ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
英雄、色を好む
塔城小猫から話を聞くと、これまた驚くべきことをきいた。
俺たちのトップである、聖書の神。
その神が作り上げた人に宿される奇跡の力、
その中でも、十三個しか存在しないとされる、神すら殺せる力の具現、
そのうちの一つ。ブリテンの赤い龍を封印した神滅具、
その今代の持ち主が、目の前にいる兵藤一誠だった。
「お前、すごい奴だったんだな、兵藤一誠」
俺は素直に褒める。
「いや、赤龍帝の籠手はすごいけど、俺自身は大したことねえし……」
兵藤一誠はそう謙遜するが、隣にいる塔城小猫は首を振った。
「そんなことないです。イッセー先輩は頑張り屋さんで、ライザー・フェニックス相手に一歩も引かずに立ち向かう強さを持ってます」
へぇ、フェニックスってことは、72柱直系の奴のはずだ。
それと真っ向から戦えるだなんて、やるじゃねえか。
「それも、イッセー先輩が神器に目覚めたのは悪魔になってからです。……わずか数か月でそこまでできればすごいと思います」
「いや、そりゃすごいってもんじゃねえよ。お前は少年漫画の主人公か」
むしろ唖然となったは俺は。
「そ、そうか?」
「お前さん。俺は五年かかってようやく教会の秘密兵器と呼ばれるようになったんだぞ? 何分の一で72柱直系を倒してんだよ」
もう戦慄するよりあきれるほかない。
いや、だがしかし……。
「悪魔の力は借りない。だがドラゴンの力は借りる。……屁理屈としてはまあいけないこともねえか」
ま、コカビエルをどうにかするだけなら、十分何とかなるか。
「OKOK。どうせ単独行動で困ってたんだ。……それでいいぜ」
ああ、これはもう仕方がない。
ゼノヴィアの阿呆がいらんことしたせいで俺がしりぬぐいする羽目になり、さらにそのせいで単独行動までする羽目になったんだ。
もう全部ゼノヴィアのせいってことにしておこう。俺はもう限界だ。
「……ただし、こっちも一つ条件がある」
「え?」
兵藤一誠たちが息をのむ中、俺はその条件を口にした。
「まずはその、木場祐斗ってのと話がしたい。……詳しく話を聞かせてくれ」
「詳しい事情は分かったよ」
ものすごーく心外そうな表情で、木場祐斗は話を聞き終えた。
「教会の連中が許可を出した……っていうのが気に食わないけどね」
「……言ってくれるねぇ。まあ、上の連中の管理不行き届きってのは事実だが」
反論しづれえのがまたキッツい話だ。
「まあ、教会は規模があまりにでかいからな。どうしても腐敗する部分が生まれるってことだろ。そっちだって、人間を無理やり転生させてこき使ってるって聞いたことがあるぜ?」
実際、教会ではそうやって教えられている。
転生悪魔は大きく分けて二種類しかない。悪魔に拐かされて人としての誇りを失った売国奴か、無理やり悪魔にされて尊厳を傷つけられた被害者か。
そういう意味じゃあ、ゼノヴィアの反応は当たり前なんだ。
悪魔を真っ当な存在として認識するような教育を、俺達は受けてない。
「まあ、それは否定できないね。実際貴族たちの多くはそうしていることが多いって聞くし」
痛いところをつかれた表情で、木場祐斗は肩をすくめる。
「お、おいちょっと待てよ!! んなことねえだろ!!」
「そ、そうだぜ!! 会長はそんなことしない!!」
それに立ち上がって反論するのは兵藤一誠と匙元士郎だ。
「リアス部長もそうだ! それにライザーもなんていうかいろいろむかつくけど、眷属からは基本的に慕われてたぜ!!」
そう告げる兵藤一誠だが、木場祐斗は首を振った。
「確かに眷属のことを家族のように大切にする悪魔もいる。部長や会長はその通りだ。だけどそれだけじゃないんだよ」
そう木場祐斗が告げ、二人は沈黙した。
ふむ。転生悪魔の側からそれが認められるということは、何も間違った教え方ってわけでもないようだな。
しかし、そこに塔城小猫が反論する。
「……でも、それだけじゃないです」
そう告げる塔城小猫は、まっすぐに俺を見た。
「リアス部長のように、大切に扱ってくれる人もいます。それだけは覚えておいてください」
そう告げるその瞳に映るのは、一体何なのだろうか。
主を愚弄されたくないという想いか。それとも「自分は被害者なんかじゃない」という反感か。
まあ、それはいいだろう。
「OK。覚えておくよ。悪魔の中にも、仲間のために命を懸けられるようないいやつはいるってな」
俺はそういうと、まっすぐに木場祐斗に視線を向ける。
「それで、だ。……あんたは初期段階の聖剣計画で被験体だったってことで、いいんだな」
「ああ。そして、僕たちは使い捨てられた」
ああ、毒ガスで殺されたんだってな。
ふざけた話だ。神に仕える者が、愛を注ぐべき子供たちを失敗作として殺すんだから。
「……あの件は教会でも汚点として唾棄されてるよ。少なくとも、当時の上は知らされてなかったそうだ」
ったく。英雄となる男のいる組織にイラン汚点をつけおってからに。
しかも子供殺しだぞ? 普通まともな信徒は子供に手を差し出すもんだろうが。
「………うぅ」
と、すすり声が聞こえたので視線を向けたら、匙元士郎はものすごく泣いていた。
「なんてひどい話だ!! そんなことがあっていいわけがねえ!!」
ボロボロと涙を流しながら、匙元士郎は木場祐斗の手を取る。
「木場ぁ!! 俺ははっきり言ってイケメンでモテるお前のことが気に食わなかったが!! そういうことなら話は別だ!! ……たとえ会長に怒られても、俺は手を貸すぜ!!」
お、おお。なんかやる気になっている。
なるほど。こいついいやつだな?
「ま、そういうことなら断る理由はかけらもねえ。英雄になる男としては、こういうのを黙って見過ごすわけにはいかねえからな」
「ん? 英雄?」
兵藤一誠が聞きとがめて首をかしげるが、俺はちょっと肩をすくめた。
「将来の夢ってやつだよ。俺は英雄に救われて人になれた。だから俺も英雄になりたい」
そう、俺はあの人に救われた。
ただのぼろ布だった俺は、彼女のおかげで人間になれた。
暗闇の中にしかいなかった俺は、あの人に照らされた。
だから、俺も誰かを照らす存在になりたい。
「餓鬼っぽいのはわかってる。だけど、それでも憧れたからな」
そう、俺はもうなると決めた。なれないなら死んでいいと心から思った。
だから、目指す。輝けるその先を目指して進む。
「俺が教会の悪魔祓いをやってるのもそれが理由だ。ほら、英雄って基本的に戦いで生まれるだろ? 正義を示す宗教の戦士なら、人々を虐げる悪い連中をぶっ倒せそうじゃん」
「「マジで餓鬼っぽい理由!?」」
悪かったなこの野郎。
「兵藤一誠と匙元士郎。そういうお前らにだって夢の一つぐらいあるだろう!!」
「ああ、俺はハーレム王になることさ!! おっぱいいっぱい夢いっぱい!!」
うん、わかりやすい。
だが、ハーレムか。
…………うん。いいな!
「男なら一度は考えるよな!!」
「お、あんた話が分かるな!!」
俺たちは思わずハイタッチを交わした。
「……仮にも信徒がそれでいいんですか?」
塔城小猫にツッコミを入れられるが、それはそれ。
「英雄色を好むっていうだろ? 英雄を目指すなら色事の経験も積んでおかねえとな」
「お前、形から入るんだな」
匙元士郎にすらあきれられた!?
「まあ、俺も男だ。そういうのにロマンを感じるのはわかる。……だが!! 俺はそれ以上に夢がある!!」
眼をくわっと広げて匙は決意の表情を放った。
「俺の夢は!! ソーナ会長と!! できちゃった婚をすることだ!!!」
な、なんだと!?
「出来ちゃった婚!? お前、それは人生の汚点だぞ!!」
結婚してからできるならともかく、致してできちゃったってそれどうよ!?
「汚点いうな!! だって、できちゃった婚ってまずする必要があるじゃねえか! そこにロマンを感じたんだから仕方ねえだろ!!」
いや、おれが言うのもなんだけどどうかと思う。
思わず同意の視線を求めて視線をさまよわせるが。
木場祐斗と塔城小猫は俺と同意見のようだ。
さあ、あとはお前だけだ兵藤い……せ……い?
「う、うぅうううう!!」
なんか涙すら流してるんだけど!?
「匙! 俺も、部長のおっぱいを吸いたいという目標がある!!」
「な、なんだと!?」
「主のおぱーいを!?」
匙はもちろん俺も愕然とした。
あ、相手はグレモリーの次期当主だぞ!? そんなこと、許されるのか!?
「あ、主のおっぱいだぞ兵藤! そ、そんなことが……」
「……できちゃった婚よりはるかに簡単かと」
塔城小猫がツッコミを入れるが、それはスルー。
「できる!! 少なくとも、俺はリアス部長の胸を揉んだことがある!!」
その言葉に、俺は意識が真っ白になった。
り、リアス・グレモリーは立派なものをお持ちだった。
あれを、揉んだだとぉ!?
「……すげえな兵藤一誠!!」
「ふっ。俺のことはイッセーって呼んでくれ、カッシウス」
「ああ、訂正するぜ。すげえなイッセー!!」
俺たちの間に、何か共感するものがあった。
エロス。それは種族の垣根を超えて友情を築く魔法の概念。
ふっ。俺たちは今、敵対関係を超えた絆で結ばれたのさ。
「おいおい、俺を忘れるなよ、兵藤、カッシウス」
「そうだったな匙。俺たちは、同士だ」
「夢の内容はともかく、そこに賭けるエロスを俺も否定しないぜ」
匙の差し出した手に、イッセーも俺もすぐに手を取る。
ああ、主よ。どうかこの絆だけはお目こぼしください。
「……バカばっかです」
「あ、あはははは……」
外野二名。冷めた視線向けんな!!
まあ大体わかっているとは思いますが、ヒロイも対外スケベです。
とはいえ一応協会暮らしであることもあって、イッセーほど暴発はしませんが。