ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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ちょっと切りどころの都合上、短めです。


第三章 18 

 一方その頃、リセス達の戦いも終局を迎えようとしていた。

 

 自衛隊の思わぬ戦闘能力向上により、敵部隊は混乱していた。

 

 今まで障害物としても認識していなかった敵部隊。それが、最低限敵として認識するべきレベルに一斉に上昇した。

 

 更に催涙弾などの足止めを行う者達も大量に現れ、挙句の果てに攻撃ヘリや戦車まで攻撃を開始。

 

 その段階になって、ようやく彼らは理解した。

 

 自分達は、今まで踊らされていたのだと。

 

「エインヘリヤルでもないただの人間風情……がっ!?」

 

「うるせえよ、姉ちゃん」

 

 激昂するヴァルキリーの口の中に催涙弾を叩き込んで、一人の自衛官が怒りをあらわに睨みつける。

 

「民主主義は英雄を駆逐するっつってな。この国は、一握りの英雄だけに未来を託したりしねえんだよ。日本国内に来てんなら、日本のルールに従いやがれってんだ」

 

 更にウツセミで拘束し、そしてその自衛隊員は戦闘を再開する。

 

 如何に頑丈になっていようと、強烈な光や臭いによる刺激は有効。少なくても隙を作る事は出来る。

 

 ゆえに閃光弾や催涙弾による牽制や不意を作ることは有効。いざという時の為に開発された、対異形世界マニュアル通りに事は運んでいる。

 

 加えてウツセミ。かつて罪のない学生達を数百人も巻き込み、教師などに犠牲者を出した忌まわしき事件の産物だが、しかしそれだけの凶行を下手人達が行っただけの事はあり、確かな力になっている。

 

 今ここに、自衛隊は明確な戦力として異形達に対抗していた。

 

 少なくともドーインジャー程度なら対抗できるだけの戦闘能力がある。そして、其れは他の国家では珍しいレベルの成果だった。

 

「ああ、総理からの許可も出た。……こっからは俺達の仕事だ!!」

 

 そう声を張り上げると、更に答える声もある。

 

「そうだ。ここは俺達の国だ」

 

「それを子供達に任せるわけにはいかねえ!!」

 

 状況の変化に対応しきれない敵達を追い込み、集団戦法で、密集していた敵を攻撃していく。

 

 その集中砲火にさらされ、妖怪やヴァルキリー達は明確に劣勢に立たされていた。

 

「俺達は国を守る戦力だ。そして、この会議はこの国の為に必要だ」

 

「そうだ。だったら、俺達自衛隊がこの会議を守らなくてどうするんだ!!」

 

 その決意に、その執念に、襲撃者達は気圧され、そして捕縛される。

 

「覚悟しやがれ化け物共、人間を、国家を、そして何より自衛隊を舐めるなよ!!」

 

 決意とともに、自衛隊による一斉攻撃が残敵を掃討する。

 

 彼らの最大の失態は、完膚なきまでの己の傲慢にあった。

 

 人間の国々など、所詮神話に比べれば弱きもの。ゆえに危険視する必要はなく、うっとおしいということもないだろう。

 

 その怠慢が、いつかを見据えて動いていた人間達によって一気に覆される。

 

 奇しくも、オーディンがロキの在り方を憂いた言葉が現実となったのだ。

 

 短い寿命ゆえに若い命が、今その若さを武器に形勢をひっくり返す。

 

「神の加護も薫陶も持たぬただ人風情がぁあああ!!」

 

 激昂するヴァルキリーやエインヘリヤルに対し、自衛隊員は真っ向から激突した。

 

「全部隊! 上から目線の神の使いっ走りに、人間の恐ろしさを叩き込んでやれ!!」

 

『『『『『『『『『『了解ッ!!』』』』』』』』』』

 

 今ここに、異形の技術によって返り討ちに遭い続けてきた人類の、反撃の火ぶたが切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、その戦いの中一人だけ俯いてるのが、ペト・レスィーヴだった。

 

 その目は決して逸らしたりなどしていない。それだけの強さを彼女は持っていた。

 

 しかしだからこそ、彼女は震えて動けない。

 

 ソウメンスクナを見据えているからこそ、ソウメンに刻み込まれた恐怖が彼女を襲い続けている。

 

 目の前で、両親がミンチにされた。

 

 すぐ近くで、小犬の両親が肉の塊にされた。

 

 そして自分と彼女は、あの鬼に汚された。

 

 ……救出された当時のペトは、すぐに生活を送る事が出来た。

 

 だが、それはあくまで最低限の生命活動の維持だった。

 

 朝起きて、顔を洗い、朝食を食べ、何もせず、昼食を食べ、うつむいて、夕食を食べ、そしてシャワーを浴びて眠る。

 

 そんな抜け殻のような日々の中、しかし体は疼く。

 

 外法の心得があったソウメンに穢し尽くされ、彼女は何もかもが壊れていた。

 

 そんな中、親身に接してくれたのがリセスだった。

 

『―そんなに疼くなら、開き直って男をあさりに行きましょう』

 

 そんなことを、彼女はあっさり言った。

 

『ソウメンだけしか男知らないからそういう混乱するのよ。安心しなさい。世の中の男はもっとまともな奴が多いから』

 

 そう続けたリセスは、ペトにだけ自身の来歴を話して聞かせた。

 

 自分が英雄になろうと思った、最大の傷。そして、その英雄になる為の来歴。

 

 衝動的に持ち金全部を売り払い、神器を移植する実験を自滅覚悟で受けた事。

 

 そして、その上で英雄として活動する為に金が必要であることを忘れていた事。

 

 どうせ自分はもう気にする必要がないからと、移植した神器と持っていた神器を二年間練習している間、必要な金を春を売って稼いでいた事。

 

 そして、その経験が彼女の認識を改めた事だ。

 

『世の中、下半身が緩くてもそれ以外がまともな男は数多いわ。自分がすっきりするだけじゃなく、相手にも楽しんでもらおうってやつはゴロゴロいるもの』

 

 その言葉に縋って試してみたら、本当だった。

 

 こと二年の間春を売り、その後も三年の間ストレス発散や単純な娯楽として性別問わず性を楽しんできたリセスの審美眼は的確だった。

 

 リセスが選んで誘った相手は、自分のことを優しく扱ってくれた。

 

 ソウメンが段違いで酷いだけだ。彼らは自分のことを玩具扱いなど決してしなかった。

 

 一緒に楽しむ相手としての礼儀というか気遣いがあった。ともに楽しもうという心遣いを感じた。

 

 それが、心から救いになった。

 

 壊れてまともな生活などできなくなった自分でも、折り合いをつけさせてくれる環境がある。この喜びは壊れた者を知らない者達には分からないだろう。

 

 勢い余ってすごく開き直っている自覚はあるが、それによって磨かれた審美眼は確かなので気にもならない。

 

 もとから堕天使という、堕ちた存在の出身である事もあり、皆自分の復調を喜んでくれた事も大きい。

 

 そして自分は、いつの間にかリセスのことが大好きになっていた。

 

 堕天使である自分の方が圧倒的に長生きするだろう。人間でしかないリセスとは、短い間しか一緒になれない。それが種族の違いという現実だ。

 

 だが、それでもその数十年間は掛けがいの無いものになるだろう。

 

 ペトはうすうす勘付いている事がある。

 

 彼女の語った過去の来歴。そして英雄を目指す理由から、分かる事がある。

 

 リセスはあの時、ペト・レスィーヴという堕天使の少女を助けたのではない。

 

 ペトを助けることで、かつてのリセス・イドアルを助けたのである。

 

 彼女は英雄になることで、自分自身を救いたいのだ。

 

 だけど、それでもペトはかまわない。

 

 ペトは知っているからだ。

 

 リセス・イドアルは善良な女性である。そして、善良であろうと努力している女性である。

 

 リセス・イドアルは英雄になりたいと思っている。強者になりたいと思っている。心も体も強くなりたいと思っている。それが無理なら、せめて心を支えられるぐらい体を強くしたいと思っている。

 

 そして、そんなリセスだからこそ自分を救ってくれたと知っている。

 

 そして―

 

「……ぅ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 その敬愛するリセスが、窮地に陥っていた。

 




川上作品は癖が強いけど名作。っていうかモブがかっこいいとかすごく憧れるぜ!!








自衛隊大奮闘により、状況ひっくり返し。

なにせ準備万端で待ち構えていたので、数だけならまず間違いなく自衛隊がうえ。加えて防衛線は数的さをひっくり返しやすい。とどめに敵からしたら今まで無視できたのがいきなり戦力になるという想定外。

この三連コンボで、物の見事に情勢をひっくり返しました。とりあえず有象無象はほぼこれで殲滅できます。





そして、小犬が直感で察したリセスのゆがみを、ペトは結構要因からして知っています。

だからこそ、ペトはリセスになついているのです。

……そして、ペトは壁を乗り越えることができるのか。それは次の話で。
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