フェバル~全知無能のイモータル~   作:華村天稀

13 / 17
前回のあらすじ:
アスカの剣道チートが炸裂!
アスカは調子に乗って素振りをしすぎた! 翌日一回休み。
アスカ「うぐぐぐ、生理痛以外で内症で動けなくなるなんて生まれてはじめてかも……」



0x07.魔法を使いTai!

 訓練漬けの日々は続く。

 過去の経験から頑張り続けること(デスマーチ)に嫌気がさしている私だが、訓練はそもそもの動機が『苛酷な環境でも生き抜くための力を付けたい』という自分本位のもの。自分のためならば全力で頑張れます、というわけでそれはもう全力で頑張った。

 頑張った結果、私はちょくちょく筋肉痛を起こして訓練を休みにする。自分で言い出すのではなく、カリムさんに都度「今日は休め」と言い渡される。自己管理ができていないと言われればそれまでだが、この歳まであんまりガッツリと身体を鍛えたことはないので、どれだけ鍛えたらどれだけ休むとかいうコツが何かあるのだろうと思いつつもその加減はさっぱりわからない。私は自己判断だとやりすぎる傾向にあるらしいので、指導者がいて助かってます。

 さて休みを言い渡されるたびに、私は集落のあちこちに出しては思いつきで色々やる。それがいい気晴らしになるので。集落のみんなとしても、私が色々やるのは有難八割迷惑二割ってところのようだ。

 主に迷惑こうむってるのは在庫管理つまりカトラさん。

 

()()油がなくなりそうなの。困ったわ」

「あれがないと兎刺しにつけるタレに困りますね」

「何とかして頂戴」

「食べる頻度減らすか生産量増やしてください、としか言えないんですがそれは」

 

 この集落のあたりは温かいから栽培には適してると思いますよ? もともと生産なのか他村から輸入なのかは知りませんけど。

 

「あとね、塩も消費量が増えて困ってるの」

「ああ、串焼きに振りかけるのが流行っちゃいましたか」

「何とかして頂戴」

「私にどうしろというのですか!?」

 

 塩は海の近い村で作る伯方の塩もとい天日塩を輸入しているらしい。当たり前だが私に塩を作る能力はない。岩塩を発掘するという手もあるが集落近辺に岩塩はない。

 

「それからね、あなたが作った、こう胸につけるやつ」

「ブラジャーですね、って見せましたっけ?」

「あれいいわね。村の女性が一斉に欲しがっちゃって、でも作ろうにも材料の布が全員分は足りそうにないのよ」

「そうなるのちょっと予想したから、見せないようにしてたつもりなんですが。何で知れ渡っちゃってるんですかね」

「何とかして頂戴」

「本気でどうしようもない!?」

 

 アスカは逃げ出した! しかし捕まってしまった!

 

「何とかして頂戴?」

「いたいイタイ痛い! (きょ)(じゃく)(ひん)(じゃく)(ばん)()()(のう)の私に何を期待していらっしゃるというのか!?」

「ちょっと頑張って野生の胡麻と岩塩と木綿をたくさん見つけて、布作ってブラジャーたくさん縫ってくれればいいのよ」

「何その故郷のデスマーチも真っ青の過酷な労働!? 助けてえーりん!!」

 

 カトラさんは私の頭を鷲づかみにして万力のように締め上げてくる。さすがわ集落最強の妻、この人も戦闘において並のお方ではなかったようだ。んなアホな。だからといって暴力に屈して不当な重労働を受け入れる気は毛頭ないです。あと野生の胡麻も岩塩も木綿も【万智】に聞けばどこにあるか一発だけど、どれもこの集落の近くには全くない。全部他村の近辺だ。

 結局、物資不足について何か解決策を考えてみてほしい、という当初よりは軽度の要求を呑まされた。まぁそのくらいは言われずとも思いついたら提案しますけども。私だって、集落の文明水準を上げた結果、生活が立ち行かなくなりました、なんてのは不本意だし。

 ブラジャーについては、急いで作ろうにも布が足りないのだから、当面は必要性の高いヒトから順に私が受注生産という形でお願いした。各個人にフィットする形で作らないといけないから、ちょっと指導が大変そうで私が作っちゃったほうが楽だからだ。当たり前だが女性限定。一番必要なのは剣を振って動き回る戦士になるが、今のところ女性の戦士(見習い)は私だけらしい。つまり私の分が最優先。次いで弓のみを扱う狩人、その次がカトラさん。カトラさんはいろんなところを監督する都合上、かなり動き回るのであったほうがいいと思ったけど、本人が狩人優先でいいと言うのでそうする。その他のひとは特に順位付けは無し、でそのあたりに順序が回る頃までには縫製班へ製法を教えて作れるようにしよう。ってそのためのサンプル一つ提供するのがホントの最優先かな。

 あと、胡椒と醤油はもしかしたらこの星のどこかにあるかもしれないので、探してみて欲しいとお願いしておいた。他村との取引での話になるので結果が出るまでに時間がかかるだろうけどね。

 

 

 

 

()ッ!」

 

 背後から襲ってきたアルミラージを逆袈裟下ろしで一刀両断。剣を握る両手に、30センチを超える大きな相手を斬る重い感触。二つになった肉塊は力を失いボトリ。カリムさんがそれを拾って左手に持つ袋に放り込む。

 あれから走り込みと素振りを毎日あるいは隔日で続け、チカバル君には及ばないものの体力はついたので実践訓練してみよう、ということで今日はモンスターのいそうな平原を三人で歩いている。モンスターといってもアルミラージばかり。なんだかんだで剣の振り方はかなりしっかりと身についたらしい私は、不意を突かれた程度ではアルミラージに遅れをとることは無かった。そもそも【万智】をちゃんと使えば周囲のアルミラージの位置を漏らさず把握できるので、本当の意味で不意を突かれることはないんだけど。

 これが私とともに頑張ってるチカバル君の場合、まだ子供だというのにパワーとスタミナは私など及ぶべくも無いくらいある。が、索敵チート持ちの私よりも敵に気付くのがどうしたって遅れて、かつテクニックの点でも私より未熟な(ということになってしまった)ため、私よりもぐだぐだな戦いになりがちで倒し切るのに少し時間がかかり、倒したウサギ肉も私よりもぐちゃぐちゃになりがち。

 自慢をしたいわけではないけど、私は剣の腕前ではチカバル君をあっさり追い越してしまったようである。【万智】さんマジチート。ただし継続戦闘能力はお察し。まだ子供とはいえ幼い頃から集落暮らしで鍛えている彼はさすが、地力が私とは全く違う。

 

「姉ちゃんさー、うちの村に来る前は訓練とか全然してなかったんだって?」

「ええ、戦う必要のない平和なところに住んでましたから」

「じゃ訓練はじめたのって村に来てから?」

「そうなりますね」

「うっそだぁ。じゃあ何で姉ちゃんのほうが(アルミラージ)狩り上手なんだよ」

「うーん、技量((チート))の差?」

 

 ぶっちゃけだいたいチートのせい。

 まぁ嫉妬?したくなるのはわかるけれども、【万智(チート)】そのもので剣を振るっているわけじゃないので見逃してほしい。

 

「アスカはちょっと信じられないペースの努力をしてたからな、成長が早いのはそのためだろう。だが自惚れるなよ?」

「ええ、わかってます」

 

 ちょっとばかり【万智】によって技量におかしな補正がかかってはいるものの、私の剣は(妙に太刀筋の綺麗な)初心者の域を出ないし、他の武器の扱い方も知らない。対人でも対モンスターでも戦闘経験はまるでないのだし、あと体力面、パワーとスタミナにおいて未だにチカバル君にも明らかに劣っているし、村の雑用で意外な体力を見せてくれるエトナちゃんにもたぶん負ける。鍛える余地はまだまだ沢山ある。

 私が無力なのはよくわかっている。少し前の一月で散々、身をもって味わった。自惚れなどするものか。

 

「まぁ俺もアルミラージ以外とはまだ戦ったことがないから、人のことは言えないのだが」

「あれ、そうなんですか?」

 

 などといいつつ、獲物を入れた袋を左手で担いだまま、襲い来るウサギを片手でバッサリ。どう控え目に見ても私より数段上、さすがの技量である。

 ただ心配なのだけど、もしかしてこの技量はアルミラージに特化してたりやしないだろうか。アルミラージより凶暴で魔法も使うジャッカロープにばったり出くわしたり、よもや対人戦となった場合に、あろうことかあっさりやられてしまっては戦士としては目も当てられない。特に対人戦は怖い、この集落の外交事情はよく知らないので、もしかしたらどこぞの村と戦争状態になっちゃう可能性だって考えてしまう。

 

「……言いたい事はわかるが、その目をやめろ、アスカ」

「おっと失礼、顔に出てました?」

「まぁ、俺も修行中の身だ。あんまり偉そうなことは言えん」

 

 そろそろ他の武器、具体的には槍と弓の扱いも教わるべきだろうか。(ククリナイフ)と違って携行性が悪く、異世界にも持ち込みづらいだろうから、それほど魅力を感じないのだけど。

 

 

 

 

 以降、私の訓練プランは体力増強重視で走り込み四割、素振り三割、あとは狩りでたまに対人稽古となっている。チカバル君は技量向上重視のため走り込みを減らして素振りと狩りの比重を増やし、カリムさんは二人を監督しつつ臨機応変に行動。

 で、ククリナイフをそのまま稽古に使うのは危険、刃を返すと相手に当てにくい状となってしまい稽古に向かないので、稽古用としてククリナイフと同じ形状の木刀を二つ作った。本物と比べると材質の都合で軽くなってしまうので二人は少々不満顔だが、それでも刃物の危険性は承知しているので訓練に木刀を使うことは反対されなかった。

 木刀を使っての初稽古の成績は、意外にも私とカリムさんが互角となった。私より圧倒的に上のスタミナとパワー、重い得物に慣れきっているがゆえの木刀の軽さによる感覚の狂い、対人戦の不慣れ、片手持ちと両手持ちの差異、そして【万智(チート)】で補強された私の技量と勘、これらの要素が絶妙の均衡を生んでしまったようである。カリムさんがけっこう悔しそうな顔をしていたのが印象的だが、私だって痛みに耐性があることは自覚するもののマゾではないので避けれるなら避けたい。全力で抗った結果、決着つかず引き分けを言い渡されたというわけ。でもこれ私の判定負けだろ、実戦ならスタミナ切れで負けて死んでる。

 今後の成績は、カリムさんが木刀と対人戦に慣れるが早いか、私が体力を底上げ、あるいは技量を更に増すのが早いかの勝負になるだろう。

 なおチカバル君との戦績はお察し。

 

 

 というわけで、修行が隔日で安定してきた(どうしても筋肉痛で休みになる日が不可避なのだ)し、そろそろ魔法を教わりたい。限定的ながらカリムさんに拮抗するほどの技量にまで達したということで、魔法を教わるための条件『訓練である程度の成果を出す』は満たしたはずだ。

 当初からの私の目標『生き抜くための力を得る』は、現時点でだいたい半分くらいというところだろうか。カリムさんたちに鍛えられた技量と体力、このククリナイフ、そして【万智】があれば、狩猟、採集、調理、木工などかなりのことができる。食料調達と道具作成がかなりやりやすくなった。今なら例えば孤島において魚を獲って捌いて飢えをしのぐこともできるのではないか。あーもちろんククリナイフで狩るんじゃなくて、適当な木を切って槍を作ってそれで獲る。水場での狩りは経験ないけど、体力と得物と【万智】があればどうにかできそうな気がするのだ。

 が、今のところこのククリナイフがあることが前提になってしまっている。この星を旅立つ際に一本貰えるならいいのだが、どうも地球よりも金属が稀少らしいので譲ってもらえないかもしれない。また『水』は生きてくのに必須な上ほかにも用途が多いのだが、ククリナイフでは水を得るのにはあまり役に立たない。それに『火』があると食べ物の調理が可能、それにより食べることが可能なものは大きく増えるので、生存性が大きく増す。

 魔法を習得することができれば、これらの懸念への解になるのだ。そりゃあ是非とも覚えたくなる。

 

 カトラさんのほうもそろそろと思ってくれていたようで、改めてお願いしに言ったら二つ返事で了承され、さっそく今日から教えるといってくれた。わーい。

 あ、念のため聞いておきたいんですけど、筋肉痛でも教わるのに支障ないですよね?

 

「アスカ、あなたは筋肉で魔法を使うつもりなのかしら?」

「その昔『ま・じゅ・つー!』って叫びながら椅子をコブシで破壊して『これが魔術だ』と言い切りやがったヘンタイ爺さんの話がありましてね」

「世界って広いのね……」

 

 あとコブシを炎で包んで相手をぶん殴ることを魔法と言い張るヘンタイもいましてね……まぁそっちは本物の魔法か。でも普通に殴るのと何が違う、自分の手を焼いてばかりのその炎はいったい何の役に立つというのか。え、属性攻撃? ゲームだから許される? あっそう。

 という雑談から魔法の講義はじまりはじまり。と思ったのだけど……

 

「魔力がないわね」

「え?」

「ゼロよ、魔力ゼロ。欠片(かけら)もないわ。珍しいわね、誰でも少しはあるものなのに」

 

 なんということでしょう、あんなに希望に溢れていた私の目が、この一言を聞いてみるみる濁っていきます。え、元から? ソウデスネ。

 魔力ゼロ。つまり私には魔法を使うことはできないらしい。What the f**k(なんてこった)

 

「こりゃ魔法は厳しいわね」

「そうですか……」

 

 あれ? 厳しいって言った? 無理じゃなくて?

 

「無理ではなく『厳しい』とおっしゃるってことは、もしかして魔力ゼロでも魔法を使う方法が何かあるんですか?」

「うーん、一応、理論上はね、手段があるのよ」

 

 カミサマは私を見捨てなかった! あれ、何故だろう、運命(カミサマ)と頭に浮かんだ途端、何だかイラッとした。ワケがわかんない。うん忘れよう。

 

「《杖》の中に魔力を溜める機構があるから、それをうまく操作できればいいの。でもね」

「あー、元々魔力を持ってない人はその練習ができない、とか?」

「そうなのよ」

 

 やっぱり運命(カミサマ)は私を見捨てていた。ちくせう。

 

「ま、一応あとで試してみましょ。講義を続けます」

「お願いします」

「調理場を使っているなら、光る紋章を見たことはあるかしら?」

「『病魔払い紋』は毎回使ってますよ。あと『火炎紋』をたまに」

「それが魔法なの」

 

 やっぱりあれが魔法だったのか。

 詳しく聞くと、日常生活においてあれば便利な各所にこの魔法が使われており、調理場の上水とコンロっぽい火、トイレの洗浄、温泉の掃除と温度維持、夜間の明かり、襲撃検知などが主だった用途。紋章を書くことで設置し、紋章ごと何らかのトリガーで効果を発現、紋章に込めた魔力がなくなると消失する。そのため集落の魔法使いたちは随時あちこちに紋章を書き込む仕事がけっこう忙しいそうだ。調理場の紋章などだいたい三時間しかもたないので、朝夕それぞれ必要数を書かないといけない。専任の担当が数人ほど任命されるくらいの重労働なのだそうだ。

 いろいろなことができて便利だが、紋章を書く時間は簡単な効果でも一分くらいかかるので、即時性が重要な戦闘行為には使いづらいこと。そのため戦闘用の魔法というのは発展せず、戦いに魔法を使う者は今のところいないそうだ。

 胡麻油が魔法の触媒というのは、胡麻油を含む色々な素材を調合した薬液で紋章を書くことで、魔力がなくなっても紋章自体は消えなくなり、魔力を補充することで再利用が可能になるという。自然素材が多いためか熱に弱く、一番多く書く調理場の火炎紋にはこれを使えないのが魔法使いたちの悩みの種、改良してくれると嬉しいなぁと言われてしまった。しれっとへんな期待を織り交ぜないでください。

 

 で、紋章は素手でも一応書けるのだが、ヒトの持つ魔力は才能あるひとでもたいしたことがなく、少しの間だけ光る照明をつくるのがせいぜい。なので練習のために素手で紋章を書くことはあれど、実用レベルの魔法は《杖》がなければ使えない。だが魔力さえ足りるのならば《杖》を使わずに自身の魔力だけで書くほうが楽らしく、魔力操作の感覚を掴むために最初の練習は自身の魔力で行う。

 これがさっき言われた、魔力ゼロでも魔法は使えるが最初の練習ができないので難しい、という話である。

 あと《杖》はこの世界において金よりも貴重なエーテリウムという素材を使うため、おいそれと数を揃えることはできない。この集落には五本しかないそうだ。

 

「これがそのうちの一本よ」

 

 そんな超絶貴重品をいきなりポンと渡してくれたよこのヒト。

 

「ああ心配しなくても、その《杖》はこの村で一番性能が低いヤツよ」

「いやそれでも貴重なんでしょう?」

「でも持たせないと魔法の使いようがないじゃない」

 

 ごもっともですた。

 

「さて、自分の魔力がないから練習のしようがないあなたは、その《杖》で魔法が使えるかしら?」

「……どうやって使うので?」

「《杖》の魔力を感じ取って、その魔力を《杖》の先端へと押し出すようにしながら、扱いたい効果にちなんだ紋章を書くの」

 

 なるほど、まずは魔力を感じ取る技能がないとどうしようもない。そしてその技能を修得するためには自身が魔力を持っていないと厳しいのか。

 であれば魔力ゼロである私にはどうしようもないように思える……普通ならば。

 

 運命(カミサマ)に見捨てられようとも私には【万智】がある。兎刺しを捌くとき、木皿を作るとき、下着類を縫うとき、そして剣を振るうときに私に技術のような何かをくれたように、魔法を扱うにおいてもこの能力は助けになってくれるのではないか。

 杖を握り、目を瞑り、意識を集中する。何も見えない、わからない。もっと集中する。そうすれば何とかなる、そう私に訴えかけてくる声なき声に耳を傾けて。どこにある? 何がある?

 ふと、杖の先端、水晶のあたりに、何かがあるような気がした。暖かいような冷たいような、活発なような大人しいような、熱気のような冷水のような……

 その何かを水晶から()()()()ようなつもりで、私は()()()()()()使って地面に書いた。『光』と。何故か重い、凄く重い。たった六画を書ききるのに一分以上かかった。

 書き終えた瞬間、書いた文字は輝き出す。すぐに消えてしまったが、今のは間違いなく魔法の輝きだ。

 

「……できた!?」

「凄いわね、ホントにできてしまうなんて」

 

 カトラさんが心底驚いたような顔をしている。

 理論的には可能でも、魔力ゼロなのに魔法を使えた人物なんて、この集落では初めてなんだろうなぁ。

 とか思ってたらカトラさんからアイアンクローがががが

 

「でもね、杖を傷つけるようなことをするのは許されないわよ」

「ごごごごごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

 

 杖の稀少性は先に聞いていたのに迂闊(うかつ)だった。

 でもじゃあどうすればいいのか、というと杖の中で一番稀少なのはこの水晶で、文字を書くのは逆側の棒の先端で書くのが正しいんだってさ。

 

 

 こうして私は魔法使いの仲間入りを果たした。

 あ、ちなみに漢字は誰も読めなかったのでオリジナルの紋章として通しました。フェバルの翻訳能力ドコ行った。

 




◇助けてえーりん
そういうタイトルの歌がある。アスカはそれを知ってたためついつい叫んだだけ。叫んだところでえーりんなる人物がアスカを助けてくれるわけではない。

◇戦士と狩人の違い
戦士はいざというときに集落を護る存在で、剣や槍による接近戦が主体の者が多い。普段は鍛錬を兼ねて狩りを行う。
狩人は食料調達のための狩りを生業とする存在で、対人戦は訓練しないため有事の際には護られる存在。剣や槍を主に使う人もいれば投擲や弓を主とする人もいる。特に女性狩人はほぼ全員が弓のみを使う。
アスカは事実上、この集落で初の女性戦士(見習い)。

◇イゴールにおける魔法
イゴールの魔法は紋章を描いて望んだ効果を発現させるというもの。
水を出す、湯を沸かす、調理用の火を起こす、明かりを(とも)す、殺菌する、等々、生活で活かされることが多い。反面、紋章を描くのに手間がかかる上に描き切ってから発動させるまでさらに時間がかかるため即時性に難があって、戦闘で使われることはあまりない。
サークリスで将来開発される紋章魔法と似ているかもしれない。

◇《杖》
魔力を溜め込む性質を持つ魔法行使補助器具。《杖》が魔力を保持するため使用者に魔力が無くてもそれなりに強力な魔法を行使可能。
ただ、イゴールの紋章魔法は習得過程でまず自分の体内の魔力を使って魔力の扱い方を覚えるため、魔力に乏しい人物は杖の使い方を習得することができず、結果として《杖》を使いこなせるのは自身でそれなりに魔力を持つ人物だけになる。
イゴールで《杖》の用法を習得できる素質(≒(しきい)()以上の魔力)があるのは100人に一人程度で、この才能を持つものは重宝がられる。

◇ヒトの持つ魔力は才能あるひとでもたいしたことがない
魔力許容性が低いため、最低限度レベルの紋章を素手で書くための(しきい)()を超えるのが難しい。
これが魔力許容性の高い惑星エネラルやラナソールであれば『魔力ゼロの人を除きほぼ誰でも書ける』となったりする。
アスカは魔力ゼロなので、ラナソールでも素手で紋章を書くことはできない。

◇エーテリウム
魔力を宿す能力を持つ紫色の結晶体。某文明でプレマライトと呼ばれるものと同一だが、イゴールのものは総じて品質がよい。
標準的な《杖》はエーテリウム水晶を先端に取り付けた飾りのある棒(いわゆるロッド)の形をしており、このエーテリウムが《杖》の機能の核の役割を果たす。
イゴールに存在する《杖》に使われているエーテリウム水晶は、いずれもプレマライトとしては最高級品質に相当する。そのうちクソフェバルに狙われる危険性あり

◇フェバルの翻訳能力ドコ行った
紋章は効果に応じたイメージの形とする必要があるが、漢字は表意文字であるためか、一文字あるいは加工して使うと紋章として扱うことができる。後にアスカを始祖として世に伝わる漢字魔法(カンジ・マジック)の誕生である。
フェバルの翻訳能力(記述)は書こうと思った言語で書けてしまうものであって、書いたものを誰でも母国語のように読めてしまう能力ではないので、漢字として書いた紋章を漢字を知らない人が読めるわけがない。
アスカはフェバルになってからの日が浅いため、このあたりの細かい認識が欠けていた。【万智】で調べようと思えば一発でわかるが、調べる気が起きなければ認識は欠けたままである。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。