生きたければ飯を食え   作:混沌の魔法使い

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下拵え 会談

 

下拵え 会談

 

カルネ村にツアーと名乗るプレイヤーを知る者が来ると言う事で、ナザリックは厳戒態勢に入っていた。守護者達の中で最悪の場合戦闘に出るシャルティア、コキュートス、パンドラズ・アクターはワールドアイテムの装備が義務付けられ、俺もモモンガさんに言われて、神話級の「料理神のコックスーツ」「料理神のコック帽」「料理神の鍋」と言ったクックマン限定の神話級装備と、クックマンで装備可能で汎用性のある神話級装備と装飾品で全身を固め、更にワールドアイテムを装備することになった。複雑な経緯で手に入ったワールドアイテム「料理神の包丁」を手にすると思わず渋い顔になる

 

「料理神の包丁は嫌いですか?」

 

モモンガさんと一緒に俺の部屋に向かっていると、モモンガさんがふとそんなことを尋ねてくる。俺は苦笑しながら、さらしをまいてある料理神の包丁を掲げながら

 

「嫌いと言うか…俺には無用の長物だろ?」

 

料理神の包丁。ワールドアイテムでは中位に位置するアイテムで効果としては、料理のスキルがなくても料理が出来る事に加え、料理がオートになる事と料理に魔法を付与する場合の効果UPにデバフの性能も大幅に上昇させるのだが、元々料理人の俺には料理がオートになると言う能力は意味の無い物であり、ワールドアイテムではあるが俺としてはかなり微妙な能力なのだ。本来はクックマンを所持していないギルド及びプレイヤーの救済措置としてのアイテムだ。ちなみにこれは1500人のプレイヤー襲撃の際に一度だけ顔を出しましょうと言う皆の意見で顔を出し、アインズ・ウール・ゴウンにはレベル100のクックマンが在籍していた。と言うので一時騒ぎになり、料理魔法の効能が注目され、運営にお願いできるワールドアイテムで運営が作成したのだが……何の因果かPVPでウルベルトが獲得し、俺が所有することになったと言う何とも言いがたい経歴を持っているアイテムだ。正直料理魔法の効力UPは役に立つが、オート料理機能のON/OFFが出来ないので、細かい味の調整が出来ないと言う欠点もある。

 

(一応ワールドアイテムだしな)

 

プレアデスやアルベドに貸し出し、料理を覚えさせるというのを一瞬思いついたが、ワールドアイテムだから駄目だろうなと思い、コックスーツの中に戻す

 

「まぁ、念の為に装備しておくさ。それよりもまずはニグンとリリオットだ」

 

この世界の情勢に詳しいニグンと予知能力持ちのリリオット。後で聞いた話だが、リリオットは今回の事を予知しており、シャルティアがツアーに遭遇する少し前に、ナザリックに大きな選択の時が来ているとアルベドに伝えていたらしい。評議国とかを味方につける事が出来るかどうかの選択と言う事で俺もモモンガさんも慎重になっていた

 

「話を聞いて、その上で考えましょう」

 

予知能力者がいる。それだけで俺達の方がツアーよりもよっぽどアドバンテージを持っている、リリオットの予知から対策を練ればいいだろう

 

「ところでカワサキさん、帝国から連れて来たエルフはどうしたんですか?」

 

「とりあえずアウラとマーレに預けてきた。なんかアウラとマーレを王族とか言ってたから大丈夫じゃね?」

 

俺的にはピニスンの菜園の手伝いをして貰って、昔の伝承でも聞けたら解放しようと思っていたのだが、向こうが永住希望と言うのなら、アウラとマーレの部下として28人のエルフを6階層においてやっても良いと思う。勢いとは言え、俺が連れ出したのだ。ある程度は向こうの要望も叶えてやりたいしな。モモンガさんとそんな話をしていると、あっという間に俺の部屋に着き、呼んでおいたニグン達にアルベドとシャルティアに聞いた話をするのだった

 

「ツァインドルクス=ヴァイシオンと名乗ったのですね?」

 

「ああ、その名前に何か意味があるのか?」

 

俺の部屋で待機していたリリオット、ニグン、クレマンティーヌの3人は険しい表情をする。そんなに有名な相手なのだろうか?と俺とモモンガさんが首を傾げているとニグンが口を開いた

 

「ツァインドルクス=ヴァイシオンとは、アーグランド評議国の永久評議員にして白金の竜王【プラチナム・ドラゴンロード】と言う2つ名を持つ最強の龍です」

 

ドラゴンロードか……龍って言うのは総じて強いが、2つ名持ちとなると相当な強敵だろう

 

「我がナザリックの戦力を見ても最強と言えるか?」

 

モモンガさんの問いかけに今度はリリオットが挙手をして

 

「私の予知では最悪の展開になれば、この世界を滅ぼすかどうかの争いにまで発展すると」

 

リリオットの予知の精度はほぼ100%……リリオットが予知したとなれば、それはほぼ確定の未来と言えるだろう

 

「予知はどうなっている。リリオット」

 

「話し合いがじゅ、重要だと思います。相手に下に見られないことがだ、大事だと……」

 

相手に下に見られないことか……そうなると、守護者が同席するのは難しいな。下手をするとそのまま暴れだしそうだし……俺とモモンガさんで対応する必要性があるだろう

 

「そ、それと全面戦争になる理由ですけど……わ、私とか、クレマンティーヌとかが居ないのが条件みたいだから……多分、戦争になる可能性は低いとは思うんですけど……相手がこっちを下手に見るとあんまり良くない展開になりそうなので……」

 

そこで言葉を切ったリリオットは真剣な顔をして

 

「思いっきり威圧したほうが良いと思います、す、少なくても勝てないと思わせるほどには……そ、それに竜王は始原の魔法【ワイルド・マジック】を扱えるので少なくてもワールドアイテムは複数装備したほうが良いかも……」

 

始原の魔法……また聞いたこと無いキーワードが出てきたな。俺とモモンガさんが何ともいえない表情をしているのを見て、クレマンティーヌが教えてくれた

 

「竜王だけが使える魔法で、すっごい大魔法って話です。八欲王が神の国の魔法を伝えるまでは、その魔法が一般的な魔法だったって聞いた事があったような……?違ったっけ?」

 

ニグンに同意を求めたクレマンティーヌ。ニグンはその解釈で合っていると言葉短く返事を返す

 

「リリオット、お前の予知に感謝しよう。私とカワサキさんはこのまま会談に向けての準備をする。迎えが来るまではこの部屋で待機しているといい」

 

モモンガさんは威厳たっぷりに言うと、俺を伴って部屋を出る。だが部屋を出て周りに人が居ないのを確認すると深く、深く溜息を吐く

 

「始原の魔法ってどう思いますか?八欲王の伝えた魔法で色々変わったとなると……俺は超位魔法に位置すると思うんですが」

 

「すまん…それは俺には判らんぞ」

 

ウルベルトさんやモモンガさんがそんな話をしていたのは知っているが、俺自身は料理人プレイなのでそこまで詳しいわけじゃない。一応ある程度のワールドアイテムと、通常のアイテムを知っているだけで、後は食材とかの知識しかない

 

「そうですか……とりあえず危険な魔法と思っておいてください。料理神の包丁だけじゃ足りないですね…もっとワールドアイテムを装備しましょうか」

 

「そんなにやばいのか?」

 

ワールドアイテムを複数個装備する必要がある。それだけで危険度の高さは判る。1個でも強力なのに、それが複数個必要となる。流石の俺でもその話を聞けば、どれだけ危険な状況なのかは理解できる

 

「宝物殿に行きましょう。もうガッチガチに装備を固めてやりましょう。もう相手が屈服するくらい徹底的にやりましょう」

 

もうなんかやばいほうに吹っ切れてしまった様子のモモンガさん。とは言え、戦争になるような展開を避けたいので、もうそれを避けるのに徹底的に威圧する必要があると言うのなら、俺も腹をくくる必要があるだろう

 

「よし!やろう。全力でやろう。飯でバフも掛けまくろう」

 

後先考えず全力全開でやろう。これでもかってバフを掛けた飯を食って、ワールドアイテムでガチガチに装備して、全力で威圧しようと言う考えに俺とモモンガさんが至るのにそう時間は掛からないのだった……そして時間はあっという間に過ぎ、会談の時間である深夜になるのだった……

 

 

 

ツアーの頼みでプレイヤーが待つと言うカルネ村に来たが、私は早速ツアーの頼みを引き受けるんじゃなかったと後悔した

 

「君が案内を引き受けてくれたのかい?」

 

「……私しかお前の事を知らないでありんすから」

 

黒いドレス姿の吸血鬼。だがインベルンの嬢ちゃんよりも遥か上の存在というのが一目で判る。吸血鬼が私を見つめながら

 

「この人間は?」

 

「僕の付き添いだ。付き添いは駄目って言って無かっただろう?」

 

飄々としているツアー。だが生身ではないからこその態度に心底腹が立つ。下手をしたら私が死ぬじゃないか

 

「まぁ良いでしょう。アインズ様もある程度はお許しになるでしょうから」

 

では付いてくるなんしと言い、漆黒の渦を作り出す吸血鬼。その渦からは凄まじい魔力が放たれている

 

(ここは向こうの言い分に従おう)

 

小声のツアーに判ってると返事を返す。正直今の目の前にいる吸血鬼、恐らく従属神でさえも八欲王よりも遥かに強い。そんな相手を従えているプレイヤーと事を構えることになるのはなんとしても避けなければならない。どうか温厚なプレイヤーであって欲しいと祈りながら、吸血鬼の後を追って漆黒の渦の中に足を踏み入れたのだった……

 

「ここで待つでありんす。言っておくが勝手に出歩いて殺されても自業自得でありんす」

 

案内された豪華な装飾が施された部屋にツアーと共に置き去りにされるが、そのおかげでやっと一息つけた

 

「お前…どうしてこんな相手に喧嘩を売ろうとしたんだい?」

 

「いや、喧嘩を売るつもりは無かったんだけどね……」

 

鎧の頬をかくツアーに眉を吊り上げる。ここまで来るまでに色んなモンスターの姿を見たが、1対1でギリギリと思うほどの強敵揃い。それが何百何千とひしめき合っている相手の陣地の奥深くまで連れて来られれば、怒るよりも先に無事にここを出れるか?そこばかりを考えてしまう

 

「失礼する」

 

休む時間も、話し合う余地も無い中。扉が開かれ、恐ろしい気配を持つ何者かが入ってくる。それは美しい装飾が施されたローブを身に纏った死者の大魔法使い【エルダーリッチ】かと思ったが、それよりも遥かに強大な気配を持っていた。その姿を認識し、私の思考が停止した瞬間。ツアーが反応を見せた

 

「スルシャーナ!?スルシャーナなのかい?」

 

椅子から立ち上がりスルシャーナなのかい?と尋ねるツアー。だが現れたアンデッドは小さく首を振り

 

「……残念ながら違う。同郷で同族と言う事は認めるが、私はスルシャーナではない。ツァインドルクス殿だったな?シャルティアから聞いている。私はアインズ、アインズ・ウール・ゴウン。このギルドの長をしている者だ」

 

言葉は丁寧だが、その威圧感と迫力は13英雄を知る私でも息を呑むほどの圧力を伴っていた

 

「急に訪ねてきてすまないね」

 

「かまわないとも、私達もこの世界に来たばかりだ。プレイヤーの伝承などを聞いていろいろと気になっていた所なのだよ」

 

椅子に座りお互いに話をしようじゃないかと笑うアインズ…数はこっちの方が上だが、完全にこの場をコントロールしているアインズの姿に私は深く溜息を吐くことしか出来ないのだった……

 

 

 

 

ツァインドルクスはフレンドリーにツアーと呼んでくれれば良いと笑い、その隣の老婆はリグリットと名乗った。2人で訪ねて来たとはシャルティアから聞いていた。流石に1人で乗り込んでくるほど豪胆じゃないかとカワサキさんは笑っていた。どうしてそんなに余裕があるんですか?と尋ねると、カワサキさんはこういう状況には慣れているとの事。本当にカワサキさんのリアルでの生活がどんな物なのか気になってしょうがなかった

 

「なるほど、評議国の方なのか」

 

ニグンやクレマンティーヌから聞いていたので、驚くことは無かったが嘘偽りなく話してくれたことには若干の好意を抱く事が出来た

 

「でも、君は知っているって感じだね?」

 

カワサキさんに早く来て欲しいなあと思いながら、ええ、知っていましたと返事を返す

 

「ある程度、私達もこの世界の情勢を知っているのでね」

 

本当の事と嘘を混ぜる。それが交渉の基本と言っていたので、それを常に心がける

 

「そうかい。それでこの世界を見て、君は何をするつもりなのかな?」

 

ツアーの言葉に少し考えてから、ローブを翻しながら腕を組みなおす

 

「逆に聞こう。君達は私達が何をすると思っているのかな?やけに警戒しているように見えるが?」

 

質問に質問で返すのは失礼だが、それも状況次第では役に立つ。カワサキさん流の交渉術としてレクチャーされた内容を思い返しながら、動揺しないことを心がけ、余裕であると言うのを必死で維持する

 

「八欲王の事は?」

 

「無論聞いているよ。6大神の1柱スルシャーナを殺し、竜王達を狩り、そして異形種を狩ることを楽しんだ、愚かなプレイヤーの集団とね。それともなにかな?君達は私がそれと同類とでも思って警戒しているのかな?それなら心外と言う物だよ。リアルは知っているかな?」

 

リアルについて知っているか?と尋ねると、クレマンティーヌ達と同様に、リアルについて多望な希望を抱いているのが判った

 

「リアルとはそんなに良い世界ではない…荒廃し荒れ果てたもう滅びる寸前の世界だ。人々は本来の身体とこの身体のように2つの体を持ち、滅びかけた世界で平和で穏やかな世界を夢見て、2つの世界を行き来し暮らしていた。だからこそ、スルシャーナ達はこの世界に来たとき、自分達の世界とは違うこの美しい世界を護ろうと思ったのだろう」

 

リアルの荒廃した世界を知っているから、俺もこの世界を見たときは感動した。美しい緑に、夜空に浮かぶ星に感激したのだ

 

「だが、八欲王はそうは思わなかったのだろう」

 

リアルとゲーム…その延長から抜け出すことが出来なかった。事実、俺だってカワサキさんがいなければそうなっていた可能性はある

 

「遊び感覚で異形種を殺し、権力を手にした。そしてこの世界を混乱に陥れた。それは許されることではないだろう」

 

「君はこの世界を美しいと思っているのかい?」

 

俺の言葉に割り込んでくるツアーにその通りだともと頷くと、ツアーは感慨深そうに頷き

 

「スルシャーナも同じ事を言っていたよ」

 

「そうか…では、彼と私は同郷で同族であると同時に、考え方も似ていたのかもしれないな」

 

貴族の腐敗、人間同士の争い、モンスターに襲われ死ぬ人々と言うのはあるかもしれない。だが美しい自然と太陽がこの世界にはあるのだ、リアルにはもう存在しない自然がこの世界にはある。それは掛け替えの無い宝だと思う

 

「だが、八欲王は滅んでもまだ手先は残っている」

 

「カワサキさん」

 

扉が開き姿を見せたカワサキさんが重い口調で告げ、俺の隣に腰掛ける

 

「カワサキだ。アインズさんの友人としてこの地を支配している1人と思ってくれ」

 

軽く自己紹介をするカワサキさんにずっと黙り込んでいた老婆が口を開いた

 

「八欲王の手先が残っているとは?」

 

「スレイン法国…俺達はそこから逃げてきた元漆黒聖典を保護しているのだが、彼女の話では異形種保護を訴えていた男が異形種撲滅を叫ぶようになったと聞いた。俺達はそれは余りにおかしいと感じ、俺のスキルでその男に洗脳の解除を試みた。結果はどうなったと思う?」

 

カワサキさんの問いかけにツアーはまさかと呟いてから

 

「異形種を殺した事を悔いた?」

 

「まさか、罪深い私を殺してくれと泣いて懇願した。許されないことをしたと泣き叫び、手の骨が折れるほどに地面を殴りつけ、骨が剥き出しになっても悔いていた。そしてその上で教えてくれたのだ。大司教の間…そこで禍々しい何かを見たと」

 

俺達はそれをワールドアイテムだと考えているとカワサキさんが言うと、老婆は少し考える素振りを見せてから

 

「確かにスレインは少しおかしいとは思っていたが……本当なのかい?」

 

「疑ってくれても構わないが、私とカワサキさんはスレイン法国の影にいるかもしれない八欲王の手先について調べている。人の思いを踏みにじる相手を許せないからな」

 

俺達は正義を為そうとしている…この世界に害を為すつもりは無いと繰り返し口にする

 

「そうかい……申し訳ない。僕は君達が八欲王と同じならばと危惧していた。だが僕は勘違いしていたようだ、許して欲しい」

 

深く頭を下げるツアー。だがツアーの不安も判る、六大神、八欲王、13英雄。その全てを見てきたのだ。不安に思うのは当然の事だ、仮に自分がツアーの立場なら同じことをしていただろうから

 

「俺達は過度にこの世界に干渉をするつもりは無いが、同郷の者が悪事をしようとするならば、止める義務がある」

 

これはカワサキさんの嘘偽りの無い気持ちだろう。富裕層と貧民層。その両方を見てきたカワサキさん独自の考え方……ウルベルトさんが間違っているといいつつも、それが正しいと認めた。たっち・みーさんが正しいとしても、それは間違っていると嗜めた。正義と悪、弱者と強者。その両方を見てきたカワサキさん独自の正義は俺では理解出来ない

 

「だけど、俺達とツアー達は今こうして出会ったばかりだ、だから見極めて欲しい。俺達が悪なのか、それとも正義なのかを」

 

「時間を取るべきだと?」

 

「その通りだ。出会ったばかり、そして俺達の城で正直威圧的に感じているだろう。それでは余りにフェアじゃない…ツアー達が俺達の行いを見て、そして考えて欲しい。今度は俺とアインズさんがそちらの城に赴こう、そしてその場で話し合いをしようじゃないか」

 

俺が威圧的に話しかけ、カワサキさんが妥協点を出す。飴と鞭と言っていたが、その話術と状況の作り方に驚く。突発的なアドリブは苦手と言っていたが、全然そんな事は無いと思う

 

「私達もスレイン法国の裏づけをとっている訳ではない、今はまだな。もう少しこの世界を見てみたいと思っている。だから暫くはお互いに不干渉としよう、私もカワサキさんも過度にこの世界に干渉するつもりは無い」

 

スレイン法国の影の正体を知る為にある程度は動き回るが、過度に干渉するつもりは無いと繰り返し宣言する。これは嘘偽りの無い気持ちだからだ。カワサキさんも、ナザリックのシモベにも被害を出すつもりは無い。慎重に事を進めるつもりだからだ

 

「判った、今回は退くよ。僕もリグリットと色々話し合いたい」

 

「ぜひそうしてくれ。そしてその上で、またこうして会談の機会を設けよう」

 

俺はそう言うとローブからアイテムを取り出す。それは決してレアなわけではない、強いて言えば電話と同じ効果を持つアイテムだ

 

「これで連絡を取り合おう。会談の場所や日時などな」

 

「判った。気遣いに感謝するよ」

 

俺の渡したアイテムを受け取り、帰ると言うツアー達をゲートでカルネ村まで送り返し。俺はソファーに深く背中を預け

 

「つ、疲れました」

 

「お疲れ。まー、向こうはまだ疑いはあるが、スレイン法国にある程度矛先を向けておいたから大丈夫だろう」

 

疲れた疲れたと笑うカワサキさん。疲れたと言っているが余裕そうに見え、カワサキさんのリアルでの生活っぷりがますます気になる

 

「それより、夜明け前にカルネ村に戻って、エ・ランテルに戻らないといけない。さっさと人化の術掛けるぞー?」

 

「うえ!?もうそんな時間ですか!?」

 

日が昇ってくる時間だぞ?と言うカワサキさん、休む間もなくカルネ村に転移し、エ・ランテルへと向かう事になったのだが、この時俺もカワサキさんもエ・ランテルでとんでもない騒動が待ち構えている事を知る由も無いのだった……

 

 

下拵え 暗躍する者/漆黒の剣士モモン/カワサキ様奮闘するへ続く

 

 




次回も料理回はスキップします。次回はカジットさんの起こした死の螺旋の最中に戻るという感じに変えて書いて行こうと思います
それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

やはりカワサキさんがオラリオにいるのは……

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