっている時しか安心していなかった。それほどまでに俺の才能が怖くてたまらなかったんだろう。忌々しい事に実の父親に続いて息子も化け物だったからな」

 

 な、なんかわからんが、こいつも色々あるんだな。

 

 しかしそれって虐待かよ。何考えてんだ、こいつの親父は。

 

 新魔王に対する切り札になりかねないチートの極み。魔王の血筋と神殺しのコンボ。それを利用すれば、真四大魔王に対するカウンターにだってなるだろうに。

 

 いや、教会の連中に対する交渉材料にも使えるはずだ。堕天使側だって、神器研究に熱心なんだからやりようによっては交渉できただろうに。

 

 ほんと、旧魔王派ってバカばっかりなんだな。カテレアも割と嫉妬心の塊だったけど、あいつサーゼクス様のこと「良い魔王」って言えるだけましだったわ。現実見えてたわ。

 

「母は神器も持たない只の人間だったからな。俺を庇って殴られる姿を見るのは、忍びなかった」

 

 そう告げるヴァーリの横顔は、なんというか寂しかった。

 

 ……現在、過去、未来。そのすべてにおいて最強の白龍皇となるだろうとまで称された男。ルシファーの末裔、ヴァーリ・ルシファー。

 

 あらゆるものをもって生まれたような男は、だけど家族にだけは恵まれなかったって事か。

 

 今になってふと気づく。

 

 あの時、ヴァーリはイッセーのことを普通の男子高校生といった。

 

 そして、イッセーの両親をありきたりだといった。だからありきたりじゃなくする為に殺そうとも。

 

 だけど、こいつもしかして―

 

「ヴァーリ。お前……イッセーに嫉妬してるのか?」

 

「何だと?」

 

 ヴァーリが心外そうに見るが、おれにはそう思えてならねえ。

 

 だってそうだろ。

 

「自分は特別すぎる存在で、イッセーは平凡すぎる生まれ。なのに、そんな完全な下位互換が親の愛情だけはきちんともらっている。……俺はうらやましいぜ? 親の顔も知らねえし」

 

 ぶっちゃけそこは恵まれてるって思ってる。

 

 あんだけ問題行動ぶちかましておいて、なんだかんだで普通に愛してくれてるんだ。愛想を尽かしたりもしてねえ。

 

 それだけでも、イッセーはかなり恵まれてる。

 

 強くなる何もかもを持つ特別な存在ながら、家族の愛だけは持てなかった男。強くなる要素が少なすぎる平凡な存在なのに、平凡以上の家族愛を持っている男。

 

 ……隣の芝生は青く見えるって、この国じゃ言うんだっけか?

 

「お前、平凡って言葉をうらやんでるだろ。特にこの国の平凡は、水準高いからよ」

 

「………っ」

 

 ヴァーリは言葉に詰まった。

 

 完璧に図星……っていうか、そもそも自覚してないことを突かれてはっとなったって顔だ。

 

 なんか、一気に旧魔王派との共通点見つけちまったぜ。

 

 こいつも、劣等感というか嫉妬で暴走する事があるんだなぁ。

 

「お前、腹を割って話したらカテレアあたりとは気が合うんじゃねえか?」

 

「……心外だな」

 

 ヴァーリはそう言って本に没頭しようとするが、上下さかさまになってやがる。

 

 おお、そう思うとなんか一気に怒りというか敵意が消えたぜ。

 

 ようは餓鬼の癇癪だからな。小学生が好きな女の子に悪戯するあれに近いか?

 

 ふっふっふ。これは良い精神攻撃のネタが手に入ったぜ。今度激戦するときがあったら、思いっきりつついてやる!!

 

 俺はそう思うと、持ってきたカップラーメンを取り出してお湯を注ぐ。

 

 さて、夜食でも食うか。

 

「……ほ、ほぅ。それは秋限定の日本でしか売られていないカップ麺だな。俺も気に入っている」

 

 なんでそんなもん知ってんの? お前、日本在住が基本だとか?

 

 っていうか動揺してるな。思ったよりやばいとこつついたか、コレ?

 

「お前、日本歴長いのか?」

 

「割と長いな。四年ほど前はサタナエルが暴走した件で割と楽しく過ごせていたよ」

 

 そうかい。そういやグリゴリと五代宗家がその時揉めてたとか聞いたことがあるようなないような。

 

「カップ麺は良い。手軽に腹を満たすという点では、これほど優れた物はないからな」

 

「ああ、日本が発明したんだってな。流石技術大国ニッポン」

 

 俺はそういうと、お代わりの為に持ち出したカップ麺を取り出して渡す。

 

「喰うといい。俺は金持ってるからいくらでも買える」

 

「そうか、いただこう」

 

 そして、俺達はカップ麺をすすった。

 

 うん、ホント美味いわこれ。

 

「……麺類も、こんなに美味い物なんだな。だが、やはり薄めの塩と胡椒のスパゲッティが一番だ」

 

 と、ヴァーリは独りごとをつぶやいた。

 

「あの男の元で育てられている時は、あれだけが楽しみだった。彼女はこんなものしか作れないことを詫びていたが、俺にとってはご馳走だ」

 

 ……その女が、きっとヴァーリの母親なんだろうな。

 

 ふん。俺にはお前もうらやましいぜ。

 

 片親だけでも、そんなに愛してくれてるんだからよ。

 

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