生きたければ飯を食え   作:混沌の魔法使い

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メニュー65 オムレツとカルボナーラ

メニュー65 オムレツとカルボナーラ

 

ジルクニフとの会談を終えたと言うお父様はその時は酷く上機嫌だったが、その翌日は顔を歪めて呻いていた

 

「二日酔いになるまで飲むからですわ」

 

「……むう……全くもってその通りだ」

 

あいたたたっと呻くお父様。どうもカワサキの持ち出した酒は相当強い物だったらしい

 

「父上、今日中に王都に戻るのは無理ですね?」

 

ザナックお兄様の問いかけにお父様は呻くだけだ。流石に私もザナックお兄様も肩を竦める

 

「それにしてもずるいわ。お父様だけカワサキさんの食事を堪能するなんて」

 

頬を膨らませ子供のような口調でお父様に詰め寄る。ザナックお兄様が顔をゆがめるのが見えるがそれは無視する

 

「む、むう……それもそうだな。判った、昼にガゼフの護衛でカワサキ殿の店に行くといい」

 

……クライムも連れ出したい所だけど、ここで駄々を捏ねると難しそうね

 

「それでしたらクライムに何か持ち帰っても良いですよね?私知ってるんですよ?ガゼフ戦士長にこっそりお弁当を持って来て貰っているの」

 

ガゼフ戦士長とお父様が肩を竦めるのを見てくすくす笑うとお父様は頭に氷を当てたまま

 

「勿論構わない。ガゼフ、ラナーとザナックを頼む」

 

「は!お任せください」

 

ガゼフ戦士長はそうお父様に挨拶をすると、私達のほうに視線を向け

 

「カワサキ殿の店のお昼の営業が終わる頃合ならば、人も少ない上に貸切にしてくれると思いますのでそちらの時間帯で宜しいですか?」

 

あんまり人が多いのは煩わしいので、ガゼフ戦士長にお任せする事にした

 

「ガゼフ戦士長、ザナック様、ラナー様。お気をつけて」

 

クライムに見送られ、私達は昼食と言う時間にはやや遅い時間にカワサキの店へと入店した

 

「いらっしゃいませー……」

 

金髪の給仕が笑顔で迎え入れてくれる。だがその顔を見れば判る、あれは私の同類だと……笑みの下で自分以外と自分が必要とする者以外を排除する計算が出来る人間だ。そんな人間を雇っているカワサキに対する興味が少しだけ沸く

 

「ザナック様とラナー姫様が食事をしたいと仰っているのでお連れしたのだが、大丈夫だろうか?」

 

「まぁ営業中だから大丈夫だけど……んーとりあえずカワサキに代わる」

 

厨房の中に引っ込む給仕を見送り、厨房が見える席に腰掛ける

 

「ガゼフ戦士長は?」

 

「私は念の為に外にて待機させていただきます」

 

王族がいると言う事で八本指の手の物が動かないとは言い切れないからだろう、しかし店の外で警護すると言う事は外よりもカワサキの店が安全と言う事なのだろう。それだけの信頼を得ているカワサキの凄さに逆に驚かされる

 

「いらっしゃいませ。ザナック王子、ラナー姫様。ご注文はお決まりですか?」

 

メニューは見たけど、余りに多くて目移りするので私はメニュー表を閉じて

 

「パンにあう卵料理をお願いします」

 

卵料理と言う注文をカワサキに出す。こうすれば一番カワサキが自信を持つ料理を出してくれると思ったから

 

「畏まりました。ではザナック王子はどうしましょう?前に言っていた健康食でもお出ししましょうか?」

 

「それは興味深いが、私はこのカルボナーラとやらを頼む。卵とチーズのパスタなど食べた事が無いから、どんな味か知りたい」

 

痩せたいと言っているのになんて物を頼むのでしょうかと苦笑しながら

 

「それと帰りにクライムにお弁当を持ち帰りたいので、そちらもお願いします」

 

クライムのお弁当もお願いしますと言う。カワサキは畏まりましたと頭を下げ、厨房の中に戻っていくのだった……

 

 

 

 

卵料理とカルボナーラか、兄妹と言うのは味覚の感覚まで似るのかな?と思いながら冷蔵庫から卵を取り出し、大鍋に塩を一つまみ入れて沸騰させておく。

 

「パスタは少し細めの1.7で良いか」

 

カルボナーラはソースがパスタに絡まなければ味が途端に悪くなる。ソースと絡めることを考えてやや細目をチョイスする

 

(……そう言えばカルボナーラって生クリームも使うんだよな)

 

俺の知ってるカルボナーラと言うのは生クリームを使わない物になる。ゲーム中では生クリームも使ったが、俺自身が作りなれているのはローマ式と言う古い形のパスタになる。理由は勿論生クリームの入手が難しいので、チーズを使う物が主流だったわけだが……

 

(あんまり生クリームは見ないし、大丈夫だろう)

 

色々とこの世界を調べてみたが、生クリームは殆ど見なかった。生クリームを使うレシピはうろ覚えなので、生クリームが一般的ではないことに安堵しフライパンを手にする

 

「ベーコンっと」

 

ブロックのベーコンを厚く切り出し、オリーブオイルを引いたフライパンで炒める。ベーコンを切り分けている間にお湯が沸いたのでパスタを入れて茹でて置く事も忘れない。ベーコンがカリカリになったらフライパンからベーコンを取り出す

 

「白ワインを加えてっと」

 

ベーコンの油と塩気がオリーブオイルに染み出た所に白ワインを加え、沸騰させる事でアルコールを飛ばす

 

「茹で汁」

 

御玉半分ほどのパスタの茹で汁を加え、乳化させたら保存の魔法を掛ける。ここでラナー姫の料理の準備も平行して始める、ボウルを2個取り出して片方には卵と牛乳をいれ、塩胡椒で味を調えて良く混ぜ合わせておく

 

「パルメザンチーズとブラックペッパー」

 

卵の中にパルメザンチーズとブラックペッパーを入れてよく混ぜ合わせたら、最初に炒めておいたベーコンと和える

 

「良し、始めるか」

 

腕まくりをして茹で上がったパスタをベーコンを炒めたフライパンに入れて、オイルと良く絡める。全体的に良く馴染んだら卵とチーズを混ぜた卵液を流し入れると同時に火を止めて、勢い良く混ぜ合わせる。手早く混ぜ合わせないとダマになってしまうので、フライパン自身も揺らしながら、全体を良く混ぜ合わせたら皿に盛り付けてすぐ保存を掛ける。すぐ提供すれば良いのだが、やはり2人で来ているので2人同時に出すべきと思ったからだ。それに、もう一つはオムレツだからすぐに仕上げられるというのもある

 

「バターっと」

 

フライパンにサラダ油を薄く引いて中火で加熱する。ある程度フライパンが温まってきたらバターを加える

 

「……ここだ」

 

バターが半分ほど溶けたら卵液を加え、菜箸で混ぜ合わせる。卵が半熟になってきたら真ん中にチーズを並べる。フライパンの熱で溶けてきたタイミングでヘラを使い半分に折りたたみ形を整える

 

「チーズオムレツの出来上がりっと」

 

シンプルにプレーンオムレツも良いが、それでは味気ないのでチーズを加えた。チーズの塩っ気と、食感はオムレツに良く合う

 

「後はスープとサラダとパンっと」

 

日替わり定食や、ハンバーグランチに使うオニオンスープとレタスとトマトのシンプルなサラダに胡麻のドレッシングをたっぷりと掛ける。そしてロールパンを2つ皿の上に乗せる

 

「大変お待たせしました。チーズオムレツセットとカルボナーラのセットになります」

 

俺が料理を出した時に2人の目が輝くのを見て、それだけ楽しみにしてくれていたと好意的に受け取ることにした。特にラナー姫は苦手だが、客相手に嫌な顔をする訳には行かないしな……

 

「さてと、次は弁当か」

 

クライムと言う青年は丁度成長期のように思えたし、外で待っているガゼフさんも大食漢だ

 

「揚げ物弁当でもするかね」

 

唐揚げとトンカツで食い応えのある弁当でもするか。俺はそんなことを考えながら冷蔵庫から鶏肉と豚肉を取り出すのだった……

 

 

 

 

カルボナーラと言うパスタは滑らかなソースと良く絡んでいる。それにパンとスープとサラダまでがセットとは、流石カワサキと言ったところだろう。フォークを手にして、パスタを巻きつけて口に運ぶ

 

「……美味い!」

 

卵の濃厚な旨味の中に肉の脂の香りが混じっている。それに王族とは言え滅多に口に出来ないチーズの味も口一杯に広がる

 

(味わいだけではなく風味も一級品だ)

 

口に広がる味だけではなく、香りまでもが美味しい。ラナーもスープを口に運び笑っている姿を見ると、やっぱりラナーも人間かと思ってしまう。ラナーの知能は恐ろしい。そしてあの人を人とも思っていない視線までもが私の中には恐怖として映る。だが敵対しなければ向こうも何もして来る事は無いのだから……表面上とは言え仲良くしておきたいと思う

 

(スープも素晴らしいな)

 

たまねぎがたっぷりと使われたこのスープ。玉葱の甘みがスープの中に溶け出していて、その優しい味は思わず溜息を吐いてしまう

 

「カワサキさん。実に素晴らしい料理です」

 

「お褒めに預かり光栄とでも言うべきかな。王族に褒められるのだから、俺の腕も捨てたものじゃないな」

 

カワサキさんはそう笑う。間違いなくカワサキさんの料理の腕は王国……それも王城に仕えている者よりも遥かに優れているだろう

 

「このパンもカワサキさんが作ったのですか?」

 

ラナーが白パンを千切りながら尋ねるとカワサキさんは違うぞ?と笑う。これだけのパンをどこかで購入したと言うのだろうか?それならば是非何処で買ったのかを教えて欲しい物だ

 

「俺とアインズさんが最初に来たのはカルネ村周辺でね。カルネ村が廃れた村と聞いたから、俺がパンの作り方を教えたんだよ」

 

いまだと俺よりも腕は良いかもしれないなあと笑う。カルネ村……トブの大森林の近くの村か……確かにあそこは王国領では一番廃れた村とも言えるか

 

(これは少し不味いかもしれないな)

 

ガゼフ戦士長の報告にもあったが、カルネ村を襲っていた法国を退けたのはゴウン殿……そして新しい特産物を与えてくれたカワサキさんとなると王国よりもゴウン殿とカワサキさんの方につく……

 

「このサラダも美味しいが……もしかして?」

 

「ああ、これもだな。カルネ村には色々とこっちも支援しているし」

 

……王国領にある村だが、もう実質的にはゴウン殿達の親派か……バルブロ兄上が余計なことをしなければ良いんだが……

 

(なんでこんなことを考えているんだ)

 

美味しい食事を食べにきたはずなのに……なんでこんなに気落ちしなければと思っていると私とラナーの前に皿が置かれる

 

「サービスのベーコンのステーキになります。宜しければどうぞ」

 

にこにこと笑うカワサキさん……本当にこの人は人の心を掴むのが上手いと思いながら、ナイフとフォークを手にする

 

「これだけ厚いと食べ応えがあるな」

 

保存食であるはずの燻製肉だが、これだけ厚ければそれはステーキとなんら変わりがない。肉らしい弾力と脂、それに燻製にするのに使った香辛料の香り。正直サービスで出すには豪華すぎる

 

「肉を食べると幸福な気持ちになる。色々と大変だと思うけど頑張って貰おうと思ってね」

 

……王国と帝国の合併には八本指と間違いなくそれに通じているバルブロ兄上が関わってくるだろう。それに気付いてサービスしてくれたカワサキさんに感謝しながら

 

「このパスタは本当に美味しい。しかし太るのが怖いな」

 

「痩せるには適度な運動とバランスの良い食事が大事だよ。野菜ももっとしっかり食べるべきだな」

 

私が全然サラダにフォークを向けてない事に気付いたカワサキ。確かに良い野菜と言うのは分かるがやっぱりあんまり進んで食べたい物では無い

 

「痩せる事を目標にするなら、走ったりする有酸素運動と、バランスの良い食事、それと睡眠が大事だ」

 

「……アドバイス感謝するよ」

 

どれも私が苦手な物であり、遠ざけてきた物だ。私が痩せるのはどうもかなりの無理難題のようだ。口一杯に広がる濃厚な旨味とピリリとした黒胡椒の香りを味わいながら、私は思わず小さく溜息を吐くのだった……

 

 

 

 

焦げ1つ無い楕円形に鮮やかな黄色の卵料理……オムレツと言ってましたが、これは見た目のシンプルさからは信じれないほどの旨味を秘めていた

 

(……チーズは判りますね)

 

口の中でトロリと溶けるこの独特な食感は間違いなくチーズだ。卵とチーズを使う料理と言うのは予想外でしたが、これは王国の食事事情で考えればかなり豪華な料理だと思う

 

「このサラダのドレッシングは何なのですか?」

 

独特な香りを持つ白っぽいドレッシングについて尋ねる。これは王国には無いものだと思う

 

「胡麻って言う物を使ったドレッシングになります。香りも勿論、非常に身体に良いものですよ」

 

健康食と言う事でしょうか……なんにせよ、カワサキの食に関する知識は王国よりも遥か先を行っている。パンを小さく千切って口に運びながらザナックお兄様とカワサキの話を頭の中で纏める。カルネ村は既に2人の支配下に近いと見て間違いないでしょう

 

(しかし、あの2人が帝国と王国を繋げることに関して何のメリットが……)

 

ゴウンにしてもカワサキにしても、王国、帝国そのどちらも滅ぼす事が可能だと私は考えている。でもそれをせずに、帝国と王国の橋渡しをしている……それが些か気がかりだ

 

(甘い……)

 

良く煮られた玉葱のスープ。これを作るのもかなりの量の玉葱が使われているだろう、それにこの味は玉葱だけではなくもっと他の食材も使われているはずだ。そうで無ければ、これだけ複雑な旨味は出てこないと思う

 

(……王国を発展させることに意味がある?)

 

お父様の性格が変わりつつあるのも、帝国と王国を共闘させることに関しても、何らかの意味がある?私はクライムと居れれば良いから王国が滅んでくれたほうが都合が良い。理想を言えば、王国が滅んでクライムと共に逃げて、ラナー姫ではなくラナーとしてクライムと共に居れればそれが最善だ。だがその最善が変わりつつあるのかもしれない

 

「本当に美味しいですね。それに見事な焼き加減です」

 

焦げ1つ無い鮮やかな黄色。それに味付けも完璧で非のうち所が無い、卵を焼いて料理にすると焦げてしまうと思っていたが、ここまで見事に焼き上げているのは素直に賞賛に値すると思う。特に中身が半熟と言うのが凄い。最初はチーズの溶けた食感だと思っていたのが、実際は半熟の卵と溶けたチーズの両方の食感だったのだから

 

「喜んで貰えて何よりです。今度ご来店するとき、もしくは王城で腕を振るう時はもっと素晴らしい物をご用意しますよ」

 

これがずるい。美味しい食事を出すが、それよりも美味しい物を作る技術を持っているのだ。それを帰り際や食べ終わる寸前に言うのだから……

 

「楽しみにしていますね。これからもお父様と友好的な関係を築いてくれるとうれしいです」

 

「私としてはその……痩せる食事とやらを今度は希望しよう」

 

会計を済ませ、クライムへのお土産のお弁当を受け取る。なんにせよ、今はカワサキにしろゴウンにしろ様子見と言う所ですかね……2人が動き出すとき、もしくは向こうからの接触があった時。そのときにどうするか決めたいと思います

 

「ラナー様……私のような者に態々……ありがとうございます」

 

私の持ち帰ったお弁当を受け取り深く頭を下げる

 

「良いのよ、クライム。私達だけが美味しい物を食べるのは悪いわ。さ、食べて食べて」

 

包みを開けて嬉しそうにお弁当を食べるクライム。その姿を見ているとなんとも言えない高揚感を感じる

 

「とても美味しいです」

 

「喜んで貰えて嬉しいわ」

 

満面の笑みのクライムの笑顔に心が満たされるのを感じる。もしも私が料理をしてもこれほど喜んでくれるのだろうか?王族が料理と言えばそれだけで批判が来そうだが、それもクライムを手懐ける1つの手段として覚えておいたほうが良いかもしれない

 

(……後はバルブロお兄様が自滅してくれれば言う事無しですね)

 

私を辺境の土地の貴族に売り渡すという話をしているあの馬鹿が死んでくれれば、私にとっては好都合。そしてそれがゴウンとカワサキに危害を加えようとしての自滅ならば更に言う事が無い。今のお父様ならば間違いなく重い罰を与えるだろうから

 

「少し計算は違うけど、上手く行きそうだわ」

 

今のお父様ならば間違いなく王国と帝国を上手く纏め上げるだろう。そうすれば、王位はザナックお兄様へ、あの無能が俺が次期王だと騒いでいるのを我慢していた意味があった。そんなことを考えながら寝室へ向かうと

 

【我は偉大なる御方の使いである。ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフだな?】

 

ほら、向こうからこうして接触してきた。今私にとって何もかも都合の良い流れになってきている事を確信する

 

「初めまして、ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフですわ。偉大なる御方のお使いにこうして出会えた事に感謝いたします」

 

私は上手くやる、自分が幸せになるためならば、国だろうが、父だろうが、兄だろうが全てを捨てる。全ては……私とクライムの為に……

 

 

 

 

ラナー姫とザナック王子が訪ねて来た次の日。俺はセバスとソリュシャンと共に馬車で王都へと向かっていた

 

「カワサキ様。王都で何をなさるおつもりなのですか?」

 

セバスの問いかけに正直良く判らんと返事を返す。

 

「用も無いのに御方を御呼びしたのですか?」

 

ソリュシャンの目が細まるが、俺自身は大して気にしてない。向こうが客賓用の馬車を出してくれたわけだ。俺の知り合いと言うことでソリュシャンとセバスも一緒に乗せてくれたため護衛も問題ないし、俺的には何の心配も無い、唯一気がかりと言えば店の事だが……まぁランポッサ国王の直々の頼みでは断れ無いと言う部分もある

 

「公には出来ないが、俺の料理で病気を治して欲しい相手がいるらしいんでな。俺は料理人で医者じゃないんだがな」

 

まぁ回復効果に全振りすればある程度は病気とかも治せると思うが、しかし公に出来ないと言うのはどういう事情だろうか

 

「カワサキ様が良いと仰っているのですから、シモベが口を挟む問題ではありませんよ」

 

セバスの叱責にソリュシャンが申し訳ありませんと頭を下げる。俺が詳しく聞いてないから悪いのであって、ソリュシャンが悪いわけでは無いため申し訳ない気持ちになってくるな

 

「それよりだ、セバスとソリュシャンは王都で色々調査したんだろう?ちょっとした観光のつもりで王都を案内してくれると嬉しいんだがどうだ?」

 

俺の言葉にソリュシャンが顔を上げてお任せくださいと笑う。その姿を見てこれで一安心かと思い、窓から馬車の外を見つめる。転移などで移動すれば一瞬だが、それだと旅の風情などが無いのでこれはこれで良い物だ。ここの所仕事続きだったため、ちょっとした気分転換にもなる。クレマンティーヌとシズもナザリックで休養できるし、のんびり観光気分で過ごすとしよう。俺はそんな風に気楽に考えていたのだが、一方その頃ナザリックでは

 

「カワサキ様が暗い屋敷の中でお前らの血は何色だーッ!って叫んで、筋肉だけでボタンを弾き飛ばす光景が見えました」

 

「なんだそれは!?リリオット!お前は何を予知した!?」

 

「わ、判りません……え、飛び膝蹴りとか、剣を素手で叩き割って!?」

 

「待て!リリオット!私もさすがにパニックになるぞ!?誰か!誰かーッ!!」

 

激怒カワサキを予知したリリオットと、その予知を聞いてパニックになったモモンガの叫びが木霊しているのだった……

 

 

賄い8 国王の依頼/激怒神カワサキ/真の国王となる為にへ続く

 

 




ちょっと今回は短めの話でしたが、ちょっと話の流れで悩んだのでこういう形になりました。シンプルな料理ですし、話を広げるのも難しかったんです……それと次回は久しぶりに賄いになります。タイトルと今回の落ちで大体何が起きるか予測出来ると思いますが、どうなるのか楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

やはりカワサキさんがオラリオにいるのは……

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