ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
さあ、決着がつきますぜ!!
それは、一瞬の出来事だった。
周囲の敵が自衛隊に手いっぱいになっている状態を、リセスは決して見逃さなかった。
そのチャンスを狙い、リセスは全力でソウメンスクナに猛攻を加える。
元々巨人用の装備として開発されたキョジンキラー。その性能は巨人との殴り合いで真価を発揮する。
かつて、リセスはソウメンを一対一で殺したことがある。それも、生身でだ。
ソウメンスクナは確かにソウメンを素体により強化されているが、しかしその強化はリセスの成長速度を超えてはいない。
そして、リセスは鍛え上げられたと同時に対巨人兵器を装備している。そのアドバンテージは大きい。
その猛攻が、一歩先を行く。
キョジンキラーの拳がソウメンスクナの頭部を砕き、そしてそれを見つけた。
「あれが、核ね!」
ソウメンスクナの頭部の中には、小さな核があった。
一センチ四方の球体の物体。それが、ソウメンスクナを動かす頭脳体。
あれを破壊すれば、ソウメンスクナは機能を停止する。
そうすれば、少なくともこの場の敵でオーディンを殺せるものはいなくなる。後はヒロイ達がロキを何とかすればいいだけだ。自分が援護に行く事も出来るだろう。
そして、今度こそペトの過去を苦しめる呪縛を砕くことができる。
かつて、自分はペトという少女を救った。
ソウメンという鬼の所業が、あの男を遥かにしのぐ外道だったからこそ、自分は動いた。
だが、もはやペトはそれ以上の存在だ。
彼女は自分の大事な妹分。その幸せを心から願っている。
だからこそ、この場で砕く事で決着をつける。
その決意を込めて拳を振りかぶり―
「っ!?」
そのまま、キョジンキラーの腕がちぎれ飛んだ。
「ダメージを受けすぎた!? こんな時に!!」
これまでの損傷のダメージが大きすぎた。
少しずつ、しかし確実にキョジンキラーは損傷を受け続けた。そしてそれは各部を摩耗させ、キョジンキラー自身の駆動にすら耐え切れない程追い込んでいた。
そして、その隙をソウメンスクナは見逃さない。
一騎に二対の腕を振るい、キョジンキラーのコックピットブロックを潰しにかかる。
鬼神の圧倒的出力によりコックピットが歪み、そしてリセスは一瞬でキョジンキラーの放棄を決意した。
もとより、燃費以外は桁違いに安い代物だ。リセスという動力源がある以上、そのコストはあり得ないほどに低価格である。
ゆえに、リセスは即座に脱出し、しかしソウメンスクナの人工知能はそれを読み切った。
腕の一本が即座に動き、リセスを握り締める。
そしてそのまま、一気に握り潰しにかかった。
リセスは神器を全力で稼働させ、それを防ごうとする。
力比べが起き、そして拮抗。
だが、リセスは体全部を使って踏ん張っているのに対し、ソウメンスクナは腕を一つしか使っていない。
即座にキョジンキラーを潰していた腕を使い、さらなる圧殺を仕掛けようとする。
「リセスさん!!」
即座に小犬がカバーに入ろうとするが、それは悪手だ。
「かまわないで! ソウメンスクナのコアの方を!!」
ソウメンスクナが全ての腕を使えば、いかに小犬が犬神の力を宿しているとしても力比べでは勝てない。それは悪手だ。
だが、既にソウメンスクナのコアは露出している。其れさえ壊せばソウメンスクナはもう意味をなさない。
だが、それを指摘している時間がまず意味をなさなかった。
一瞬で、ソウメンスクナは小犬すら掴む。
小犬もまた強引に抵抗するが、さらに残りの腕が止めを刺さんと行動を開始しした。
シトリー眷属も自衛隊も援護射撃を行うが、しかしソウメンスクナを倒すには足りない。
ピンポイントに核を狙い打とうにも、しかし小さすぎて自衛隊もシトリー眷属も攻撃が当たらない。
……ここまでなのか。
死に物狂いで努力をした。
持っている資金を惜しげもなく投入した。
体が快楽から逃れられなくなるぐらい、体すら差し出した。
そして、能力を最大限に発揮する為、体も虐め抜いた。
しかし、それでも英雄という頂には届かない。
そして、自分が助けた少女すら死なせて人生を終える。
それが、たまらなく嫌だ。
「いやよ、こんな終わりは……」
これで終わりだなんて受け入れられない。
いやだ。いやだ。これは嫌だ。
「……誰か、助けて」
其の声は、誰にも届かなかった。
だが、そんなものがなくても助けてくれるものはきちんといる。
それだけの事を、リセス・イドアルはきちんと積み上げていた。
ここで、見捨てていいのか?
ここで、彼女を死なせていいのか?
せっかく再会できた友を、こんな形で失っていいのか?
……敬愛する者を、こんな場所で、英雄にさせずに失わせていいのか?
一瞬で、答えは出た。
「お姉様ぁ!!」
其の声が届くと同時、ソウメンスクナの動きは止まった。
ペト・レスィーヴの人工神器、
その弾速は、秒速15kmを超える。対して音速は精々秒速400メートル足らず。
ゆえに、その言葉が届く前に全ては決着していた。
リセスの視界にあるソウメンスクナの核は、見事に撃ち抜かれていた。
そしてソウメンスクナは脱力し、そのまま倒れる。
大きな轟音を響かせて、ソウメンスクナは無力化された。
そして、その場にいる者達は敵味方問わず唖然としていた。
無理もない。この場にいる者達の大半は、頭部にソウメンスクナの核がある事をすら認識していなかった。
かろうじて認識していた者も、その神業に目を見張るほかない。
1km近い距離離れている、1cm四方の物体を、速射で撃ち抜く。
断言しよう。神業という言葉すらぬるい。
「な、何が……起こった?」
「そ、ソウメンスクナが……」
術者やヴァルキリー達は、どういう事なのかすら分かってない。
大火力での広範囲殲滅などを考慮する彼等だからこそ分からない。その神業が、どれほどの偉業なのかを。
そして、其れを理解する事の出来る自衛隊もまた、硬直していた。
銃による射撃を行う彼等だからこそ、狙撃の難易度も承知している。
はっきり言おう。この場にいる自衛隊員に、あれと同じ事ができる者などはいない。
「おい、マークスマン。お前、出来るか?」
「百回撃ってもできねえよ! しかも、さっきの子って……」
自衛隊員はよく知っている。狙撃に関して異常な拘りがある狙撃職人と揶揄される日本の自衛隊だからこそよく分かる。
神業である。狙撃の神の御業である。
作戦開始前の彼女の様子は分かっている。
誰が見ても絶不調。なんでこんな場所に配属されたのかすら分からない程、バッドコンディションだった。
それが、誰も真似出来ないような狙撃を行ったという事実に、自衛隊員は思考を停止していた。
そして、其の間に動くものはシトリー眷属。
「今です! 勝敗は決しました!!」
其の声とともに、シトリー眷属が敵部隊を捕獲する。
ペトの圧倒的な狙撃技量を知っている彼女達だからこそ、この事態に対して比較的冷静に動く事が出来ていた。
それで我に返った者達は、勝敗が決した事を悟ってそのまま縛につく。
そして、すぐに正気に戻った自衛隊員も捕縛を開始した。
そんな中、リセスと小犬は疲れ果てて背中を合わせて座り込んだ。
「な、何とかなったわね」
「うん。疲れたぁ~」
ヒロイ達の援護に行くべきなのだろうが、かなり消耗してしまった。
できれば少し休みたい。一息つくだけの時間が欲しかった。
そして、そんな二人に涙を流しながら文字通り飛んでくる少女が一人。
「小犬ちゃん、お姉様ぁあああああ!!!」
鼻水すらたらしながら、ペトは二人に抱き着いた。
「心臓が止まるかと思いましたぁああああ!! 小犬ちゃんも無事でよかったぁああああ!!」
そのまま抱き着いて号泣するペトに、リセスも小犬も苦笑する。
「……ね、リセスさん」
そして、リセスは小犬のその言葉を聞いた。
「まだ、自分の事助けたい?」
その言葉に、リセスは苦笑する。
この子は直観力に優れているが、まさかここまでとは思わなかった。
ペトにしか話していない自分が英雄を目指す理由。それに勘付いているらしい。
そして、其れに対する答えも決まっていた。
「そうね。救いたくてたまらないけど……」
そこで言葉を切り、リセスはペトの頭をなでる。
「今は、この子が救われた事で十分だわ」
「そっか。そだね」
そして小犬もペトを抱きしめる。
まだ戦いが続いているところはあるが、しかしこの場の勝利は確実だった。
だから、ここは少しだけ休んでもいいだろう。
彼等もまた、英雄と名乗るにふさわしい猛者なのだから。
Side Out
俺はこっそり移動しながら、その大暴れを目に焼き付けた。
現職総理大臣、大尽統が、ロキの眷属を相手に無双をぶちかましている。
そのオーラを纏った攻撃が、量産型のミドガルズオルムをことごとく殴り飛ばし、蹴り飛ばしていた。
「おのれ! 人間風情が!!」
そしてロキの放つ魔法攻撃すら、オーラを纏った拳で弾き飛ばす。
あ、あり得ねえ。あのオッサン、民間人で、政治家で、しかもオッサンだぞ?
なんであんだけ強いんだよ。異形組織の長か!!
「馬鹿な、ただの人間が、十束剣を持った捧腹を倒すなど!! ブリュンヒルデにすら食い下がるだろう猛者だぞ!!」
相当強力な実力者だったのは分かる。捧腹の奴は強敵だった。
それを、一瞬で無力化した総理は一体何なんだよ。
そして、その攻防の中総理は余裕すら見せている。
なにせ片手はミョルニルで埋まっている。そのハンデは大きいはずだ。
にも関わらず、俺達が唖然とする中今度はスルト・サードの股間に上段蹴り!!
「舐めんな!! 俺は空手が趣味でな、それ位出来なきゃ話にならねえ!!」
「武器を持った鬼をその程度で倒せるかぁあああ!!!」
渾身のツッコミを入れながら、ロキは再び魔法攻撃を放つ。
それを倒れたスルト・サードを盾にして防ぎ、総理は吠えた。
「馬鹿野郎!! 空手ってのは素手で刀持った武士から身を守る為の武術だ。武器持ちぐらい倒せて当然だ!!」
その言葉とともに、総理が空を飛んだ。
ボディアーマーの一部である足にある龍の頭から、ブレスが放たれてジェット推進になる。
そのどっかのスーパーヒーローみたいな飛び方に、ロキは唖然となった。
そして、その隙に総理は懐に潜り込む。
「なあ、オイ。言っとくがむかついてんのは俺もなんだぜ?」
―そのすごみに、ロキすらたじろいだ。
こっそり位置取りしていた俺も、我に返って援護しようとしたタンニーンさんも、いざという時の根性なら人一倍のイッセーすらビビった。
そんぐらいのマジの怒気が放たれている。
「いくら利用したとはいえよ。その為に何人うちの自衛隊員が死んだか分からねえ。……そんな大騒ぎ起こしておいて、まさかこの国からただで出られるたぁ思ってねえよなぁ?」
そして、その拳は今まで以上のオーラが込められ―
「この国のトップの被戦挙拳を舐めんじゃねえ!!」
豪快に地面に叩き落とした!!
ってか字が違う!! おやじギャグ!? 余裕あるなオイ!!
そして、総理はロキが体勢を立て直す間も与えずにミョルニルのレプリカを振りかぶる。
そのミョルニルから雷がほとばしり、そして轟音をまき散らした。
おい、イッセー並みにミョルニルを使いこなしてねえか、あのオッサン!!
「馬鹿な! 俗物にミョルニルが使えるわけがない!?」
「ほざけ! 確かにおりゃぁ俗物の王だが―」
狼狽するロキに、総理は大上段からミョルニルを振りかぶり―
「―この国の未来を思う気持ちに、よこしまなもんなんて一つもねえぞぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
そのまま、雷撃が一帯を包み込む!!
ロキはかろうじてかわすが、その衝撃と雷撃は、残っていたロキの眷属を全員まとめて叩きのめす!!
これでロキの手勢は全滅。後はロキのみだ。
そして、運がいいことにロキは俺の目の前に立っていた。
この隙、逃さん!!
「槍王の型、
俺は躊躇することなく必殺技を叩き込み―
「―甘いぞ」
その瞬間、ロキの姿がまた掻き消えた。
そして、俺の後頭部にロキの手が当たる。
またか! また幻術か!!
「貴様の攻撃は見切った。生体電流の操作が肝だな?」
なるほど、気づきやがったか。
俺の編み出した必殺技、槍王の型は、生体電流を操作する事で発動する奥義だ。
人間は筋肉を生体電流で動かす。脳とは言わばタンパク質でできた生体コンピューターだ。そして、人間は基本的に体がリミッターを本能的に掛けている。
槍王の型は、紫に輝く双腕の電磁王を利用してその生体電流を操作し、リミッターを解除して脳の機能を向上させ、更に生体電流の性能も強化する。
その上で放つ、俺の限界を三段飛ばしした攻撃だ。
ゆえに、体の負担がとてもでかい。
脳もオーバーヒートするし、激痛は走るし、体も無茶な電流操作でしびれる。
何とか二発撃てるようにしたが、それでも限界はある。
「この状態で刺突はできまい。我の攻撃の方が、構えを取り直すより早いぞ?」
なるほど、確かにそうだ。
だが……。
「言ったよな? オーディン神を殺したいなら、俺を殺してみろって」
「そんなことを言ったな。ならば、ここで実行させてもらおう」
………誰もが動けるかどうか分からない状況で、俺達は一瞬だけ呼吸をし―
「死―」
ロキが魔方陣から魔法を放つ―
「―槍王の型、
―その一瞬で、俺は決定打を叩き込んだ。
イッセーSide
俺は、その光景を目の当たりにした。
圧倒的不利な状況のはずのヒロイが、逆転した。
いつの間にか移動してた所為で、誰も援護できない中、ヒロイはロキを吹っ飛ばした。
おい、ロキが言うには、槍王の型は出す余裕がないんじゃなかったのかよ?
そんな中、ヒロイはふらふらしながらも、得意げな顔をして見せた。
「……悪いな。槍王の型はバリエーションがあるんだよ。さっきのは刺突の
な、なるほど。隠し玉がまだあったのか。
「バリエーションがいくつかあれば、戦術の組み立てができるだろ? 俺は手数特化型だから、これぐらいの伏札は持ってんだよ」
そう得意げに言って、ヒロイはそのままぶっ倒れる。
あ、限界だったのか。
俺達は慌てて駆け寄ろうとするけど、それより先に総理がヒロイを受け止めた。
「切り札は最後まで取っておけ。出すなら更に奥の手を……ってか」
そう面白そうに言う総理は、気絶したロキを掴んでた。
あの、ミョルニル置きっぱになってんだけど? レプリカだけど、一応神様の武器なんだけど?
ツッコミいれてぇえええええ!! でもお偉いさんだからうかつにできねぇえええええ!!!
俺達がどうしたもんか思ってる中、総理は気絶したヒロイを背負うと、俺達に親指を立てる。
「……勝ったぜ、野郎ども!!」
………ああ。勝ちましたね。
死亡者を一人も出す事なく、俺達は神様の軍勢を返り討ちにしたんだ。
やったな、ヒロイ!!
相も変わらず狙撃に関しては化け物なペト。超遠距離から狙撃をぶちかます猛者です。
それはともかく総理大臣、無双。例えるなら内閣無双?
まあ、政治家なのでうかつに前線に出てこれませんが、かなりシャレにならない戦闘能力です。神すらぶんなぐりました。
そしてヒロイの必殺技、槍王の型の詳細説明。能力は超精密な生体電流操作です。
人間の体にかかわる微細な電流を操作することで、無理やり限界を超えた動きをぶちかますのがこの技。捧腹の動きに干渉したのはこの技の余技にすぎません。
もっとも、反動が大きすぎるため現段階ではご覧の有様ですが。
そしてラグナロクは