ラブライブリスタートシリーズ ラブライブカーニバル 作:しゅみタロス
夏休みの最中、俺は外に出るのをやめた。
母さんには気分が悪いと伝え、部屋のベッドでただ虚ろな目をしながら横たわるだけだった。
ラブライブ県大会まで後2週間、ノートこそ出来たものの今の自分は外に出る勇気も無ければノートを渡しに行く気力も無い。
俺の中の何かが壊れている。何故なら憎むべき姉を殺した男も実質被害者だったのだから。
今の俺は暗い闇の中に閉じ込められてるような感覚でまるで全てを奪われたようだった。
その頃・・・
「心咲君、どうしちゃったのかな……全然連絡来ないけど……」
南さんは携帯を片手にクレープを食べていた。
同じく不安な顔をする園田さんと高坂さんも携帯をじっと見つめる。
通話履歴には俺の名前と不在のマークだけ。嫌な予感が頭をよぎる。
そんな中園田さんは異な事を口にした。
「もしかしたら、心咲さんは何か塞ぎ込んでいるのでは……」
その言葉を耳にした瞬間高坂さんはあの時聞いた俺の姉の事を思い出した。今まで黙ってた高坂さんは……
「ごめん、用事できた。すぐに行かないと!!」
「穂乃果ちゃん、急にどうしたの?」
高坂さんは一目散に走っていった。そんな高坂さんを見た園田さんは……
「何だろう、不吉な予感がする」
そう呟くと園田さんは手を軽く握りしめた。
そして高坂さんは
「やっぱりあの話は心咲君の心の傷だったんだ。もし話を聞いた私が原因だとしたら、心咲君は元には戻れないかもしれない。傷つけたのなら、謝らないと」
がむしゃらに走る高坂さんは俺の家の前まで来た。
その様子を窓から見た俺は空虚な声で呟いた。
「高坂さん……君は俺の……何なんだ」
その頃玄関では
「心咲君、部屋から一度も出てないんですか」
「ええ、この前から元気がすこぶるなくて……今までの経験で護が他人と会いたがらないなんて初めてなの」
高坂さんは十中八九私のせいだと確信した。本人はとても気にしている。
そう思った高坂さんは母さんに質問した。
「心咲君から楓さんの事で何か聞きましたか?」
すると母さんは少し不安な顔で答えた。
「数日前に護、ある人物から3年前の事件の真相を聞いたと言っていたわ。その人物は楓の彼氏の弟さんと聞いた、本人がこんなこと言ってたわ、皆、罪なき被害者だったって」
その言葉を聞いた高坂さんは俺が聞いたことは何も分からなかったが触れてはいけない禁忌であることを察した。
そんな二人の会話を物陰から聞いていた俺は勇気を出して扉を開けた。
「心咲君、部屋から出たの!!」
「あんまりいい気分じゃないんだ、何か重くのしかかってるような感じで」
その言葉を聞いた高坂さんはひたすら俺に頭を下げた。
「ごめんね、心咲君の辛い事を分からずにあんなことを聞いて、嫌だったよね。本当に……本当に……」
その言葉を聞いた俺はここまで俺を心配してくれた高坂さんに少し罪悪感を感じつつ高坂さんの頭を撫でた。
「俺の方こそごめん、心配させるような事して、でも高坂さんは何も悪くないよ。むしろ感謝してる、ありがとう。」
「心咲君……一人で抱え込むより、私を頼っていいんだよ。心咲君はいつも私に助けられて、一人になると泣いちゃう、そんな心咲君だから私は助けたい。これから辛いときは私の……」
高坂さんは涙をこらえながら俺に抱き着いた。
「私のそばで……泣いていいんだよ」
その言葉を聞いた俺は心の中で情けなく思ってしまった。
(変わったとと思ったら、何も変わって無かった。結局俺は高坂さんに助けられるのがオチだな、俺はどこまで変わっても弱虫って事か。でも、それもいいや。)
「俺の部屋で、少し寄り添ってくれるか。心が軽くなるまで……」
「心咲君の為なら、ずっといるよ」
二人は部屋に行くとベッドで身を寄せ合った。
翌日
「ただいまー。」
「お姉ちゃん朝帰り?心咲兄さんと何してたの」
「い……いやその……」
高坂さんの反応を見た妹さんはとんでもない事を聞いた。
「もしかして、デキちゃった?」
「雪穂それセクハラだよ!!」
「あはは、冗談冗談、別に無理に聞こうなんて思ってないよ」
妹さんにいじられる中2週間の間に本番に向けて準備を進めていた。
「ライブで使う音楽は出来た。後は心咲君がダンスの振り付けが間に合えばほぼokよ」
「信じて待ちましょう、心咲さんを」
ピンポーン
「西木野さん、ダンスの振り付けの項目、全部終わりました。後は皆さんに委ねます」
「あなたならやってくれると思ってました。メンバーを呼んで早速実践してみます」
すると俺は南さんに電話をした。
「どうも心咲です。」
「心咲君、良かった~ようやく連絡付いたよ」
「心配かけて申し訳ありません、ライブの衣装の方、どこまで進んでますか?」
「あと4日で出来るかな、一応絵里ちゃんや花陽ちゃんにも手伝ってもらってる」
「4日なら好都合だ、ダンスの振り付けの紙、FAXで送っとくよ」
「ありがとう、こっちは任せて、最高の物作るから」
「期待してるよ」
すると西木野さんがドリップタイプのコーヒーを俺に渡した。
「練習用のスタジオ、何とか手配で来たわ」
「ありがとうございます。ここからが正念場ですからね」
そして俺はコーヒーを飲み干した。
「絶対成功させましょう、音ノ木坂の未来の為に」
俺たちはただ遊ぶことを忘れ、ライブに向けてみんなひたすら練習に打ち込んだ。俺の指示が無くとも彼女たちは自分たちでやれるようになり俺はカメラを回しながら彼女たちの練習を撮影した後、この2週間で撮った映像をよく見てブレがないか確認した。
完璧なまでにシンクロした動きで自分も勝てる確信がつき始めた。
衣装も完成してスタジオでの練習も様になってきた。
そして2週間とにかく俺たちはやれるとこまでやり、全てをぶつけられる実力を身に着けた。そして大会前夜……
「明日はいよいよ本番、この大会で勝てば冬の全国大会、でも勝てるかどうか分からないって言うかこんな夜遅くに何考えてんだ……俺……」
うまく言ってるが故に怖さもある、怖気づいてしまう前に夢に落ちることにした。
そして翌日
ラブライブの会場に俺たちは来た。多くの報道陣やファンが集う中俺はランキングを見つつコーヒーを飲んでいた。
俺は時計を見て立ちあがった。
「そろそろ向かうか、高坂さんたちのライブを、この目で見届けるんだ」
そして俺はサイリウムを手に持ちスイッチを押した。それと同時にアナウンスが入る。
「続きまして、国立音ノ木坂学院、ミューズによるステージです。タイトル
僕らは今のなかで 、総監督、心咲護」
そしてライブが始まった、高坂さんを中心としたパフォーマンス。
彼女たちのそれぞれの特色を生かした歌声は自分の周りにいたファンが目を輝かせていた。
俺と皆で作り上げたこのプログラムには俺も正直ワクワクしてる。
そしてライブは終わりを告げると、彼女たちに数え切れない程の祝福が贈られた、だがまだ安心とは言えない、ランキング10位までに入らないと俺たちの夢は無意味になってしまう。
そしてその後もプログラムは続き、そして運命の結果発表。俺たちは……
ランキング2位、本戦に出場を果たした、みんな泣いて喜び、俺は高坂さんとハイタッチした。そしてその後は……
東京湾公園
「本当に夢みたいだよ、まさか2位になるなんて……」
「ここまでやれたのは全部心咲君が私たちを導いてくれたから」
「本当に感謝したいのは、高坂さんだよ」
「どうして、そう思うの?」
「高坂さんが、俺を救ってくれたじゃないか、そのおかげで俺は前に進めた。高坂さんも俺を導いてくれたんだよ」
「私は、心咲君が信じてくれたから、それに応えただけ、何も……」
すると俺は高坂さんを抱きしめ、涙を流しながら……
「それでもいい、高坂さんにとって些細な事でも、俺にとってはすごく嬉しいんだ。高坂さんが俺を守ってくれるなら、俺は導きたい、約束するから、本当にありがとう」
高坂さんも涙を浮かべながら俺の腰に手を当てた。
「これからも、お互い助け合っていこう、心咲君は私の憧れだから」
夏は終わり、秋を告げる、この先、俺は何を選ぶのかは分からない。
まだ始まったばかりだから・・・。
END