ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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プロローグ4

 

「……どういうつもりだヒロイ!!」

 

 強引に引っ張っていた手を振り払い、ゼノヴィアが鋭い視線を向ける。

 

「こっちのセリフだ馬鹿。外様には外様の礼儀があるだろうが。相手が敵とはいえ無茶な要求を通したのはこっちだぞ馬鹿」

 

 なのに高圧的な態度を取ったうえ、相手の眷属を勝手に殺そうなどとふざけたことを。

 

「お前は悪魔祓いとして慈悲をあたえたつもりなのかもしれねえが、あんなことしたら戦争の火ぶたが切って落とされるぞ? ここでグレモリーの機嫌を損ねて何か得するか、ああ?」

 

「だからといって、魔女に堕ちた信徒がさらに転生悪魔になっているなど看過できるか? 浄化するのは間違いなく情けではないか」

 

「ま、まあゼノヴィアの言うことにも一理あるわよね? 信仰心があるなら悪魔でい続けるのは苦痛でしかないと思うわよ?」

 

 こいつらは……!

 

 これだから信仰心の強い連中は困るんだ。正義が自分にあると確信している連中は、正義だからとよく考えずにごり押しする。

 

 その妄信は一歩間違えれば英雄になるための障害となる。戦争がそう簡単に起きないこの世界ならなおさらだ。

 

「あいつ等が悪なのはこの際どうでもいい。だが相手の陣地で好き勝手すればむかつくのは当たり前だろ? せめてコカビエルを倒すまでは冷静になってくれ」

 

「おかしな奴だ。英雄になると公言しているのなら、悪魔に支配されているこの土地を解放するのは当たり前じゃないのか?」

 

 ゼノヴィア。確かにそれはそうかもしれない。

 

 英雄とは何か。それはこれからも考えなければならないと思ってる。

 

 だけど、信徒にとっての英雄ならば、それは信仰のために生きるものだ。

 

 その中でも悪魔祓いになっている奴らが英雄になるのなら、それは神の教えに反するものを倒すのが近道だ。

 

 例えば、司祭枢機卿ヴァスコ・ストラーダ。

 

 彼はバチカンのイーヴィルキラーと呼ばれるほどに多くの悪魔や堕天使を屠り、悪魔からは真の悪魔とまで呼ばれるほどだった。

 

 聖剣デュランダルを振るい、現役時代は多くの上級以上の悪魔や堕天使を倒したと聞く。

 

 それによって解放された土地は数多い。

 

 俺はある子どもっぽい理由であの人のことが好きじゃないが、だが彼は英雄と呼ばれているのは確かだ。

 

 なら、悪魔が裏で実権を握っているこの街を解放するのは英雄になる近道かもしれない。

 

 だけど……。

 

「……ゼノヴィア。一応言っておくぞ?」

 

「なんだ?」

 

 これだけは譲れない。

 

「俺にとって最大の英雄は、俺を光射す場所に送ってくれたあの女性(ひと)だ。断じてヴァスコ・ストラーダじゃない」

 

 その言葉にゼノヴィアは顔を怒りで真っ赤にさせるが、だけどここは譲れない。

 

「英雄は、輝きだ」

 

 そう。俺にとって一つだけ断言できる英雄の形がある。

 

 英雄は、輝いてるんだ。

 

 光り輝くかっこいい奴。それが英雄だとだけは言い切れる。

 

 たとえ世界中の人間が、いいや。

 

「たとえ主が否定してもそれだけは譲れない。そして、あそこで強引にグレモリーを殺せば、俺はきっと輝けない」

 

 だから―

 

「俺はコカビエルをぶっ倒す気はあるが、グレモリーに迄喧嘩売る気はねえ」

 

「私の前で、猊下をただの賞金稼ぎより格下というか……っ!!」

 

 聖剣を町中で引き抜かんばかりにゼノヴィアの怒りをかったが、かまうものか。

 

 これ以上こいつらと行動を共にすることはできないけど、だけどこれは仕方がねえ。

 

「ちょ、ちょっと二人とも!! 落ち着いて落ち着いて―」

 

「イリナ。ここは別行動といこう」

 

「そうだな。そうするか」

 

 俺とゼノヴィアは正反対の方向に進む。

 

「これ以上、俺らが一緒に行動しても足並みそろわねえしな? それなら分かれて捜索した方がいいだろ」

 

「ああ。これ以上貴様と一緒にいたら、後ろから切りかかってしまいそうだからね」

 

 意見がようやく一致したぜ。

 

 上には悪いが、セッティング間違えたそっちのミスだ。文句は聞かねえ。

 

「あ、ああもう!! ヒロイくんが悪いんだからね!! 仮にも信徒が猊下を下に扱うんだから!!」

 

 どうやらイリナはゼノヴィアと一緒に行動することにしたみたいだな。

 

 ……ま、そりゃ相方と一緒に行動するにきまってるよな。

 

 だけど、さすがに俺も限界だ。

 

 そりゃぁ、英雄ってのは敵を倒すもんだ。

 

 聖書の教えの英雄の代表格、ジャンヌ・ダルクがいい例だろう。

 

 戦争で英雄になった彼女は、裏を返せば多くの人間の死を生む要因だ。

 

 だから、彼女はイングランドに捕えられたとき処刑された。

 

 勢力同士の戦いの英雄は、相手にとっては恨みつらみたまる極悪人だ。

 

 一人殺せば犯罪者だが、百万人殺せば英雄。

 

 英雄ってのは、つまり殺しをするもんだからな。

 

 ……だから、俺は納得できない殺しはしたくない。

 

 これで俺は人を救ったんだって、断言できることをしなけりゃ、俺は英雄として輝けない。

 

 たとえ誰に後ろ指をさされたって、俺は英雄だと断言できることをしていたい。

 

 もとより、そうでないなら―

 

「………あ、経費持ってんのイリナじゃん!?」

 

 やっべ、財布の金いくら残ってたっけ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……日本のコンビニ飯、美味ぇ」

 

 俺は宿代を浮かすために公園で眠り、そして朝飯としてコンビニ飯を食っていた。

 

 なんだこのうまさは。場末の飯屋よりうまいんじゃねえか?

 

 そう思いながら、俺はほうれんそうのお浸しとやらを食べる。

 

 食事は三食! 栄養を考えて!! そしてできれば腹いっぱい!!

 

 英雄を目指す食の大切さを知っている俺は、食生活にはこだわりがあるのさ。

 

 食は健康の基本。健康を維持できなけりゃ体を鍛えることもできねえし、鍛えなけりゃ英雄何て夢のまた夢だからな!

 

 さて、それはともかくどうしたもんか。

 

 ぶっちゃけ現地に派遣されたエージェントは全員殺されてるからな。俺らが囮になってコカビエルをおびき寄せるしかねえわけだ。

 

 だけど普通に考えれば、エクスカリバー盗んだんだからエクスカリバーを狙うよなぁ。

 

 このままだと高確率でエクスカリバーに狙いが集中するんだが、どうしたもんかな……。

 

 そう思った時、俺の視界にある男が映った。

 

 確か、兵藤一誠……とか言ったか?

 

 まあ、そりゃ地元なんだからいてもおかしくないわな。

 

 そう思って視線をそらそうとしたが、向こうが俺に気づいて顔を向ける。

 

「あれ? カッシウス……さん?」

 

「ヒロイでいいさ。……悪いが今、俺はイリナ達とは別行動中だ」

 

 幼馴染であるイリナ相手に思うところはあるんだろうけど、悪いがそりゃ無理だ。

 

 バチカンに戻ったら間違いなく今後組まされることはないだろうしな。

 

 そんなことを説明しようと思ったが、しかしそれより先に兵藤は考え込んだ。

 

「……考えてみりゃ、あんたの方が協力してくれそうだしな」

 

 ん? なんか嫌な予感がすんだけど……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、え、え、エクスカリバーを破壊したいだとぉ!?」

 

 匙元士郎とか言ったやつが、絶望の表情を浮かべる。

 

「ふざけんなぁ!! 誰が手伝うかそんなこと!!」

 

「落ち着け匙とやら。さすがにこの時間帯でその大声はうるさい」

 

 俺がそういうと、匙は周りを見て座り込んだ。

 

 あの後話があると兵藤に言われて付き合ってみれば、今度はシトリー眷属の一人と合流して話があるってことになった。

 

 で、お茶奢ってくれるということで聞いてみればこんな話だ。

 

「いやいやお前さん? そりゃちょっと考えなしじゃねえのか?」

 

「いや、それが木場の奴が今にも先走りそうでさ? 勝手に動く前に許可がもらえればそれに越したことはねえかなぁって」

 

 聞くと、件の金髪イケメンこと木場祐斗くんはかなりイラついているらしい。

 

 もうすぐにでも飛び出してバルパーを探しかねないぐらいに張り詰めてるってことだ。

 

 だが、引き渡すところまでは俺が無理やり言い出したが、それ以上のことをしたら俺はともかくゼノヴィアとイリナが何かしかねない。

 

 そんなわけで、許可がもらえればとダメもとで聞きに来たわけだ。

 

「木場はエクスカリバーやバルパーってのに復讐したい。あんた等はエクスカリバーを破壊してでも悪用させたくない。利害は一致してるだろ?」

 

「まあ、俺は別に構わねえんだけど……上から何言われるかわかったもんじゃねえなぁ」

 

「いいのかよ!!」

 

 匙から渾身のツッコミが来るが、しかしだなぁ。

 

「なにせ相手はコカビエルだからな。戦力はあるに越したもんじゃねえし?」

 

 うん、普通に考えたら命がいくつあっても足りねえよ。

 

「バルパーの奴が組んでいるかどうかは可能性段階だが、研究の第一人者である奴がいるなら、コカビエルがエクスカリバーの使い手になってるかもしれねえ。……そんなことになったら、間違いなく俺とゼノヴィアが切り札を切っても勝率は五分が限界だ」

 

 俺は自分を過信してない。

 

 英雄を目指している俺としては強大な邪悪に挑むのはまあ構やしないんだ。だがだからといって無謀に突っ込む気はかけらもねえ。

 

 せめて命かけるだけの価値がある勝算がほしい。

 

「だが、仮にも悪魔と共闘……ってのはさすがに俺が上からただじゃすまなくなる。一応育ててもらった恩義はあるんで、裏切り行為はできればしたくねえってのが本音だな」

 

「ほ、ほら! こいつもそういってるし、やっぱやめとけって!! っていうか俺は帰るからな!? 聞かなかったことにするからな!!」

 

 そういって匙は即座に逃げの姿勢をとる。

 

 まあ、こんなこと巻き込まれたら普通は逃げたくなるだろ。止めやしねえよ。

 

 と、思ったのだが匙の移動が止まった。

 

 ん? んん!?

 

「逃がしません」

 

 匙の袖をつかんて動きを封じているのは、兵藤一誠と同じくリアス・グレモリーの眷属だった小柄な女の子だった。

 

「こ、小猫ちゃん!?」

 

「話は聞かせてもらいました。それなら屁理屈程度の言い訳なら用意できます」

 

 と、無表情に告げる小猫と呼ばれた子は、イッセーを指さした。

 

「悪魔の力ではなく、赤龍帝の力を借りるのはどうでしょうか?」

 

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