ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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そして、オーディンとの対話は終わり……。


第三章 12

 そんなこんなで解散した。

 

 北欧の主神と二天龍の会話。ある意味すごい貴重だな、オイ。いや、俺も聖槍使いだけどよ。

 

 ま、そろそろ寝るとするか。

 

 俺はそう思って自分の部屋に行こうとすると、その前にペトが立っているのを見つける。

 

「何やってんだ、ペト?」

 

 お前が俺の部屋に来るなんて珍しい。

 

 ここの女達は殆どイッセー狙いだから、入ってくるのなんてイッセーぐらいだ。

 

 ペトは姐さんと一緒に行動してるからな。お互いの部屋に入る事の方が基本だし、そうでない時も女子会モードで他の女子の部屋だ。

 

 なんで、俺の部屋に入ろうとしてやがんだ?

 

「あ、ヒロイ。外に出てたんすか?」

 

「ちっとな。ヴァーリの奴のつつきどころを見つけれたぜ」

 

 家族ネタはいじりづらいが、ケツ龍皇は容赦なくつつこう。敵対勢力に遠慮は無用だ。

 

 アルビオンが不調になれば、こっちとしても得になるだろ。戦法レベルだが制御が乱れるかもしれねえしな。

 

 さて、そんな事より今はペトだ。

 

「……ペト。姐さんのところの方がよくねえか?」

 

「お姉様は、戦闘場所の下見に行ってるッス」

 

 ああ、あの採石場か。

 

 一応念の為に下見に行っておこうって腹か。なるほど、それは確かに有効だな。

 

 俺も連れてってもらえばよかったかねぇ。いや、そろそろ寝ないと明日に響くか。

 

 で、それはペトがここにいる理由とはまったく関係ないわな。

 

「ま、とりあえず中に入れよ」

 

「了解っス」

 

 俺はペトを中に入れると、とりあえず何か飲み物を用意しようとする。

 

 食うのは大好きだから、ミニ冷蔵庫とかを用意してんだ。普段はそれ食いながら勉強している。

 

 最近の研究はローレンツ力の研究だ。

 

 それにより、電磁投射砲(レールガン)の技術を学んでいる。地下の特訓場とかで、実際に創れないかどうか実験もしてる。

 

 電磁力操作能力を持つ俺の禁手は、つまり電機や磁力について詳しければ詳しいほど使いこなせる手数特化型だ。

 

 そのうえで金属製品を作れる魔剣創造を考慮すると、いつの間にやらその最大の利用方法は一つに絞られた。

 

 具体的には、レールガンだ。

 

 現在科学世界でも研究中の、超兵器。ローレンツ力で弾丸を超加速させる、砲撃装備だ。

 

 其の為の弾丸としてエペタングステンという魔剣は開発させた。更に電力操作の魔剣を利用して、砲身も開発した。その上でローレンツ力の再現で、発射する事も可能になった。

 

 結果として、ロキに負傷させる事も可能になった。これはいい必殺技だ。

 

 紫電の双手だと中距離が限界だったからな。これで砲撃戦ができるようになったのはでかい。

 

 オールレンジに対応できるってのは、それだけで強みだ。こと実弾砲は距離が近ければ近いほど威力が上がるし、中距離でなら必殺技としても運用できるだろ。

 

 おっと。話がそれた。

 

 で、とりあえずミネラルウォーターをペトに渡すが、ペトはそれに口をつけない。

 

「……ヒロイ。ペトは自分のことがちょっとわかってなかったっす」

 

 そう、ペトは俯きながら漏らす。

 

「ペトは、ペトが思ってるほど壊れてなかったっす……」

 

 それは良い事だろ。

 

 人の心が壊れてないって事は、良い事以外の何物でもねえ。悪い事と考える方がどうかしてるからな。

 

 だけど、それをペトは喜んでねえのはわかる。

 

「ペトは、その所為で肝心な時にお姉さまの役に立たないッス……」

 

 そう。ペトの心はペトが思うほど壊れてない。

 

 壊れてないから、ソウメンスクナが怖くて仕方がない。

 

 目の前で実の両親を殺して、さらには自分自身すら苦しめたソウメン。

 

 その体を使って作られた、ソウメンスクナ。

 

 あの時のペトは、完膚なきまでにトラウマを刺激されたそれだ。それは、普通の人間の反応だった。

 

 そして、その所為でペトはソウメン達と戦うには足手まといになり下がった。

 

 たぶんだけど、今まではただ感覚がマヒしてただけだったんだろうな。ショックで数年間、実感できなかっただけだ。

 

 それが、ソウメンと疑似的な再会をしたショックで強制的に叩き直された。

 

 だから、ロキとの戦いでペトは運用できない。

 

 実際問題ペトは戦力として換算できる状態じゃねえし、例え出来たとしても、誰も使いたくはないだろう。

 

「……お父さんと、お母さんはもう死んじゃったッス」

 

 ぽろぽろと、ペトは涙をこぼす。

 

 今心から、ペトは家族の死を悲しんでいた。

 

「怖くて、悲しいッス。それが、今は邪魔なのに。お姉さまの、役に立てないのに……っ!!」

 

 悲しみと怒りで震えながら、ペトは自分のふがいなさを悔やんでいる。

 

 グリゴリにおいて並ぶものがいない狙撃の名手。あのヴァーリチームを捕縛寸前にまで追い込んだ神域の射手。悪神ロキすら警戒した魔弾の使い手。

 

 それが、この大激戦の時に事実上の後方待機。

 

 ペトとしてはショック極まりねえんだろうな。姐さんの妹分としての責任が果たせねえと思ってんだろ。

 

 ……だけどさ。

 

「正直、俺はお前が羨ましいよ」

 

「…‥へ?」

 

 妙な事を言われて、ペトは涙を流すのも止まっちまった。

 

 まあ、そりゃそんなことをこんなタイミングで言われたら、訳も分からねえわな。

 

 だけど、実際そうなんだよなぁ。

 

「俺は、親が死んだのか生きてるのかもわからねえ。だから死んだといわれてもショックになれる自信がねえ」

 

 ま、捨てられたようなもんだからな。そんな事した親に感謝の気持ちとか親愛とか持てるわけがねえ。

 

 だから、親の死を悲しむ事がちゃんと出来たペトの事は羨ましい。

 

「きっと姐さんも少しはほっとしてるぜ? ペトがちゃんと親御さんの死にショック受けれた事はさ?」

 

「で、でもっす! 今は神と戦わなきゃならない時で―」

 

 ペトはそういい募るが、俺は切り札を抜いた。

 

「俺は、輝き(英雄)になる男、ヒロイ・カッシウス!!」

 

 その大声に、ペトは一瞬黙る。

 

 だが、それが俺のモットーだ。

 

 英雄とは、心を照らす輝きだ。それが俺の信じる英雄の姿で、姐さんの姿だ。

 

 あの絶望しかありえない状況。それを絶望とも思えない程暗く沈んだ世界にしかいなかった俺を、姐さんは照らしてくれた。輝く世界に連れ出してくれた。

 

 だから、俺もそれになる。必ず、心を照らせる輝きになる。

 

「だからお前も照らしてやるよ。……安心しな。お前が役に立てなくて姐さんに何かあるかもしれないって不安なら、俺がその分頑張る事で埋め合わせしてやるさ」

 

 仲間なんだしな。当然だ。

 

 俺達はペトの狙撃に何度も助けられた。おかげでだいぶ楽に戦う事だって出来た。

 

 だから、ペトが戦えない時ぐらい俺達がフォローする。当然のこった。

 

 それでもペトは不服そうだったから、俺は切り札を切る。

 

「五年前に、姐さんが悪魔祓いと共闘したって前に聞いただろ?」

 

 凄くこっぱずかしいし、姐さんには言いたくねえんだが仕方がねえ。

 

「あれで、俺は姐さんに助けられたんだ」

 

「え、ええええ!? お、お姉様そんなこと一言も言ってないっすよ!?」

 

 ペトは度肝抜かれた顔をするがまあ当然だな。

 

 そして、姐さんが言ってねえのも当然だ。

 

「気づいてねえんだろ。まさか助けなきゃいけねえ子どもが、教会の秘密兵器になるだなんて思いもしねえだろうしな」

 

 イドアル孤児院の出身だってのも気づいてねえだろうな。俺、英雄になると決意してから苗字変えてるしよ。

 

 あ、念のために念押ししとこう。

 

「あ、姐さんたちには言うなよ? それにかこつけて構ってもらおうとか思ってねえんだ」

 

 ああ、そういうことは英雄らしくねえしな。

 

 英雄たる者。構ってもらうのならばそういうの関係なしでやるべきだ。そっちの方が俺もうれしい。

 

 そして、だからペトは今戦えないのは気にしなくていいんだ。

 

「……お前と同じように俺も助けられた。だから、お前が戦えない分は俺がお前の分まで姐さんの力になってやる」

 

 そういって、俺はニカリと笑う。

 

 ああ、これで元気になれなんて言わねえよ。

 

 だけどな? それでも、最低でも少しは吹っ切ってほしいんだよなぁ。

 

「出来ねえ事を無理にする必要はねえ。出来ない現実は受け止めて、だったら何をすればいいか考えな」

 

 ああ、俺はそういうこと本気で考えてるぜ?

 

 夢を叶えるってのはそういうことだ。

 

 出来ない事を分からずに、無理にぶつかってるんじゃない。その結果壁をぶち壊してんじゃない

そんな事できるのはごく一握りだ。

 

 むしろ出来ない事は出来ないって分かってる。そのうえで出来る事をちゃんと考える。そして壁を乗り越える方法をきちんと考えて実行に移す。

 

 そういう意味じゃあ、俺の禁手は都合がいいな。

 

 汎用性が高いって事は、手数が多いって事だからな。どれか一つぐらいは、壁を乗り越える手段が用意できそうだ。

 

 だからさ、ペト。

 

 今戦えないっていうならそれは受け入れろ。

 

 そのうえで、出来る事を考えるんだ。

 

「……無理に頑張るな。俺達はお前の仲間なんだから、頼っていい時は頼ってくれや」

 

 俺はそう言ってニカリと笑うが、ペトはさらに泣き出した。

 

 あれぇえええええ!? 対応間違えたぁああああ!?

 

「わ、悪い!! なんか間違えた―」

 

「違うッスよ。……これは、嬉し泣きッス」

 

 そういうと、ペトは俺に近づいて―

 

―頬に唇が、触れた。

 

 ………え?

 

「ちょっと元気出たッス。ありがとうっすよ」

 

 そういうと、ペトはミネラルウォーターを一気飲み。そしてドアを開けて外に出る。

 

 そしてドアを閉める前に、ニコリとほほ笑んだ。

 

「ま、実は抱いてもらおうかとも思ったっすけど、気が楽になったんで今日は良いっす!」

 

 それだけ言うと、ドアを閉めた。

 

 ……童貞卒業のチャンスが!?

 

 いやいやいやいや。英雄としてこれはこれで良い事したんだから良いに決まってるぜ。そうだそうに決まってるぜ。そうだと思え、馬鹿。

 

 俺は、ちょっと悶々として眠れなかった。

 

 ……唇、柔らかかったなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんでもって次の日の放課後。

 

 会談当日にも関わらず、俺達は駒王学園に登校していた。

 

 ここ数日はお嬢達の使い魔が代わりに授業受けてたけど、今回だけは特別に駒王学園に登校した。

 

 で、この放課後に何をやっているのかといえば―

 

「おっぱいメイド喫茶希望です!!」

 

「却下」

 

 イッセーの妄言を、お嬢が切って捨てた。

 

 今俺達がやってるのは、学園祭に何をするかという会議だ。

 

 なにせ、ロキ戦が終わったら結構間を置かずに修学旅行だからな。オカルト研究部の半分以上を占める俺ら二年生組は準備ができねえ。三年生の二大お姉さまと一年生コンビで動かすしかねえわけだ。

 

 そういうわけで、俺達は何を出しものにするかもう決めとかないといけないわけだ。

 

 何を出すのかさえ分かっていれば、四人だけでも最低限の準備はできるからな。

 

「部長!! 部長と朱乃さんの二大お姉さまのおっぱいがあれば、学園祭どころか駒王町の天下取れます!!」

 

「天下取る前に教師達に討ち取られるッス。全員退学もあるッス」

 

 ちょっと調子を取り戻したペトが、イッセーに辛辣なツッコミをぶちかます。

 

 うん。おっぱいメイド喫茶って、完璧に風俗店じゃねえか。

 

 高校生がすることじゃねえよ。いや、大学だってそんなこと堂々とやったら即座に罰受けるっての。

 

「イッセー君。その意見が通ったら、他の男子もお二人の胸を見る事になるんだよ?」

 

「そうだった!? それじゃあ、おっぱいお化け屋敷も無理か!!」

 

「……そんな馬鹿な事考えてたんですか」

 

 木場の指摘に愕然となるイッセーに小猫ちゃんが呆れ返る。

 

 阿保だ。アホすぎる。

 

「あの~。手堅く去年と一緒にするってのはどうですかい?」

 

「それもいやね」

 

 俺の意見に、お嬢が首を横に振った。

 

 いや、でも例年通りって定番だよな。少なくても、去年のノウハウが活かせるんだしよ?

 

 だが、お嬢は乗り気にならないみてぇだ。

 

「去年と同じというのも芸がないわ」

 

「そうですわね。それに、去年は生徒会から「やりすぎ」と苦言が呈されましたもの」

 

 と、これまた調子が少し戻った朱乃さんがそう指摘する。

 

「去年は何をしたのかしら?」

 

 と、ほぼオカルト研究部員のイリナが首を傾げた。

 

 確かに。ってか、やりすぎっていったい何したんですかい?

 

「去年はお化け屋敷だったんだけど、暇していた妖怪をスカウトして本格的なのをやっていたんだよ」

 

 木場、お前止めろよ。

 

 学園祭は生徒が主軸になってこそだろうよ。そこで外部の人をメインにしたらいかんだろうよ。

 

 ……え? そこじゃない?

 

「だったら、普通にオカルトの発表会をしたらどうでしょうか?」

 

 と、ギャスパーが冷静に考えると当たり前の意見を言ってくれた。

 

 確かに。ここオカルト研究部なんだもんな。そりゃ普通に考えてオカルト絡みでやるべきだろ。

 

 当たり前すぎて想定外だ。目から鱗だ。

 

 だけど……なぁ?

 

「それ、人集まらねえだろ」

 

「ッスよねぇ」

 

 俺とペトは顔を見合わせて頷き合った。

 

 なんか、昨夜の件で俺達に共通の意識が芽生え始めてるな。まあ、同類なのを理解しあったから当然か。

 

 とはいえ、それは今何の役にも立たねえわけだがな。

 

「……いっそ、オカルト研究部(うち)限定でミスコンとかやっちゃったり?」

 

 イッセーのその呟きが、女子全員の顔を見合わせる結果となる。

 

 人集まりそうだな、それ。

 

 なにせ、この学園を代表する二大お姉さまの三年生。一年生にも学園のマスコット小猫ちゃん。二年生に至っては信徒三人衆にペトがいる。

 

 ……すごく大盛況になりそうだ。しかも接戦になるぜ?

 

「「一番は私ね」」

 

 と、お嬢と朱乃さんがハモった。

 

 その瞬間始まる火花と口撃。

 

 ロキと戦う前に激戦が勃発しそうになったが、しかしふと夕日が差し込んだ。

 

 それを見て、俺達はしんとなる。

 

 北欧神話に伝わる、神々の黄昏、ラグナロク。

 

 まさに黄昏時だった。

 

 ……だが、そんなことは起こさせねえ。

 

「お前ら、気張るぞ」

 

 アザゼル先生がそう告げ、俺達は無言で頷いた。

 

 さて、やるかロキ!!

 




イッセーは、なんで学園祭で風俗店作ろうとしたんですかね……。
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