フェバル~全知無能のイモータル~   作:華村天稀

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前回のあらすじ:
アスカの味覚革命でラハール族が塩不足でやばい。
ラハール族は海の村まで塩取引に向かった。しかし村の外郭は半壊していた。
ヤスール「む、これは何か出たのかのう?」



0x09.レスキュー隊! 活動遅いよ、何やってんの!?

 外観が半壊していた海の村だが、内部も半分が崩壊していた。

 建築被害のわりに人的被害は少ないそうだが、死者はとにかくけが人はいるし、原因もモンスターであろうとしかわかっておらず正体や数がはっきりしていない。

 とにかく怪我人の治療や外壁の修復など対処しなければならないが、すぐに動ける人手が足らないので手を貸してほしい。

 

 族長同士の対談に何故か私も連れて行かれ、そういう話がなされるのを横で聞きました。ほぼ二つ返事で聞き入れるヤスールさん。まさか異世界に来て災害支援活動をすることになるとは。

 具体的には隊を二つに分けて、片方はヤスールさん自ら率いて村周辺の脅威になりそうなものを狩る。集落でも最強クラスの集まりなのでジャッカロープまでならほぼ瞬殺(当人たち談)のメンツ、彼らが守護することで堀や柵が半壊した村でもきっと安全。

 残り半分は怪我人の治療と外壁の修復をする、そのリーダーにヤスール族長が指名したのは私。って、ちょっと待て。

 

「ちょ、ヤスールさん!?」

「なんじゃ!」

「新入りで若造で女の私を指名するとか問題ありませんかね!?」

「大丈夫じゃ、問題ない! おぬしの奇抜な能力は皆認めておるわい!」

「いやそれはそれでどうなんでしょうか!?」

「カリムを補佐につける、うまくやれ! 征伐班、出陣じゃ!」

 

 ちょっと、ヤスールさん何狩りか戦争に行くみたいな号令かけてるんですか!? 貴方の任務は拠点防衛ですよね!? ちゃんと村守ってよ!?

 というわけで不安しか残らない質疑応答を終えて、茫然としてるわけにいかないのでまず怪我人をどうにかしよう。残った十二人のうち、応急処置は全員可能、気による怪我の治療ができるのが三人、魔法による治療ができるのが一人っていうか私のみ。よって四人が治療にあたり、残りの七人が要救助者の捜索と救助、応急処置、重傷なら治療班まで連れて行くか逆に連れて行く遊撃担当とした。リーダー(一応)の私も魔法治療に集中するためカリムさんを指揮補佐にする。

 魔法治療できるって言っちゃったけどやったことない、でも魔法ってあんだけ自由度が高いんだから何とかなるでしょう。さあどんと来い! って怪我人わらわらいる! うわぁみんな救助と要治療判定と応急処置が早くて的確! あ、こっちに骨折者きた。えーと骨折の治療ってどうするんだ? とりあえず、

 

「ちょっと痛むかもしれないけど我慢してくださいね」

 

 まず《麻酔》で痛みをやわらげて、で《整形》と《癒合》を空中に書いておく。変な形で固まってしまうと困るので骨折箇所を掴んで引っ張って適当そうな形に固定して、で書いておいた紋章を飛ばして骨折箇所に当てる、というか差して体内に入れる。少し待って【(ばん)()】と触診で確認すると無事に骨がくっついたのがわかったので、周囲の腫れを《消炎》で和らげる、あと全体的に《治癒》で身体本来の治癒力をアシスト。これで治療完了。よかった、手順は間違ってないみたい。

 

「終わりましたよ」

「……不思議なものだな。魔法で治療ができるとは」

 

 雑談にふけりたいところだけど次の患者……うわ、腕の肉がえぐれてる、骨も切れてる。皮一枚でかろうじて繋がってるような状態。これはひどい。

 

「これだけの怪我だと気功治療では治せない、切り落とすしかないそうだ」

「だめでしょうそれは」

 

 このレベルの文明で腕一本なかったら最悪それが理由で死なされる。そんなのダメだ。

 

「アスカならそう言うと思った。治せるか?」

「やってみます」

 

 こんな状態だと身体の治癒力などあてにならない、失われた部位の補充が必要。身体のほかの部分の肉とか骨を全体的に少しずつ削って、それで集めた肉や骨などを使って腕の失われた部分を再生するイメージを紋章に乗せる。書く字はもちろん《再生》、これを50個くらい。腕のえぐれた先の部分は血が廻らず壊死しかかってるので《鮮化》《賦活》《巡血》で回復させる。

 再生した骨肉と回復した腕がくっつき、それを《縫合》《癒合》で完全にくっつける。最後に失われた血を《造血》する。《消炎》と《治癒》も書いて治療は終了。

 材料が全部本人の身体の別の部位なので全体的に栄養不足になるかもしれないが、これで彼が腕を失うことはないハズだ。

 

「次!」

「今のが一番の重傷だ。あとは皆に任せておけば対処できる」

「あれ、そうなんですか?」

「今の腕の治療で疲れただろう、少し休め」

「たしかに疲れました、けど……」

 

 見回すと怪我人の治療はかなり進んでいたらしい。村の人も気の扱いや応急処置ができる人は手伝ってくれているようで。そして私がちょっとふらふらしている。今の治療は思ったより体力を消耗したらしい。さらに言えば日が傾きかけていて、時間も随分と使ったようだ。外壁の修理をするつもりでいたんだけど日没までにはどう考えても間に合わない。

 

「柵は応急対応でいいだろう、長もいれば村の中まで侵入される心配はあるまい」

「あー、そうですね。警報だけ置いておけば……うわ、魔力すっからかん」

 

 この前はスニーカー直すだけで魔力なくなったし、今回は二人治療しただけで終了。配分がヘタクソなのかなぁ……待てよ?

 《杖》に僅かに残った魔力を振り絞って空中に《魔力吸収》と書き、その紋章に杖の水晶を突っ込む。紋章の光に覆われた《杖》でカリムさんに触れると……

 

「っ、何だこの脱力感」

「思いつきでやってみたんですが、うまくいけば魔力回復できそうですね」

「まさか俺の魔力を吸ってるのか? ……くっ、虚脱感が酷い」

「そんなにひどいですか? (はた)で見る限りはまだいけそうですけど」

「おまえみたいな、死にさえしなければ何でも耐えそうな変態と、一緒にするな」

「へ、変態とはなんですか! 酷いこと言いますね!」

 

 私は別に被虐嗜好者(マゾヒスト)ではないので、そんな評価は心外だ。

 

「でもこれ以上はたしかにまずそうですね」

 

 急激に魔力を抜き取りすぎたせいか、カリムさんの顔色が酷い。名付けるなら急性魔力欠乏症といったところだろうか。地球にはない病症なので当然私の知識にはないけど【万智】はその名づけを肯定した。思ったとおりであるらしい。この紋章はリミッターつけないと問題あるかもしれない。

 

「でもまだ全然回復してませんね」

 

 しかし残念ながら、カリムさんから容赦なく吸った分だけでは、村を覆う柵全体に紋章を行き渡らせるには足りない。

 私も手のひらで水晶を握ってみたけどなんともない。《杖》の魔力も僅かにも増えない。私は魔力ゼロって話だから当たり前か。今カリムさんがなってる程度の体調不良、私なら何てことない自信があるというのに。

 

「実用的では、ないようだな……」

「いや、大勢から集めればいけるかも」

「待て、気軽に被害者を増やすな」

「慎重にやりますから大丈夫ですよ」

「おまえの『大丈夫』はそこはかとなく信用ならないんだが!?」

 

 続けざまに酷いことを言ってくれるカリムさんは無視して、あと数人ほど被害者もとい候補者を見繕う。といっても《杖》で触れる時間を調整したのでカリムさんみたいに酷いことになった人はいないんだけど、そうやって十数人ほどの魔力を譲り受けてようやく必要分の魔力が溜まった。

 村を覆う柵のほぼ全体に対して打ち込む魔法紋章は《警報》。省エネにしたので効果は単純で、ある程度以上の大きさの生物が堀に侵入したり柵に触れると警報を鳴らす。村の人間やラハール族の人たちが入っても鳴り出すので、周知してむやみに入らないようお願いしないといけない。判別機能とかあればいいんだけど今はそれを仕込む猶予が時間的にも魔力的にもない。

 これを書けるだけ書いて村の周辺に打ち込めるだけ打ち込む。周知のほうはカリムさん以下にお願いする。

 

 作業がすべて終わる頃には日が沈んでいた。

 そういえば、誰一人として新入りで若造で女の私の指揮に反対しなかったな。補佐のカリムさんも将来的には期待されてるとはいえ若造扱いだったのに。こういうのは人の上に立つ上で結構悩ましい要素(実際、会社勤め時代はそれで多少の苦労があった)なのだけど、非常事態とは言え文句一つ言わず従ってくれて感謝です。

 しばらく《杖》は使う必要ないと思うけど、明日また出番がありそうなので魔力の回復はしておきたい。太陽光にさらすことで回復を早めることができると教わったが、なら月明かりでも多少は魔力を回復できないかと思い立ち、最後に残った魔力を絞り出して《星光魔力吸収》と書いておいた。うまくいくといいな。

 

 

 

 ヤスールさん率いる討伐班は村周辺の脅威になりそうなモンスターをあらかた片付けて。

 私の班は怪我人の治療と外周の応急処置を完了し。

 そして村の人たちは崩れた建物のうち誰かの寝床になっている分の修復を終えた。

 無事に対処が(一応)完了したってことで、その夜は宴会となった。飲んでる場合か、と思わなくもなかったけど「こういう時こそ飲んで騒いで明るく振舞うのじゃ!」っていうヤスールさんの鶴の一声で決行。柵がちゃんと直ってないんだけど、そんな防衛体制で宴会なんかして本当に大丈夫か?

 でも私一人が反対したところで止められるわけがなく、宴会用の肉と焼き魚と酒が運ばれだした。最終的に死者も重傷者もなくて済んだことが、みんなよほど嬉しいらしい。気持ちはわかる。

 お酒は嫌いではないけれど、全員酔ってしまっては警備体制がやばたにえん。私とて何が何でも宴会をやめさせたいわけじゃないけど、酔ってしまうと警備体制が不安という考えは変えていないので、私はお酒を控えることにした。お酒を持ってきてくれた人にそれを伝えると、

 

「ああ、そうだよな。嬢ちゃん凄い働き者だったけど、子供だもんな」

「いや成人してるんですけども」

「うっそだぁ、冗談はよしなよ嬢ちゃん」

「オイこら誰が冗談ですか」

 

 日本人って外国人からは若く、っていうか幼く見えるらしいっていうのはよく聞く話だけど、どうやらその法則は異世界でも通用するらしい。私これでも身長が日本人女性の平均より若干高いくらいなんだけども?

 地球にいたころは日本を出たことがないので、実年齢以下に見られた経験はなかった。そもそもケアしてもなおらないしごまかせない悪い顔色というかクマばかり相手の印象に残してしまうようで、何歳に見えるか以前の問題である。

 というわけで、無駄に若く見られるのは初経験なわけだけど。これ人によっては凄く喜びそうだけども、私は別に何とも思わないなぁ。むしろ今日の酒みたいにやりたいことが不当に制限されたりしかねない面倒の予感が。いや今日飲まないのは自主規制なんだけどさ。

 

 で、宴も(たけなわ)となるとヤスールさんに呼ばれて

 

「アスカ、兎刺し(いつもの)頼むぞ」

「いきなり言われても材料ないんですけど」

()()油はカトラに言って貰ってきたわい」

「子ウサギは俺が捕まえてきたぞ。さっき運良く見つけてな」

「塩はこれを使うとよい。村の備蓄で無事なものを少し持ってこさせた」

 

 用意周到すぎワロタ。特にカリムさん、普段は私に巣の場所を聞いてからでないと見つけられない子ウサギ(幼アルミラージ)を、ついに自力で発見して狩りやがった。兎刺しへの執念パネェ。

 まぁ材料そろってる上に海の村の村長さん(女性の方だった。ちょっと意外)も塩提供してまで食べてみたいようなので、作ることはやぶさかではないのだけど、

 

「皿と箸は?」

「「あ。」」

 

 兎刺し自体を盛り付ける皿は葉っぱで代用ができたとしても、胡麻塩ダレを入れる小皿はちゃんとしたものがないと厳しい。なら作るか。

 

「……村長さん、皿が切り出せる程度の大きさの材木はありますか?」

「あー、申し訳ないが今はちょっとな」

「そうでした、これから復興ですもんね……」

 

 今この村では木材は安易に使えない。なら、やったことないけど土から作る? 魔法があれば成型も消毒・抗菌もできるだろう。問題は《杖》の魔力をほぼ使い切ってしまっていることだけど。回復するよう仕掛けておいたのは何処まで効いたのか……おお!? けっこう回復してる。これなら皿1枚くらい楽勝だろう。いや折角なんで大小2枚作ろう。

 まず地面の下層から粘土を《抽出》する……皿2枚を作るのに十分な量が集まったら《抽出》をやめて、適当な皿の形に《成形》し、それを《(かま)》でファイヤー。割れたりしないよう《保護》しながら火加減を調整しつつ《変化促進》し、よさそうな具合になったら加熱を止める。《保護》と《変化促進》があるのである程度は急激に冷やしても大丈夫。仕上げに殺菌、はあれだけ加熱すれば充分だろうから《分解消毒》と《表面加工》を行って、大小1枚ずつの炻器(せっき)2皿の完成だ。所要時間は97秒、所要魔力は……うわ、回復した量の七割飛んだ。工程に無茶があったのかなぁ。

 

「な、なんだあの魔法……ほとんど一瞬で土から皿を作りおったぞ、それも同時に二枚」

「アスカの魔法はやはり凄まじいんじゃの……カリム、何故アスカに自重を仕込まんかった?」

「無茶言わんでくださいよ長」

「聞こえてますよ?」

 

 てゆーかやってほしくないならさっさと止めろよ。止められてもやめないかもしれないけど。そもそも、うーん、皿2枚作るのがそんなに異様なのだろうか。私からすればこれぞ魔法らしい魔法なんだけども。とはいえ作成・造形に向いた能力のフェバルがいればこんなもの一瞬でできてしまうだろう、そう考えるとあんまり自慢げな気分にはならないのだけど。

 さて、皿ができたので今度は料理。調理台は遠いので紋章を書きまくってマジカルキッチン用意。宙に浮く《(まないた)》の上にまだ生きてる子ウサギを載せて、首ぐきゅっと()って、ククリナイフでばっさばっさ(ry

 今作った大皿に《殺菌》を仕込んで、その上に斬りたて新鮮な兎刺しを盛り付ける。小皿には胡麻油を注いで塩を二つまみほど。箸がないのは仕方がない、今日は手で食べてもらう。ただしちゃんと《水》で手を洗い《乾》かして《殺菌》してから。

 

「これで手をよく洗ってください、でないと体調を悪くするかもしれません」

「そ、そんな危ない食べ物なのか!?」

「生モノですので」

 

 地球でも、よく生()()を食べて当たってる人がいた。会社時代の私の部下もそんなで、次の日に酷い顔色で会社に出てくるので「有休とって休みなさい、顔色悪いですよ」って言ったら「リーダーのくまのほうが酷いですからね?」って返された。大きなお世話だ。ていうか私のは無理をしてくまが酷いわけじゃない、通常装備なんだよ。

 

「不安でしたら、食べていただかなくても大丈夫ですよ。むしろ不良族長と不良戦士が食べる分が増えると喜ぶくらいです」

「誰が不良じゃい」「誰が不良だ」

「いや、いただこう」

「チッ」「チッ」

「そういうとこが不良なんですよ」

 

 これって「宴会の礼にちょっと美味いもの振舞ってやる」的なミニイベントのはず、振舞う側がこういう態度なのはダメじゃね?

 まぁ、

 

「美味い! なんだこれは! こんな美味いもの今まで食べたことないぞ!?」

「気に入っていただけて何よりです」

「あ、こらワシの分まで食い尽くすんじゃない」「俺の分が……」

「今日くらい自重しなさいよラハール族の二人」

 

 争奪戦になるほど気に入ってもらえたなら、別にいいか。

 ただ、ラハール族の集落近辺と違って、このあたりはアルミラージはあんまり生息しないみたいなので、最終的には兎刺しではなく鮮魚の刺身を文化として根付かせたいところ。まぁ復興とかあるから今後の課題かなぁ。

 

 さて、せっかく都合よくお近づきになれたので、このワイルドな女性の村長さんに少しは聞いてみよう。

 

「ところで村長さん。今回、いったい何があったんです?」

「うん?」

「村は何に襲われたんですか?」

「ああ……」

 

 村長さん、私の話よりも兎刺しのほうに興味津々で、最後に残る数切れをまとめてつまみ

 

「ああっ、こら全部持っていくでない」

「いいではないか、族長殿は毎日食べているのだろう?」

「ここ数日は食っておらんのじゃぞ?」

 

 ちょっと黙っててくれませんかねぇヤスールさん?

 

「んむ、失礼。村を襲ったものだが、襲われた若い衆の話を聞くに、どうもジャバウォックであるらしい」

 

 ジャバウォック?




◇魔法による治療
星脈が世界を網羅しフェバルが暴れるこの宇宙において、生物の治療行為は気力の領域であり魔法では不可能というのが一般的認識であり事実。
しかしアスカは超外科治療的な効果を持つ魔法紋章をいくつも生み出して、魔法による治療を可能にしてしまった。身体本来の治癒力をアシストする《治癒》にいたっては気力治療の効果に酷似している(ただし効果の強さや効率は気力治療に大きく劣るハズ)。
この紋章は将来的にイゴールへの置き土産になりうるが、完全に使いこなすには医療知識が必要になるため、アスカが去った後の現地人が使いこなせるかどうかは不明。

◇《魔力吸収》
周囲の大気や触れたヒトから魔力を吸収する(正確には大気の魔素や触れたヒトの持つ魔力要素をエーテリウム水晶(プレマライト)の内蔵エネルギーに変換する)という効果の魔法紋章。
イゴールにおいては《杖》の魔力容量はヒトよりはるかに大きいため、ヒトから容赦なく吸い取ると急性魔力欠乏症を誘発するため注意が必要。

◇急性魔力欠乏症
魔力を保有する人が、保有魔力の大半を急激に失うと発生する体調不良。貧血や立ち眩みに似た症状が起きたり、身体に力が入らなくなったりする。一時的なものであり、それほど時間をおかずに解消する。
カリム以外の症例だと、原作の一章後半で燃費の悪い改良前《アールリバイン》を放ったユウの症例がある。この物語の中では明日の出来事。

◇《星光魔力吸収》
月星の光を魔力に変換することを狙ってアスカが新たに作った魔法紋章。思ったよりも効果が高いようだ。

◇《抽出》
特定の物体(母体)の中から望みの物質・物体を取り出すための魔法紋章。

◇《(かま)
効果範囲内を結界で包んで、結界内を特定の高い温度にしてしばらく保つという、まさに窯の効果を持つ魔法紋章。
漢字にするとたった1文字であるが、効果が複雑な分、魔力の消耗が大きく制御も困難という高度な魔法紋章である。

◇《変化促進》
栽培生長や熱処理など時間のかかる変化を促進して短時間で終わらせる効果を持つ魔法紋章。
限定的ながら時間を操作するかのような効果の便利さゆえか、魔力消費や制御の困難さは《(かま)》以上。

◇《分解消毒》
効果範囲内の、術者が施術時に考えた生物達にとって明確に毒となる物質を、化学的その他の方法で分解して無毒化する魔法紋章。
対象とする毒に対する知識がないと効果を発揮しない場合があるが、【万智】を持つアスカに限ってはその心配は皆無。
毒の種類によっては魔力消費が格段に増す場合が稀にある。

炻器(せっき)
土器と陶器の中間みたいな焼き物。というより技術的には本当に中間にあたる過渡期の産物。
土器よりは高温で仕上げるため質が良いが、陶器のように表面加工がしっかりしていない。釉薬(ゆうやく)という表面処理のための薬品を用いない場合もある。
アスカの場合、最終工程で魔法により行った表面加工がかなりしっかりしており、炻器と分類するには出来が良すぎるかもしれない。が釉薬不使用なので炻器で間違いない。

◇《(まないた)
ただ宙に浮き、加工する食材を置く台になるだけの魔法紋章。マジカルキッチンにおける調理台、というより文字通りまな板の代わり。
望んだ高さの空中に固定できるだけであるため魔力消費は少ないが、魔力が勿体ないので普通はこんな紋章を常用しない。ただ旅先で台を使いたい場合は便利。魔法なので菌も毒もないし、使用後は消せばいいので洗う必要もない。

◇ジャバウォック
元々はルイス・キャロル作『鏡の国のアリス』にて作中作で語られる謎の怪物の名前。怪物がどのような姿であるのか、作中には記されていない。
イゴールにおけるジャバウォックについては次話にて。
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