ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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ようやく誤解がとけましたー


第三章 31

 

 そして小犬に連れられた先は、中々特殊な空間だった。

 

 江戸時代とかの京都とか見たいな感じがそうなんだろう。そんな感じの街並みだった。

 

 まだ昼間だってのに空は暗く、そしてそこにいるのは人間とは違う姿形をしたものだらけだ。

 

 てっきり妖怪達は人間の姿に化けて過ごしているのが基本だと思ってたんだが、異空間に籠ってたとはなぁ。

 

「ここはいわゆる裏京都ってかんじかな? 妖怪たちはこの異空間で普段は過ごしてるんだっ」

 

 と、説明しながら小犬は店先で団子を買うと俺達に渡した。

 

「こっちゃんが迷惑かけたお詫びに奢るよ。美味しいから食べてね?」

 

「オッケーっす! ……あ、美味しいッス!」

 

 ホント仲良いな、こいつら。

 

 ……しかし、結構色々な視線が集まってるな。

 

 興味本位の視線などはまだいい。中には警戒心のものもある。そして、一部だけだが敵意も向けられている。

 

 聖書の教えは日本じゃ大手を振るえなかったはずなんだがな。悪魔や堕天使を過度に敵視してたのは、あくまで人間の五大宗家を中心とする連中のはずなんだが。

 

 まあ、中にはロキみたいな保守派も多いだろ。中にはヴィクターにつくべきだという意見を言う異形達もいるらしいし。つまりは、そういう気持ちがある連中だということだろ。

 

 ま、こんなところにまだいるって事はそこまで考えてねえだろうがな。

 

 さて、そんな食べ歩きをしてる間に、俺達はでかいところに辿り着いた。

 

 見るからにあれだな。むちゃくちゃ大物が住んでそうだな。お嬢のところの城にも匹敵するな。

 

 そんな建物の入り口付近で、姐さん達が集まっていた。

 

 そして、沈んだ顔をしたあの時の狐少女が一人。

 

「よぅお前ら。何とか話は通したぜ」

 

「ええ。誤解は何とか解けたわよ」

 

 そう苦笑する先生と姐さんの間から、狐耳少女が一歩前に出る。

 

 そんな少女に並んで、小犬がその子の頭を撫でた。

 

「この子は九重ちゃん。八坂さんの子供なんだ」

 

 そう紹介された九重は、ものすごく申し訳ない顔をした。

 

「……この度は、誠にご迷惑をかけて申し訳なかったのじゃ!!」

 

 勢いよく、九重は頭を下げた。

 

「九重ちゃんに説明が遅れてごめんなさい!」

 

 ついでに小犬も勢い良く頭を下げた。

 

 更に、九重の頭にはたんこぶがあった。

 

 すっげ痛そう……。

 

「一応示しはつけておいたわ」

 

 姐さんが拳を見せてそう言ったけど、貴方の拳は上級悪魔すら殺せますよね?

 

 ま、まあ問題があるとすれば、こんな子供の暴走を止めれなかった大人の方に問題があるだろうしなぁ。俺は、まあいいか。

 

「俺はまあ、別にいいぜ」

 

「ふむ、確かに襲われたのはイッセーとヒロイだけだしな。ならばイッセーが許すなら私達は別に構わないか」

 

 と、ゼノヴィアの視線がイッセーに移る。

 

 ま、イッセーはこの状況下で怒ったりはしねえだろう。その辺に関しては想定内だな。

 

 さって。じゃ、俺達は建設的に話を進めるか。

 

「姐さん! それで状況はどんな感じなんですかい?」

 

「ええ。やっぱり八坂さんは誘拐されていたようね。それも、絶霧が関わっているそうよ」

 

 ってことは、ゲオルクやリムヴァンの奴が関わってるってわけか。

 

 どっちにしても強敵。こりゃ、この修学旅行はかなりややこしいことになってきそうだな、おい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「済まぬな。事情説明も兼ねていたので、あえてこちらに呼び出させてもらった」

 

 で、集められた席で、一人のオッサンに出迎えられた。

 

「……申し遅れた。私は七夜というもの。九重殿の親戚筋に当たる狐だ」

 

 なるほど。彼が今の代理のヘッドということか。

 

「九重の暴走を止められずに済まん。こちらも八坂殿の捜索などで慌ただしく、対応が遅れてしまった。九重の警護を小犬に命じるころには、すでに手遅れでな」

 

 そう言って、七夜さんは頭を下げる。

 

 ……気の所為か、頭を下げるのが遅れたような気がするんだが……やっぱプライド的なあれか?

 

「まあそれはかまわねえよ。其れより、事情を説明してくれや」

 

「そうだな、総督殿。……とは言え、事情は先程説明した通りだ。八坂殿が誘拐された」

 

 ……一勢力のトップが誘拐とか、ヤベえ話だな、オイ。

 

「数日前に、京都の御大将である八坂殿は、須弥山の帝釈天殿が遣わした使者と会う為に出立したのだが……その会談の場に姿を現していないという連絡があったのだ」

 

 そう告げると、七夜さんは頭痛を堪えるように顔をしかめる。

 

「慌てて調べれば、どうも何者かに攫われたようだ。……おそらくは―」

 

「―禍の団だろうな。生き残りの言っていた内容が、今代の絶霧の使い手であるゲオルクと一致した」

 

 アザゼル先生が続けた内容に、俺達は警戒心を高める。

 

 禍の団の大手派閥の一つである、英雄派。

 

 そのメンバーの中でも有数の実力者であるゲオルクが動いているとなれば、曹操も動いている可能性が高いな。

 

「総督殿、魔王殿……八坂殿を助ける可能性はあるだろうか?」

 

 七夜さんはそう言うと、俺達にまた頭を下げる。

 

「九尾の一族の長を失うのは痛手なのだ。手勢でよければいくらでも貸そう」

 

 つっても、どこに行ったのかもわからねえんじゃどうしようもねえだろ。

 

 下手しなくても、もうヴィクターの勢力圏に連れ去られていると考えるべきだし……。

 

「それは意外に行けそうだな」

 

 マジか、アザゼル先生!!

 

「京都は世界でも有数の術式都市だ。そしてその中枢にいるのが九尾の狐である八坂姫。……この辺りの場が乱れてない以上、八坂姫はまだ京都にいる可能性が高い」

 

 マジか! なら……行けるか?

 

「因みに、これが八坂姫の絵姿だ」

 

 そういって、巨大な巻物が開かれた。

 

 そこに映っているのは、確かに九重の面影がある美人さんの姿。

 

 あ、イッセーがいやらしい顔してる。

 

 そんな中、それが目に入ってない九重が丁寧なお辞儀をする。

 

「頼む……いや、お願いします。どうか、母上を助けてくださいませ」

 

 ……こんな小さな子に涙流させる真似するたぁふてえ野郎だ。

 

 よっしゃ! 英雄としちゃぁ、ここはやるしかねえか!

 

「俺は良いぜ。英雄としてこれは見逃せねえな」

 

「私ももちろん! 天使としてここはやるしかないわね!!」

 

 イリナが速攻で俺に続き、そして皆も同意する。

 

 ……ちなみに、絵を見て鼻血を流していた阿保という名のイッセーが一番最後だったのはご愛敬。

 

「よし、じゃあ有事の際は力を借りる。……明日は謝罪もかねて姫様が観光案内をしてくれるってよ」

 

「よろしく頼むぞ」

 

 おお、アザゼル先生の粋な計らいってやつか!

 

 じゃ、その分救出作戦では頑張らねえとな!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜、俺は外で聖槍を出して練習をしていた。

 

 思い出すのは、かつての曹操の動き。

 

 今まで反応することが出来なかったそれを、イメージトレーニングとは言え反応してさばいていく。

 

 そして、同時にカウンターとしての攻撃も忘れない。

 

 時に聖槍を、時に魔剣を使って攻撃を叩き込む。

 

 だが、このイメージトレーニングはそこまで大きな意味を巻き起こすとは限らないだろう。

 

 なにせあれから何か月も経っている。曹操も特訓して強くなっているはずだ。そしてあいつはそもそも本気を出してない。

 

 むしろ、これをやるのはそこそこにしておかないと、逆に本来のアイツの動きについて行けずに倒される可能性だってある。

 

 ……ホント、気を付けねえとな。

 

「……お、頑張ってるっすねヒロイ」

 

 と、ふろ上がりのペトが、タオルで髪の水気をふきながら現れた。

 

「どうした、ペト?」

 

「そろそろ男子の使用時間ッス。適度に終わらせるといいっすよ」

 

 そう言いながら、ペトはホテルの屋上からビルの屋上を見渡す。

 

「……一応京都でもやり合いそうっすからね。狙撃ポイントになりそうな場所は調べとかないと」

 

 なるほど、こいつも色々考えてるな。

 

「ペト、姐さんは?」

 

「今は京都中を、妖怪の人達を連れて捜索中っす。いざとなったら呼ぶって言ってたっすよ」

 

 そうか。姐さんには苦労を掛けるな。

 

 年長者として当然って言ってくれるとは思うけど、俺は英雄としてちょっと微妙だ。

 

 ……いや、そうまでしてまで俺達が修学旅行を楽しめる時間をくれてるんだ。俺達は修学旅行をちゃんと楽しまねえとな。

 

「………ヒロイ」

 

 と、ペトは俺の方に顔を向けて、寂しげな笑みを浮かべていた。

 

 なんだ? なんか、すごく暗い感じなんだが。

 

「お姉様が助けを求めたら……助けてやってくれないっすか?」

 

「あったりまえだろ」

 

 何言ってんだお前。俺が姐さんの力にならねえわけがねえだろ。

 

 おまえには、俺が何で姐さんのこと慕ってるか教えただろうに。なんでそんな状態でそんな感想が出てくるのかがショックなんだけどよ。

 

 俺のそんな不満げな表情が目に入ったのか、ペトは気まずそうに頬を書いた。

 

 そして、そのうえでまっすぐ俺を見る。

 

「お姉様は、英雄になると決めた時からずっと苦しんでるッス」

 

 ………え?

 

「詳しいことはお姉様が話すべきっすけど、あれでお姉さまはリアス部長の眷属にも負けないぐらい、つらい過去を背負ってるッス。それも、半分ぐらい加害者なんでペトにしか教えてくれなかったつらい過去が」

 

 姐さんが……加害者?

 

 いや、英雄は戦いによってなるものだし、そういう意味じゃあ加害者なのは当然だ。

 

 ……以前、姐さんが言っていた事を思い出す。

 

 誰かの心を曇らせてしまったのなら、それ以上の心を照らす存在になるしか、それを清算することはできないと、姐さんは言った。

 

 姐さんは、誰かの心を曇らせたことがあるのか?

 

「おい、それはどういう―」

 

「―悪いけど、これ以上はお姉さまの許可もなく言えないっす」

 

 と、ペトは断ち切った。

 

「でも、ヒロイにはしっておいて欲しかったっす。……ヒロイなら、きっと……」

 

 何か、俺に期待する気持ちをほのめかせて、ペトはそのまま階段を下りて行った。

 

 俺は、もやもやした気分を振り払うように空を見る。

 

 そこには数多くの星が瞬いていた。

 

 ……それが、死んでいった人の魂のような気がして、俺は少しいやな気分になった。

 




リセスに関しては第四章で詳しく……というかほぼ全部出す予定です。
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