ラブライブリスタートシリーズ ラブライブカーニバル 作:しゅみタロス
卒業式当日 音ノ木坂 スクールアイドル部 部室
ガチャ
「ここに来るのも最後やな」
東條先輩達3人が部室に入る、儚げな雰囲気が漂う中、絢瀬先輩は答える。
「私達にとってのミューズ、ここでの忙しい毎日がもうないと思うと寂しいわね」
「ちょっとしんみりしすぎじゃない、卒業したって会えなくなる訳じゃないんだからもっと笑顔になりなさいよ。ほら、にっこにっこに~」
この空気を変えるべく持ちネタで場を和ます。
「にこっちの言う通り、最後は笑顔で締めくくる方がええと思う」
「そうね、会えなくなる訳じゃ無い。そう考えると少し楽だわ」
そして部室の扉が開く、やって来たのは……
「みんな、集まってたんだ」
「思い出にでも浸ってましたか、随分笑顔じゃないですか」
「卒業式までの時間にここに来るのは気づいてたけど」
「穂乃果ちゃん、それに皆も」
高坂さん達が入ると同時に小泉さんが呟く。
「ここに集まれるのはこれで最後ですかね」
寂しそうな小泉さんに絢瀬先輩は迷いの無い言葉を掛ける。
「最後じゃないわ、いつでも会える。ミューズのメンバーがいる限り」
「そうですね、また会えると信じていれば」
明るさを取り戻した小泉さん、その傍らで高坂さんはあの言葉を思い返していた。
「卒業式の終わった夜、あの桜の公園で会おう!!」
「いいけど……何か、理由があるの?」
「伝えたい事がある、高坂さんに対する迷ってた俺の答えを」
(まさか……心咲君は私の事を……)
止まらない胸の鼓動と妄想で何も考えられなくなっていた。すると……
「さっきから目まぐるしく穂乃果ちゃんの頭の中が回ってると思うんやけど、何かあるん?」
その言葉で高坂さんは顔を赤くし、涙ながらに東條先輩に視線を向けた。
「べ、別に何も考え事なんて、えへへ……」
「穂乃果、じっくり話を聞かせてもらうニコ」
やましさ全開の顔で高坂さんを問い詰める。
そして高坂さんは事情を話すと……
「まさか心咲君が夜の桜の公園に呼び出すなんて」
「伝えたい事があるって明らかに告白だニャー」
「で、でも告白かどうかはまだ分からないしどうしたらいいんだろうと思って……」
「心咲君が来てほしいなら行くべきです。今回は私達も自重してますから」
園田さんのフォローで高坂さんは落ち着きを取り戻して意を決した。
「私行く!心咲君が伝えたい事は全部受け止める!!」
「穂乃果ちゃんファイトだニャー!!」
盛り上がる中、時計の針を見ると……
「そろそろ卒業式の目前ですね体育館に集まりましょう」
それぞれの場所に戻り、卒業式へと向かった。
卒業式始まる合図、ゆっくりとした歩きで卒業生が入って来る。
椅子に座る南さんは絢瀬先輩と東條先輩、そして矢澤先輩の姿を見ながら少し涙を浮かべていた。
全員が入場し終わると先生の言葉が綴られ、その言葉は辛くもあり勇気を感じる言葉だった。
そして次に卒業証書が渡される。絢瀬先輩が卒業証書を受け取る手は心なしか震えておりこれを受け取る事は今までの自分の思い出と決別する事に他ならなかった。
卒業式が終わり、退場していく3年生を送り出した高坂さん達はその後の時間に西木野さんの家に集まった。
最後にお祝いしたいと西木野さんがお菓子を取り寄せていた。
そのパーティーには案の定、俺も呼ばれた。
お互いが思い出話に花を咲かせる中、俺はコーヒーを飲みつつ高坂さんに視線を向ける。
すると南さんが俺の隣に座ると同時に俺に例の件について聞いてきた。
「桜の公園の事、ようやく伝えると決めたんだね」
「卒業式の夜に伝えたいってそう決めてたから」
俺は空のカップにコーヒーを再び注ぎ、南さんに小声で伝えた。
「南さんおかげで前に進めたから凄く感謝してるよ。ありがとう」
南さんはとても嬉しそうにこう返す。
「私は心咲君を近くで見守っていただけなのに、結局いつの間にか助けてた。あの時の事に少しでもお礼を返すことが出来たかな?」
「十分返せてるって前に言ったじゃないですか」
「それもそうなんだけど私に出来る事しか心咲君に何も返せてないから……」
「でも、俺が高坂さんの本心を知るきっかけを作ってくれた南さんだからこそ、俺は感謝してる。それだけで俺は十分だよ。後は俺自身が頑張るだけ……気持ちを伝える夜だ」
「心咲君、必ず穂乃果ちゃんを幸せにしてね」
「必ず幸せにする、任せてくれ」
もう迷いは無い、自分が決めた相手に気持ちを伝えるんだ。必ず……
「カスタードケーキ取って来るよ」
そう言って席を離れてカスタードケーキを取りに行くのだが……
「あの……心咲……君……」
高坂さんがかすれた声で俺を呼ぶ。
「ちょっと、二人きりになれない……かな?」
俺の回答は当然……
「わかった、少し部屋の外に出よう」
そして俺と高坂さんはパーティーの場から外れると西木野さんの家の庭までやって来た。
「急にごめんね、ちょっと場が苦しくなっちゃって……」
「そっか、俺はちょっと舞い上がっててさ、少し落ち着こうと思ってた」
そしてお互い……
「……」
(いつもは成立する会話が成立しない、どう話を振るべきだろうかさっぱりわからない、この空気を変えるには一体どうすれば……)
二人きり以前に何を話せばいいのか考えるべきだった。
完全に失敗だった。
一度この舞い上がっている自分の感情をリセットするべくキャラメルを取り出し、口に入れた。
だがこの先、高坂さんはとんでもない行動に出る。
「!!」
突然俺の腕を掴むと同時に制服の胸元のボタンを外す。
そして掴んだ腕を強引に胸に突っ込んだ。
「な、何やってるんですか、高坂さん!!」
すると高坂さんは俺の腕を離し胸元のボタンを閉じた。
「一体、どんな意図があってこんな……」
「単純に触って欲しかった、だってことりちゃんや絵里ちゃんと家に泊まったりデートしたりしたんだから私も少し嫉妬してた。でも今のでやっとスッキリした。心咲君に触られたら少し今まで抱えてた憑き物が落ちた」
俺にとっては逆セクハラだったが高坂さんの想いを何となく理解できた。
嫉妬されるほど俺を近くで想っていた事は正直嬉しさの反面少し怖く感じた。
そして気が付けば夕日が沈みかけていた。
パーティーが終わり、皆が帰路につく頃に俺は高坂さんと例の桜の公園に向かっていた。
そして公園に着くと一本桜がライトで輝いていた。
「この桜の公園で会えた事、今思い出すと嬉しすぎて……」
「思い出すと俺も嬉しかった、そして一年……高坂さんにずっと伝えたかった言葉がある」
すると俺は高坂さんと面を向かい話し始めた。
「俺は高坂さんとこうして再会するまで、見える目標は何も無かった。高坂さんがあの日に俺と再会してスクールアイドルを目指し始めたその時に思ったのが高坂さんの願いを叶える事、俺の中で初めてできた夢だった。でも次第に高坂さんといる時間の中で、高坂さんに魅せられてた。自覚していたけど、高坂さんの夢に為にずっと言えなかった。でも今なら言える」
俺は写真ケースを見せて高坂さんに伝えた。
「君の事が大好きだよ、穂乃果ちゃん!!」
すると高坂さんはその言葉を聞き、涙ながらに答えた。
「私も大好きだよ、護君!!」
分かりえた俺と高坂さんは抱き合った。
「よろしくね、護君」
「こちらこそ穂乃果ちゃん」
お互いは唇を5秒間重ね合わせた。
そして高坂さんはあるお願いをする。
「離れたくないから、心咲君の家に泊ってもいい?」
「いいよ、俺も離れたくないから……一緒に……」
最愛の人の夢を叶え、最後に結ばれた俺の物語。
きっと……この愛は消えることはないだろう。
手に入れた幸せは、俺の中で輝いてるから。
END