ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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はい、裏でこそこそ何かしていた総理と日本政府のたくらみが、ついにばらされます。


第三章 17

 総理が、ミョルニルを構えながら不敵な表情でロキを見据えていた。

 

 おいおい。一国のトップ、それも戦闘能力が関わらねえ人間の政治家がなんでこんなところに来てるんだよ。

 

 この国はシビリアン・コントロールだろうが!! 危ないから下がれって!!

 

「この国の政治家か。我は勢力外の人間にまで興味はない。ミョルニルを置いて失せるといい」

 

 ロキがそう警告するが、総理はニヤニヤ笑いを止めずに動かない。

 

 あの、その神はたぶん本気で攻撃するだろうから、下がったほうがいいですぜ?

 

「んな硬い事言うなよ。こっちはあんたに恩があるから、態々足を運んでこんな危ねえところまで来てんだからよぉ」

 

 総理はそう言うが、ロキが何をしたってんだ?

 

 今大絶賛、総理官邸ではロキ及び捧腹と協力した一派が攻撃を仕掛けている真っ最中だ。下手したら総理官邸崩壊する。

 

 むしろ恨みしかねえだろ。怒っていいだろ。

 

「ふむ。貴殿に何かした覚えはないのだがね」

 

「んなこたぁねえよ」

 

 ロキの返答に、総理はそうさらりと答えた。

 

 へ? なんかマジで恩があるのか?

 

 でも、一体何が……。

 

「俺達内閣のお望み通り、都心の真ん中で大暴れしてくれてんじゃねえか」

 

 

 

 

 

 

 

 

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

「……総員、時間稼ぎは終了だ」

 

『『『『『『『『『『はっ!』』』』』』』』』』

 

 自衛隊の指揮官の言葉に、戦闘中だった全員が声を張り上げる。

 

 その声は自信に満ちており、勝利の可能性を信じているものの声だ。

 

 まったくもっておかしな話だと、自衛隊員以外の全員が思った。

 

 彼らの攻撃は自分達には通用しない。それほどまでに圧倒的な差が表の軍隊と自分達にはあった。

 

 対戦車兵器クラスの兵器を持ってくれば話は別だが、都心のど真ん中でそこ迄の行動をするのは野党が許さないだろう。それ位にはこの国の政治についても調べがついている。

 

 だがら、銃火器程度で自分達を倒せるわけが―

 

「全部隊、ウツセミ起動!!」

 

 その言葉とともに、大量の化け物が自衛隊員達の足元から姿を現した。

 

 そしてその化け物達は地上で戦っている妖怪と戦士達に襲い掛かる。

 

 明らか人間のそれを凌駕した肉体の能力。更に、口から火炎を吐いて空の敵も攻撃していく。

 

 この戦いは襲撃者側が優勢だった。それは、ひとえに闘える人材がごく僅かだからだ。

 

 圧倒的な数の差。古来より戦略の基本であるそれが機能していたからこそ、リセス・イドアルも神代小犬もシトリー眷属も苦戦していた。

 

 だが、ここにきて自衛隊員が明確に戦力として機能するようになった。

 

 それが、趨勢を一気に押し返す。

 

「これは、一体……」

 

 その光景に、椿姫が状況を飲み込めず思わず戸惑う。

 

 その隙をついて攻撃しようとした妖怪を、自衛隊員が化け物を使って叩きのめした。

 

「悪かったな! ようやくこの区域に侵入していたパパラッチとか報道陣を強制的に避難させたんだよ」

 

 そういう隊員は、催涙弾で妖怪達を足止めしながら、化け物を使って撃退していく。

 

 そして、椿姫達にすまなそうに謝った。

 

「子ども達にだけ頑張らせてすまなかった。ここからは本格的に戦わせてもらうぜ!!」

 

「ああ、役に立たない()()ももう必要ねえ。思う存分やり返すぞ!!」

 

 そういいながら、自衛隊員たちは一斉に反撃を開始する。

 

 まったくもって想定外の戦力の思わぬ奮起に、一気に趨勢は傾いた。

 

「……なるほど。総理が会談に一枚かんだ理由はこれですか」

 

 ソーナはそう言ってため息をついた。

 

 その手にはスマートフォンがあり、それが動画配信サイトに繋がっている。

 

 そこには、自衛隊の攻撃を無視して周囲を暴れまわる、ヴァルキリーや妖怪達の姿が映っていた。

 

 自分達にはローブを被って戦闘するようにと連絡があったが、どうやら自分達の学生生活を守る為の配慮だったらしい。

 

 そして、そんなものが流れている理由は一つだ。

 

 この警備網に意図的に穴を作り、民間人や報道陣にこの戦闘を中継させる事。それも、自衛隊が苦戦している事実を見せつける事が狙いだったからだ。

 

 おそらく、反撃に移るまでの間に殆ど全てが退去させられているだろう。

 

 それゆえに、人々はこの事実を脅威と見るはずだ。

 

 憲法によって戦争を否定しているこの国は、半世紀以上もの間、戦乱と国民は無縁だった。

 

 その所為か、この国は過剰なまでに軍事に対して危険視する反応も多い。

 

 自衛隊など必要ない。この国は九条があるから攻め込まれない。そう思っている国民も数多い。

 

 そして、戦争を経験していない所為でもし攻め込まれたとしても自分達は大丈夫だと、根拠もなく信じている者達も多かった。

 

 しかし、この戦いが報道された事で人々は思い知るだろう。

 

 ……そんなものは、幻想なのだと。

 

 そしてこの戦いは、ヴィクター経済連合との戦いが激しくなればちゃちなものでしかなくなる。

 

 少なくとも戦闘範囲はこんなものでは済まない。都市の一部分などという、小さな範囲ではなく、東京都全てを巻き込む可能性もある。下手をすれば一地方が丸ごと炎に包まれる可能性もあるだろう。

 

 その際、日本人のこの意識はいずれ致命的なものとなる。少なくとも、避難に対して危機意識が足りなければそれが犠牲者を増やす事に繋がるだろう。

 

 ……ゆえに、その認識を叩き壊す。

 

 其の為に都合がいいのが、各神話勢力の和議だ。

 

 これまでの冷戦に近い関係からいきなり和平が進むことで、反発する勢力は必ず出る。三大勢力の和議に起きた戦いのように、激戦が起きることは十分に考えられた。

 

 そして、一発目でこれだ。

 

 総理官邸及びその周辺を舞台とする、大激戦。しかもこれが民間人によって知らしめられた。

 

 この事実が、国民の危機意識を急速に高める事になるだろう。

 

 そう、それこそがあの総理大臣の本命の目的だったのだ。

 

「食えない御仁です。しかし、彼が現職の総理大臣なのは間違いなくこちらにとっても好都合でしょう」

 

 眼鏡を輝かせ、ソーナはふと笑みをこぼした。

 

「……そしてロキも哀れなものです。今頃彼も気づいている頃合いでしょうしね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様ぁぁああああああああ!!」

 

 真相を大尽の口から告げられ、ロキは激昂する。

 

 当然だ。ロキは自他共に認める北欧神話のトリックスター。

 

 それが、策謀で百年も生きてない人間相手に一杯食わされたのだ。この屈辱はハラワタが煮えくり返るなどというものでは済まない。

 

 だが、大尽の表情はあくまで普通だ。

 

 別にこんなもの、すごくも何ともない。

 

 そう、目が言っていた。

 

「別段仕方がねえよ。こっちは和議ブームのうちに一回でも同じ事が起こればそれでよかったんだ。てめえを狙い撃ちにしてねぇ撒き餌なんだから、気づかなくても無理はねえ」

 

 そう。これはロキの行動を予期していたわけではない。ロキを狙い打っていたわけでもない。

 

 ただ、妨害されやすいだろう和平会談を何度も総理官邸で行わせるだけ。そしてそれを報道陣でも民間の動画投稿でもいいから、襲撃されていくところを国民に見せつければいいだけ。

 

 下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる。まさにそんな方法で戦闘勃発を待っていただけだ。

 

 むしろ、大尽の方が予想外だと言ってもいい。

 

 まさか一回目で、しかもこれほどまでの大規模な戦闘が起きてくれたのだ。

 

「感謝するぜぇ、ロキ。これで阿保共の目も覚める。もしくはノイローゼで引退するだろうな」

 

 その様子を想像して、大尽はくっくっくと、笑みを浮かべる。

 

 念入りに立てた作戦が、想像以上に大成功したものの顔だ。

 

 それはそうだろう。これほどの作戦。一回一回の下準備だけで莫大な金が動く。その負担は文字通り国家予算レベルだろう。

 

 それが一回目で成功した。外れると思った事が思わぬラッキーヒットを起せば、誰だって喜ぶだろう。

 

「俺は総理大臣になった以上、政策の一つ位は意地でも成功させたかったんだよ」

 

 大尽はそう言いながら、ロキを見据える。

 

 その目は、本心からの感謝に染まっていた。

 

「割ときなくせえ国が周りに多いこの国の、防衛事情を立て直すってのが一番大事だ。おかげで叶えられそうだぜ。ありがとよ!」

 

 正真正銘、本心からの言葉だった。

 

「さて、出来れば任期中に防衛費の上限を二倍にしてえもんだぜ。それだけありゃぁ、異形技術の取り込みも含めて莫大な増強が見込めるだろ」

 

 うんうんと、今後を想定して大尽は皮算用を始めた。

 

 だが、それも決して夢物語ではないだろう。

 

 既にネットでの反響は莫大で、国内中でこの事態に対してパニック一歩手前の状態となっている。

 

 既に自衛隊が殆ど戦えてない事に危機感を抱いている国民も多く、この調子なら防衛費増大を望む声は大きくなるだろう。

 

 そして、其れを利用した準備も既に整えている。

 

「五大宗家の阿呆がやらかした先代の時点で、こっちも色々異形対策を独自に考えててよ。グリゴリの人造神器を流用して、虚蝉機関が作ったウツセミってのを回収して研究してたんだよ。ま、ちゃちなもんだが戦力として計算できる程度にはなるだろうな」

 

 その辺りの下準備もきっちりしているのがこの男の恐ろしいところだ。

 

 ……と、言いたいが、その時点では大尽は一有力政治家程度なので、別に関係してない。

 

 だが、それを的確に利用して水面下で動いていたのは事実だ。

 

 そして、其れをこの情勢を利用して一気に進めたのは、まさにこの男の手腕である。

 

 現職総理大臣、大尽統。

 

 この乱世を乗り切るのに相応しい、まさに時代に選ばれた総理大臣だった。

 

 そしてそれ以外にも数々の下準備を彼の内閣は行っている。

 

 どさくさに紛れて流れ出た魔法使いなどに声をかけ、メタンハイドレートの実用化や採掘技術に対する魔法などの転用は計測済み。表立った協力さえ可能になれば、一年と経たずに日本は資源大国となる。

 

 ウツセミの技術に関しても独自研究は進んでいる。政府機関の主導ゆえに人体実験などはあり得ないが、それゆえに安全に運用する技術は確立した。グリゴリからの人工神器技術の提供があれば、即座に大量生産できるだろう。

 

 亡命合戦を利用する事で、様々な魔法使いを雇い入れる準備も出来ている。軍事転用を前提とした魔法使いなら、増大化がほぼ確実な防衛費で雇い入れ、即座に技術を指導させる環境を整えられるだろう。

 

 そして、其れを民間技術にスピンアウトする為の下準備も整えている。

 

 こういう時において、日本という国の環境は圧倒的なまでに有利に働く。

 

 他の国ではこうもいかない。善悪を個人の主観ではなく信仰する神が定めると定義する国では、その神が前提条件を翻してたり実はすでに死んでいるなどという事実に対応しきれない。大国レベルは聖書の教えというある種排他的な教えを信仰しているため、間違いなく出遅れる。

 

 国防方面での大改革を行うついでに、超大国の座をアメリカから奪うぐらいの腹積もりで、大尽は動いていた。

 

 それを理解し、ロキも捧腹も怒りに燃える。

 

 自分達の勢力の未来まで考えた行動を、よりにもよって人間の政治に利用された。

 

 その怒りのままに、ロキも捧腹も瞬時に動く。

 

 そして、其れをイッセー達は庇い切れない。

 

 位置取りが特に悪かった。弾き飛ばされたミョルニルを回収しに行った関係上、孤立している。

 

 ゆえに、総理は接近する捧腹の十束剣を自力でどうにかするしかなく―

 

「……なめんなよ、化け物共」

 

 ……見事に捧腹の顔面に蹴りが叩き込まれた。

 

 同時に、ロキが放った魔法攻撃を大砲で打ち抜く。

 

 神と鬼の同時攻撃を余裕でさばいたその動きに、更に全員が我を忘れた。

 

 そして、その隙を大尽は逃さなかった。

 

「……禁手化(バランス・ブレイク)

 

 大尽が持っていた大砲が輝きながら八つの蛇に分裂し、そして大臣に絡みつく。

 

 更に形状は変化し、スマートな形状の鎧に変化した。

 

 頭、胸、肩、腕、足を龍の頭のような装飾が覆う、ボディスーツとプロテクターの組み合わせのような鎧。

 

 そして、そこから放たれるのは間違いなく龍のオーラ。

 

龍の咆哮(ドラグレイ・カノン)の亜種禁手(バランス・ブレイカー)咆哮纏いし龍の戦士(ドラグレイ・ロア・ファイター)、ここに参上ってなぁ!!」

 

 その言葉と共に放たれた裏拳が、十束剣をへし折り、捧腹の意識を一瞬で刈り取った。

 




A:ショック療法。









別にロキじゃなくてもよかったんです。北欧神話と二本神話の和議じゃなくてもよかったんです。

とにかく何らかの形で反対派が暴発しかねない和議を総理官邸……じゃなくても政府関係の重要地点で起こして、そこに一度でいいから暴走した馬鹿が襲撃を仕掛けてきてくれればそれでよかったのです。

内閣は完璧に一枚岩。其の暴発を求めていた理由は。ひとえに今後の国家情勢のため。

ヴィクター経済連合と敵対する以上、まず間違いなく日本は国際紛争に巻き込まれます。それも、超大国であるアメリカが一周されるほどの戦力がしけてくる。それに対抗するためには、自衛隊の強化が必要不可欠。

然し日本は軍事力を毛嫌いするものがゴロゴロいる国。平和ボケ筆頭国家日本。まず間違いなく色々揉めるのは明らか。








そこで、大尽内閣はこう考えました。「じゃあ、このままだとどうなるか実感させてみよう」と。

で、こうなったということです。

因みに自衛隊が無能を装ってまで本気で反撃しなかったのは、撃退しちゃったら平和ボケが維持されかねないから。

そのため、命の危険を覚悟してでも、報道陣を退出させるまでは防戦に徹するほかなかったのです。









ようは、あれです。人間は経験から学ぶ生き物なので、先ず国内での大規模武力抗争……それも異形がかかわっているものを経験させて、強引に教え込んでやろうというわけです。

そのため、妨害されやすい和議をとにかく国民の目につくところでやらせるつもりでした。もちろんパパラッチや各種マスコミが撮影できたのも、自衛隊が念入りに確認して比較的安全な撮影場所を調べて、そこに誘導するようにわざと締め出しに穴をあけたからです。

そして目論見通りに全国ネットで配信。もちろんマスコミも特別番組で報道中。これによって、強引に自衛隊不要論などを現状でもぶちかますような手合いを黙らせる作戦でした。







あと総理がむちゃくちゃ強い剣。棒ライジングの大統領候補と真正面から殴り合いできるスペックです。

なんで前線に出てきたかって? そりゃもちろん、それはそれとして落とし前就けるためですよ。外務大臣に全部任せて、狙い通りとは言え国内で大暴れしてる阿呆を殴りに行きました。
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