ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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そして、黄昏は始まった。


第三章 13 ラグナロクの始まり

 

 そして夜、総理官邸に俺たちは集まった。

 

 その屋上で、俺たちはロキを待ち受ける。

 

 空にはタンニーンさんも浮かんでいる。その姿はすでに衆目に知れ渡っていた。

 

 本来の予定なら、術によって認識を阻害して一般人の目には映さないように配慮する予定だった。

 

 だが、日本政府からの要請でそれは却下される。

 

 この機に、少しでも異形の存在に慣れさせるべき。それが、日本政府が下した決断だった。

 

「―時間ね」

 

 すでに会談は始まった。ロキも捧腹も確実に仕掛けてくるはずだ。

 

 さて何処からくる? 悪戯の神ともあろう神だ。少しぐらいひねっていてもいいだろう。

 

 もしかすると、周辺を警護している自衛隊の中に紛れ込んでいる可能性もある。不意打ちには注意しねえとな。

 

 そう思った瞬間、ヴァーリが愉快そうに笑って、空を見上げた。

 

「小細工なしとは恐れ入るね」

 

 総理官邸屋上の空間が歪み、大きな穴が広がった。

 

 その光景に、自衛隊の人たちからどよめきが広がる。

 

 そして、其れをBGMに、ロキとフェンリル、そして捧腹とソウメンスクナが姿を現した。

 

 真正面から来やがったか。思ったより豪胆な神経してやがるな。

 

「目標確認、術式を展開せよ」

 

 バラキエルさんが無線でそう伝え、屋上全体が転送魔方陣で包まれる。

 

 シトリー眷属総出で展開された転移術式。それでもロキが本気になれば破れるが―

 

「―面白い」

 

 ロキはそういうと、不敵に笑ってそれを受け入れる。

 

 そしてその瞬間、戦場として用意された採石場跡に転移した。

 

 イッセーもすでに鎧を形成。俺たちも全員戦闘態勢に移る。

 

「逃げないのね」

 

「その必要などない」

 

 お嬢の言葉に、ロキはそう返す。

 

 圧倒的な余裕を見せながら、ロキはそう告げる。

 

「抵抗があるのは想定済みだ。それに―」

 

 その瞬間、ソウメンスクナの姿が歪む。

 

 そしてそこに現れたのは、赤い炎に包まれる巨人の姿だった。

 

 その事実に、俺たちは度肝を抜かれた。

 

 お、おい、どういうことだ!?

 

「ソウメンスクナじゃない!? ロキ、これはどういうこと!?」

 

「策謀の神が真正面からくると思ったかね? ソウメンスクナはある程度は自立稼働も可能なのだよ」

 

 そう愉快そうに笑いながら、ロキは種明かしをする。

 

 そして捧腹もまた、俺たちをあざ笑った。

 

「和議に反対なのが我々だけとでも? すでに別動隊が総理官邸を強襲している。オーディンはソウメンスクナが滅ぼすだろうさ」

 

 ……なんだとぉ!?

 

 今回の敵は、ロキだけじゃなかったのかよ!?

 

 俺たちが度肝を抜かれる中、ロキも捧腹も俺たちを馬鹿にした笑みを浮かべる。

 

「アースガルズからはヴァルキリーと英雄(エインヘリヤル)。日本からの術者と妖怪。其の混成軍が今頃総理官邸を襲っているころだろう。シトリーの娘とあの狗神付きごときでどうにかできるとは思えんな」

 

「そして貴様らは我々が滅ぼす。各勢力の和議など結ぼうとする愚か者共が、滅びるがいい」

 

 その言葉とともに、炎に包まれた巨人が一歩前に出る。

 

 それを自慢げに見つめながら、ロキは声を張り上げた。

 

「魔王ルシファーの眷属に下ったスルト・セカンドの失敗を糧に調整した、簡易生産型のスルト・サードだ。龍王が相手でも戦えると自負している」

 

 す、スルト・サード!? そんなのまで用意してんのかよ!?

 

 さらにロキは指を鳴らすと、フェンリルが身を沈めてとびかかる体勢に入った。

 

 だが甘い!!

 

「させないにゃん♪」

 

 そう得意げに黒歌が指を鳴らすと、一気に改良型グレイプニルがフェンリルを拘束する。

 

 よし。どうやら強化は成功したみたいだな。

 

 だが、ロキの余裕は全く持って止まらない。

 

「なら、性能は堕ちるが追加するとしようか」

 

 さらに指を鳴らすと魔方陣が展開され、そこから一回り小さいフェンリルが二体現れた。

 

 ちぃ! スルト・サード以外にもあるとは思ってたが、さらに追加かよ!!

 

「行くがいい、スコルにハティよ。お前の父をとらえた愚か者共を食いちぎれ!! そして―」

 

 さらにロキの影が広がると、そこから大量の龍が現れる。

 

 多数現れた龍は十数メートル。だが、その数は十体を超える。

 

 そしてさらに、数百メートルを超える巨大な龍が、俺たちを見下ろしていた。

 

「あれは……ミドガルズオルムだと!?」

 

 タンニーンさんが目を見開き、それにロキは気分よさそうに嗤う。

 

「ミドガルズオルムの戦闘特化型仕様、ヨルムンガルド。それと量産型も多数用意させてもらった」

 

 あ、ヤバイ。これはヤバイ。

 

 数ならこっちが上だと思ったけど、そっちでも上回られてるじゃねえか!! これ、やばくね?

 

「ど、どうするんだ、姐さん……んん!?」

 

 俺は姐さんに振り向いて、そして気が付いた。

 

 あれ? 姐さんいない!?

 

 

 

 

 

 

 

 

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 リセスがそれに反応できたのは、偶然だった。

 

 ソウメンのことを死してなお憎悪すらしているリセスは、奴のことは鮮明に思い出すことができる。

 

 そして、ソウメンスクナとは一戦交えていたからぎりぎりで判別できた。

 

 ―あれは、ソウメンスクナではない。

 

 とっさに転移魔方陣から距離を取り、転移から逃れるという判断を取ることに成功した。

 

 むろん、これで予想が間違っていたら大目玉だ。処罰を受けてもかしくない。敵前逃亡まがいである以上当然だ。

 

 だが、どうやらその可能性はないようだ。

 

 ロキが消えた瞬間、総理官邸を包囲しながら大量の魔方陣が展開される。

 

 その数は百を超える。地上にも空中にも展開されたそれは、人影を吐き出した。

 

「……なるほどね。和議を阻止したいのはロキと捧腹だけじゃないってことかしら」

 

 そこから現れるのは、北欧風の恰好をした者と和風の恰好をした者。

 

 人間もいれば妖怪もおり、ヴァルキリーもいる。

 

 北欧と極東の混成軍。それが総理官邸を包囲して攻撃を仕掛けようとしている。

 

 そして、自分の目の前には巨大な鬼神が一体。

 

「……死んだくせに、私達の前に立ちふさがるのね、ソウメン」

 

 邪炎をまき散らすソウメンスクナに、リセスはため息をついた。

 

 ペトの両親を殺し、そしてペト自身も辱しめた外道。

 

 過去を思い出して念入りに殺しておいたのだが、まさか首だけにとどめていたのがこんな形で仇になるとは。

 

 その失態を心から反省し、リセスはキョジンキラーを呼び出した。

 

 ……今度こそ、遠慮なく殺し尽くす。

 

「あなただけじゃない以上、こっちも時間をかけるつもりはないのよ!!」

 

 その巨大魔人の激突と同時に、総理官邸の防衛戦もまた、始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「始まったようじゃのう」

 

 戦闘の振動に気づいて、オーディンはため息をついた。

 

 転移が失敗したのか、それともロキが策をめぐらせたのか。そのどちらかはわからない。

 

 だが、こうなった以上は会談を進めるほかないだろう。

 

 それを理解しているアザゼルは、会談を進行させるために立ち上がる。

 

「それじゃあ、会談を始める前に一つ聞いておこうか」

 

 そういって見据えるのは、日本政府からの代表者。

 

 そこにいたのは、外務大臣だった。

 

「大尽総理は何処に行った? この会談、ねじ込んできたのはお前らだろう?」

 

 不機嫌な表情をアザゼルが浮かべるのも無理はない。

 

 あれだけ豪快かつ強引に事を進めておいて、なぜ総理大臣が今回の会談に参加してないのか?

 

 まさかと思うが、怖気づいたという可能性が脳裏をよぎる。

 

 だとするならば話にならない。

 

 各勢力の和平を結ぶ会談にトップが出てこないというのも問題だ。

 

 だが、その外務大臣はにこやかな表情を浮かべる。

 

「各国との外交政策は私の仕事ですので。最初から総理はこの会談に出席する予定はございません」

 

「そうかよ。で? 大事な和平会談よりも重要な予定ってのは何なんだ?」

 

「それは決まっております」

 

 と、外務大臣はにやりと笑った。

 

「我々の希望通りにこの会談を襲撃してくださった、ロキ神にお礼をしたいとのことです」

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Out

 




ロキ陣営。超強化。

これに関してはリムヴァンが原因ですね。いろいろ暴発などを練らんで突っついていたため、ロキ側も賛同者をこっそり集めやすかったのです。其のため規模がでかめ。








そして、日本政府の意味深な行動。この真の意味はラグナロク編終盤で明らかになります。
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